学校におけるソーシャルスキル・トレーニングに関する活動プログラムを提案します!

2 研究の実際

(1) ソーシャルスキル・トレーニング

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ア 学校教育におけるソーシャルスキル・トレーニング
    ソーシャルスキル・トレーニングは、1980年代にアメリカの精神科医リバーマンらによって、行動療法の側面を取り入れ、医療の分野で精神疾患のある患者のために開発されたものです。今日では、医療機関や社会復帰施設、作業所、司法・更正分野や学校教育現場など、様々な領域で、個人に対する効果的な援助技法として、研究や取り組みがなされています。
  学校教育現場においては、不登校やいじめなどの問題の未然防止や、不適応感をもつ子どもの支援を目的として、個人に対する取り組みだけではなく、集団に対する取り組みも行われています。ソーシャルスキル・トレーニングを、学級などの集団に対して行うことによって、それぞれの児童生徒がもつ優れた点をモデルとして見ることができ、児童生徒は互いに学び合うことができます。手本となるモデルが身近にいることで、児童生徒はスキルの獲得をスムーズに行うことができると言われています。学校教育現場でも多くの研究がなされていますが、ソーシャルスキルについて、小林・相川(1999)は「良好な人間関係をつくり保つための知識と具体的な技術やコツ」、河村(2007)は「対人関係を営む知識と技術」、相川・佐藤(2006)は「対人関係を円滑に運ぶための知識とそれに裏打ちされた具体的な技術やコツ」と定義しています。
  学校での集団に対する取り組みについては、河村(2007)が、集団を段階的に育成するため、ソーシャルスキル・トレーニングを日常生活の全ての場面に取り入れて、「配慮のスキル」「かかわりのスキル」を提唱しています。また、 小林・相川(1999)は、教室での活動を通してソーシャルスキルを教えるために「12の基本スキル」を提唱しています。「12の基本スキル」は、子どもたちにとって基本的かつ重要なもの、教室を中心に集団指導で教えられるもの、1単位時間から取り上げることができるものという基準で選択されたものです。さらに、小林(2005)は、「12の基本スキル」を〈基本的なかかわりスキル〉、〈仲間関係発展・共感的スキル〉、〈主張行動スキル〉、〈問題解決技法〉の4種類に分類して提唱しています。
  本研究では、ソーシャルスキルを「対人関係を円滑にするための知識と技術」と定義し、学校教育の限られた時間の中で、集団で身に付けられ、1単位時間でも取り上げることができるという視点から、小林(2005)が提唱している「4種類12の基本スキル」を基に研究を進めることとしました。 小学校では、「12の基本スキル」の全てを獲得させることを目標とします。また、中・高等学校ではそれまでに獲得したスキルを踏まえて、「12の基本スキル」を高めることを目標とします。
   
イ 学級におけるソーシャルスキル・トレーニング
    学級でソーシャルスキル・トレーニングを行い、学級内の多くの児童生徒にスキルを獲得させるためには、学級内に優れたモデルとなり得る児童生徒がいることと、成功体験を繰り返すことが必要です。多くの児童生徒が獲得していないスキルのトレーニングに取り組むと、モデルとなる児童生徒が少ないため、練習するときに失敗することが多くなり、スキルの獲得が難しくなります。そこで、事前に観察法や質問紙法などを用いて学級のスキルの獲得状況に関する実態を把握し、学級の実態に合ったスキルを選択することが重要になります。
  学級で比較的多くの児童生徒が獲得しているスキルのトレーニングを取り入れることによって、児童生徒は成功体験を重ね、対人関係を円滑にしようとする意識が高まります。それにより、授業で取り上げたスキル以外の関連するスキルや、実態を把握した際に獲得していなかったスキルも向上すると考えます。
 
「獲得状況の低いスキルの変化」についてはこちら

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