平成22年度佐賀県小・中学校学習状況調査Web報告書

Web報告書もくじⅣ  児童生徒意識調査の結果の分析


児童生徒意識調査の結果の分析

3 学習活動(教科全般)

授業中で分からないときは、「友人にたずねる」と回答した児童生徒の割合がすべての学年で最も高く、学年が上がるごとに増加する傾向が見られる。[図1] 「そのままにしておく」と回答した児童生徒の割合は小学5年と中学1年は1割以上、中学2年は2割以上であり、課題である。[図3]

家庭学習の時間は、全体的に学年が上がるにつれて、増加している。[図4][図5] 

学校の授業以外の勉強については、中学校では、「試験があれば、それにそなえて勉強する」の割合が高くなるが、逆に「興味があることについて自分で調べたり、たしかめたりする」の割合が低くなっている。[図7][図8]


 

ここでは、授業で分からないときの対応、授業以外の勉強時間や勉強の方法、塾や家庭教師の有無など児童生徒の学校内外における学習活動についての設問から児童生徒の教科全般における学習活動についての調査結果を述べる。

 

「授業の中で分からないことがあったらどうすることが多いですか」(複数回答)という設問については、 すべての学年において「友人にたずねる」と回答した児童生徒の割合が最も高く、小学5年57.7%、中学1年77.4%、中学2年79.2%と、学年が上がるにつれて、その割合が高くなる傾向が見られる。以下、小学5年と中学2年については「親にたずねる」「その場で先生にたずねる」、中学1年では「親にたずねる」「自分で調べる」の順になっている。

この設問を前年度調査と比較すると、小学5年と中学1年では、全体として大きな変化は見られないが、中学2年では「自分で調べる」、次いで「その場で先生にたずねる」と回答した生徒の割合がやや低くなっていることが、気にかかる。[図1]



 

同一児童生徒の経年比較で見ると、小学6年から中学1年にかけては、各解決方法の項目において「その場で先生にたずねる」以外は数値が増え、逆に「そのままにしておく」が減っている。しかし、中学1年から2年にかけては、数値が増えている解決方法の項目もあるが、「自分で調べる」と「親にたずねる」が大きく減っており、逆に「そのままにしている」が増えていることが気にかかる。[図2]


 


回答状況と全教科平均正答率との関連を見ると、小学校5年と中学校1年では、「自分で調べる」「授業が終わってから先生にたずねにいく」と回答した児童生徒の正答率が高くなっている。中学校2年においても、同様の特徴は見られるが、小学5年や中学1年と比べると、分からなかったところをそのまま放置しておく傾向が強い。[図3]

自分で調べようとする意欲や授業後に先生に尋ねて解決しようという態度は学習にもよい影響を与える。分からないことをそのままにしている児童生徒はますます分からなくなり、意欲も更に下がるという悪循環に陥っている。まずは、「そのままにしておく」と回答した児童生徒に対する個別の対応を行う必要がある。改善に向けての方策としては、個々の児童生徒の状況を把握する中で、わずかでも得意と思われる教科や興味を示す学習内容などを拾い出し、その部分を足がかりにして学習意欲の向上につなげるような指導が考えられる。


 

「学校の授業以外に、あなたは1日にどのくらい勉強しますか」(月曜日から金曜日)という設問については、学年が上がるごとに2時間以上勉強している児童生徒の割合は高くなる傾向が見られる。このことは土・日曜日や休日についても同様である。 「30分以上1時間より少ない」又は「1時間以上2時間より少ない」と回答した児童生徒の割合は小学5年60.1%、中学1年63.5%、中学2年59.9%であり、どの学年においも、約6割を占めている。
(土・日曜日や休日)については、平日よりも勉強時間が少なくなる傾向が見られる。学習時間が1時間より少ないと回答した児童生徒の割合が小学5年は72.5%、中学1年は63.4%、中学2年は51.2%と、学年が上がるにつれて少なくなる傾向は見られるが、各学年とも5割を上回っている。

この設問(月曜日から金曜日)を前年度調査と比較すると、小学5年については、全体的に大きな変化は見られないが、中学1年ではやや勉強時間が減少している傾向が見られる。中学2年では全体的に勉強時間が増加している傾向が見られる。
(土・日曜日や休日)を前年度調査と比較すると、全体的に平日と同様な傾向が見られる。[図4]

 


同一児童生徒の経年比較で見ると、(月曜日から金曜日)について、学年が上がるにつれて、全体的に勉強時間が増えている。
(土・日曜日や休日)についても、平日と同様学年が上がるごとに勉強時間も増えている。[図5]


 

回答状況と全教科平均正答率との関連を見ると、(月曜日から金曜日)(土・日曜日や休日)共に、全体的にすべての学年において勉強時間が長い方が正答率が高くなる傾向が見られ、「まったくしない」と回答した児童生徒の正答率が最も低くなっている。[図6]


家庭学習に取り組む時間をのばすためには、家庭学習をはじめとする授業以外の学習の重要性について指導するとともに、オリエンテーションの場を設けるなどして、予習・復習の仕方等について具体的に繰り返し指導することが必要であろう。また部活動等により、家庭で過ごす時間が全体的に少なくなる中学生については、1日の生活時間を見直させて、学習時間を確保することが望まれる。


 

「ふだん学校の授業以外で、あなたがしている勉強は次のうちどれに近いですか」(複数回答)という設問については、中学生は小学生に比べて試験に向けた勉強をする割合が高くなる傾向が見られる。すべての学年において「宿題があれば宿題をする」と回答した児童生徒の割合が最も高く、小学5年84.4%、中学1年91.8%、中学2年93.3%になっている。以下、小学5年では「興味があることについて自分で調べたり、確かめたりする」「復習をする」、中学1年では「復習をする」「試験があれば、それにそなえて勉強する」、中学2年では「試験があれば、それにそなえて勉強する」「復習をする」の順になっている。

この設問を前年度調査と比較すると、各学年ともいくらかの数値的な変化はあるが、全体的に大きな変化は見られない。[図7]

 


同一児童生徒の経年比較で見ると、各学年とも「宿題があれば宿題をする」が高いことは明らかであり、少しずつ数値も上がっている。また、特徴の一つとして、学年が上がるにつれて「試験があれば、それにそなえて勉強する」が増えているのに対し、「興味があることについて自分で調べたり、たしかめたりする」が減っている。
[図8]

 

回答状況と全教科平均正答率との関連を見ると、明らかな特徴は見られないが、各学年に共通して勉強は「まったくしない」と回答した児童生徒の正答率が低くなっている。[図9]



「まったくしない」と回答した児童生徒が各学年5%ほどの割合でいる。そして図6と図9で明らかなように、勉強は「まったくしない」と回答した児童生徒の平均正答率は他と比べて低くなっている。各学校においては、勉強をまったくしないと回答している児童生徒を把握し、学力面や家庭環境などの視点からその理由について考え、個別に改善に向けての取組や支援をしていくことが必要である。全体的な取り組みとしては、学習の手引きを活用したり、学習の意義等について家庭との連携を図ったりすることが考えられる。また、「宿題があれば宿題をする」と回答した児童生徒の割合が約9割に上ることから、宿題の出し方や授業への生かし方等について、各教科や学校全体で検討し,改善していくことも、学力の向上に大きな効果を生むものと考えられる。学年の発達の段階に応じた学習に対する内発的な動機を高めることが大切である。

「1週間のうちに、何日塾に通ったり、家庭教師の先生と勉強したりしていますか」という設問については、すべての学年において「していない」と回答した児童生徒の割合が最も高く、小学5年69.6%、中学1年69.8%、中学2年61.0%になっており、次いで「2日」と回答した児童生徒が多くなっている。また学年が上がるにつれて、「2日」「3日」と回答した児童生徒の割合が、わずかではあるが高くなっている。

この設問を前年度調査と比較すると、小学5年と中学2年では、わずかではあるが、「していない」と回答した児童生徒の割合が減っている。逆に中学1年では、「していない」と回答した生徒の割合が少し増えている。[図10]


 

同一児童生徒の経年比較で見ると、中学1年から中学2年にかけて、「していない」と回答した生徒の割合が減っている。[図11]

 


回答状況と全教科平均正答率との関連を見ると、小学5年では明らかな特徴は見られないが、中学1年と中学2年においては、「3日」「4日以上」と回答した生徒の正答率がいくぶん高くなっている。[図12]



「ふだん学校の授業以外で、あなたがしている勉強は次のうちどれに近いですか」という設問と 「1週間のうちに、何日塾に通ったり、家庭教師の先生と勉強したりしていますか」という2つの設問を比較すると、この2つの設問に共通する「まったくしない」という回答が年々減少しているということから、学校外での学習に関する意識が高まっていることが分かる。より一層の家庭学習に関する指導強化と、学校と家庭の連携が学力向上の鍵となるであろう。


最終更新日:  2011-1-31