「意思決定を取り入れた討論型の学習」に取り組んでみませんか!

 

実践事例11 中学校第1学年 【歴史的分野 古代までの日本】
          「古代社会を支え、国の発展に貢献した人々」 −遣唐使を考える−
 

 
単元について

この単元では、大陸の文物や制度を積極的に取り入れながら国家の仕組みが整えられ、その後、天皇や貴族の政治が展開したことを「律令国家の確立に至るまでの経緯」、「摂関政治」の学習を通して理解させることをねらいとしている。

遣唐使についての学習では、唐の制度や文物を学ぶ価値、様々な人々の立場や観点から歴史的な事実を見つめさせることができる題材だと考えられる。歴史的事象の内容を十分に理解させ、どのような価値を重要と判断するのか多角的に考察し、表現する力を育成する上で意義があるテーマと思われる。

  生徒は、小学校時の既習内容を生かしながら歴史的分野の授業に積極的に臨んでおり、挙手をして発表する姿が多くみられる。話合い学習については、好き(どちらかというと好き)、嫌い(どちらかというと嫌い)がほぼ同数であり、『好き』の理由として「自分の話を聞いてもらえるから」、「自分が分からないところを友達から教えてもらえるから」などが挙げられた。
  遣唐使派遣に関して意思決定型の場面を取り入れた授業を仕組みたい。意思決定を行うには今までの学習内容に加え、様々な資料を活用し自分の考えの根拠としていく必要があるが、様々な立場(考え方)や観点を意識させ判断させることにより、判断の過程を重視したい。
 必要な資料を活用して、自分の考えをまとめさせ、分かりやすく効果的に表現する力を育てたいと考える。
単元の目標
(1)
  律令制度や摂関政治の仕組みが整い、天皇や貴族の政治が展開されたことに課題意識をもたせ、国際的な要素をもった文化が後に国風化したことを意欲的に追究し、捉えようとさせる。
(2)
  律令国家のねらいについて、その特色に課題意識をもたせ、複数の立場や観点から考えさせ、自分の言葉で表現させるとともに、仏教の影響や文化を担った人々などに着目させ、古代の日本において栄えた文化の特色について多面的・多角的に考察させ、その過程や結果を適切に表現させる。
(3)
   律令制度や摂関政治などの天皇・貴族の政治、法隆寺や正倉院の宝物、仮名文字などについて、様々な資料を収集させ、有用な情報を適切に選択させ、読み取ったり図表などにまとめたりさせる。
(4)
   律令制度や摂関政治の仕組みが整い、天皇や貴族の政治が展開されたことや国際的な要素をもった文化が後に国風化することなどの特色を理解させ、その知識を身に付けさせる。
単元の評価規準
社会的事象への
関心・意欲・態度
社会的な
思考・判断・表現
資料活用の技能

社会的事象についての
知識・理解

○律令制度や摂関政治の仕組みが整い、天皇や貴族の政治が展開されたことに課題意識をもって追究しようとする。
○国際的な要素をもった文化が後に国風化したことに関心をもち、意欲的に追究し、古代までの文化遺産を尊重しようとする。
○律令国家のねらいについて、その特色に課題意識をもち、複数の立場や観点から考え、自分の言葉で表現している。
○仏教の影響や文化を担った人々などに着目し、古代の日本において栄えた文化の特色について多面的・多角的に考察し、その過程や結果を適切に表現している。
○律令制度や摂関政治など天皇・貴族の政治についての様々な資料を収集し、有用な情報を適切に選択して、読み取ったり図表などにまとめたりしている。
○法隆寺や正倉院の宝物、仮名文字など様々な資料を収集し、有用な情報を適切に選択して、読み取ったり図表などにまとめたりしている。
○律令制度や摂関政治の仕組みが整い、天皇や貴族の政治が展開されたことを理解し、その知識を身に付けている。
○国際的な要素をもった文化が後に国風化するなどの特色を理解し、その知識を身に付けている。
単元の指導計画(全8時間)
過程 主な学習活動
教師の指導・支援
時配







○聖徳太子が朝鮮や中国から学んだことを生かし政治を行ったことを、資料から読み取る。
○飛鳥文化と朝鮮や中国の文化との関わりを調べ、学習問題を考える。
○聖徳太子の行った政治について理解させ、朝鮮や中国の影響を受けていることに気付かせる。
○飛鳥文化と朝鮮や中国の仏像を比較させ、飛鳥文化が仏教文化と大陸文化の影響を受けていることに気付かせ、学習問題を設定する。
 古代までの日本は、朝鮮や中国との関係がどのように影響しているのだろう。 《学習問題T》
調

○大化の改新から律令国家の確立に至るまでのあらましを整理する。
○大化の改新で行われていた政治が、朝鮮や中国の影響を受けながらどのように整えられていったかを、小学校での学習に付加させながらまとめさせる。
○大宝律令と古代国家の仕組みを理解する。
○唐の影響について考える。
○律令の制定、都の造営、地方への支配の広がりなど、唐の影響で日本の律令国家が整えられていったということを資料から読み取らせ、整理させる。
○班田収授法の内容や仕組み、奈良時代の人々の生活の様子を資料を通して理解する。 ○班田収授法についてまとめさせ、貴族や農民の生活、土地制度について理解させる。
正倉院の宝物と朝鮮や中国に現存する宝物との関連性を調べ、遣隋使や遣唐使の派遣が文化に与えた影響を考える。
○ 平安京遷都後の政治の様子を、教科書の内容から読み取る。
○天平文化は仏教と唐の影響を強く受けていることを正倉院や東アジアにある代表的な文化遺産を通して理解させる。
○平安京に都が移った経緯やそこで行われた政治の内容を歴史的背景と関連付けて理解させる。






○遣唐使の果たした役割や意義を理解する。

○遣唐使を続けることのマイナス面について考える。              (意思決定1)
○遣唐使が果たした役割を既習の学習内容や資料から読み取らせた情報を基に考えさせ、理解させる。
○遣唐使が停止された理由について、遣唐使の停止に関係のある資料を提示して多面的に考えさせる。
○遣唐使が果たした役割と遣唐使を続けることのマイナス面を踏まえて、「遣唐使を停止したことはよかったのだろうか」について、意思決定を行わせる。

本時
(6/8)
 論題 遣唐使を停止したことはよかったのかどうか考えよう。《学習問題U》
○遣唐使の停止についての自分の考えを論述する。(討論)          (意思決定2)
○既習内容や関係資料等を基にして、遣唐使の停止についての意見をまとめさせる。
○友達の意見を参考にして自分の考えを深めさせる。
○藤原氏が勢力を伸長する様子を知る。
○遣唐使の廃止が国家や社会に与えた影響を考える。
○摂関政治について調べさせ、藤原氏が天皇の外戚となり勢力を伸ばしたことや国風文化の特色を理解させる。
 
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