小学校第5学年の実践 伝記を読んで話し合う
単元名 人間の生き方をえがいた作品を読み,対談や読書会をしよう
教材名− マザー・テレサ 他
出  典− 東京書籍5年
作  者− 真鍋 和子

「対談」や「読書会」をしながら楽しく伝記を読んでいきます。叙述に即して人物の生き方や考え方を読み取ったり,友達と感想を交流しながら人物の魅力に迫ります。
 
授業展開 学習指導案 ワークシート
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A
B
C
D

単元観
(1)児童の実態  (2)教材の特性 
読書を好む児童が多い。しかし,伝記については,ほとんどの児童が読んだ経験はあるが,内容については,詳しく覚えておらず,魅力を感じていないと思われる

読み取ったことを発表する際は,根拠をはっきり示せない児童が多い。文章に着目し,書かれたことばから着実に読み取っていく力が必要であると考える。

1時間取り立てての「読書会」の学習経験はないが,「対談」については,1学期の説明文の学習で取り組んでいる。脚本化しながら意欲的に作業を進め,やり方にも慣れている。

「話す」「聞く」「伝え合う」の学習を好む傾向があり,朝のスピーチタイムやクイズでは意欲的に取り組んでいる。

テレサは,はじめはどこにでもあるような一般的な幸せの家庭の子であり,児童は身近に感じ,自己と重ねたり比べたりしながら読みやすい。

心の中を表す言葉やエピソード,演説の一部も入っており,人物の人柄や業績がとらえやすい。

テレサの言動から,やさしさ,公平さ,意志の強さ,行動力など,児童それぞれに様々な人間的魅力を感じ取ると思われる。

「子どもは神様と同じです。」「貧しい人は美しい」などの言葉の意味は,読み手によって多様なとらえ方や感じ方ができる。

↓
(3) 取り入れる「言語活動」とその指導  
   対談 教科書教材にえがかれた人物の生き方・考え方を読み取る。
 なりきり対談
(対談T)
テレサになりきって対談の脚本を書かせていく中で,テレサの行動やその裏にある思いを叙述を基に考えさせていく。
対談になるようにワークシートを準備し,Q&Aの形式で書かせる。
 読者対談
(対談U)
「私が読んだマザー・テレサ」をテーマに「貧しい人は美しい」など,心に残ったテレサの言葉を中心にテレサの心について考えさせていく。
自分の考えがもてるように「一人読み」の時間を十分に確保し,二人組での対談,代表児童での対談を取り入れながら考えを交流させ,テレサの魅力に迫りたい。
  読書会 他の伝記を読んで,偉人を紹介し合ったり,その魅力を比べ合ったりする。
研究的読書会
(読書会T)
「3人の偉人魅力くらべ!」をテーマに,調べた人物で立場を分け,パネルディスカッション風に話し合いを行わせる。
各グループで人物の魅力がよく分かるように「生き方新聞」にまとめさせる。
3人の生き方について「読みの視点」をもとに話し合わせ,類似点や相違点を明らかにしていく。
読書発表会
(読書会U)
テーマ「わたしのイチオシはこの人だ!」をテーマに,自分が読んだ伝記から選んで紹介させる。
教科書教材の学習で獲得した「読みの視点」を生かして人物の魅力や感想等を「生き方新聞」にまとめさせる。
伝記に書かれていたことの感想や人物から学んだこと等を交流させ,これからの自分の生活や生き方について考えさせる。

指導目標
伝記に書かれた人物の生き方や考え方を読み取ることができるようにする。
対談や読書会を通して,進んで伝記を読んだり本を読んで自分の生き方について考えたりする態度を育てる。
評価規準
国語への関心・意欲・態度
進んで読書会に参加したり,必要な図書資料を読んだりしている。
読む能力

伝記から人物の生き方や考え方を読み取っている。
【「読むこと」2内容(1)ア】

読み取った内容について,自分の考えを明確にしながら読んでいる。
【「読むこと」2内容(1)エ】

言語についての知識・理解・技能
表現したり理解したりするために必要な語句について,辞書などを利用して調べている。
【「言語事項」(1)ウ(ウ)】

単元計画(全14時間)
言語活動 主 な 学 習 活 動 授業風景
板書 等
  これまでの読書体験や他教科・領域での学習をもとに,心ひかれる人物について話し合う。    
全文を通読し,初発の感想を書いて発表し合う。  
対談
T
「青空教室」についてシナリオを作り対談する。  
対談の様子
「孤児の家」についてシナリオを作り対談する。  
「死を待つ人の家」についてシナリオを作り対談する。  
対談
U
テレサの考えや願いが表れていることばを見付け,その言葉の裏にあるテレサの思いや考えを書く。  
「貧しい人は美しい。」という言葉の意味について読者の立場から対談する。
児童の感想(ワークシート)
 
対談の様子
読書会
T
伝記「洪庵のたいまつ」「レイチェル・カーソン」「サリバンせんせいとの出会い」を読む。   
人物の生き方や考え方を視点にそって調べ,グループごとに「生き方新聞」を作る。
児童の作品「生き方新聞」
緒方洪庵 レイチェル ヘレンケラー
   
10 「3人の偉人魅力くらべ」をテーマに3人の生き方について視点に沿ってパネルディスカッション風に話し合う。(読書会T)
【視点】 @人物の主な業績 A言葉・行動
 
11 【視点】 @人物が大事にしたもの A3人の共通点
 
12 読書会
U
自らの仕事に一生をかけた人物の伝記を読み進め「生き方新聞」を書く。
児童の作品「生き方新聞」
坂本龍馬 ダイアナ妃 ベーブルース
 
13 「生き方新聞」をもとに紹介したい人物を選び「わたしのイチオシはこの人!」(読書会U)をテーマにグループ毎に発表会開く。  
14 学習全体を振り返り,学習のまとめをする。  

単元周辺の計画
教材の内容に関して
教師の話
人の生き方や仕事へのかかわり方への関心を高める。
・サッカー選手中田英寿
・野球選手イチロー
・宮大工
・植村直己
読み聞かせ
いろんな偉人の本を紹介し,読書活動の活性化を図る。
<担任>
・「五体不満足」
・サッカーの王様
「キング・ペレ」
<保護者の会>
・ナイチンゲール
・エジソン
・ベートーベン
・ゴッホ
教室環境
教室にコーナーをつくり,進んで伝記を読む雰囲気づくりに努める。
・おすすめはこの人
・偉人ランキング
・人物写真
・伝記シリーズ
単元名「動物についてブックトークをしよう」
〜教材「動物の体」〜

単元の目標
文章の仕組みを考えて,書かれていることを読み取ることができるようにする。
自分が読んだ本の面白さを方法を工夫しながら,分かりやすく伝え合うことができるようにする。
言語活動に関して
言葉のキャッチボール(話型)」の練習
自分の考えと比べたり,友達の考えを受けたりする話型の意識付けを図る。
朝の会でのスピーチ
「わたしの宝物」
宝物クイズを通して,答えに迫る質問ができるようにする。
全校読書
伝記を読んで記録させる。
単元名「人間の生き方をえがいた作品を読み,対談や読書会をしよう」
〜「マザー・テレサ」他〜
単元の目標
伝記に書かれた人物の生き方や考え方を読み取ることができるようにする。
伝記を読み,読み取ったことや考えたことをもとに,対談や読書会ができるようにする。
単元名「表現の面白さを考えよう」
〜注文の多い料理店」〜
単元の目標
表現の工夫や登場人物の心情の変化について読み取ることができるようにする。
学習方法を選び,最も強く心に残ったことを紹介することができるようにする。
学習を終えて
 子どもたちの読書離れが進み,伝記教材も減ってきている中で,人の生き方について考える大単元を仕組むことができたことは,よかったと思います。読む力を付ける手立てとして「対談」や「読書会」という言語活動を取り入れました。子どもたちは楽しく活動し,人物の生き方や考え方を読み取ることができました。教材文を読み取る段階で「対談」を取り入れたことで,人任せにしない読み,一人読みグループ読み,そして全体へ広げることで叙述に即した確かな読みへつなげることができました。子どもたちにとって「読書会」は,ほとんど経験のない活動でしたが,代表児童が前に出て話すことが2次教材となり,みんなで意見を出し合うなかで,同じ文章でも人により表現や読み取り方の違いに気付くことができました。また,「生き方新聞」作りを通して,主教材で身につけた伝記を読み取る視点に沿ってまとめることができました。
 今後は,教材や児童に合った言語活動をいかに仕組んでいくのか,また,年間計画の中にきちんと位置付けて長いスパンで読む力を付けていく必要性があると思います。
 

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