話合い活動のよさを生かした学級活動内容(2)の授業を提案します。

2 研究の実際

サイトマップ トップページ

(5) 授業実践【学級活動内容(2)】

  本研究が提案する授業モデルを基に中学校で行った実践例を示します。
【中学校第1学年】学級活動内容(2)における授業実践…10月題材

題材名

ボランティアから生まれる新しい自分

  カ ボランティア活動の意義の理解と参加
 
  指導案
段階 活 動 過 程



指導
○ 題材決定
1 教師で今回の題材名、柱などを考える。
○ ペア活動
1 次の4つのテーマについて互いの考えを聞き合わせる。
@  ボランティアと聞いて、あなたが思い浮かべることは?
A  学校や社会で行われているボランティアには、どんなものがあるだろう?
B  中学生がボランティア活動に取り組もうとすることには、どんなよさがあるだろう?
C  みんなを今よりもちょっとだけ幸せにするために、あなたはどんなボランティアをしたらよいと思う?
題材に対する自分の意見を学級会ノートに記入させる。
○ 計画委員会(司会団、教師などで編成されるもの)
1 ペア活動で出た意見を基に実態を分析させ、話合いの流れを把握させる。
提案理由を検討させるとともに、本時の活動計画を作成させる。




題 材 ボランティアから生まれる新しい自分を見付けよう。
提案理由  最近、テレビなどでよく震災や台風などで困っている人たちを助ける姿が、報道されていました。ボランティアをして、困っている人を助けてお互いが笑顔になれることは気持ちのよいことだと思います。災害に限らず、身の回りのこと、小さなことにも目を向け、笑顔があふれる雰囲気にしたいと思い、この題材を設定しました。
話合いのめあて ・人の意見に対する広がりや付け加えなどをした意見を発表しよう。
話合いの流れ
1 はじめの言葉
2 司会グループの紹介
3 題材と提案理由、話合いのめあての確かめ
【議長のあいさつ】
【提案理由の説明】
4 話合い
  柱1 「学校や社会で行われているボランティアには、どんなものがあるだろう?」
先生の話
 先ほど副議長さんが提案理由を言ってくれました。私もボランティアについてインターネットで検索をしてみました。そしたら、ボランティアにはたくさんの種類があって、団体も色々な団体があることがわかりました。その中から、3枚だけですが写真をプリントアウトしてきました。 これは何でしょう。(生徒:登下校するときに…)

【ボランティアを紹介】
  こういう活動が自分たちの身の周りにないですか。 私も通勤しながら、こんなことをしてくださっている方を見ます。 小学生でも危ないから、横断歩道のあたりに立ってくださっておられるのを見ます。これもボランティア活動の一つです。
(以下3枚の写真を示し生徒に身近なボランティア活動を紹介しました。)

【ボランティアを紹介】
  今、3枚の写真を紹介しました。提案理由の中には何と言われていましたか。
(生徒:笑顔があふれる…)
そう、笑顔があふれるとありました。ボランティア活動をすることでみんな笑顔になりますよね。今日は事前の活動で話したたくさんの意見を発表してほしいと思います。題材名に新しい自分とありますので、話合いを通して、今までと違う自分になれたらいいなと思います。

【ボランティアを紹介】
 
主な生徒の意見
・赤い羽根募金、青い羽根募金、黄色い羽根募金
・駅前などの地域の清掃活動
・プルタブ集め
・ベルマーク収集
・ペットボトルキャップ集め
・小学生の登下校の黄色い旗をもった交通当番
・山に木を植える林活動
・ドラッグストアのレジにおいてある盲導犬を買うための募金


【挙手して発言する】

【そして発表する】

【板書は二人で協力して】
   
  柱2 「中学生がボランティア活動に取り組もうとすることには、どんなよさがあるだろう?」
先生の話
 ボランティアには三つポイントがあります。自分からすることを何と言いますか。自発性ですね。自主的に自分からすることがポイントの一つです。それから二つめは無償性です。見返りを求めないこと。これをするからいくらかくださいとかそういうのではありません。そして、最後に利他性です。自分の利益のためではなく人のことを思いやるというのがボランティアのポイントです。
 一般的にこのように言われています。ボランティアの元々の語源は志願者という意味があってそこからボランティアというようになったようです。 この三つのポイントを押さえながら、柱2の話合いをしてほしいと思います。中学生がと書いてあるように、自分たちが考えるボランティアということで意見を言ってほしいと思います。  
 
主な生徒の意見
・ゴミ拾いを中学生がしたら、地域の小学生や大人が自分もしようと思うと思います。
・ボランティアをしたら町の活性化になると思います。
・○さんの意見に似ていて、中学校がしたら小学校もするし、中学校の評判があがったら、他の中学校もまねとかして、どんどん広がると思います。
・○さんの意見と似ていて、小学生は中学生がしているからしてみようと思うし、大人たちは私たちよりも年下の子たちが頑張っているから自分たちも頑張らないといけないような感じになると思います。
・中学生がいろいろボランティアをすると、町のいい噂が全国とかに広がって、観光客とか町を訪れる人が増えて、町が盛り上がると思います。
・自分の気分もよくなるし、それを見ている周りの人も気分がよくなると思います。
・ぼくは、中学生が自分の時間を削ってまでボランティアに取り組む姿がかっこいいと思います。
・ボランティアをすることで自分の気分がよくなると、人に優しくなれると思います。
・ボランティアとかゴミ拾いとかした後に達成感があると思います。
・人に優しくなれるといった人と同じで、自分も募金とかしていたら、人に優しくなれると思います。

【意見発表の様子】
【発表者を見て聞く】
【意見発表の様子】

  柱3 「みんなを今よりもちょっとだけ幸せにするために、あなたはどんなボランティアをしたらよいと思う?」
先生の話
   柱2は時間を少し長く時間をもらってたくさんの意見が出ました。 みんなが少しでも笑顔になれたらいいなという意見が出ています。 人にやさしくなれるとか、そういう姿がかっこいいとかも出ましたよね。 明るくなれるもありました。ボランティアをすることで、自分にも周りにもよい影響を与えられるということだと思います。 次に、柱3では、みんなを今よりもちょっとだけ幸せにするためにどんなボランティアができるかなということを話し合ってもらいたいと思います。

【生徒会が行う活動の紹介】

先週、生徒朝会で○○君からこれ(右写真)の説明がありましたね。 朝に生徒会を中心に掃除に取り組んでいるのを皆さんは知っていますか。この前の生徒朝会で、みなさんも一緒にやってみましょうという呼びかけがあったと思います。去年の卒業生の中には毎日3年間掃除に取り組んだ人もいました。 学校の玄関だから人が一番通るところです。だから、一番きれいにしようということで、朝掃除をしてくれていました。

これがみんなをちょっとだけ幸せにするボランティアなのだと思います。このようなちょっとしたことなのだけれども、自分がこれに取り組んだら誰か喜んでくれる人がいるんじゃないかなあとか、誰かをちょっと幸せにできるんじゃないかなあという 、実際に自分ができそうなボランティアを考えてほしいなあと思います。

 
 

【意見発表の様子】
【意見発表の様子】
【意見発表の様子】
主な生徒の意見
・募金活動をする。
・人が持っている重そうな荷物を持ってやったりするとかどうですか。
・ゴミ拾いやトイレの水回りの掃除をやったらいいと思います。
・保育園を訪問したりとかをしたいと思います。
・植林活動をすると環境にいいんじゃないかと思います。
・○○さんと同じで、ゴミ拾いとかしたら、町がきれいになるからいいんじゃないかと思います。
・貧しい国の人たちのために、食べ物を送る。
・募金活動は募金活動だけど、東北に募金活動をするとよいと思います。
・東北に募金活動とかできるのですか。
・できると思います。
・地域の人のお世話をするといいと思います。
・ベルマーク集めをしたらいいと思います。
・ベルマーク集めとか、それはボールとかもらえてみんなで遊べるから、幸せになるからいいと思います。
・「貧しい人たちのために食糧を送る。」は困っている人たちのためにしようと思うことはいいことなんじゃないかと思いました。
・地域の清掃は町がきれいになって地域の人が喜ぶと思います。
・小さなことでもいいんでしょ。横断歩道で人が来ていたら、ボタンを押してあげる。
・初めて○○町に来た人に、道をたずねられたら、「それはここです。」みたいに教えてあげる。
・募金で集めたお金で、お年寄りや、体の不自由な人に車椅子を送ったらいいと思います。
・○○くんと同じ、カンボジアに送る募金をしたいと思います。
・○○君と同じで、貧しい人たちのために、食糧を送るといいと思いました。
・「貧しい人たちのために、食糧を送る。」は明日からできるボランティアになるのですか。
・それはカンボジアに送る募金も同じだと思います。
・それはできるんですか。
・だからお金を送って、必要なものを買ってくださいみたいな感じだと思います。
・それも明日からできるの。
  先生の話
 活動に取り組もうという意見自体はとてもよいことだと思います。それが明日から身の回りでできるんですかという意見も質問として出ています。食料にしても募金にしても、みんなに募ってまとめて赤十字などにお願いすればできることかもしれません。でも、直接持っていくというのはなかなか難しいことですよね。いろいろな意見が出ています。明日から身の回りでできることとなかなか難しいことが出ています。これらの意見を参考にしながら、明日からできることや実際にやってみようということをこの後のめあてではみなさんに考えてもらいたいと思います。

5 話合いの確認
 柱1〜柱3で出た主な意見の確認をノート書記が発表します。

【ノート書記による確認】
 
6 話合いの気付き・自分のめあて
 みんなを今よりもちょっとだけ幸せにするために、自分が取り組む活動をめあてに書きましょう。
 
7 自分の意見を上手にまとめられたで賞の発表
 人の意見に対する広がりや付け加えなどをした意見を発表した生徒を司会団が選び、表彰します。

【受賞者を決定する】

【メダルをもらう様子】

8 先生の話
   自分から手を挙げて意見を言う人や指名されてから意見を言う人がたくさんいました。今日の話合いの中で最もよかったことは、意見を発表している人の話を皆さんたち一人一人がしっかり聞いていると感じたことです。意見を言うことが大切だと思っている人は多いと思うのですが、先生は、相手がどんな考えをもっているだろうかということをしっかり聞くことの方がより大切なのではないかと思います。今日の話合いのめあては「聞いた意見を深める意見を発表しよう」ということでした。しっかり聞き合って意見を言う、そういう場面が何度も見られたと思うのでよかったと思います。それ以外にも、「今の意見はいいよ!」とか「それを言いたかったんだよ」という温まる言葉掛けも出ていました。これからもそういう言葉掛けが増えてほしいと思います。
 今日みなさんが決めためあては誰かを今よりもちょっとだけ幸せにする、笑顔にするためのめあてだと思います。ですから、みなさんがきちんと実践して周りを明るくしてほしいと思います。そして、そのめあてを実践できる自分を、自分でほめたいと思える人になってほしいと思います。
9 終わりの言葉



指導
○めあての確認
前日の帰りの会で、自分の実践するめあてを確認させ、めあてを実践する場面を意識させる。自分の実践を振り返って、めあてをよりよいものに変更させることも考えられる。
○実践活動
めあてを意識させながら生活させる。また、他の生徒の実践の様子にも注意を向けさせる。
○振り返り活動
帰りの会でめあてに対する自分の実践を振り返らせ、振り返りノートに向上した点や課題について記述させる。
 生徒は話合い活動を経て自分のめあてを設定し、実践に取り組んだ後、最後に振り返りを行いました。振り返りカードの記録や担任の生活記録等で、次のような生徒の態度や意識の変容が見られました。
  生徒の様子から見る意識の変化
  ・周りの友だちの様子を気に掛けたり、相手に喜んでもらおうとして、ちょっとしたボランティアを実践してみようとする生徒が多く見られた。
・相手に喜んでもらうことで、自分も笑顔になり、また次の実践に取り組もうという意欲を高めた生徒もいた。
・実践の途中の帰りの会でお互いの振り返りを伝え合うことや、めあてを掲示しているところに色画用紙を切って貼ることで、振り返りを全体で共有したときには学級の中に温かい雰囲気が感じ取られた。
  ○ 教師から見る、話合い活動を取り入れた指導のよさ
  ・話合いの中では賛成意見や質問なども多く出され、お互いの意見を認め合おうとしたり、じっくり聞こうとしたりする様子が見られた。
・意見を言い合うためには自分の考えをもつことが大切である。オープンクエスチョンをして互いに意見を聞き合うことで自分の考えを話し合う前に明確化してもらっている。特に、ワークシートに自分の意見を一人で記述するのが苦手な生徒でも、聞き出してもらうことで学級会ノートに書かれた意見が自分のものとしてきちんとした形になっている。聞き出した相手も意見が発表できる形になっているのを知っているので、発表の場面では意見がないので言えないという状態にはならない。
・題材や柱に対して特に意見を持っていないという生徒でも、相手の意見を聞く場面からそれを参考にして自分の意見を考えることができる。
・欲を言えばこの活動を通してオープンクエスチョンに慣れ、自分自身に対して聞き返すことで、自分でできるようになるとよいと思う。しかしそれにはこのような活動を通して様々な人の意見を聞きながら自分について自問自答するような経験を積まなければならないと思う。

Copyright(C) 2012 SAGA Prefectural Education Center. All Rights Reserved.