平成24年度佐賀県小・中学校学習状況調査及び全国学力・学習状況調査を活用した調査Web報告書

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Ⅲ 各教科の調査結果の分析   

  ※ 中学1年生の調査については、小学6年生の学習内容としているため、小学校の項で分析している。
  

小学校国語

  「読むこと」における系統的・段階的な指導の工夫を

小学5年生では、「話す・聞く」「書く」「言語についての知識・理解・技能」の評価の観点は、「おおむね達成」の基準を上回った。小学6年生では、「話す・聞く」「言語についての知識・理解・技能」の評価の観点は、「おおむね達成」の基準を上回った。中学1年生の「言語についての知識・理解・技能」においては、「十分達成」の基準を上回った。しかし、小学5年生、中学1年生ともに、「読むこと」の「文章の内容を的確に押さえ、求められている表現の仕方に合わせてまとめる」に課題が見られた。今後は、「読むこと」における系統的・段階的な学習指導の工夫が必要である。

国語科においては、評価の観点と内容・領域が重なるという教科の特質上、以下のように記す。

 ○国語への関心・意欲・態度

 ○話す・聞く能力

 ○書く能力

 ○読む能力

 ○言語についての知識・理解・技能

「関心・意欲・態度」(小学6年生のみ設定)

「話す・聞く

「書く」

「読む」

「知識・理解・技能」

 
       

 

結果の概要
 

各学年ごとに教科の正答率について到達基準との比較を示す。

(ア)
教科及び設問ごと正答率
 
教科正答率 各種グラフ

正答率ごとの分布

観点別達成状況 

内容・領域別達成状況 

基礎と発展の比較

「活用」に関する問題

設問ごと正答率

sho5koku

 

教科正答率 各種グラフ

正答率ごとの分布

観点別正答率 

内容・領域別正答率 

設問ごと正答率

sho6kokua

 

教科正答率 各種グラフ

正答率ごとの分布

観点別正答率 

内容・領域別正答率 

設問ごと正答率

sho6kokub

 

教科正答率 各種グラフ

正答率ごとの分布

観点別達成状況 

内容・領域別達成状況 

基礎と発展の比較

「活用」に関する問題

設問ごと正答率

chu1koku

小学5年生、中学1年生ともに、「おおむね達成」の基準を上回った。小学6年生の主として「知識」に関する問題では、「十分達成」の基準と等しい正答率となり、主として「活用」に関する問題では、「おおむね達成」の基準を下回った。また、どの学年においても、無解答率が10.0を超える問題が見られる。

 

 
(イ)

評価の観点別正答率

①小学5年生

図1 H24年度(小学5年生国語)評価の観点別正答率

「話す・聞く」「書く」「知識・理解・技能」は、「おおむね達成」の基準を上回ったが、「読む」は、「おおむね達成」の基準を7.2ポイント下回った。特に、「文章の内容を的確に押さえ、求められている表現の仕方に合わせてまとめる」力を問う設問の正答率が低く、無解答率も高かった。いくつかの条件に合わせて自分の考えをまとめる力の定着に課題が見られる。

小学6年生A

    図2 H24年度(小学6年生国語A)評価の観点別正答率
 

「知識・理解・技能」は、「十分達成」の基準を4.9ポイント上回った。「話す・聞く」「読む」は、「おおむね達成」の基準を上回った。「書く」は、「おおむね達成」の基準を0.3ポイント下回った。「書く」観点については、相手や目的に応じ、必要となる事柄を整理して簡潔に書くことに課題が見られる。

③小学6年生国語B

         図3 H24年度(小学6年生国語B)評価の観点別正答率

 

「話す・聞く」「知識・理解・技能」は、「おおむね達成」の基準を上回った。「書く」は、「おおむね達成」の基準を6.9ポイント、「読む」は、「おおむね達成」の基準を0.7ポイント下回った。「読む」観点については、目的に応じて読み、事実を基にして自分の考えをまとめることに課題が見られる。

④中学1年生

図4 H24年度(中学1年生国語)評価の観点別正答率 

 

「知識・理解・技能」は、「十分達成」を2.0ポイント上回った。「話す・聞く」は、「おおむね達成」の基準を15.4ポイント、「書く」は、「おおむね達成」の基準を15.6ポイント上回った。一方で、「読む」では、「おおむね達成」を5.7ポイント上回ったものの、「登場人物の相互関係から人物像やその役割を捉え、内面にある深い心情も合わせて捉える」力や「理由や根拠となっている内容、構成の仕方や巧みな叙述などの工夫を捉える」力を問う設問の正答率が低く、内容から必要な情報を読みとることに課題が見られる。

 
(ウ)

内容・領域別正答率

「話すこと・聞くこと」「書くこと」「読むこと」については、評価の観点と項目が同じであるため、本項目では、言語事項「漢字の読み」「漢字の書き」「語句に関する知識」について分析する。

①小学5年生

図5 H24年度(小学5年生国語)言語事項の内容・領域別の正答率

「漢字の読み」については、「十分達成」の基準を8.6ポイント上回った。「語句に関する知識」では、「おおむね達成」の基準を1.5ポイント上回った。「漢字の書き」では、「おおむね達成」の基準を0.8ポイント下回った。「漢字の書き」では、音読みの熟語を漢字で正しく書くこと、「語句に関する知識」では、ローマ字を読んだり書いたりすることに課題が見られる。

②中学1年生

図6 H24年度(中学1年生国語)言語事項の内容・領域別の正答率

「漢字の読み」については、「十分達成」の基準を8.5ポイント、「語句に関する知識」については、0.2ポイント上回った。また、「漢字の書き」については、「おおむね達成」の基準を17.5ポイント上回った。「漢字の読み」に比べ、「漢字の書き」の無解答率が高く、中でも「負(お)う」の無解答率は17.3で一番高かった。また、「語句に関する知識」において、「故事成語の意味を理解し、日常の場面で適切に使う」という問題は、正答率が55.9と低く、課題が見られる。

 

   

経年比較 

 

平成23年度の小学5年生の調査結果では、「書くこと」が、他の内容・領域に比べて正答率が低い傾向にあった。平成24年度では、「読むこと」が、他の内容・領域に比べて正答率が低い傾向にあった。そこで、経年比較では、まず、「書くこと」「読むこと」について、平成23年度と平成24年度において小学5年生同一学年を取り上げ、分析を行う。また、中学1年生でも、「読むこと」が、他の内容・領域に比べて正答率が低かった。よって、中学1年生では、「読むこと」について、平成23年度と平成24年度において中学1年生同一学年を取り上げ、分析を行う。さらに、同一児童生徒の変容を把握するために、平成22年度小学5年生と平成24年度中学1年生同一児童生徒を取り上げ、分析を行う。

   
(ア)

同一学年児童生徒の経年比較
①小学5年生の「書くこと」の経年比較

図7 H23・24年度(小学5年生国語)「書くこと」の正答率の経年比較

 

図8 H23・24年度(小学5年生国語)「書くこと」の到達度分布の経年比較

正答率の経年変化を見ると、平成23年度は「おおむね達成」を1.0ポイント下回ったが、平成24年度は「おおむね達成」を14.8ポイント上回った(図7)。到達度分布では、平成24年度は、平成23年度に比べて、「十分達成」の割合が30.5ポイント上回り、「要努力」の割合が17.5ポイント下回った(図8)。 「書くこと」においては、目的や必要に応じて、中心となることを明確にして書くことの指導の工夫改善が図られてきていると考えられる。
②小学5年生の「読むこと」の経年比較

図9 H23・24年度(小学5年生国語)「読むこと」の正答率の経年比較

図10 H23・24年度(小学5年生国語)「読むこと」の到達度分布の経年比較 

正答率の経年変化を見ると、平成23年度は「おおむね達成」の基準を5.0ポイント上回ったが、平成24年度は「おおむね達成」の基準を7.2ポイント下回った(図9)。到達度分布では、平成24年度は、平成23年度に比べて、「十分達成」の割合が16.2ポイント下回り、「要努力」の割合が22.0ポイント上回った(図10)。平成24年度の「要努力」の割合が、平成23年度の「要努力」の割合を大きく上回っていることから、文章の内容や構成を的確に押さえ、条件に合わせて自分の考えをまとめることに課題が見られると考えられる。


   
   

















 

③中学1年生の「読むこと」の経年比較

 図11 H23・24年度(中学1年生国語)「読むこと」の正答率の経年比較

図12 H23・24年度(中学1年生国語)「読むこと」の到達度分布の経年比較

図13 H22年度(小学5年生国語)・H24年度(中学1年生国語)「読むこと」の正答率の経年比較

同一学年による正答率の経年変化を見ると、平成23年度は「おおむね達成」の基準を7.8ポイント上回り、平成24年度は「おおむね達成」の基準を5.7ポイント上回った(図11)。到達度分布では、平成23年度に比べ、「十分達成」の割合が6.4ポイント下回り、「要努力」の割合が12.3ポイント上回った(図12)。

同一児童生徒による正答率の経年変化を見ると、平成22年度は「おおむね達成」の基準を13.0ポイント上回り、平成24年度は「おおむね達成」の基準を5.7ポイント上回った(図13)。

同一学年による正答率の経年変化を見ると、あまり変化は見られないが、同一児童生徒による正答率の経年変化を見ると、「読むこと」において、学年が上がるにつれて、登場人物の相互関係から人物像や心情を読み取ることを苦手とする児童生徒が増えてきており課題が見られる。

 

   
設問ごとに見た傾向と指導改善の手立て
 

平成24年度の調査結果を受け、主に「読むこと」領域における正答率が低い問題、無解答率が高い問題について分析する。

   
傾向1

文章の内容を的確に読み取ることに課題がある。

[小学5年生 大問4の三]  
○ 問題の概要

○ 解答状況

「おおむね達成」の期待正答率45.0に対し、正答率は23.2であり、21.8ポイント下回った。無解答率は22.8であった。本設問は、図鑑を参考にして必要な内容を捉え、他の段落の内容と同じ書き方で一文で書くものであったが、文章表現に着目した読み取り方ができていなかったと考えられる。

○ 指導改善の手立て

具体的には、次のような指導が効果的である。

①目的に応じて、図鑑などの資料を効果的に活用させる。

②資料を読むときに、内容面や形式面での様々な違いに気付かせる。

③目的に応じた適切な資料を通して、効果的な読みを身に付けさせる。

[中学1年生 大問3の三]  
○ 問題の概要

○ 解答状況

「おおむね達成」の期待正答率50.0に対し、正答率は39.6であり、10.4ポイント下回った。無解答率は7.7であった。本設問は、朗読劇の台本を基に、朗読劇を行うための宣伝ポスターの中に、当てはまる文を、「だと教えてくれます。」につながるように決められた字数で書くものであったが、登場人物の人物像や心情を読み取ることができなかったと考えられる。

○ 指導改善の手立て

物語文などの様々な文章の中の人物の相互関係や人物像、心情を捉えることができるような読み方、そして、条件に合わせて読み取ったことを書く指導を取り入れていくようにする。具体的には、次のような指導が効果的である。

①登場人物相互の関係に基づいた行動や会話、情景などを通して暗示的に表現されていることにも注意して、想像を豊かにしながら読ませる。

②場面の展開に沿って読みながら、感動やユーモア、安らぎなどを生み出す優れた叙述に着目して自分の考えをまとめさせる。

③同じ作者や同じ題材の作品を比べて読むなど、児童が自分で優れた叙述に気付いていくことができるようにする。

   
傾向2

目的や意図に応じて書き換えたり、情報を取り出して自分の考えを書いたりすることに課題がある。

[小学6年生B 大問3の四]  
○ 問題の概要

○ 解答状況

「おおむね達成」の期待正答率45.0に対し、正答率が37.4であり、7.6ポイント下回った。無解答率は、12.9であった。本設問は、複数の記事を結び付けながら読み、理由となる事実を基にして自分の考えを記述するものであったが、情報を効果的に活用しながら読むことができていなかったと考えられる。

○ 指導改善の手立て

目的に応じて、複数の資料を結び付けながら、効果的な読みをすることが大切である。具体的には、次のような指導が効果的である。

①目的に応じて、適切な資料を選び、その特徴を考えながら、比べ読み、速読、摘読、多読など多様な読み方を選択して、効果的に読む。

②目的に応じて、複数の資料を選び、それらを関係付けて読む。

③本や文章の情報を基にして、自分の考えをもち、発表し交流することで、自分の考えを広げたり、深めたりする。

[中学1年生 大問2の四]  
○ 問題の概要

○ 解答状況

「おおむね達成」の期待正答率65.0に対し、正答率は55.9であり、9.1ポイント下回った。本設問は、新聞の下書きに加える資料として適切でないものを選ぶというものであったが、相手に伝わるように全体の構成を考えて必要な情報を選ぶことができていなかったと考えられる。

○ 指導改善の手立て

目的や意図に応じて、書く材料の収集や選択の仕方、まとめ方などを様々に工夫することが大切である。具体的には、次のような指導が効果的である。

①立場や意図を明確にし、情報を整理したり、資料を読み取ったりさせる。

②自分が経験したことや身の回りで起きた出来事、学習した内容など様々な書く活動を行わせる。

③紹介や案内、報告などの様々な文章を書く活動を行い、相手に分かりやすい内容を書くことができるよう指導する。

   
傾向3

簡単な単語について、ローマ字で表記されたものを読み、ローマ字で書くこと、長い間使われてきた故事成語の意味を正しく理解することに課題がある。

[小学5年生 大問5の三①]  
○ 問題の概要

○ 解答状況

「おおむね達成」の期待正答率60.0に対し、正答率は36.8であり、23.2ポイント下回った。無解答率は23.1であった。ローマ字の学習の定着には、繰り返し練習することや実際に使うことが必要であるが、そこまで至っていない。

○ 指導改善の手立て

ローマ字表記の案内板やパンフレットを見る機会やコンピュータを使う機会が増えるなど、ローマ字は児童の生活に身近なものになっている。このことから、日常使われている簡単な単語について、ローマ字で表記されたものを読んだり、書いたりすることができるようになることが大切である。具体的には、次のような指導が効果的である。

①コンピューター等のキーボード入力する方法を取り入れたり、自分の名前や身の回りのものの名前をローマ字で書くなど文字として書く活動を増やしたりする。

②ローマ字表記の指導を小学校中学年だけでなく、高学年においても実態に応じて指導していく。

③社会科や総合的な学習の時間などの調べ学習でコンピューター等を使う際に、キーボード入力に慣れさせるなど、国語だけでなく、他教科との関連を図りながら、学習活動の様々な場面でローマ字にふれる機会を増やす。

〔中学1年生 大問5の四〕

○ 問題の概要

○ 解説状況

「おおむね達成」の期待正答率60.0に対し、正答率は55.9であり、4.1ポイント下回った。日頃から、ことわざや慣用句、故事成語などの意味を正しく理解し、日常生活においてにおいて適切に用いることに課題があると考えられる。

○ 指導改善の手立て

長く使われてきたことわざや慣用句、故事成語などを自分の表現に用いるようにすることが重要である。具体的には、次のような指導が効果的である。

①故事成語の意味や使い方を正しく理解させる。

②ことわざや慣用句、故事成語をスピーチや説明的な文章を書くときなど、自分の表現に用いらせる。

③様々な言葉の意味を国語辞典などを用いて調べさせる。

   
これからの指導に向けて
 

 

平成24年度の調査で明らかになった課題として、文章の内容を的確に押さえ、読み取ること、目的や意図に応じて、情報を取り出して読み取ったことを基に自分の考えをまとめることがあげられる。

これらの課題を解決するためには、以下に示すような指導の工夫改善を図っていくことが大切である。

(ア) 系統的・段階的な学習内容の定着

児童の発達の段階を踏まえた学習の系統性を重視し、学校・学年ごとに、具体的に身に付けさせるべき能力の育成を目指し、重点的な指導を行うようにする。

例えば、「読むこと」では、説明的な文章について、以下の点を意識しながら指導改善を図っていくことが大切である。

○低学年では、時間的な順序や事柄の順序などを考えながら読むことができる。

○中学年では、目的に応じて、中心となる語や文をとらえて段落相互の関係や事実と意見との関係を考え、文章を読むことができる。

○高学年では、目的に応じて、文章の内容を的確に押さえて要旨をとらえたり、事実と感想、意見などとの関係を押さえ、自分の考えを明確にしながら読んだりすることができる。

これらのことを学習するためには、6年間を見通して指導事項を身に付けさせていく必要がある。これらは、当該学年の指導に限らず、次の学年でも螺旋的・反復的に繰り返しながら学習させていくことで、能力の定着が更に図られていくものと考えられる。

(イ)  日常生活に生かせる言語活動の充実

「話す・聞く」「書く」「読む」の各領域では、日常生活で必要とされる記録、説明、報告、紹介、感想、討論などの言語活動を工夫し、その充実を図っていくことが重要となる。学校や児童の実態に応じて、課題に応じて必要な文章や資料等を取り上げ、基礎的・基本的な知識・技能を活用し、相互に思考を深めたりまとめたりしながら解決していく活動を多く取り入れていく必要がある。そのためには、以下の点を意識しながら指導改善を図っていくことが大切である。

○低学年では、見たことや知らせたいことを記録し説明や紹介をしたり、体験したことを報告したりすることができる。

○中学年では、調べたことや観察・実験したことを記録・整理し、説明や報告にまとめて書き、資料を提示しながら発表することができる。

○高学年では、目的に応じて自分の立場から解説や意見、報告を書き、理由や根拠を示しながら説明することができるとともに、自らの言語活動を振り返ることができる。

これらの指導の充実を図ることが、日常生活の中で生きて働く言語能力につながっていくものと考えられる。

 

 

   
授業実践に参考となるリンク
   
 
   
 

最終更新日: 2012-10-15