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言語活動の取り入れ方や授業づくりの視点などが分かる教師用手引き

新学習指導要領において、言語活動の充実は、各教科等を貫く重要な改善の視点です。特に国語科では、各教科等で言語活動を行う能力を培っていく必要があります。そこで、本研究では新学習指導要領の「読むこと」領域に例示されている言語活動の取り入れ方や言語活動の充実を図る授業づくりの視点などについて次の提案をします。
授業づくりのポイント
年間を見通した意図的・計画的な指導
各学年で行われる3領域1事項の指導は、年間を見通し、意図的・計画的に行う必要があります。例えば、「読むこと」領域の文学的な文章の指導において、年間3教材を取り上げて指導を行うならば、3教材を通して読むことの力を付けるために、同じ指導事項を身に付けさせるのではなく、それぞれの教材に即した指導事項を重点化していきます。その際、学習者の実態に応じて、不十分なものについては、次の単元でも取り上げて指導していくような柔軟な計画が必要です。
言語活動によって身に付けさせる力の明確化
本来、言語活動は総合的なものであるため、読むだけとか書くだけといった活動は考えられません。1時間または1単元といった一連の学習活動の中では、「話す」「聞く」「書く」「読む」活動が総合的に展開されていきます。このことを踏まえて、言語活動の説明や報告といった様式に応じて、領域や指導事項を焦点化し、授業を通して身に付けさせたい力を明確にして取り組む必要があります。
言語活動の取り入れ方
言語活動を適切に設定するには、指導事項と言語活動の特性を踏まえて設定することが大切です。そこで、発達の段階と文学的な文章や説明的な文章の解釈などの目的ごとに、言語活動を設定した指導目標例を、新学習指導要領に基づいて作成し、以下の表にまとめました。
なお、表に示した言語活動例は、考えられる活動の一部です。取り入れる目的や児童の発達の段階や学習状況等に応じて他の活動も取り入れることができます。また、例示した目的以外にも、複数の目的に取り入れることができます。(たとえば、本の帯などで紹介する活動は、文学的な文章の解釈、説明的な文章の解釈、目的に応じた読書、それぞれの目的にも取り入れることが可能です。)

低学年

目的
言語活動例
指導目標例 (太字は指導事項の中のキーワード)
読書を
楽しむ
(入門期)
読み聞かせ
○絵本の読み聞かせを聞くことを通して、読書に興味をもつことができる。
文学的な文章の
解釈

 
音読劇
紙芝居
読書カード
カードで紹介
音読発表会
○音読劇で物語を演じる活動を通して、登場人物の行動を表す言葉を基に、場面の様子を想像して読むことができる。
○紙芝居作りを通して、物語の展開に即して登場人物の行動が変化していくことをとらえ、場面の様子を想像して読むことができる
○読んだ本の内容を読書カードに書いて紹介することを通して、登場人物の行動に対する自分の考えをまとめることができる。
○カードに書いて紹介する活動を通して、読みたい本を選び、本の内容で好きなところやおもしろかったところを抜き出したり簡単な感想を書いたりすることができる。
○音読発表会を通して、場面の様子や登場人物の行動から、自分の経験と結び付けて想像して読むことができる。
説明的な文章の
解釈
作り方説明
クイズ
カードで紹介
○おもちゃの作り方を書いて説明する活動を通して、事物の作り方などについて書かれた文章から時間的な順序や事柄の順序を読み取ることができる。
○クイズを作る活動を通して、必要な本を選んで読み、書かれた内容の大事な言葉や文章を書き抜くことができる。
○カードに書いて紹介する活動を通して、読みたい本を選び、本の内容で好きなところやおもしろかったところを抜き出したり、簡単な感想を書いたりすることができる。
読み広げ
自由読書
昔話に興味をもち、自分が読みたい昔話を選んで読むことが
できる。
中学年
目的
言語活動例
指導目標例 (太字は指導事項の中のキーワード)
文学的な文章の
解釈
心情曲線図と
感想の交流
音読発表会
物語を書く
本の帯
○心情曲線図を使って感想を交流する活動を通して、文中の叙述を基に登場人物の性格や気持ちの変化、情景について想像して読むことができる。
○音読発表会を通して、場面の様子がよく分かるように音読したり人物や情景などの細かい表現に注意しながら気持ちの変化を読み取ることができる。
○物語を書く活動を通して、場面や登場人物の設定など物語の特徴をとらえながら読み、読み取ったことを生かして簡単な物語を書くことができる。
○本の帯を作って紹介する活動を通して、昔話特有の語り口や話の展開などに興味をもち、自分が読みたい昔話を選んで読むことができる。
説明的な文章の
解釈
パンフレット
新聞
感想の交流
○パンフレットを作って紹介する活動を通して、文章の要点や細かい点に注意しながら読み必要な文章や言葉について引用したり要約したりすることができる。
○調べたことを新聞にまとめる活動を通して、中心となる語や文をとらえて段落相互の関係や事実と意見との関係を考え、文章を読むことができる。
○調べたことを文章にまとめ、感想を交流する活動を通して、いろいろな本や文章を選んで読んだり、読んで考えたことを発表し合うことで、一人一人の感じ方の違いに気付いたりすることができる。
目的に応じた読書
紹介カード
読書発表会
○読書発表会に向けて、読みたい内容の本や同じ作者が書いた本などを選んで読み、カードに書いて紹介することができる。
高学年
目的
言語活動例
指導目標例 (太字は指導事項の中のキーワード)
文学的な文章の
解釈
朗読発表会
(群読、朗読劇)
本の帯
広告カード
(ポップ)
ポスター
リーフレット
○好きな場面を選んで朗読の発表会をする活動を通して、登場人物の相互関係から、その人物像をとらえるとともに、行動や会話、情景描写を基に登場人物の心情を想像しながら読むことができる。
○本の帯に、読んだ本や文章について推薦する文章を書く活動を通して、本や文章を読んで考えたことを伝え考えを広げたり深めたりすることができる。
○広告カード(ポップ)を作って本を紹介する活動を通して、登場人物の相互関係心情、優れた叙述について自分の考えをまとめるとともに、同じテーマで書かれた本や同じ作者が書いた複数の本を選び比べて読むことができる。
○伝記を読んで人物リーフレットを書き、紹介し合う活動を通して、伝記に描かれた人物の生き方や考え方について読み取ったり友達の考えと比べたりして自分の考えを広げることができる。
説明的な文章の
解釈
意見文を書く
考えの交流
(感想文集)
解説文を書く
○自分の課題について調べ、意見を述べた文章を書くために、本や新聞、インターネットなどの情報を比べ読みしたり、拾い読みしたりして、必要や図や表などを使って自分の考えをまとめることができる。
○新聞を読んで考えたことを交流する活動を通して、編集の仕方や記事の書き方について気付き表現の特徴をとらえることができる。
○ある事物についての解説文を書く活動を通して、モデルとなる解説文を読んで、筆者のものの見方をとらえ、自分の解説文に生かすことができる。
目的に
応じた読書
読書発表会
○読書発表会に向けて、テーマを決めて本や文章を選んで読み、
書かれた内容について自分の考えを伝えることができる。
このように、指導事項と言語活動例を踏まえた指導目標を学習活動に設定することで、児童の主体的な学習を促し、なおかつ、身に付ける力と活用する力を意識した授業が展開されると考えます。

手引きを基に作成した授業モデルはこちら → 授業モデル

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最終更新日:2011-03-30