「食べる」ことから考えよう!−生徒自身が気付き、考える場面を重視した「食」の授業づくりの提案−

 5 成果と課題及び参考資料
 (1) 研究の成果
 
(ア) 気付きを実践に結び付ける授業づくりのための理論の確認
 
高等学校家庭科の意義と、問題解決的な学習の利点及び方法についての理論研究を行いました。気付きを実践に結び付けるためには問題解決的な学習が非常に有効であり、年間を通して授業の中で取り入れることの大切さを改めて確認することができました。家庭科は、生活全体を見つめ、人の生涯について学習する教科であるため、日々の授業だけではなくホームプロジェクトの充実を図ることで、学び続ける姿勢をはぐくみ、学習内容を定着させることができるということが明らかになりました。
 
(イ) 年間指導計画の作成と授業による検証
 
食育に重きを置き、問題解決的な学習を重視した年間指導計画を立案しました。その中の食に関する題材について、検証授業を行いました。学習活動として、自分自身の生活を見つめる調査やゲームを取り入れたり、市販のDVD教材を取り入れたりすることにより、実体験と理論を結び付け、問題を自分のこととして考えさせることができました。
 
(ウ) 授業に役立つ教材・資料の作成
 
家庭科における「主体的な問題解決的な学習」の最たるものとして、ホームプロジェクトが位置付けられています。夏休みなどの長期休業を利用して取り組む活動ですが、授業時間の不足により満足な事前説明が出来ないまま取り組ませざるをえないのが現状です。そこで、ワークシートを作成することにより、ホームプロジェクトを円滑に進めるための手立てを示すことができました。生徒の主体的な取り組みを重視した問題解決的な学習を定着させ、達成感を味わわせることができる教材としての活用方法を探りたいと思います。
 
 (2) 今後の課題
 
(ア) 教材の充実と共有化
 
今回の研究では、ワークシートや授業方法、題材の設定だけではなく、適切な視聴覚教材を用意することで生徒の理解を深め、意欲を高めることが改めて分かりました。今後さらに、市販の映像作品やテレビ番組の教材化(短時間で効果を上げる視聴方法とワークシートの開発)を図り、様々な角度から食を見つめなおすことができる教材を充実させていきたいと思います。また、多くの先生に使っていただきながら改善を加え、質のよいものにしていくために、教材の発信と共有化を進めていきたいと思います。
 
(イ) 継続した食の指導を行うための題材の工夫
 
生徒を、気付きから実践活動へと結び付ける活動の最たるものが、家庭科におけるホームプロジェクトです。問題点に気付き、考え、実践するという「主体的な問題解決的な学習」定着させるためには、数時間の取り組みでは効果が薄く、やはり継続した指導をすることが大切です。食の問題点と重要性についても、生徒自身がしっかりと考え、よりよい食生活を営もうとする姿勢をはぐくむためには、年間を通した取り組みが必要だと改めて感じました。このことから、学校行事や他教科との連携を図りながら、食の重要性と問題点について生徒が体験活動を通して気付き、考え、実践するプロセスを取り入れた題材をさらに研究していきたいと思います。
 
(ウ) 新学習指導要領の観点に基づいた年間指導計画の提案
 
新学習指導要領では、従前のように、「人は各ライフステージごとの課題を達成しつつ発達する」という生涯発達の視点を踏まえながら、人の一生を「時間軸」でとらえさせることになりました。その上で、生活の営みに必要な金銭、生活時間、衣食住、保育などの生活活動にかかわる事柄を「空間軸」として、生涯生活設計ができるような能力と態度を育てることが重視されました。今回の研究では、「食育」に重きを置いた年間指導計画を立案しましたが、今後、新学習指導要領に基づき、生涯発達の視点での年間指導計画と題材及び教材について研究し、提案したいと思います。
 
(3) 参考資料
文部科学省 『高等学校学習指導要領 家庭』 (平成21年3月)
文部科学省 『食に関する指導の手引』
その他の参考文献
著者名
著作名

出版年

出版社
金丸 弘美 フードクライシス 食が危ない!
2006年5月
ディスカバー社
日本国際飢餓対策機構(編)
世界と地球の困った現実
2008年12月
明石書店
エリック・シュローサー/チャールズ・ウィルソン
おいしいハンバーガーのこわい話
2007年5月 草思社
服部 幸應
イラスト版 みんなでごはん
2009年4月
合同出版
吉田 俊道
生ごみ先生のおいしい食育
2006年4月 西日本新聞ブックレット
編集 (社)神奈川県栄養士会・地域活動栄養士協議会
食育ノウハウブック
2006年4月 健学社
荒井 紀子/鈴木 真由子/綿引 伴子 編著
新しい問題解決学習
2009年4月
教育図書
鶴田 敦子/伊藤 葉子 共著
授業力UP 家庭科の授業
2009年4月 日本標準
多々納 道子/福田 公子 編著
教育実践力をつける家庭科教育法
2008年5月
大学教育出版
田部井 恵美子/池ア 喜美恵/内野 紀子/青木 幸子 共著 
家庭科教育
2009年4月
学文社
中間 美砂子 編著
家庭科への参加型アクション志向学習の導入
2006年11月 大修館書店
トニー・ブザン
マインドマップ超入門
2008年12月 ディスカバー・トゥエンティワン
堀内 かおる 編著
望月 一枝/西岡 正江/濱崎 タマエ 共著
家庭科新発見
2006年8月 開隆堂
佐藤 真 編著
基礎からわかるポートフォリオのつくり方・すすめ方
2001年 東洋館出版社
ニコラウス・ゲイハルター 監督
DVD「いのちの食べかた」
2005年
新日本映画社
モーガン・スパーロック 監督
DVD「スーパーサイズ・ミー」
2004年 株式会社クロックワークス

参考URL
Webサイト「野菜の花図鑑」
http://www.cc9.ne.jp/~ssuto/yahanaframe.htm


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最終更新日: 2010-03-23