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@ 授業モデル |
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数学的活動を取り入れた授業モデルを考案し、提案しました。1時間の授業を5つの段階(つかむ、見通す、練り合う、深める、まとめる)に分け、その中に、本研究において考える数学的活動を位置付け、数学的活動のねらいと指導のポイントを示しました。 |
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ア〜カの数学的活動は、基礎的・基本的な知識・技能の習得を図る学習と数学的な思考力・判断力・表現力をはぐくむ学習のどちらにもかかわりのある活動です。本研究では、特に、図中のア、カ、イ、ウの数学的活動を取り入れた授業を行うことで、基礎的・基本的な知識・技能の習得を図る学習ができると考えました。また、イ、ウ、エ、オの数学的活動を取り入れた授業を行うことで、数学的な思考力・判断力・表現力をはぐくむ学習ができると考えました。(詳細はCを参照)
今回の授業モデルでは、ア〜カの数学的活動を内容に応じて取り入れることで、基礎的・基本的な知識・技能の習得を図り、数学的な思考力・判断力・表現力をはぐくむ学習を行うことができるようにしました。 |
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A 数学的活動を取り入れた授業展開案 |
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本研究において考える数学的活動を取り入れた授業モデルを基に、第2学年のすべての内容で授業展開案を作成しました。教科書(啓林館)に沿った授業展開案を作成していますので、日々の授業の中でそのまま利用することができるようにしています。また、これらの展開案はそれぞれの学校の生徒の実態に合わせて変更することも可能です。
また、第2学年のすべての内容で作成しているので、数学的活動を取り入れた授業を実践する際にも、その参考とすることができるようになっています。
(単元一覧から小単元をクリックすると、授業展開案が表示されます。) |
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B 数学的活動を取り入れた詳細授業展開案(指導案) |
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授業展開案を基に、「B 図形」「C 関数」「D 資料の活用」の領域及び「課題学習」の内容で、使用するワークシートを付けた詳細授業展開案を全15時間分作成しました。詳細授業展開案とは、授業展開における生徒の活動や教師の支援を詳細に示したもので、Webページのそれぞれの授業展開案からPDF化した詳細授業展開案へのリンクを設定しています。
また、授業展開案だけでなく生徒の活動の様子等を見ることができるように動画もリンクしていますので、数学的活動を取り入れた授業の実際がどのようなものであるかをイメージすることができます。
(授業展開案の中に詳細授業展開案をリンクを設定しています。) |
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C 授業実践を通して |
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授業モデルを基に構想した授業展開案の一部を授業実践して、検証を行いました。Webページに公開している授業展開案・詳細授業展開案はこれらの検証を踏まえて、修正を加えたものです。
ア〜カの数学的活動を位置付けた授業を実践したことにより、次のようなことが期待できるということが分かりました(表1の○、◎)。また、そのために必要な配慮についても明らかになりました(表1の□)。
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表1 数学的活動から期待できる効果と指導上配慮が必要な事項 |
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数学的活動 |
○基礎的・基本的な知識・技能の習得を図るために期待できる効果
◎数学的な思考力・判断力・表現力をはぐくむために期待できる効果
□配慮が必要な事項 |
基
礎
的
・
基
本 的
な
知
識
・
技
能 |
 |
思
考
力
・
判
断
力
・
表
現
力 |
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ア |
成り立つ事柄を予想する活動 |
○ |
これから取り組もうとする課題を、これまでに習得した知識・技能を使いながら、数理的に予想することによって、それら知識・技能のさらなる定着が図られます。 |
□ |
予想する際には、単なる当てずっぽうではなく、今まで学習してきた数理的な考えを基に予想させる必要があります。 |
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カ |
自分が行った活動を振り返る活動 |
○ |
日常に戻す活動を通して、学習した知識・技能が日常の中でどのような事象に結び付いているのかを知ることとなり、知識・技能が本当の意味での「わかる」「できる」につながります。 |
□ |
数学のよさを実感させるようにすることが大切です。 |
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イ |
観察・操作などの具体的な活動 |
○ |
予想したことを確かめる活動を通して、これまで学習してきた知識や技能を活用していることを実感させることができます。 |
◎ |
具体的な活動を行う際に、どの既習の内容が活用できるか考え、判断し、課題解決に向け、取り組ませることができます。 |
□ |
事象を観察して法則を見付けたり、具体的な操作や実験を試みたりして数学的活動の楽しさを味わわせるように心掛ける必要があります。
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ウ |
自分の考えを人に伝える活動・人の考えを理解する活動 |
○ |
今まで学習してきた知識・技能を使いながら、自分が考えたことを分かりやすく説明させることで知識・技能のより確かな定着が図られます。 |
◎ |
自らが思考・判断したことを人に伝えることを通して、改めて再考する機会を得ることができます。 |
◎ |
他者の考えにふれることで、いろいろな数学的な見方や考え方を知ることができます。 |
□ |
事前に、すべての生徒に自分なりの考え方をもたせることができるような指導が必要です。 |
□ |
人の考えを理解しようとする場面では、適宜、質問をしたり、確認をしたりすることを促していく必要があります。 |
□ |
自分の考えを伝えたり、他者の考えを理解した後に、もう一度自分自身の考えを見直したり、深めたりすることができる時間を確保する必要があります。 |
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エ |
目の前の課題から、物事の本質を見抜こうとする活動 |
◎ |
目の前の具体的な事象を数理的に考察し、その本質を考えることで、思考力・判断力・表現力をはぐくむことにつながります。 |
□ |
日常生活や社会における問題を理想化したり単純化したりすることによって、数学の世界で処理した結果を、日常生活や社会に戻し考えさせるようにすることが大切です。 |
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オ |
発展的に考える活動 |
◎ |
学習したことを基により発展的に考えることで、思考力・判断力をはぐくむことにつながります。 |
□ |
解決した課題の条件を変えて考えたり、疑問点から新たな課題を設定して考えたりするように働きかけることが大切です。 |
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さらに、それぞれの数学的活動を意図的につなげていくことによって、次のように相乗的に効果が得られることも分かりました。
○
1時間の授業の目標を設定した上で、課題についての「成り立つ事柄を予想する活動」を行わせることで、生徒の課題に対する関心を高め、その後の「観察、操作などの具体的な活動」や「自分の考えを人に伝える活動・人の考えを理解する活動」の際に、目的意識をもって取り組ませることにもよい効果がありました。
○
「自分が行った活動を振り返る活動」を行うことで、1時間の授業のポイントを振り返らせることができ、また、この活動は、学習したことが日常の中でどのような現象となって現われているかということなどを考える機会ともなり、数学の意義や有用性に気付かせる契機となりました。
○
「観察、操作などの具体的な活動」を通して、自分の考えを確かなものとさせた上で、「自分の考えを人に伝える活動・人の考えを理解する活動」を行わせることで、伝えたいことが明確になり、自分の考えをより分かりやすく伝えようという意識や、他者の考えを基に自分の考えをより深めてみようという意識につながりました。
共通して言えることは、数学的活動を取り入れるということが、授業の中に、生徒の主体的な活動の場を位置付け、生徒自らが知的好奇心を巡らせながら活動する場を保証することとなり、数学に対する意欲面での高まりが大いに期待できるということです。意欲の高まりは、当然のことながら、基礎的・基本的な知識・技能の習得にも、数学的な思考力・判断力・表現力の育成にも、有効にはたらくと考えます。
また、生徒が主体的に活動する場面では、常に一斉指導をしている場合に比べて、教師にもゆとりがあり、生徒の学習活動を細やかに観察することによって、指導と評価に一体化が図られることにもつながります。
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