学校におけるソーシャルスキル・トレーニングに関する活動プログラム提案します!

1 研究の概要

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(1) 研究テーマ

  よりよい人間関係を築く力を育成する支援の在り方
ソーシャルスキル・トレーニングに関する活動プログラムの開発−
   

(2) テーマ設定の趣旨

<子どもの現状>
     今日、少子化や核家族化などにより、子どもたちは、これまで家庭や地域の中で自然に習得してきた人との関わり方や社会のルールなどを身に付けることができにくくなっています。また、コンピュータゲームなどの遊びが中心となっている現代では、遊びが集団から個人へと変化し、友達と関わって遊ぶ機会が少なくなってきています。このような社会の変化の中で、コミュニケーション能力や自己肯定感が低下し、人間関係をうまく築くことができない子どもたちが増えています。コミュニケーション能力や自己肯定感の低下は、不登校やいじめなどの問題とも関連しています。このことは、小林・相川(1999)など多くの研究でも指摘されています。
   文部科学省は、不登校児童生徒とは、何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因により、登校しないあるいはしたくてもできない状況にあるために年間30日以上欠席した者のうち、病気や経済的な理由による者を除いたものと定義しています。同省の調査によると、全国の国公私立小・中・高等学校の不登校児童生徒数は、平成20年度は18万人、平成21年度は17万4千人に上っています。また、佐賀県内の国公私立小・中・高等学校の不登校児童生徒数は、平成20年度には1400人、平成21年度には1250人をそれぞれ超え、平成19年度と比較すれば減少していますが、依然として不登校の状態にある児童生徒が存在します。また、不登校になったきっかけの一つとして、友人や教職員との関係をめぐる問題が挙げられ、人間関係に悩んでいる子どもたちの姿がうかがえます。
<ソーシャルスキル・トレーニングの必要性>
     文部科学省の「少年の問題行動等に関する調査研究協力者会議」(平成13年4月報告)では、児童生徒の問題行動の背景や要因の一つに、社会性や対人関係能力が十分に身に付いていないことが指摘されており、具体的な対応方策として、児童生徒の社会性を育む教育のためのプログラムを開発し、提供することの必要性が述べられています。また、河村(2007)は、「対人関係の体験学習が不足している現代の子どもたちに対しては、学校教育の中でソーシャルスキルを計画的に教育していくことが必要」と述べています。さらに、相川・佐藤(2006)は、青年期以降は、それまでに学んできたスキルを洗練させる時期であると同時に、大人になるにつれて必要となってくるような高度なソーシャルスキルの学習が重視されると指摘しています。
<研究のねらい>
     小・中・高等学校において、児童生徒のよりよい人間関係を築く力を育成するために、ソーシャルスキル(対人関係を円滑にするための知識と技術)を身に付けさせることが大切であると考えます。そのためには、学校教育の中で発達の段階に応じて計画的に実践できるような活動プログラムを作ることが必要であると考えました。活動プログラムとは、子どもたちがソーシャルスキルを学ぶための授業だけではなく、授業前後の取り組みまで含めたものと考えます。
   本研究では、子どもたちの発達の段階に応じたソーシャルスキル・トレーニングに関する活動プログラムの開発に取り組むことにより、コミュニケーション能力や自己肯定感を高める方法を具体的に示し、よりよい人間関係を築く力を育成する支援の在り方を明らかにすることができると考えます。
 

(3) 研究の目標

     小・中・高等学校において、児童生徒のソーシャルスキルに関する実態を把握し、発達の段階に応じたソーシャルスキル・トレーニングに関する活動プログラムを開発することにより、よりよい人間関係を築く力を育成する支援の在り方を探る。
 

(4) 研究方法






   先行研究や各種文献の理論研究を基に、佐賀県内の小・中・高等学校における児童生徒のソーシャルスキルに関する実態を把握するためのアンケート調査を行う。
   実施したアンケート調査を小・中・高等学校別に集計し、結果の分析を行う。その分析結果を基に、実態や発達の段階に応じたソーシャルスキル・トレーニングに関する活動プログラムを開発する。
   作成したソーシャルスキル・トレーニングに関する活動プログラムを小・中・高等学校で実践し、検証する。
 

(5) 研究内容









  佐賀県内の 小・中・高等学校におけるソーシャルスキルに関する実態を把握するためのアンケート調査及び分析
   実施したアンケート調査は、小・中・高等学校別に集計し、結果を分析する。調査対象は、県内から抽出した学校の児童生徒及び教職員とし、質問紙法により実施する。
〈児童生徒を対象にしたアンケート調査〉
 ・ 児童生徒のソーシャルスキルの獲得状況の把握
〈教職員を対象にしたアンケート調査〉
  ・ 児童生徒に必要と考えられるソーシャルスキルの把握
   よりよい人間関係を築く力を育成するための活動プログラムの開発
〈第1年次〉
  ・ アンケート調査の分析結果から得られた児童生徒の実態と、小林・相川(1999)が提示した基本スキルを基に、
  発達の段階に応じたソーシャルスキル・トレーニングに関する活動プログラムのモデルを作成する。
〈第2年次〉
 ・ アンケート調査の分析結果から得られた児童生徒の実態を基に、発達の段階に応じたソーシャルスキル・トレ
  ーニングに関する活動プログラムを作成する。
 ・作成したソーシャルスキル・トレーニングに関する活動プログラムを、佐賀県内の小・中・高等学校において実践
  し、児童生徒のよりよい人間関係を築く力の変容から、活動プログラムの有効性を探る。

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