今回の調査では、平成23年度の課題であった「思考・表現」において改善が見られた。しかし、「思考・表現」においては新たな課題も見られ、今後さらに高めていくよう指導の工夫が必要である。また、平成24年度は中学2年生、中学3年生の「技能」において課題が見られた。
これらの課題を解決するためには、知識・技能の確実な定着を図るとともに、それらを活用しながら課題を解決していくような活動を一層充実させることが重要である。
特に、次の4つを大切にして、これからの指導に取り組むことが重要であると考える。
(ア) 知識・技能の習得と活用のバランスを考える
「基礎的・基本的な知識・技能は、実生活における活用や論理的な思考力の基盤として重要な意味をもっている」と学習指導要領に記されている。つまり、知識・技能は、単に演習問題などができるようになるだけでなく、様々な場面の中で活用できるようになってはじめて、定着していると判断することができる。知識・技能を活用させる活動を充実させるためには、課題を解決するために必要な知識・技能は何なのかということ明らかにし、その知識・技能をどのように活用させるのかを、しっかりと教師が考え授業を行う必要がある。習得のための反復学習や活用のための探究的な学習をバランスよく授業に取り入れることで、知識・技能が定着していくとともに、思考力・表現力も高まっていくと考えられる。また、習得と活用の中で、思考したことを論理的な文章として表現させる活動も積極的に取り入れていく必要がある。
(イ) 探究的な学習の中で、観察・実験を構想させる活動や、結果を分析・解釈させる活動を工夫し、思考力・表現力の更なる向上をねらう
平成24年度全国学力・学習状況調査解説資料では、「思考・表現」の主な視点として「適用」「分析・解釈」「構想」「検討・改善」が示されている。今回の調査ではこの4つの視点の中で、「適用」する力を問う問題の正答率が高かったことが、全体として「思考・表現」の改善につながったと考えられる。しかし、観察・実験を構想する力、結果を分析・解釈する力には課題が見られた。
今回示された4つの視点は、「思考・表現」の育成に向けたこれからの授業改善のポイントになると考える。そして、4つの視点に関わる力は、探究的な学習の中でより高まっていくと考える。ただ、視点を難しく捉えるのではなく、自然の事物・現象の中に問題を見いださせたり、課題を設定させたり、予想や仮説を立てさせたり、観察・実験の条件を考え計画させたり、結果から考察させたりするなど、これまで行わせてきた活動を振り返り、充実させていくことが、結果として思考力・表現力を向上させることにつながると考える。思考力・表現力の育成については、本教育センターWebページに掲載しているプロジェクト研究の成果報告や、本年度教育センターが取り組んでいる理科授業改善サポートチームの取組なども参考にしていただきたい。
(ウ) 多様な評価方法で生徒の実態を把握し、特に「おおむね達成」を下回る生徒に対する支援の充実を図る
生徒の実態を正確に把握するためには、評価方法を見直す必要がある。見直す視点としては、評価の観点1つについて、定期テストなど1つの方法での評価ではなく、できるだけ多様な方法で評価しているかどうかである。例えば「技能」を評価する場合、定期テストに加え、日々の授業で行う実技テストや授業で用いるワークシートなどを利用する方法が考えられる。他の評価の観点についても同じことがいえるが、一単位時間の中で、評価の観点4つ全てについて評価規準を設定し、生徒全員を評価し、指導の改善に生かしていくことは現実的には困難である。単元の指導計画を立てる際に、一単位時間の中でどの観点を評価するのかを明確にすること、そして実際に評価を行う場合は、「おおむね満足できる」状況(B)にあるかどうかを中心にした評価から始めることが大切である。
多様な評価方法を用いる中で、「おおむね達成」の基準を下回る状況が見られた場合は、つまずきの原因をしっかりと分析した上で、個別に対応していくとともに、指導等の改善を図ることが大切である。
(エ) 学習指導要領で新しく追加された内容に対する教材研究を十分に行う
学習指導要領の改訂に伴い、追加された内容は次のとおりである。
[第1分野]
力とばねの伸び、重さと質量の違い、水圧、プラスチック、電力量、熱量、電子、直流と交流の違い、力の合成と分解、仕事、仕事率、水溶液の電気伝導性、原子の成り立ちとイオン、化学変化と電池、熱の伝わり方、エネルギー変換の効率、放射線、自然環境の保全と科学技術の利用
[第2分野]
種子をつくらない植物の仲間、無脊椎動物の仲間、生物の変遷と進化、日本の天気の特徴、大気の動きと海洋の影響、遺伝の規則性と遺伝子、DNA、月の運動と見え方、日食、月食、銀河系の存在、地球温暖化、外来種、自然環境の保全と科学技術の利用
特に中学3年生は、多くの内容が追加されており、教材研究や指導法などの研究を十分に行うことができていないのではないかと考える。追加された内容が他の内容とどのように関連しているかを考えながら教材研究を行い、各学校で指導計画を立て、計画的に授業を行っていくことが必要である。 また、授業研究会を開いたり、研修会に参加したりするなど、研修の機会を増やすことも大切である。 |