平成25年度佐賀県小・中学校学習状況調査及び全国学力・学習状況調査を活用した調査Web報告書

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Ⅱ 調査結果の概要

教科に関する調査及び児童生徒意識調査の概要

 

教科に関する調査 全体の概要
   
 

○ 県で設定した「到達基準」に対して「おおむね達成」の基準を上回ったものは、26教科中19教科であり、本県児童生徒の学習内容の習得状況は概ね良好であった。
○ このうち、「十分達成」の基準を上回ったものは、中学3年国語Aであり、学習内容が十分習得されていた。
○ 中学1年は、全教科とも「おおむね達成」の基準を上回った。
○ 社会は、5学年のうち2学年で、理科は、5学年のうち3学年で、「おおむね達成」を下回った。

■各学年・教科の到達状況

※1 H24年度の小6国語A・B、小6算数A・B、小6理科、中3国語A・B、中3数学A・B、中3理科については、全国調査問題を県独自の基準で採点しているため正答率は参考値である。
※2 H25年度の小6国語A・B、小6算数A・B、中3国語A・B、中3数学A・Bについては、全国調査問題を県独自の基準で採点しているため正答率は参考値である。
※3 H24年度の小6国語A・B、小6算数A・B、小6理科、中3国語A・B、中3数学A・B、中3理科及びH25年度の小6国語A・B、小6算数A・B、中3国語A・B、中3数学A・Bについては、全国調査問題を利用しているが、参考のために、県独自に到達基準を設定している。
※4 網掛けについては「十分達成」に対する割合が1.0を上回っている教科を示している。
※到達基準は、 十分達成/おおむね達成 のラインを示している   → 到達基準の設定について

  県の各教科正答率の「十分達成」に対する割合をグラフに表すと次のようになる。「十分達成」を1.00としたときの、各教科正答率の比率を示している。「おおむね達成」の基準は各教科で若干異なる。

■各学年・教科正答率の「十分達成」に対する割合 (十分達成=1.00)
 

   
   
教科に関する調査 教科ごとの概要
   
 

① 国語

 

○ 学年別正答率では、小学5年、6年B以外は、「おおむね達成」の基準に到達していた。
○ 小中学校ともに、伝えたいことを相手に分かるように話したり、適切な言葉遣いで話したりするなど、話す・聞く能力については、一部基準に満たない学年があるが、昨年までと同様、おおむね良好であった。
○ 書く能力において、小学校では、目的に応じて必要な事項をまとめることに課題が見られた。また、中学校では、「おおむね達成」の状況であったが、書いた文章を読み返し、読みやすく分かりやすい文章にすることに課題が見られた。
○ 読む能力については、小学5年、小学6年Bにおいて、「おおむね達成」の基準に到達していない。目的に応じて、要点をまとめたり、表現を比べたりすることには課題が見られた。

  《指導改善のポイント》

◎ 6年間または9年間の指導事項を整理し、系統性を明らかにした上で、身に付けたい力に合った言語活動を位置付けた効果的な指導
◎ 国語での学びが日常生活で役に立つことを、児童生徒に実感させる学習指導の工夫
◎ 「書くこと」と「読むこと」とを関連付けた学習指導の充実

   
  ② 社会
 

○ 教科正答率では、小学校6年生、中学校3年生以外は、「おおむね達成」に到達している。
○ 小学校では、設問に合わせて必要な資料から必要な情報を読み取り、解答を導き出すことはおおむねできていたが、複数の資料を関連づけて解答を導き出すことについては、課題が見られた。また、中学校では、小学校同様必要な資料から必要な情報を読み取り解答を導き出すことはおおむね良好であったが、社会的事象について、資料から読み取ったこと、自分で解釈したことを文章で説明することに課題が見られた。
○ 内容・領域別に見ると、小中学校ともに、地理的分野については、「おおむね達成」に到達している学年が多い。しかし、歴史的分野では、どの学年(小学校6年生、中学校1、2年の学習内容)も、「おおむね達成」に到達しておらず、学習内容の定着に課題が見られた。

  《指導改善のポイント》
◎ 社会的事象の意味を説明したり、自分の考えをまとめたりする学習活動や、社会的な問題について解決策の有効性について話し合っていくことで自分の考えを作り上げていくような学習活動の工夫
◎ 確実な知識、概念の習得のために、既習の知識や資料から読み取った情報を関連付けて社会的事象の意味を説明する学習活動や、作業的、体験的な学習活動を取り入れた授業の工夫
◎ 習得した知識、概念や技能を活用して、自分が考えたことを説明したり、論述したりする学習活動の工夫
   
  ③ 算数・数学
 

○ 小中学校ともに、四則計算や算数、数学に係る基礎的な知識など、基礎的・基本的な事項の定着はおおむね良好であった。
○ 提示された条件を整理し、問題の解答方法を式や言葉で説明することなど、数学的な見方や考え方については、引き続き課題が見られた。
○ 中学校では、「一次関数の表から変化の割合を求める」など、「関数」の領域に課題が見られた。また、学習指導要領が変わり、新しく追加された指導内容(球の体積など「図形」に関わるもの、最頻値など「資料の活用」に関わるものなど)については、昨年同様課題が見られた。

 

《指導改善のポイント》
◎ 小集団活動などを通して、考えたことを言葉、式、図、表などを用いて根拠を明らかにして表現させ、それを基に筋道を立てて説明させる活動の充実
◎ 言葉や数、式、図、表、グラフなどを適切に用いて問題を解決したり、互いに自分の考えを表現し伝え合ったりする指導の工夫

   
  ④ 理科
 

○ 小学校・中学校ともに、自然の事物事象に関する基礎的な知識の定着については、一部の学年に「おおむね達成」の基準を満たしていない学年があるが、おおむね良好であった。
○ 小学校・中学校ともに観察・実験の基礎的・基本的な技能の定着については、改善の傾向にあるが、まだ課題が見られる。
○ 小学校では、例えば、「ペットボトルの周りに水滴がつくことを説明する」こと、また、中学校では、「資料を基に、冬の日本海側が太平洋側と比べて雪が多く降る理由を説明する」ことなど、身の回りの自然現象を、学習した事項と関連づけて説明することに課題が見られた。

  《指導改善のポイント》

◎ 知識・技能を確実に習得させ、それらを日常生活に活用させる指導の工夫
◎ 問題解決学習(中学校では探究活動)を充実させていくような指導の継続

   
  ⑤ 英語
 

○ 2年生、3年生ともに、すべての観点で、「おおむね達成」の基準を上回っていたが、「複数の情報を関連付けて理解し、判断する力には、課題が見られた。
○ 内容・領域別に見ると、これまで課題であった「書くこと」では、テーマに合わせたまとまりのある英語の文章(複数センテンスを述べる)を書くことについては、改善の傾向が見られた。
○ 理解の領域では、「疑問文の構造を理解し、語と語のつながりに注意して書く」など、基本的な文の構造を理解し、正しく書くことに課題が見られた。

  《指導改善のポイント》

◎ 聞く活動において、様々な談話形式の英文を聞かせることや目的意識をもって聞かせることなど、多様な学習活動の充実
◎ 読解の際に、挿絵、写真、グラフ、及び表などの視覚的な情報を読み取らせることと本文の内容を関連付けていく指導の充実
◎ 文法指導を言語活動と一体的に行い、言語材料の定着を図る指導の工夫

   
   
児童生徒意識調査及び児童生徒質問紙の概要
   
 

※意識調査は県調査の児童生徒意識調査及び全国調査の児童生徒質問紙の回答を分析したもの。(共に、各学校で入力を行ったデータに基づいている。)
※平均正答率とのクロス集計は、全教科の平均正答率を示す。

   
  (1) 授業への関心・理解度

○ 「各教科の学習が好き」という問いにして「当てはまる」、「どちらかといえば当てはまる」と回答した児童生徒の割合の変化(同学年)を見ると、次の教科、学年において改善が見られる。

   ◇国語-中学1年、2年                   ◇社会-中学1年、2年

   ◇算数・数学-小学6年、中学1年、2年、3年      ◇理科-中学1年

○ 国語科では、小学校5年、6年生、中学3年生で「当てはまる」、「どちらかといえば当てはまる」と回答した児童の割合が減少している。

  また、同一児童生徒の意識の変化(経年変化)を見ると、学年進行に伴い、「当てはまる」と回答する児童が減少する傾向にある。

 

○ 「各教科の授業の内容はよく分かる」という問いに対して「当てはまる」、「どちらかといえば当てはまる」と回答した児童生徒の割合の変化(同学年)を見ると、次の教科、学年において改善が見られる。

 ◇国語-中学1年、2年                           ◇社会-小学5年、中学1年、2年

 ◇算数・数学-全学年                         ◇理科-中学1年、2年

○ 同一学年児童生徒の意識の変容を見ると、小学校6年国語においては、「当てはまる」、「どちらかといえば当てはまる」と回答した児童の割合が減少している。

 

《指導改善のポイント》

◎ 他教科や日常生活とのつながりを意識させる授業づくりを

児童生徒が教科の学習を好きになる理由の1つに、各教科の学習が「他教科や日常生活に生かせる」「将来役立つ」などの有用感がある。そこで、学習課題(学習問題)を日常生活から設定したり,他教科において学習した内容を生かさせるような学習の場を設定したりして、学習したことが他教科や日常生活と結び付いていることを意識付けることが大切である。

   
 

(2) 学習活動に関する意識
○「普段の授業では、自分の考えを発表する機会があたえられていると思う」の質問については、昨年度課題だった中学3年についても改善が見られ、全ての学年で、「当てはまる」と回答している児童生徒の割合が増加している。さらに、「普段の授業では、生徒の間で話し合う活動をよく行っていると思う」の質問についても同様の傾向が見られた。

○「学校の授業などで、自分の考えを他の人に説明したり、文章に書いたりするのは難しい」の質問については、小学校5年で改善の兆しが見られるものの、他の学年では、昨年同様、「当てはまる」と回答している児童生徒の割合が減少している。

  《指導改善のポイント》

◎ 自分の考えと他者の考えを比較する場の設定を

自分の考えを発表し交流する活動は、自分の考えと他者の考えとを比較する活動であり、児童生徒の思考力・判断力・表現力等を育成していく上で大切な活動である。考えを発表する場では、聞き手に相似点や相違点を考えながら聞かせたり、発表者に相似点や相違点を示しながら発表させたりするなどの工夫も大切である。

◎ 自分の考えを記述する活動を

自分の考えを文章に書いて表現する活動は、自分の考えを整理することにつながるだけでなく、自分の考えを明確にする効果も期待できる。自分の考えを書き表すための指導を丁寧にしていくことが大切である。

   
 

(3) 家庭学習に関する意識
○家庭での勉強時間は、月~金曜日、及び学校が休みの日のともに、1時間以上取り組んでいる児童生徒の割合が増加している。

○家庭学習の取組については、「自分で計画を立てて勉強している」「学校の授業の復習をしている」の質問に対して、一部の学年を除いて、「している」と回答した児童生徒の割合が増加している。

○「学校の宿題をしている」の質問に対しては、昨年度、改善の傾向にあったが、本年度は、中学1年以外の学年で「している」と回答した児童生徒の割合が減少している。

○全教科平均正答率との相関を見ると、「自分で計画を立てて勉強している」「学校の授業の復習をしている」の質問に対して、「している」、「どちらかといえばしている」と回答した児童生徒の正答率が高い傾向にある。

 

《指導改善のポイント》

◎ 家庭との連携を図り、家庭学習の定着を

家庭学習への意識を定着させるためには、年度当初に示すだけでなく、定期的に意識付けを図る必要がある。意識付けを図る方法の1つとして、児童生徒やその保護者を対象とした意識調査を行うことが考えられる。意識調査を定期的に行っていくことで、児童生徒に家庭学習の状況を振り返らせながら意識の定着を図るだけでなく、その保護者に対しても家庭での児童生徒の学習状況について考えてもらう機会としたい。

◎ 家庭での過ごし方に計画性を

学習時間を延ばすことも大切であるが、限られた時間をどのように活用していくかについて児童生徒に考えさせることも大切であると考える。1日の過ごし方や1週間の過ごし方について考えさせる時間を学校または家庭で確保し、計画的な過ごし方を意識させ、効率のよい学習習慣を身に付けさせることが大切である。

   
 

(4) 学校生活、家庭生活に係る意識

○学校生活については、「学校での生活は楽しい」の質問に対して、「そう思う」と回答した児童生徒は、小学5年は昨年並みだが、中学1年ではやや減少している。逆に、中学2年では増加している。

○「学校では落ち着いて勉強することができている」の質問に対して、小学5年は、昨年並みだが、中学2年で「そう思う」と回答した児童生徒の割合が増加している。逆に、中学1年では減少している。(県調査のみの質問であるため、小学6年、中学3年の結果はない。)

○家庭生活については、平日1日あたりのテレビやビデオ・DVDを視聴する時間が2時間以上の児童生徒の割合が、全ての学年で減少している。逆に、平日1時間以上テレビゲームをする児童生徒の割合は、全ての学年で増加している。また、テレビの視聴時間、ゲームをする時間が長いほど、教科平均正答率が低く、短いほど高い傾向がある。

○「朝食を毎日食べている」の質問については、「している」と回答した児童生徒の割合が、小学5年、6年、中学3年では増加しているが、中学1年、2年では減少している。

○「新聞やテレビのニュースなどに関心がある」の質問については、中学1年は昨年度並みだが、小学5年、中学2年では、「当てはまる」と回答した児童生徒の割合が増加している。

※全国調査の項目が変更されたため、小学6年、中学3年は該当データなし。

○「将来の夢や目標をもっている」の質問については、「当てはまる」と回答した児童生徒の割合が、全ての学年で増加している。

 

《指導改善のポイント》

◎ 支持的風土から安心して学習に取り組める環境づくりを

友達同士が、互いに認め合ったり励まし合ったりすることは、安心して学習に取り組める環境へとつながる。この安心して学習に取り組める環境が、学習者同士で互いの考えを安心して伝え合うことにつながる。つまり、安心して考えを伝え合うことは、安心して学び合うことであり、学力の向上へとつながっていくのではないかと考える。そのため、学級経営を基盤とした授業づくりが大切である。

◎ 家庭との連携を図り、計画的な過ごし方を

家庭での過ごし方についても家庭学習と同様に、計画性をもたせる必要がある。学校外での過ごし方について計画を立てさせることで、児童生徒にこれまでの過ごし方を振り返らせると共に、家庭でのよりよい過ごし方について考えさせることも大切である。

   

最終更新日:2013-10-21