今回の調査によって、「自然の事物・現象の解釈をしたり、理由について考えを述べたりすること」、「実生活との関連を図ること」「観察、実験の意味を理解して、観察、実験に取り組むこと」について課題があることが分かった。そこで、学習指導要領の改善の具体的事項の中に「科学的な見方や考え方が一層深まるように、観察・実験の結果を整理し考察し表現する学習活動を重視する」と言語活動の充実が述べられていることを踏まえ(ア)から(エ)の手立てを通して、指導改善について述べる。
(ア) 日常生活と関連を図った問題解決に取り組ませること
学習と日常生活と関連を図るためには、児童が生活の事物・現象から問題を見い出し、それを解決していこうとする態度をもたせることが大切である。例えば小学4年生の「自然の中の水」では、雨が降った後の運動場の様子の観察から始まり、水面から蒸発する様子、地表面から蒸発する様子を観察する。水面や地表面などから蒸発した水が、冷やされて結露することを学ぶ。一方、児童は日常生活で「池や沼から湯気が上がっている様子」や「ぬれていた洗濯物や道路が乾く様子」、「夏には冷たい飲み物の容器に水滴が付く様子」、「お風呂の窓や鏡に水滴が付く様子」などを経験している。これらの経験を単元の導入で提示し、「なぜコップの外側に水滴が付くの」、「どうして運動場や道路が乾くの」などの疑問をもたせる。それらの疑問を1単位時間で学習したことを使って説明するような活動を行うことによって、学びと日常生活や自然の事物・現象が関係付けられ確かな学びとなると考える。このように、常に教師は日常生活と学習との関連を意識した学習指導を行うことが大切である。
(イ)
観察、実験の意味を理解させて活動を行わせること
児童の多くは「実験をする」ことにはとても興味を抱き、楽しく学習活動を行う。しかし、観察、実験そのもののもつ操作の楽しさに終始してしまい、学ぶべきことに意識が働かないことがある。観察、実験を行う際には、児童と一緒に実験の計画を立てたり、目的を明確にして進めていったりすることが大切である。例えば小学4年生では、金属にロウを塗り、ロウの溶け方をみることで金属があたたまっていく様子を考察する。「金属が温まる様子が目に見えるようにするために、どんなものを使えばいいか」を児童と一緒に実験計画を立てることなどがそれに当たる。小学5年生では、種子が発芽するための条件を調べるために条件を制御する。「発芽に空気が必要なことを調べるためには、どの条件を揃え、どの条件を違えるのか」など実験の目的を明確にもたせる活動が大切である。実験の目的が明確で、正確に実験された結果を基に考察することが科学的な思考力につながると考える。また、このとき正しい実験器具や薬品の使い方を身に付けさせることも大切である。
(ウ) 思考と表現を結ぶ言語活動の充実を図ること
学習指導要領の改訂により評価の観点が「科学的な思考」から「科学的な思考・表現」となった。理科の学習において、児童の思考を表現させることで、その表現を基に思考の評価を行っていこうとするものである。児童が事物、現象に対してどのような考えをもっているのか、どのように解決しようとしているのか、なぜそう思うのかなど、児童に自分の考えを表現させる場の設定やワークシートの記述のさせ方の工夫が必要である。児童は、自分では分かっているつもりでも、実際に書いたり友達に説明したり、説明を聞いたりすることで、「自分の分かっている点」、「曖昧な点」、「間違っていた点」などを整理する。それらを自覚し、再思考することで探究活動がより充実したものになると考えられる。
(エ)全国学力・学習状況調査の結果を踏まえた指導改善を図ること
全国学習状況調査の問題は、3年生から5年生までの学習内容によって構成されていた。佐賀県学習状況調査は前年度の学習内容を問うもので、その点に違いが見られたために解答に戸惑った児童も多かったのではないだろうか。理科の学習は「エネルギー」「粒子」「生命」「地球」の内容が各学年に系統的に配置されている。教師は学習を進めるときに、「どの領域の学習でどの学年のどの単元につながっているから、本単元ではこの力を付けたい」という学習の系統性を意識する必要がある。
国立教育政策研究所の資料によると、全国学習状況調査は、主として「知識」に関する問題と主として「活用」に関する問題で構成されている。主として「活用」に関する問題では、理科の学習で学んだ知識・技能が実際の自然の中で成り立っていることを捉えたり、日常生活の中で役立てられていることを確かめたりすることができるかどうか、つまり知識・技能を活用しているかどうかを問うものである。
学習で身に付けた知識・技能を活用する問題の視点として次の4つが挙げられている。
「適用」…理科で学んだ自然の事物・現象の性質や働き、規則性などに関する知識・技能を、実際の自然や日常生活などに当てはめて用いること。例えば、水は温度によって水蒸気や氷に変わることを学んだ後に、洗濯物を干していると自然に乾くことや、空気は圧し縮めることができることを学んだ後に、どうしてボールは弾むのかなどを考えさせることが考えられる。
「分析」…自然の事物・現象に関する様々な情報及び観察、実験の結果などについて、その要因や根拠を考察し説明することができること。例えば、光電池をつけたモーターカーを教室の後ろの棚に置いていたら、誰もさわっていないのに次の朝には床に落ちていたのはなぜかなどを考えさせることである。
「構想」…身に付けた知識・技能を用いて、他の場面や他の文脈において、問題点を把握し解決の方法を構想したり、問題の解決を想定したりすることができること。例えば、ジャガイモの葉に日光が当たるとデンプンができるかを調べる実験計画を立てることなどが考えられる。
「改善」…身に付けた知識・技能を用いて、自分の考えを証拠や理由に立脚しながら主張したり、他者の考えを認識し、多様な観点からその妥当性や信頼性を吟味したりすることなどにより、批判的に捉え自分の考えを改善できること。例えば、空気と水を容器に閉じ込めておき、上から圧すと両方縮むと思っていたが、実験結果はそうならなかった。それは、空気は圧し縮めることができるが、水は圧し縮めることができないからだ。と実験結果から自分の考えを改善させることなどが考えられる。
これからは、この4つの視点をもった授業づくりをしていくことが必要だと考えられる。
これら(ア)から(エ)の手立てを通して指導改善を行っていくことが大切である。
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