話合い活動のよさを生かした学級活動内容(2)の授業を提案します。

2 研究の実際

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(5) 授業実践【学級活動内容(2)】

  本研究が提案する授業モデルを基に中学校で行った実践例を示します。
【中学校第1学年】学級活動内容(2)における授業実践…7月題材

題材

安全な学校生活を送るために

  キ 心身ともに健康で安全な生活態度や習慣の形成
 
  指導案
段階 活 動 過 程



指導
○ 題材決定
1 教師で今回の題材名、柱などを考える。
○ ペア活動
1 「学校生活や登下校中にはどんな危険があるのだろう?」を配布し、日常生活の何げない行動から、重大なけがや事故につながった例について紹介する。

次の4つのテーマについて互いの考えを聞き合わせる。
@ 「学校生活や登下校中にはどんな危険があるのだろう?」を読んで、あなた はどんなことを感じましたか。
A 校内や校外で事故やケガなどになりそうな、ヒヤッとした経験はありますか。
B 1日の中でどんな場面に危険があると思いますか。
C 事故を未然に防いで、みんなが笑顔で安全に学校生活を送るためには、ど んなことに気を付けるとよいと思いますか。
題材に対する自分の意見を学級会ノートに記入させる。
○ 計画委員会(司会団、教師などで編成されるもの)
1 ペア活動で出た意見を基に実態を分析させ、話合いの流れを把握させる。
提案理由を検討させるとともに、本時の活動計画を作成させる。




題 材 みんなが笑顔で安全な学校生活を送ろう。
提案理由  みなさんは安心して安全に学校生活を送っていますか。1学期も終わりに近づき、1−○のみんなは中学校生活にもずいぶん慣れてきたのではないでしょうか。最近、気のゆるみから身近な生活の場面で事故を起こしそうになったり、実際にけがをしたりしている人もいるようです。どうしたら日常生活の事故やケガを防げるかをみんなで考え、みんなが笑顔で安全な学校生活を送ることができるとよいと思い、この題材を提案します。
話合いのめあて ・互いの意見を聞き質問するなどして、話合いを深めるための働きかけをしよう。
話合いの流れ
1 はじめの言葉
2 司会グループの紹介
3 題材と提案理由、話合いのめあての確かめ
【提案理由を説明】
【黒板書記の紹介】
4 話合い
  柱1 「校内や校外で事故やケガなどになりそうな、ヒヤッとした経験はありますか。
先生の話
 
今日は、皆さんが安全に、安心して学校生活を送れるように話し合ってもらおうと思います。まず柱1についてです。この図を見てください。これはハインリッヒの法則と呼ばれるものを図で表したものです。ハインリッヒさんは5000件の工場での事故について調べました。


【ハインリッヒの法則の図】

↑詳しくはこちらをクリック

 工場で重大な事故が起こったとき、事故が起こる前にそれよりも軽いケガで済んだ事故や、ヒヤリ・ハットという、事故を起こしそうになった経験がどのくらいおこっているのかを調査しました。
 すると、「重傷」以上の事故が1件あったら、その前には、29件の「軽傷」を伴う事故が起こり、300件もの「ヒヤリ・ハット」した経験をした人がいたということが分かりました。これをハインリッヒの法則といいます。

【柱1教師の話】
  この話を聞いて皆さんはどう思いますか、学校で重大な事故が起こるときにも、それまでに多くのケガがあり、それよりたくさんのヒヤリ、ハットした体験をみんながしているという状況は工場と同じではないかと先生は考えています。
 まず、 柱1では日頃の生活で、ヒヤリ・ハットとした経験を話してもらいたいと思っています。みなさんも ヒヤリとしたけどケガしなかったからよかったではなく、もっと大きなケガにつながるかもしれないという意識をもって体験を話してほしいと思います。

【柱1教師の話】
 
主な生徒の意見
・窓に指を挟んだ経験があります。
・○○さんに似て窓に指を挟んで爪が割れました。
・小学3年生の時にふざけて自転車をとばしていたら、左ひじを骨折しました。
・塗れた坂道でブレーキをかけていたら滑って止まりませんでした。
・自転車でよそ見をしていたら、小学生とぶつかりそうになりました
・曲がり角で人とぶつかりそうになった経験があります。
・丸太を跳ぼうとしたら板があって、足を取られてしまいました。
・(質問)どうして丸太を跳ぼうとしたのですか。
・遊んでいてです。
・足をバックに引っ掛けて、骨折しました。
・(質問)○○さんに質問です。どのようにしてバックに足が引っ掛かったのですか。
・走っていて跳び越えようとして、高さが合わずに足を引っ掛け、腕から落ちて骨折しました。
・雨の日にろう下を走っていたら、壁に頭をぶつけそうになりました。
・高いところからジャンプして足をけがしました。
・ステージからジャンプして、落ちて頭を打ちました。
・小学校の時自転車をとばして車にぶつかりそうになりました。
・自転車のとばしすぎで転倒しました。
・(質問)自転車をとばしすぎて転んだと言いましたが、どのように転んだのですか。
・サドルから落ちて、そのまま足を引きずってガーっとすべっていきました。

【挙手して発表する。】

【発表の様子】

【板書は二人で協力して】
   
  柱2 「1日の中でどんな場面に危険があると思いますか。
先生の話
 ヒヤッとしたというよりも実際にケガをしてしまいましたという話は多かったように思います。似たような経験が多かったと思います。自転車とか、スピードの出しすぎとか、雨の日のこととかあったようです。
  さっきみなさんに紹介したハインリッヒの法則です。これは簡単に言うと、ヒヤッとしたことがあるとそのうち大きな事故につながるんだということだと思います。ですから、実際に工場では、重大事故の防止のために、事故や災害の発生が予測されたヒヤリ・ハットの段階で対処してそれを減らしていくことが必要であるされています。  

【柱2の教師の話】
 柱2では、みなさんに学校生活の一日の中でどんな場面に危険があるかを考えてほしいと思います。日常生活の中で、そんな場面に危険があるのかを予測することは、重大な事故を減らすためにもとても大切なことです。実際にケガがあったわけではないけど、振り返って考えてみるとこういう場面は危ないのではないかということも意見を出してほしいと思います。
【柱2の教師の話】
 
主な生徒の意見
・登校中に危険があると思います。
・自転車での運転中に危険があると思います。
・(質問)○○さんに質問です。登校中に危険があると言いましたがどんな危険があるのですか。
・信号のない交差点などが特に危ないと思います。
・部活動で準備運動をしない。
・(質問)もう一度言ってください。
・部活動で準備運動をしないで活動すると危ないと思います。
・ふざけて部活をしているときも危ないと思います。
・踏切が危ないと思います。
・雨の日の教室が危ないと思います。
・休み時間の教室や廊下が危ないと思います。
・教室や廊下でのおしゃべりが危ないです。
・部活帰りの学校前の橋が危ないと思います。
・(質問)○○さんに質問です。橋にはどういう危険があるのですか。
・部活帰りは人がたくさん集まって、広がって歩いているので危ないです。
・朝早く登校しているときにカーブミラーがくもって見えなくなっているときです。
・理科の実験中、まじめにしないとケガをすることがあると思います。
・調理実習などの時間には火を使うので危ないと思います。
・休み時間にふざけていると危ないと思います。
・昼休みに遊んでいるときに危険があると思います。
・体育の授業でとびばこやマット運動をするときだと思います。
・信号のない横断歩道は危ないと思います。
・下校中に横断歩道があるのに、横断歩道を通らずに道路を横断するのは危ないと思います。
・教室で騒いでいるときにケガなどすると思います。

【発表の様子】

【黒板書記への助言】

【発表の様子】

  柱3 「事故を未然に防いで、みんなが笑顔で安全に学校生活を送るためには、どんなことに気を付けるとよ
  いと思いますか。

先生の話
 柱1でこれまでの体験を話していくれましたが、今だから気楽に話せる部分もあるとか思いますが、実際にケガやヒヤッとしたときには、ドキドキしたり、痛かったり、苦しかったり、悲しかったりしたのではないかと思います。また、ご家庭の人たちもみなさんのことをとても心配したと思います。事故やケガが起こらすに、みんなが笑顔で安全に、一日一日をケガなく過ごせたことは当たり前のことかも知れないけれども、とても大切なことだなあと思います。

【柱3の教師の話】
 柱2で、みんなのこれまでの経験を踏まえて、こんなところが危ないのではないかという意見を出してもらいました。確かにそうだなと思う意見もたくさんありました。柱3では、解決策として、みなさんが笑顔で安全に学校生活を送るためにめあてとしたらよいものについて、アイディアを教えてください。実際に生活しているみなさんが一番実感できるのではないでしょうか。みんなが安全に生活を過ごすためにはどうしたらいいか、学級会ノートにたくさん意見を書いてくれていると思いますので、たくさん意見を発表してください。

【柱3の教師の話】
 

【挙手して発言する】

【発表の様子】

【発表の様子】
  主な生徒の意見
・廊下を走らないようにするといいと思います。
・危ない場所に近づかないとよいと思います。
・危ない場所とは具体的にはどんなところですか。
・通学路で工事現場のあるところ等だと思います。
・学校の規則を守って生活するとよいと思います。
・周りに気を配るようにするとよいと思います。
・ふざけないとはどんなことをふざけないのですか。
・○○さんと似ていてふざけて暴力を振るわない等です。
・外で歩きながらPSPやDS、携帯をいじらないといよいと思います。
・どんなに注意してもケガはあるので、事前に応急処置のやり方を覚えておくとよいと思います。
・横並びになって歩かないです。
・どういうときに横並びで歩いたら危ないんですか。
・車の往来が激しいところです。
・授業中にふざけないほうがよいと思います。
・○○さんと似ていますが、自転車の登校の時にも、狭い道で横並びしないほうがいいと思います
・休み時間や授業中などにふざけてものを投げないようにした方がいいと思います。
・登下校中に気をつけると言いましたがどういうことに気をつけるといいと思いますか。
・曲がり角などで車が来ないかどうかを気をつけて曲がるとよいと思います。
・ヘルメットをきちんとかぶることだと思います。
・自転車のスピードのだしすぎや片手運転はしない方がいいと思います。

5 話合いの確認
 柱1〜柱3で出た主な意見の確認をノート書記が発表します。

【ノート書記による確認】
 
6 話合いの気付き・自分のめあて
 みんなが、自分らしさやその人らしさに気付いたり、それを大事にするために、自分が取り組む活動をめあてに書きましょう。

【めあてを配布】

【めあての記入】
 
7 自分の意見を上手にまとめられたで賞の発表
 自分の意見を上手にまとめ、きちんと自分の意見が伝わるように発表していた生徒を司会団が選び、表彰します。

【表彰の様子】

【表彰の様子】

8 先生の話
   今日の話合いでは積極的な意見がたくさん出ました。お互いに分からないところを質問することで、意見の深まりも出てきたようです。そんな質問もたくさん出ていました。話合いの回数を重ねる毎に、よりよい話合いになっていくことを先生はうれしく思います。
  また、柱3では生活の中の危険を小さくするための解決策がたくさん意見として出ました。ペア活動の初めに、先生が「これまでの学校生活でケガしたことある人は手を挙げてください。」と言ったら、ほとんどの人が手が挙がりました。解決策をみると自分はそんなことしないとか当たり前だと感じる人もいるかもしれません。自分は大丈夫ではなく、身近な危険に敏感になって、自分にあっためあてを心がけて生活を送ってほしいと思います。みんなが笑顔で安全に学校生活が送れるように頑張ってほしいと思います。
9 終わりの言葉



指導
○めあての確認
【ウォールポケットを利用した
めあての掲示例】
朝の会で自分の実践するめあてを確認させる。めあてを実践する場面を意識させる。実践を振り返って、めあてをよりよいものに変更させることも考えられる。
○実践活動
めあてを意識させながら生活させる。また、他の生徒の実践の様子にも注意を向けさせる。
○振り返り活動
帰りの会でめあてに対する自分の実践を振り返らせ、振り返りカードに向上した点や課題について記述させる。
 生徒は話合い活動を経て自分のめあてを設定し、実践に取り組んだ後、最後に振り返りを行いました。振り返りカードの記録や担任の生活記録等で、次のような生徒の態度や意識の変容が見られました。
  生徒の様子から見る意識の変化
  ・大きく雰囲気が変わったということはないが、学級会を開いたあとから、クラスが落ち着きがなくなる(ちょっと騒がしくなるなど)と注意の声を出してくれる生徒が増えた。
・落ち着きのない生徒は騒いでしまうときがあるが、振り返りの記述を見ると騒いでいるという自覚はあるようだ。以前よりクラス全体が安全な生活について意識するようになったから、落ち着きのない生徒も多少は意識するようにはなったのだと思う。
  ○教師から見る、話合い活動を取り入れた指導のよさ
  ・自分の考えを他人に伝え、共有するということができる。教師主導の授業で意見を発表するときは全体に向けてというより教師に向けてという形になりがちだが、学級会(話合い活動)では「友だちに伝わるように」という声の大きさや表現の仕方などの発表の工夫がだんだんできるようになってきた。
・自分以外の人の考えに関心がもてるようになる。他の人の意見を聞いて自分の考えとの共通点や相違点を考えて発表することができるようになった。
・自分たちで決定するということが自信につながっている。
・話合いの中で議長の他にも意見発表やつぶやきなどで雰囲気をつくり、話合いをリードするような生徒が出てくることで、話合いがより深まった。


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