話合い活動のよさを生かした 学級活動内容(2)の授業を提案します。

2 研究の実際

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(4)  「話合い活動」の事前、事後等の一連の活動における指導の工夫

  イ 自己を見つめ直し、話合いを充実させる事前の指導の工夫

【中学校】

(ア) 課題意識をもたせるために
  アンケートを実施して、生徒がどんな題材に課題意識をもっているか調べる。
 題材設定をする場合、行事や時期に関するものは教師から投げ掛けることがほとんどだと思います。それは、学級活動内容(2)については、内容項目がアからケまで示されており、その全ての内容を教師が意図的、計画的に進めることとされているからです。しかし、生徒の日頃の生活の中から出てくる課題は、教師の課題意識だけでなく、教師と生徒の課題意識が合致したところで題材として設定した方が効果的な場合もあると考えます。生徒自身が課題意識をしっかりもつことができると話合いでの生徒の意見は具体的で内容の深いものとなり実践意欲にも結び付くのではないかと考えます。
 そこで、内容(2)を生徒が課題意識をもって話合い活動を行うために、アンケートを実施し、学校生活のどんな場面に課題をもって生活しているのかを調べます。生徒が学校生活で直面している課題の中には内容(2)と関連するものがある場合もあります。特に課題と感じている生徒が多い内容(2)の項目について、教師が話合いの題材として取り上げ、話合いを通して課題の解決に向かわせるように指導します。
 アンケートの実施時期は、学期の始めや半ばに実施することもあれば、学期末に実施しておいて、次の学期の始めに話合い活動を行うなど、多様な方法が考えられます。
○アンケートの実施例
 2学期の始めにアンケートを実施したときの例です。アンケートでは、(質問1)で「学級のよいところはなにか」について考えさせ、(質問2)では「学級の課題はなにか」について考えさせました。その際に、内容(2)に関わる内容をキーワードとして挙げておくと、生徒は答えやすくなります。この実施例では、給食の時間に関する課題を感じている生徒が多かったので、その後、給食の時間を見直そうという題材を提案するとよいと考えます。
 【質問1の回答例】 
 【質問2の回答例】 
・楽しい
・協力できる
・仲良し
・元気
・宿題忘れがなくなってきた
・明るくて笑顔が絶えない
・前向き
・声が大きい
・発表が多い
・給食の時間を守れないなど(17名)
・授業中のおしゃべりが多いなど(10名)
・チャイム着席(3名)
・けじめがない(2名)
・話の聞き方が悪い(2名)
・放送中に静かにできない(2名)
・落ち着きがない(2名)
・もう少し仲良く
 
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(イ) 自分の考えをもたせるために
  ペア活動を行い、話合いの各柱に対する互いの考えを聞き合わせ、学級会ノートに意見を書かせる。
 事前に学級会ノートに話合いの柱に合った意見を書いている生徒は、話合いでも自信をもって自分から手を挙げて発表する傾向にあります。そこで、事前活動において、岩瀬直樹氏、ちょんせいこ氏の「よくわかる学級ファシリテーション1―かかわりスキル編」にある互いの意見を聞き合う活動を参考に、事前活動においてペア活動を行い、互いに意見を聞き合わせることで、柱に対する自分の考えをもたせ、それを学級会ノートに意見としてまとめさせる活動を行いました。
a ペアを組ませる。
ペア活動では、誰とでもペアを組み、互いの意見を聞き合うことができるようにします。しかし、学級の実態によっては難しい場合もあります。そのときには、例えば仲のよい友達や話しやすい人とペアをつくる、男子同士、女子同士でペアをつくるなどから始めて、互いの意見を聞き合う体験を積むようにします。担任は、全体の活動の様子や後述する記録用紙に書かれた記述などを見ながら、聞き合う活動がきちんと成立しているか確認します。相手の意見を聞き合うことができたという成功体験を積み重ねることが重要です。最終的には、誰とでも聞き合うことができる関係づくりをめざします。

【ペア活動の様子】
b 4つのテーマについてペア活動を行わせる。
  話すテーマは基本的に4つ準備します。テーマ1は題材に関わる内容で、「聞く・話す」のコミュニケーションを整えるために考えやすい話しやすいテーマで行います。テーマ2〜テーマ4の内容は話合いの柱1〜柱3と同じ内容で互いに聞き合う活動を行わせます。
題材名「みんなが笑顔で安全な学校生活を送ろう」
テーマ1
テーマ2
テーマ3
テーマ4 
「学校生活や登下校中にはどんな危険があるのだろう」を読んで、あなたはどんなことを感じましたか
校内や校外で事故やケガなどになりそうな、ヒヤッとした経験はありますか(柱1)
1日の中でどんな場面に危険があると思いますか(柱2)
事故を未然に防いで、みんなが笑顔で安全に学校生活を送るためには、どんなことに気を付けるとよいと思いますか (柱3)
【ペア活動における話すテーマ設定の例】
c オープンクエスチョンで相手に質問させる。
 ペア活動では、テーマについて聞き合う時間と聞く話すの役割を決めて活動します。聞く人は話す人の言った内容に対してオープンクエスチョンで聞き返し、意見の記述をより詳しく記録用紙に記入していきます。オープンクエスチョンとは答えの幅が相手に委ねられている聞き方のことで、自分の言葉で自由に返答できるため、相手は自分の考えを話しやすくなります。
 オープンクエスチョンによる聞き返しを利用したペア活動を繰り返していくと、話合い活動の中で出た意見に対して、生徒は「○○ってどういうことですか。」などのように質問に生かすことができるようになります。
1 〜というと?
2 もう少しくわしく教えてください
3 〜って具体的に言うと?
4 例えば?
5 〜ってどんな感じですか?
6 〜ってどんなイメージですか?
7 〜のエピソードを教えてください
8 他には?
【オープンクエスチョンを使った聞き方の例】
d 意見を聞きながら記録用紙に記入させる。
聞く役割のときには、記録用紙に相手が話した内容を記録しながら聞きます。初めのうちは相手の話す速さに書くことが追いつかない場合があります。その時には話した内容のポイントだけを箇条書きでも構いません。活動に慣れてくると次第に話す方もきちんと書き終わるのを待って話すことができるようになります。話した内容のニュアンスの細かい部分まで落とさないように記録することを目指します。
e 話したことや記録用紙に記録された内容を振り返りながら学級会ノートに意見を記入させる。
ペア活動の最後に、相手が記録用紙に書いた自分の発言などを参考にしながら、学級会で発表する意見を考え記入します。そのとき、相手に伝わりやすいようにするにはどう表現したらよいかを考えながら記入するように指導します。
(ウ) 話合いを円滑に進めるために
  計画委員会をつくり、よりよい話合いができるように工夫させる。
  話合いを円滑に進めるためには、計画委員会による話合いのための準備が必要です。生徒が自分の考えた意見を活発に発表させ、全体での意見の共有を図ることができるようにします。
  計画委員会の選考については、希望者によるものや学級委員などを中心に計画委員会を組織することなども考えられます。司会団の経験者は、その後の話合いで積極的に協力する態度など、話合い活動に良い影響が見られるようになります。そのことから、年度当初に1年間の学級会を計画しておき、1年を通して1人1回は必ず計画委員会に参加し、話合いを進める側の体験ができるように配慮することが必要です。
  本研究委員会では、計画委員会の組織として、議長1名、副議長1名、ノート書記1名、黒板書記1〜2名を基本構成として話合いに取り組みました。話合いの中での基本的な役割の例は下記の通りです。
役割
事前活動
話合い活動
議長
○話合いの流れを見通して、柱ごとに発表してほしい意見を考えておく。
○話合いのリハーサルを行っておく。
○賞候補者の選考基準を担任と確認する。
○副議長と協力して議事進行を行う。
○発表者を指名する。
○意見に対する聞き返しを行う。
副議長
○議長と協力して議事進行を行う。
○進行の時間を計る。
○表彰をする生徒を紹介する。
○題材の提案理由を説明する。
ノート書記
○学級会ノートに記入された意見をまとめておく。 ○実際に発表された意見を議事録に記入する。
黒板書記
○学級会ノートに記入された意見を見て、板書計画を考える。(主な意見を書いた短冊を準備する。) ○題材名、話合いのめあて、話合いの柱を黒板に記入する。
○発表された意見を黒板に記入する。
【本研究における計画委員会の役割の例】
      
 学級の実態や、生徒の個性に応じていくつか役割を分担したり、工夫したりすることも考えられます。
  話合いの一週間ほど前から、1〜2回程度、昼休みや放課後などを利用して計画委員会を実施します。年間の話合い活動の中ですべての生徒が1回は計画委員会に参画するようにしたいものです。それにより,教師が数名の経験者を計画委員会に助言できるように促すことで,次第に短い時間で計画委員会を実施できるようになります。
1回目 (昼休み15分程度)
・ 2つの賞を決める。「聞き方がうまいで賞」「声が大きいで賞」
・ 各柱ごとの時間配分を決定する。
・ 黒板に貼る柱や題材を事前に紙に書いておいて貼れるよう準備する。
・ クラス全員の主な意見を事前に書いておいて貼れるよう準備する。
2回目 (昼休み15分程度)
・ 全体を通したリハーサルをする。
【本研究における計画委員会の内容の例】
  話合いの進行に合った黒板板書を工夫させる。
  発表された意見は個人の学級会ノートには記入しないので、発表された意見が全員にしっかり可視化されるように板書させる必要があります。人の話す速さでそのまま黒板に記入しようと思うと板書が追いつかない場合があります。板書が追いつかないと予想される場合には、例えば、事前に意見をチェックして短冊を作らせ、主な意見については意見が書かれた短冊を貼らせるなどの工夫をするよう指導します。

  議長や副議長の働き掛けから意見を深めさせる。
  話合いで意見を共有し、自分に合っためあてを決めるということが話合いの目的です。しかし、肝心の話合いの中で、淡々と議長が当てて発表させ続けているだけでは、意見が共有化されません。そこで、議長や副議長には共有化につながる意見を引き出すために、発表された意見に対して、同じ意見や似ている意見の人はいるか確認させたり、あまり明確でない部分に対して聞き返しの質問したりするよう指導します。そうすることで全体の話合いの流れが分かりやすいものとなり、お互いに意見を共有化しやすくなります。

  生徒同士が話合いの中で聞き返しできるような雰囲気をつくり、意見を深めさせる。
  発言者以外の周囲の生徒が発表された意見に対して聞き返しやあいづちを自然にできるようになると話合いの雰囲気が和み、話合いに一体感が生まれてきます。初めの頃には、個人の意見を引き出すために、学級の実態に応じて議長などから聞き返しやあいづちを意図的に行うように計画委員会で指導します。

  議長団以外の生徒は学級会ノートに発言の記録を書かせない。

話合い活動中に書記以外で記録を取る行動をする大部分の生徒は、発話の記録を見ると話合いの中で書くことだけに集中して一度も発言していないことが多いようです。それぞれの生徒が話合いの中で自分の意見を発言したり、相手の意見を聞いて考えたりすることに集中できるように、話合い活動中に、黒板書記やノート書記以外の生徒は発言の記録を取らないように指導します。


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