話合い活動のよさを生かした 学級活動内容(2)の授業を提案します。

2 研究の実際

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(4)  「話合い活動」の事前、事後等の一連の活動における指導の工夫

  イ 自己を見つめ直し、話合いを充実させる事前の指導の工夫

【小学校】

(ア) 課題意識をもたせるために
   児童に課題意識を明確にもたせることが大切です。『新訂 キーワードで拓く新しい特別活動』 (日本特別活動学会 監修)には次のように記されています。
  事前学習において、課題を明確にし学習活動の目的を意識することにより、実践のプロセスにおいても、活動の価値や重要性について体験的にとらえることができる。
また、『改訂小学校学習指導要領の展開』(成田國英 編)では、
  何でもそうだが、児童が必要性を感じて主体的に取り組まない限りなかなか定着しない。どうしたらよいか、その実態に応じて工夫することが大事である。
と記されています。
  そこで、次のことに取り組みました。
a 題材設定を教師と児童で共に行う

題材設定をする場合、行事や時期に関するものは教師から投げ掛けることがほとんどだと思います。それは、学級活動内容(2)については、〔共通事項〕がアからキまで示されており、その全ての内容を教師が意図的、計画的に進めることとされているからです。しかし、児童の日頃の生活の中から出てくる課題は、教師の課題意識だけでなく、教師と児童の課題意識が合致したところで題材として設定した方が効果的な場合もあると考えました。児童自身が課題意識をしっかりもつことができると話合いでの児童の意見は具体的で内容の深いものとなり実践意欲にも結び付くのではないかと考えました。そこで、本研究では学期に1回程度は、児童と教師で共に題材設定をするという方法をとることにしました。
  教師の進行により次のような手順で行います。

☆ 自分たちの日頃の様子をアンケート等で振り返らせ、課題を出させる。
☆ 出された課題の中から、みんなで話し合って解決した方がよいものをグループで話し合って出し合わせる。
☆ 次回の題材を全員で決定させる。

この流れに沿って、4年生の実践ではアンケートで出てきた課題から3つに絞り、話し合わせる方法をとることにしました。 6年生の実践では付箋紙を使って話し合わせる方法をとることにしました。
 題材設定は、学級の実態に応じた方法で行われるとよいと思いますが、一人一人の考えを大事にし、それぞれが出した意見を基にして題材設定していくことに配慮する必要があります。

 
b 題材に応じた事前指導を行う。
  児童は、友達のできていないところにはよく気付きますが、自分自身のこととなると気付きにくい傾向があります。
  そこで、本時に入る前に自分自身のことを具体的に振り返らせておくことが必要です。以下に4つの手立てを挙げていますが、児童の実態や題材に応じて選択して行います。 
 アンケート調査
題材に関係あることについてアンケートを取ります。
このアンケートは本時でも自分自身を振り返らせて授業を進めるよい材料となります。
アンケートに回答するという行為も、自分のことを振り返らせる手立ての一つとなります。
 
 実態調査
題材に対する実態を自分自身で振り返らせます。
この実態調査をするだけでも意識が高まります。
話合い活動の前と後で、自分の成長を感じさせることができ、実践の継続にも結び付きます。
 
 ビデオ等の利用
 自分たちの実際の様子をビデオなどで客観的に見ることで課題意識を高めることができると考えます。掃除の様子や授業の様子などを取り扱う題材では、あらかじめ記録しておいたビデオや写真を利用することで課題意識をもたせるのに有効に働くと考えられます。
 これは、事前に学級会ノートを書くときや、本時の柱1の前に見せると効果的です。
 道徳の授業との関連
  本時の柱2では、題材に対する価値について話し合います。そこで、題材によっては本時の前に、題材のねらいと関連のある内容項目の道徳の授業を行っておくと児童の考えが深まります。例えば「気持ちのよい言葉遣い」の授業の前に「言葉のまほう」(『3年どうとく』文渓堂)の授業を行います。そこで、つい感情的になって言ってしまう自分を振り返ったり、相手の気持ちを考えた言葉遣いをすることで人間関係がよりよいものになることなどを考えたりします。それが学級活動内容(2)によって実践に結び付くものとなっていきます。
 
 以上4点を挙げましたが、これらの全てを必ず実施するということではありません。題材や学級の実態に応じて、必要と思われるものを実践されるとよいと思います。
c  ペア活動を行う。
   児童は、自分自身を振り返るときに、まず、課題に対してできているかできていないかを考えます。何の手立ても取らなければ柱1の実態を振り返る場面で、「私は掃除を一生懸命することができてます。」「ぼくは相手のことを考えた言葉遣いができていません。」とできているかできていないかの発言だけで終わってしまいます。柱1では
 
・どんなときにできていないのか
・なぜできていないと思うのか
・解決したいという思いはあるのか
  などを具体的に振り返らせなければ、柱3の解決策でも「一生懸命するように頑張る」とか「友達を注意する」といった具体的でないものや人任せのものになってしまいます。そして、自分に合っためあてを自己決定することもできません。
  そこで、それを解決する1つの方法として、教師が学級会ノートにアドバイスや励まし、児童の記述に対する質問などを書き込むことで深く考えさせることができます。しかし、より児童のものとして捉えさせたいという思いと、自分の考えがきちんと友達に伝わるのかということを考え、より自分を深く見つめ相手に伝わるような表現にしていくためには、ペア活動を取り入れることが有効であると考えます。
 

(a) ペア活動のねらい
  次のことをねらってペア活動を取り入れることにしました。
 
具体的な場面を想像して振り返り、意見が言えるようにする。
友達同士で伝え合うことで、より自分たちで考え進めているということを実感させる。
ペアであらかじめ意見を出しておくことで、安心につながり、発言する自信となるようにする。
   
(b) ペア活動の進め方
  @ 「ペア活動のヒント」を掲示する。
 

  A ペア活動をする。
   「ペア活動のヒント」を基にペアで聞き合う活動をする。
 
流れ
児童A
児童B
柱1について 
 





ぼくは、掃除を一生懸命しています。
できていないときもあります。
たくさん遊んで疲れたときです。
だらだらしたり、時間に遅れてきたりします。
※ 学級会ノートに書き加えをする。





いつもできていますか。
どんなときですか。
そんなときはどんな掃除のしかたになるのですか。
それを学級会ノートに書いたらいいと思うよ。 
<交代する>
柱2について 
掃除を一生懸命すると、教室がきれいになるだけじゃなくて、心もきれいになると思うから、掃除を一生懸命することは大切だと思います。
すごいね、本当にそうだね。いい意見だから発表した方がいいと思うよ。(相づちを打つ)
<交代する>
柱3について 




掃除をしていない人を注意する。
みんながちゃんと掃除をするようにです。

そうか。どんなめあてにしよう。
そうか、じゃあ、「時間を守って一生懸命頑張る」にしよう。



どうしてそのめあてにしたんですか。
Aさんもちゃんと掃除をしていないときがあるんだよね。それはそのままでいいのかなあ。
1の柱に、時間に遅れて来るときがあるって言ってなかった?
<交代する>
   
(イ) 話合いを円滑に進めるために

学級会のスタイルを取って授業を行いますので、児童が中心となって会を進めます。会を進める児童をここでは計画委員とします。計画委員は、会を進める役割がほとんどです。しかし、題材や、学級の様態によっては、アンケートをまとめて発表する児童が計画委員に入ったり(例:4年生の実践「気持ちのよい挨拶」)、提案者として計画委員に入ったりすることも考えられます。
  計画委員の役割としては一般的に行われている学級会での役割と同じですが、学級活動内容(2)で行う場合の話合いが円滑に進められるよう留意点を含めて触れておきます。 

事前の指導の中で、計画委員会を通常2回程度行うとよいでしょう。
計画委員会とは
○ 
学級活動(1)の学級会で行っていることと同じような役割です。
メンバーは司会団が中心です。司会団は、司会、進行、黒板記録、ノート記録などで構成されます。それ以外に、題材によってアンケートをまとめて発表する児童などが入ることもあります。その児童は、話し合う題材に特に問題意識をもっている児童や、係活動で題材に応じた係などがある場合はその係が入ることなども考えられます。
第1回計画委員会で行う主なこと(15分程)
 第1回目は、題材が決まってから行います。初めは少し時間が掛かりますが、児童が慣れてくると、15分程で行うことができます。次のようなことをします。
@A


B
C
役割分担(司会、進行、黒板記録、ノート記録など)
提案者の決定

学級活動内容(2)なので、教師から題材を投げ掛けることが多いと思います。その場合は提案理由を教師が言ってもよいと思います。他に、作文などにより、特に課題意識がある児童が提案理由を言うことも考えられます。 
話合いのめあて、題材名、柱などを教師と共に考えます。

原案を仕上げ、学級全員に配付します。
第2回計画委員会で行う主なこと(15分程)
 第2回目は、授業が近付いてきたら行います。授業当日のリハーサルをしますので授業の前日が望ましいと思います。学級活動内容(2)で行う話合い活動は集団決定をしませんので、司会進行が戸惑うことが少ないため、15分程度で行うことができます。
@



司会進行の確認などをします。
学級活動内容(2)は児童がそれぞれの実態や解決策などを発表をしますので、板書が大変です。そこで、学級会ノートを見て前もってどんな意見が出そうなのか確かめておいたり、板書計画を行ったりします。黒板に文字を書くのは児童にとって難しいことです。児童の実態によっては、短冊を用意し、マジックで短冊に書き、それを黒板に貼っていくという方法を取るのもよいと思います。
司会進行のリハーサルをしておくと会がスムーズに進行されます。

A
計画委員会のそれぞれの基本的な役割
役割
事前の活動
本時の話合い活動
留意点
司会









学級会ノートの意見を見て、意見の内容を把握しておく。
予想される意見から、もっと詳しく尋ねたほうがよい意見などについて確認をしておく。
話合いのリハーサルをする。

話合いの全体を進める。
話合いの柱に入ったら、進行を助けたり、計時をしたりする。

学級活動内容(2)は柱が3本で構成されているので、しっかり計時をしていないと、時間が足りなくなることがあるので気を付けさせる
進行
柱1から柱3までの話合いを進める。



意見の理由や具体的な場面の様子を尋ねるなど、話合い活動が深まるような進行に留意させる。
黒板書記の様子を見ながら進めさせる。
ノート書記
原案を書く。


出された意見を記録する。
○○賞を考えながら記録をする。
○○賞については教師と共に決定する。より題材のねらいに沿った意見を選ばせる。
黒板書記
学級会ノートに書かれた意見を見て、板書計画を立てる。意見がたくさん出そうなときは短冊を用意しておく。
意見を黒板に書いたり、あらかじめ用意しておいた短冊を貼ったりする。
学級活動内容(2)の黒板書記はとても忙しいので、児童の実態や発達の段階によっては、教師が板書をしたり手伝ったりすることが考えられる。また、短冊に書いて貼ると黒板に直接書くより手際よく進む。
 

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