平成24年度佐賀県小・中学校学習状況調査及び全国学力・学習状況調査を活用した調査Web報告書

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Ⅲ 各教科の調査結果の分析   

  ※ 中学1年生の調査については、小学6年生の学習内容としているため、小学校の項で分析している。

小学校算数

  知識・技能を身に付け、筋道を立てて考え、表現する能力を育てる授業づくり

「数量や図形についての技能」「数量や図形についての知識・理解」の評価の観点別正答率及びほとんどの内容・領域別正答率において、「おおむね達成」の基準を上回った。しかし、小学5年生と中学1年生の「数学的な考え方」の観点別正答率が「おおむね達成」の基準を共に下回った。また、「活用」に関する問題や「発展的・応用的問題」の正答率でも、小学5年生と中学1年生が「おおむね達成」の基準を共に下回っており、課題である。授業においても算数的活動を充実させ、数量や図形についての基礎的・基本的な知識・技能を確実に定着させるとともに、思考力・判断力・表現力を高めることが必要である。

この後、評価の観点については、以下のように記す。

 ○算数への関心・意欲・態度

 ○数学的な考え方

 ○数量や図形についての技能

 ○数量や図形についての知識・理解

本調査では設定なし

「考え方」

「技能」

「知識・理解」

 

 

結果の概要
 

各学年ごとに教科の正答率について到達基準との比較を示す。

(ア)
教科及び設問ごと正答率
 
教科正答率 各種グラフ

正答率ごとの分布

観点別達成状況 

内容・領域別達成状況 

基礎と発展の比較

「活用」に関する問題

設問ごと正答率

sho5san

 

教科正答率 各種グラフ

正答率ごとの分布

観点別正答率 

内容・領域別正答率 

設問ごと正答率

sho6sana

 

教科正答率
各種グラフ

正答率ごとの分布

観点別正答率 

内容・領域別正答率 

設問ごと正答率

sho6sanb

 

教科正答率 各種グラフ

正答率ごとの分布

観点別達成状況 

内容・領域別達成状況 

基礎と発展の比較

「活用」に関する問題

設問ごと正答率

chu1su

教科正答率においては、小学5年生、小学6年生(A問題・B問題)、中学1年生の全て「おおむね達成」の基準を上回る結果となった。

 
(イ)

評価の観点別正答率

①小学5年生

図1 H24年度(小学5年生算数)評価の観点別正答率

「技能」「知識・理解」では、「おおむね達成」の基準を上回った。一方、「考え方」においては、「おおむね達成」の基準を14.6ポイント下回っており、これについては中学校1年生においても同じような傾向が見られた。小学校5年生における課題としては、特に次の2点が挙げられる。

  ○提示された場面と式を読み取る力が十分ではない。

  ○提示された図形の回りの長さを求めるなどの,解決方法を説明する力が十分ではない。

  

②小学6年生

図2 H24年度(小学6年生算数A問題)評価の観点別正答率

「技能」では、「十分達成」の基準を1.3ポイント上回った。また、「知識・理解」では、「おおむね達成」の基準を2.9ポイント上回った。しかし、基準量、比較量、割合を図と対応させることが十分でなかったことや基準量の求め方が十分に理解できていないことが分かった。

図3 H24年度(小学6年生算数B問題)評価の観点別正答率

「考え方」「知識・理解」では、「おおむね達成」の基準を上回った。さらに、「技能」においては、「十分達成」の基準を2.8ポイント上回る結果となった。「技能」においては、提示された図と式を関連付けさせる等の問題では高い正答率であったことなどが考えられる。「考え方」においては、「おおむね達成」の基準を3.5ポイント上回る結果となったが、判断した理由などを記述することには課題が見られる。

 

③中学1年生
図4 H24年度(中学1年生数学)評価の観点別正答率

「技能」「知識・理解」では、「おおむね達成」の基準を上回った。一方、「考え方」においては、「おおむね達成」の基準を8.7ポイント下回っており、これについては小学5年生においても同じような傾向が見られた。中学1年生において特に課題としては、次の2点が挙げられる。

  ○比の考え方を使って、指定された長さを求める考える力が十分ではない。

  ○割合と比較量を考えて、条件に合った人数を求めるなど,解決方法を説明する力が十分ではない。

 
(ウ)

内容・領域別正答率

内容・領域別正答率においては、全ての学年で「数と計算」「量と測定」「図形」においては「おおむね達成」の基準を上回る結果であった。特に、中学校1年生における「図形」では「十分達成」の基準を上回る結果となった。一方、「数量関係」においては、小学5年生と小学校6年生算数B問題において「おおむね達成」の基準を下回る結果となった。

①小学5年生

図5 H24年度(小学5年生算数)内容・領域別正答率

「数と計算」「量と測定」「図形」では「おおむね達成」の基準を上回る結果であったが、「数量関係」においては「おおむね達成」の基準を2.4ポイント下回っており、課題が残った。例えば表された式を読み取って、正しく( )を用いて式を考えるような問題などに課題が見られた。

②小学6年生

図6 H24年度(小学6年生算数A問題)内容・領域別正答率

「数と計算」「量と測定」「図形」「数量関係」の全ての内容・領域で「おおむね達成」の基準を上回る結果であった。しかし、「数と計算」の場面と図とを関連付けて、2つの数量の関係を理解する力や「数量関係」で百分率の理解が十分ではないことなどの課題が見られた。

図7 H24年度(小学6年生算数B問題)内容・領域別正答率

「数と計算」「量と測定」「図形」では「おおむね達成」の基準を上回る結果であったが、表から適切な数値を取り出して割合の大小を判断しその理由を言葉や式を用いて記述するような「数量関係」においては「おおむね達成」の基準を1.3ポイント下回っており、課題が見られた。

③中学1年生

図8 H24年度(中学1年生数学)内容・領域別正答率

中学1年生においては全ての領域で「おおむね達成」の基準を上回る結果であった。特に点対称な図形における対応する点や辺の位置関係の理解などを問う問題の正答率が高かった「図形」では「十分達成」の基準を4.4ポイント上回る結果となった。しかし、「数量関係」では、割合と比較量を考えて、条件に合った人数を求め、その方法を説明する力が十分ではないことなどの課題が見られた。

   

経年比較 

 

小学校6年間の学習の成果を経年で比較して考察するために、平成23年度と平成24年度の中学1年生に着目し、同一学年の経年比較を行う。経年比較の内容は「基礎的・基本的問題」における正答率の比較と平成23年度に課題として挙げられていた「活用」における正答率の比較をして考察を行った。また、平成22年度の小学5年生と平成24年度の中学1年生の「基礎的・基本的問題」及び「発展的・応用的問題」の正答率を比較することで2年間の学習状況の変容について考察する。

   
(ア)

「基礎的・基本的問題」の経年比較
中学1年生(同一学年)

図9 H23・24年度(中学1年生数学)「基礎的・基本的問題」の

正答率の経年比較

「基礎的・基本的問題」の正答率は、平成23年度の正答率は71.9で、「おおむね達成」の基準を9.5ポイント上回っていた。平成24年度の正答率は80.3で、「おおむね達成」の基準を17.8ポイント上回っていた。平成23年度と比較すると正答率は8.4ポイント上回っている。平成24年度は、「図形」において点対称な図形における対応する点や辺の位置関係についての理解や拡大図についての理解が良好であった。また、「量と測定」において速さを求める公式などの理解も良好であったことが要因であると考えられる。

   
(イ)

「活用」に関する問題の経年比較

①中学1年生(同一学年)

図10 H23・24年度「活用」に関する問題の正答率の経年比較

「活用」に関する問題の正答率は、平成23年度の正答率は36.1で、「おおむね達成」の基準を10.9ポイント下回っていた。また、平成24年度の正答率は36.0で、「おおむね達成」の基準を12.0ポイント下回っていた。平成23年度と同様に「活用」に関する問題においては課題が見られる。領域別に見てみると、「数と計算」においては最大公約数の考え方を使う問題、「量と測定」においては角柱の体積の公式を使って立方体に入っていた水の深さを考える問題、また、平均の考え方を使って平均点が何点増加したかを求め、その方法を説明する問題、「数量関係」において割合と比較量を考えて、条件に合った人数を求め、その方法を説明する問題において「おおむね達成」の基準を下回る状況であった。

   
(ウ)

平成24年度中学1年生と平成22年度小学5年生(同一生徒)

「基礎的・基本的問題」及び「発展的・応用的問題」の経年比較

図11 H22年度小学5年生・H24年度中学1年生の「基礎的・基本的問題」及び

「発展的・応用的問題」の正答率の経年比較

「基礎的・基本的問題」の正答率は、平成22年度の正答率は74.3で、「おおむね達成」の基準を11.4ポイント上回っていた。また、平成24年度の正答率は80.3で、「おおむね達成」の基準を17.8ポイント上回っていた。基礎的・基本的な力は2年間で更に向上していったと考えることができる。一方、「発展的・応用的問題」においては、平成22年度の正答率は49.1で、「おおむね達成」の基準を3.4ポイント下回っていた。平成24年度の正答率は45.1で、「おおむね達成」の基準を6.7ポイント下回っていた。「おおむね達成」の基準から見ると2年間で約3ポイント下回る結果となり課題である。

設問ごとに見た傾向と指導改善の手立て
  平成24年度の調査で、正答率が低かった問題と無解答率が高かった問題について、「基礎的・基本的な知識・技能の定着」と「数学的な思考力・判断力・表現力の育成」の2つの視点で、分析を行った。
   
傾向1

基礎的・基本的問題の中で、一部の学習内容において定着に課題がある。

[小学5年生 大問2の(5)]  
○ 問題の概要

○ 解答状況

「おおむね達成」の期待正答率60.0に対して、正答率は31.7であり、28.3ポイント下回った。1㎡という面積の単位の意味理解が確実にできていないことや1㎡を1辺が100㎝の正方形という見方をして計算で求めることができなかったことが要因であると考えれる。
○ 指導改善の手立て

1㎡=10000c㎡ということを意味理解が伴わずに暗記させるのではなく、mを㎝に単位を変えさせてから1辺×1辺をして面積を求めさせる活動を取り入れて、計算で求められることを児童に気付かせることが大切である。

[小学6年生 A問題 大問3]  
○ 問題の概要

○ 解答状況

「おおむね達成」の期待正答率60.0に対して、(1)の正答率は32.3であり、27.7ポイント下回った。また、(2)の正答率は39.8であり、20.2ポイント下回った。場面と図とを関連付けて、二つの数量の関係を理解することや、1に当たる大きさを求めるために除法が用いられることの理解が十分ではないことが要因であると考えられる。
○ 指導改善の手立て

問題の場面から、基準量と比較量を的確に捉えるために、数量の関係を図に表したり、図から読み取ったりする活動を仕組むことが大切である。数量の関係を図に表したり、図から読み取ったりして、基準量がどれに当たるのかを捉えさせたり、基準量を求める場面においても、基準量と割合を用いた乗法の式に表してから除法の式に表させたりすることが大切である。

 

 

[中学1年生 大問9]  
○ 問題の概要

○ 解答状況

「おおむね達成」の期待正答率55.0に対して、正答率は26.2であり、28.8ポイント下回った。比の考え方を使って木の高さを考えることができることに気付かなかったことや比の値を基にして木の高さを求めることができなかったことが要因であると考えられる。
○ 指導改善の手立て

料理などの日常生活の場面から比を利用して材料の重さなどを求めることができるよさに気付かせることが必要である。また、比は、比例、反比例や縮図・拡大図などと深い関連があるので、相互に理解を深めることができるように配慮して指導することが大切である。
   
傾向2

基礎的・基本的な知識・技能を活用することに課題がある。

[小学5年生 大問10]  
○ 問題の概要

○ 解答状況

「おおむね達成」の期待正答率50.0に対して、正答率は5.3であり、44.7ポイント下回った。問題場面や言葉の式と式を関連付けて、正しく( )を付けることができなかったことが要因であると考えられる。
○ 指導改善の手立て

数量の関係を四則の混合した式や( )を用いた式に表したり、そのような式を読み取ったりして、式のよさが分かるようにするとともに、式を適切に用いることができるようにすることが大切である。そこで、問題場面と図示されたものを関連付けて考えさせるために、図示されたものに分かっている情報を付加するなどして理解を助けるように指導することが考えられる。また、言葉の式と図示されたものを関連付けていく指導も継続的に行う必要がある。さらに、式に( )が付いたときの計算方法について振り返らせるとともに、( )を付けた式が題意と対応しているかを確かめさせるような指導を行うことも大切である。

[小学5年生 大問14]  
○ 問題の概要

○ 解答状況

「おおむね達成」の期待正答率45.0に対して、正答率は14.6であり、30.4ポイント下回った。また、無解答率も26.3と高い状況であり、問題の意味を正確に捉えられなかったことや計算を段階的に行うことができなったことが要因であると考えられる。
○ 指導改善の手立て

掲示板の横の長さと画用紙の縦の長さ、及び横の長さを基にして1つの間を求める問題であった。また、情報過多の問題場面から必要な情報を選択して解決を図らせる問題であった。このように問題場面を把握し、解決するには、どの情報が必要なのかを考えて問題解決に取り組ませることが必要である。また、式が多くなるような場合も、何を求めるための式なのかを言葉と結び付けて解決していく態度を養うことも大切である。さらに、問題文から分かった情報を図にかき入れるなどの活動を取り入れながら式を立てる際の手掛かりにさせていくなどの指導も大切である。

[小学6年生 A問題 大問5の(3)]  
○ 問題の概要

○ 解答状況

「おおむね達成」の期待正答率50.0に対して、正答率は26.3であり、23.7ポイント下回った。表の中から必要な数値を取り出して割合を求めることができなかったことが要因であると考えられる。
○ 指導改善の手立て

割合を求めさせるには、基準量と比較量の関係を関係図などを通して考えさせることが必要である。また、2つ以上の事象の大きさを比べるときには、量で比べる場合と割合で比べる場合があることを理解させ、目的に応じて適切に使い分けることができるように指導することが大切である。

[中学1年生 大問16の(2)]  
○ 問題の概要

○ 解答状況

「おおむね達成」の期待正答率45.0に対して、正答率は24.5であり、20.5ポイント下回った。中学2年生と中学3年生の生徒数を比較量として基準量を求めて中学1年生の生徒数を求めたり、比を活用して中学1年生の生徒数を求めることができなかったことが要因であると考えられる。
○ 指導改善の手立て

この問題では、割合と比較量から基準量を求めるという構成であるため、児童が苦手とするものである。しかし、表からどの情報を使うことができるかを考えさせ、関係図などを通して式を立てるときの手掛かりとなるように指導を続けることが必要である。また、中学2年生と中学3年生を合わせた生徒数が60%であるという情報から中学1年生は40%に当たるということも考えることができるように図などから判断できるように指導していくことも大切である。

   
これからの指導に向けて
 

今回の調査によって明らかとなったことは、図や表を使って解決を図ったり、問題場面と対応させ、式に表したり、式を読んだりすることに課題があることが分かった。また、いくつかの情報の中から必要な情報を取り出して解決したり、日常の事象を算数の知識・技能を使って解決したりすることに課題があることが分かった。そこで、これからの指導に向けて、以下の4点について留意しながら授業に取り組んでいくことが大切であると考える。

(ア) 図や表を用いて数量の関係を理解できるような活動を積極的に取り入れる。

児童に図や表を読み取ったり、かいたりして数量の関係を理解させることは算数科の指導ではとても大切なことである。指導に当たっては、数量の関係が文章で与えられた場面で、文章から分かることを順序よく図に表す活動を取り入れることが大切である。また、小集団で図を基に友達に解決方法を説明させたり、図を基に話合いを進めさせたりすることも有効である。さらに、全体の話合いにおいても図を使って解決方法の有効性などを検討していくような活動を取り入れることも大切である。例えば、関係図などを問題場面に即してかかせ、小集団の中で説明したり友だちの説明を聞いたりしながらどのような関係図が適切なのかを話し合わせることなどが考えられる。また、全体でも関係図などをかくことによって数量の関係がよく分かることなどの有効性について話し合いの場をもつことも大切である。

(イ) 問題場面を把握させ、それを式に表したり、式を読んだりする活動を積極的に取り入れる。
図で示された事象を観察し、それを式に表したり読んだりすることができるようにすることは算数科の学習を進めていく上で大切なことである。指導に当たっては、示された図の中の情報と式とを適切に対応させることが大切である。また、考えた式がどのような意味をもつのか図と対応させたり、言葉で説明させたりすることも大切である。例えば、自分が立てた式を実際に解かせ、問題場面と対応するのかを自分で判断させたり、式に番号を付けるなどして番号と図を対応させることも大切である。また、小集団において問題場面の情報を使って、自分が立てた式の説明をさせることによって考えのよさや間違いに気付かせるような活動も大切である。

() 必要な情報を取り出して説明する活動を積極的に取り入れる。

判断の根拠を説明する際、問題場面から必要な情報を取り出したり、情報を組み合わせたりして表現することは、筋道立てて考えさせる上で大切である。また、どのような手順で考えていけばよいのかといった解決の見通しを吟味する活動を取り入れることも大切である。指導に当たっては、情報過多の問題場面から必要な情報を選択させ、児童一人一人に解決させたことを図や表などを使って説明させることが大切である。また、それを基にして小集団活動などを通して説明が十分なものであるか、解決の手順としてふさわしいものであるか、または説明のよさなどを相互評価させるような活動を取り入れることが大切である。例えば、情報過多の問題場面から指定された面積を求める際にどの長さを測定すれば正しく面積を求められるかを説明させたり,小集団の中で解決方法を説明させたりして考え方のよさなどを児童に出し合わせることも有効な手段である。

 

() 日常の事象を、算数で学習した内容と関連付ける活動を積極的に取り入れる。

児童が算数の知識・技能を実生活の様々な場面に活用することは、学習したことを定着させたり、算数のよさを実感させたりする上で大切なことである。指導に当たっては、日常の事象を数や量になどに着目して観察する学習の機会を設定することが大切である。そのようなことが、児童の算数と日常生活との関わりについての興味・関心を高めることにつながると考える。例えば、拡大図・縮図の考え方を使って校舎の高さを考えたりすることなども大切である。また、算数科ばかりでなく社会科や図画工作科などの他教科においても様々な事象を算数の視点からも振り返らせて、算数の用語を用いて捉えさせることも考えられる。

 

 

   
授業実践に参考となるリンク
   
 
   
 

最終更新日: 2012-10-15