単元構想 授業の実際 まとめ TOP
授業の実際
 
 単元名 : 「Having A Cell Phone」 
  指導形態 :ALTとのTT
 
 対象レベル:中学3年生前半〜
  所要時間 :2〜4時間程度
 
 単元の目標 
(1) 自分の考えや気持ちを意欲的にまとめ,積極的に伝えようとする。                              【授業1,2】
(2) 自分の考えや気持ちを分かりやすい英語でつながりよく書き表すことができる。  【授業1】
(3) 自分の考えや気持ちを書き表したスクリプトを,聞き手にとって理解しやすい発音,スピード,
  強勢を念頭に置いて音読できる。  
【授業2】
(4) 相手の話や相手の考えや気持ちを書き表したスクリプトを参考にしながら,相手の考えや
  概要を把握できる。
【授業2

  単元の指導・評価計画     
 評価の観点→

学習への関心・意欲・態度

 自己の課題を設定し,課題解決に取り組む 学び方を身に付ける
【授業1】
 考えや気持ちを書いてみよう
 mappingを使って,与えられた話題について,自分の意見をまとめ,つながりのよい英語で表現しようとしている。 本時では評価しません  mappingを使って,与えられた話題について,自分の意見をつながりよく表現することができる。
 辞書を使用することによって,未知の表現を自ら調べ,作文活動に生かすことができる。
【授業2】
 考えや気持ちを伝え合おう
 自分の意見を相手が理解できるように配慮して伝えようとしたり,相手の意見を理解しようとしたりしている。  相手の意見を参考にしながら,自分の意見を表現することができる。 本時では評価しません

  授業1 考えや気持ちを書いてみよう
学習活動 教師の働きかけ
1 本単元の学習のねらいと流れを把握する  コミュニケーションの場面で,説明不足や,論理性が欠如した説明によって,相手にうまく本意を伝えることができず,人間関係が気まずくなってしまう状況を再現した教師のスキットによって,自分の気持ちをつながりよく,分かりやすく相手に伝えたり,相手の言いたいことをつかむことの大切さを知らせます。
※  本単元では,携帯電話をトピックに取り上げているので,教師のスキットでも,「携帯電話やメールでの説明不足によって生じた誤解」を取り上げました
2 My Opinion (個人活動)
 @ mappingによって「Having A Cell Phone」に
  ついての自分の考えを整理する


 mappingの中のバルーンのつながりがよいと,その後,文章化した際に内容が論理的になります。バルーンが滑らかにつながっていない生徒には質問したり助言したりして,書き足すように促しましょう。
※ mappingに慣れてきたら,自分の考えについてのmappingは宿題として取り組ませ,授業の際に持ち寄ってもかまいません。
【My Opinionの際のmapping記入例】
【My Opinionの際のスクリプト記入例】
 A バルーンを英訳し,文章化する
 バルーンの英訳の段階で,このトピックで使用する専門的な用語を把握し,共通理解を図ったほうがいい表現については,学級全体に知らせます。

 
和英辞書の中の表現等で生徒が迷っている際は,英和辞書で引きなおし,最も適切と思われる表現を一緒に探すなどします。また,難しい表現等の使用が見られる際は,natural, simple, easyなparaphraseになるよう助言します。
3 Role Play(ペア・班活動)
 @ 集団編成と役割分担を行う
   
  【4つの役割 four roles】
   携帯電話を持つことに・・・賛成の生徒の役
                 反対の生徒の役
                 賛成の保護者の役
                 反対の保護者の役
 クラスを8人ずつの班に分けます。次に,それぞれの班を4つのペアに分けます。(人数調整のため,3人組を編成してもかまいません)

 roleの分担は,それぞれのペアの代表にくじを引かせて決定し,その役割(role)の立場に立って自分たちの考えや意見とその理由を述べることを伝えます。


 
ペアは同性で組んだほうが,意見が出しやすいようです。グループは,なるべく男子ペア2組,女子ペア2組で編成するように配慮します。
 
 自分の意見と異なるroleのくじを引く場合がありますが,視点を変えて物事を見つめたり考えたりすることが自分の視野を広げることにつながることを伝え,思考させます。
 A スクリプトの作成
  ア mappingによって各roleとしての考えの整
   理と検討を行い,バルーンを英訳する

      【ペアによるmapping記入例】
 JTEとALTは,controller, observer,resourceという役割を担っています。生徒のそれぞれの活動が滑らかにつながっているか十分に観察し,それぞれの活動に対して助言します。
 生徒はこの時点で,すでに個人の意見やトピック特有の専門用語に関する知識をもっています。充実したmapping用紙の作成や,効率のよいバルーンの英訳のためにペアのパートナーと「表現の共有」を図るよう助言します。

 生徒たちはペアで,考えや気持ちをmappingによってブレーンストーミングし,用紙中央の「Having a Cell Phone」という命題から放射状にツリーを派生させ,思いついた言葉等を次々とつないで記入します。JTEとALTは,ツリーの内容を下の4つの点から助言します。ペアによっては,これまで考えたことの無い視点に立って,mappingをする場合があります。なかなかmappingが進まない場合は,その立場に立ったらどのように考え,なせ,そのように考えるのかヒントを出しましょう。

 ツリーの中のバルーンは,スクリプトに考えや意見を論述する際のキーワードになります。それぞれのバルーンのつながりをよく観察し,つながりが良くなければ,バルーンを書き足すよう促します。
  • 何についてのツリーか(grouping及びlabeling)
  • どのツリーについて述べていくか(取捨選択)
  • スクリプトに起こす際にどの順番で述べるか(numbering)
  • ツリーの中のそれぞれのバルーンのつながりが良いか
【生徒の活動の様子】
スクリプト作成からバルーンの英訳

  イ バルーンの英訳をDraft(下書き)用紙
   
に文章化する
      





  ウ ALTにnative checkしてもらう
      【ペアによるDraft用紙記入例】



  エ スクリプトを清書する
     【ペアによるFair Copy用紙記入例】
 文章化の際は,2−アで述べた留意点(取捨選択,numberingなど)を考慮し,分かりやすくつながりのよい文章構成になるよう,助言します。ここで使用する「Draft用紙」は,考えや気持ちを順序良く述べるための定型表現を盛り込んだ穴埋め式のワークシートです。mappingで明らかになった論旨を記入するだけで,効率よくスクリプトを完成することができます。

 「Draft用紙」が完成したら,ALTがnative checkを入れます。また,日本語的な言い回しや,読み手が意味を汲み取らないと理解できないような表現である場合は,JTEが生徒に文意を確かめた上で,誰が読んでも分かる表現へとALTとJTEで加除修正します。
 

 日本語的な言い回しを英語に直すときには
    
言いたいことを日本語で噛み砕く
         ↓
   噛み砕いた文章を「主語+動詞」を
   意識した語順に直す
         ↓
       英訳する

 というステップをふみましょう。最初は,JTEの助言が必要です生徒がこつをつかむまで何度も繰返します。



 
ALTの修正が,生徒の言いたいことを十分に汲み取っている表現かどうか,JTEが最終確認をしたうえで,生徒に返却し,Fair Copy用紙に清書をさせます。

  授業2 考えや気持ちを伝え合おう
学習活動 教師の働きかけ
1 スクリプトの清書と音読練習
 
@ 下書きを「Fair Copy(清書)用紙」
  
に清書する 
    
 後ほど同じ班内で異なるroleの人とスクリプトの交換をするので,「Fair Copy用紙」に記入の際はていねいな字で書いたり,写し間違いが無いように書いたりするよう伝え,机間指導の際間違いがないか見て回ります。

 
「Fair Copy用紙」は,どれも同じ形式です。文字や内容の違いだけで4つのroleの用紙を区別することが難しい場合があります。今回は,role毎にワークシートの色を変え,一見して4つのroleの用紙が区別できるようにしました。 
【4role毎に色で区別したFair Copy用紙 記入例】
 A 「Fair Copy用紙」を音読練習する(ペア)
   
 より分かりやすく,自然な表現になった原稿を清書し,音読練習を十分に行うことで,適正で適切な表現を習熟することをねらいます。

 自分の考えや気持ちを相手に伝えるための音読練習です。以下の点に留意するように助言し,指導しす。
  • 文中の意味のかたまり(chunk)を意識して音読する。
  • 相手が理解できるスピードで読む。
  • 発音,アクセント,イントネーションに注意して,明瞭に読む。
  • 最も伝えたい部分は,繰り返して読む 等 
2  「考えや気持ちを伝え合おう」
                   (ペア・班活動)

   同一班内で,自分たち以外のペアとスクリプト
 の交換をして,音読による考えや気持ちの伝え
 合いを3回行う 
【意見交換@】
 *賛成の生徒役⇔反対の生徒役
 *賛成の保護者役⇔反対の保護者役
【意見交換A】
 *賛成の生徒役⇔賛成の保護者役
 *反対の生徒役⇔反対の保護者役
【意見交換B】
 *賛成の生徒役⇔反対の保護者役
 *反対の生徒役⇔賛成の保護者役
 考えや気持ちを伝え合う場面では,自分の考えや気持ちを伝えることと同時に,相手が言いたいことをつかむことも大切です。

 音読活動だけでは十分に伝えることができない部分や,相手の音読を聞くだけでは内容を十分につかみ取れない部分を補うために,スクリプトを交換します。
 具体的には,相手のスクリプトに目を通しながら音読に耳を傾けさせます。その際,相手が繰返して読んだ部分や,聞きながら重要だと判断した部分に下線を引かせる等して,相手の意図をうまくつかませるようにします。

【生徒の活動の様子】
3 After the Role(個人活動)
   授業1−2 My Opinion,授業1−3 Role
 Playで述べてきた考えや気持ち,授業2−2
 「考えや気持ちを伝え合おう」で得た視点を基に
 して,自分の考えや気持ちを振り返り,「After
 the Role用紙」
に書き表す


   「After the Role用紙」はこちら(PDF版)

 ワークシートには以下の3つの場合に対応した定型表現を盛り込み,友達の意見に同意したり,納得したり,My Opinionの段階から考えが変わってきたりといった表現の中から,最もふさわしいものを選んで書く活動に取り組ませます。

    【3つの場合とは】
  • 活動中の自分のroleや他のroleの意見と今の自分の意見が同じ場合
  • 活動中の自分のroleや他のroleの意見と今の自分の意見が違う場合
  • 友達の意見を聞いているうちに自分の意見が変わってきた場合

 活動に際しては,授業2−2で手元に集まったスクリプトの中で最も自分の考えと近い部分や共感できる部分に下線を引かせ,その部分をまねて使うといった「表現の共有」をするよう促します。

 「After the Role用紙」 には,教師のコメント欄を設けました。活動全体への取り組みの様子や,単元の目標であるコミュニケーションへの関心・意欲・態度の高まりや表現力の高まりなどに関して,コメント欄に具体的に記入し,返却します。
【After the Role用紙 記入例】
【教師のコメント 記入例】