これからの国語科学習指導について提案します!!

(4) 研究のまとめ

@ 研究を振り返って 
小学校国語科では、「活用力に培う国語科学習の在り方―言語活動の充実を通して―をテーマに、「習得した知識・技能を条件に応じて使う力」を「活用力」ととらえ、その育成を目指すことで、知識・技能の定着を図るとともに、知識・技能を活用して課題を解決するための思考力・判断力・表現力をはぐくむことができると考え、研究を進めてきました。
1年次は、@『学び』の方法を意識させる場を設ける、A知識・技能を意図的に活用させる場を設ける、B学習活動を振り返らせ、整理させる場を設けるの3つの授業づくりの視点を基に、言語活動を効果的に取り入れた検証授業を実施し、その結果、ねらいや身に付けさせるべき知識・技能を明確にした授業を展開することができました。
2年次は、1年次の研究を受けて、言語活動を効果的に取り入れた学習の在り方について,研究を深めました。実践した授業は検証し,授業モデルや授業プランとして,指導のポイントや活動の手順が分かるように提案することができました。授業や朝の時間などに,すぐ使えるワークシートや学習プリントも作成し,提案することができました。

《研究の成果》

新学習指導要領に沿った授業づくりのための提案

本研究では、新学習指導要領の指導事項を基に、児童に身に付けさせるべき基礎的・基本的な知識・技能を明確にした授業の在り方について考え、研究をすすめてきました。そして、児童に知識・技能を習得させ、それを活用させる言語活動を位置付けることで、思考力・判断力・表現力の育成を図ることのできる授業づくりについて考えました。その結果を踏まえて、授業づくりの手引きとなるような「教師用手引き」、知識・技能を活用する学習を取り入れた「授業モデル」、学校現場にすぐに役立つ「授業プラン」について提案しました。
「読むこと」領域における授業づくりの教師用手引き
〈内容〉
・  「読むこと」の授業づくりの基本的な考え方(教師用手引き)
※ 新学習指導要領を基に、児童に身に付けさせる力の系統性を意識しながら、発達の段階に応じ、基礎的・基本的な知識・技能を明確にした授業づくりについて示しています。
身に付けさせた基礎的・基本的な知識・技能を活用させる学習を取り入れた授業モデル
※この授業モデルは、平成20年度の授業づくりの視点
ア 「学び」の方法を意識させる場を設ける
イ 知識・技能を意図的に活用させる場を設ける
ウ 学習活動を振り返らせ、整理させる場を設ける
を基に、教師が単元の中で身に付けさせる知識・技能を意識して、言語活動を通してそれを活用させていく授業の流れを授業モデルとして提案しました。
授業実践の検証と授業プラン
〈内容〉
・ 指導計画・指導略案・板書計画・ワークシート等を授業プラン
※高学年を中心とした9本の授業実践とその分析と検証を行いました。
 
授業に役立つ言語活動参考資料(学習の手引きとワークシート)
言語活動を充実させるためには、言語活動そのものに関する知識や言語活動を行う技能が必要となります。そこで、授業で言語活動を行うために必要な参考資料を提案しました。
言語活動参考資料
〈内容〉
・ ディベートやパネルディスカッション等の言語活動を行うために必要な参考資料
※児童用手引きや進行表、記録カードなど、そのまま使える内容になっています。
 

すぐに使える学習プリント(SAGAでるプリント)

習得した知識・技能を確認したり、補ったりすることができる学習プリントや知識・技能の定着と思考力・判断力・表現力の育成を目指した学習プリントを作成しました。短い時間で取り組むことができる内容になっています。授業前や朝の時間など、短い時間に取り組むことができます。
文学的な文章と説明的な文章を読む上で、必要な基礎的・基本的な知識・技能の定着を目指した学習プリント
〈内容〉
・ 文章を正確に読み取る際に必要な力を付けるための学習プリント 
※人物像を読み取ったり、要旨をとらえたりするなどがあります。
文章を書く上で必要な基礎的・基本的な知識・技能に焦点を当てた学習プリント
〈内容〉
・ 授業に役立つ手紙や案内状などの書き方
※書き方を丁寧に説明しているプリントなので、国語科に限らず、総合的な学習や特別活動等でも使える内容になっています。
言語事項に関する学習プリント
〈内容〉
・ 主語と述語、修飾語などの文や文章の構成に関する事項や敬語などの言葉
  遣いに関する事項に関する学習プリント
・ ことわざや慣用句などの伝統的な言語文化に関する事項に関する学習プリント
・ 発音・発声のための練習プリント
・ 短歌、古文・漢文などに親しませるためのプリント
※伝統的な国語文化と国語の特質に関する事項に焦点を当てた学習プリントです。短い時間で取り組むことができる内容になっています。
活用する力を問う学習プリント
〈内容〉
・ メモを利用し、表現様式に合わせて書き換えるプリント等
※授業で学習した知識・技能を、子どもたちの実生活の中で活用できるようにすることをねらいとして作成した問題を作成しました。
 

《今後の研究の方向性》

本研究では、学習内容の系統性に配慮しながら、目的や相手、自分の立場といった条件等を明らかにした言語活動の工夫を通して、児童が知識・技能の定着と活用について意識しながら学ぶ国語科学習の在り方を探ってきました。その成果を踏まえて、学校現場ですぐに役立てることができるように、言語活動を効果的に取り入れた授業プランについて提案してきました。しかし、高学年を中心とした授業プランであったため、低学年から中学年の学習内容の系統性については見えにくくなっていました。
そこで、今後は中学年の授業プランづくりを通して、低学年から中学年への系統性と、中学年から高学年への系統性について考えた授業プランの提案を行っていく必要があると考えます。また、言語活動を効果的に取り入れるために、発達の段階に応じた言語活動の設定についても合わせて考えていく必要があると考えます。

A 《参考資料》

佐賀県教育委員会 『佐賀県教育の基本方針』 平成20年4月
文部科学省 『小学校学習指導要領解説 国語編』 平成20年8月
中央教育審議会 『幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の
改善について(答申) 平成20年1月
梶田叡一 『教育における評価の理論T:学力観・評価観の転換』 1994年 金子書房
西村左二編著 『国語の活用力を育てる授業』 平成19年 光文書院
堀江祐爾 『国語科授業再生のための5つのポイント ―よりよい授業づくりを目指して― 
2007年 明治図書
国語教育実践理論研究会 『読解力再考 すべての子どもたちに読む喜びを ―PISAの前にあること―』
2007年 東洋館出版社
井上一郎 『読む力の基礎・基本―17の視点による授業づくり― 2003年 明治図書
全国国語授業研究会・二瓶弘行・青木伸生編著 『活用力を育てる文学の授業』 2008年 東洋館出版
全国国語授業研究会・白石範孝・桂聖編著 『活用力を育てる説明文の授業』 2008年 東洋館出版

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最終更新日: 2010-03-16