これからの算数科学習指導について提案します!

 学習指導要領の趣旨を反映した「学習評価」とは?
  平成23年度から、小学校では新しい学習指導要領が全面実施となりました。学習指導要領の趣旨を反映した学習評価の考え方については、平成23年11月に「評価規準の作成、評価方法等の工夫改善のための参考資料」(以下、参考資料と表記)が、国立教育政策研究所から示されています。
  学習指導要領の下での学習評価については、児童の「生きる力」の育成をめざし、児童一人一人の資質や能力をより確かに育むようにするため、目標に照らしてその実現状況をみる評価(目標に準拠した評価)を着実に実施し、児童一人一人の進歩の状況や教科の目標の実現状況を的確に把握し、学習指導の改善に生かすことが重要です。併せて、学習指導要領に示す内容が確実に身に付いたかどうかの評価を行うことが求められています。
佐賀県教育センター「学習評価の進め方(手引き)」はこちらから→
 学習指導要領における学習評価の観点について  
 【従前の観点】
【新学習指導要領における観点】
  【算数科の観点】
「関心・意欲・態度」
  「関心・意欲・態度」
「算数への関心・意欲・態度」
「思考・判断」
  「思考・判断・表現」
「数学的な考え方」
「技能・表現」
  「技能」
「数量や図形についての技能
「知識・理解」
  「知識・理解」
「数量や図形についての知識・理解」

 

     文言が変更された「思考・判断・表現」と「技能」の2つの観点について、説明します。

「思考・判断・表現」について
これまでの「思考・判断」に「表現」が付加されました。「表現」については、児童が考えたり、判断したりしたことを、説明・論述・討論などの言語活動等を通して評価することを意味しています。また、学習指導要領において、「考える能力と表現する能力は互いに補完しあう関係にある」と明記されていることからも、説明・論述などの表現が「数学的な考え方」に含まれることを示しています。
※つまり、ここでいう「表現」とは、これまでの「技能・表現」で評価されていた「表現」ではありません。
 
「技能」について
「技能・表現」が「技能」と文言は変更されましたが、これまで「技能・表現」として評価していた「表現」も含まれます。つまり、ここでいう「技能」とは、「整数、小数、分数などの計算をすること」や「式や表やグラフに表すこと」などのことであり、評価する内容はこれまで通りです。
また、算数科においては、これまでの「数量や図形についての表現・処理」の観点が、「数量や図形についての技能」と文言が改められました。
 
 各観点の評価について

各観点ごとに、評価を行う際のポイントや評価方法について紹介します。

「算数への関心・意欲・態度」について
この観点では、単元前半から単元後半の高まりや伸びを積極的に評価することが大切です。そのために、評価場面を単元の始めの方と終わりの方に位置付けて評価することも考えられます。また、授業後の学習感想や単元末の小レポート(日記)などの記述を基に、学んだことを活用しているかやよさを感じているかを見取ることも有効です。
 
「数学的な考え方」について
この観点では、言葉、数、式、図、表、グラフを用いて考えたり、説明したり、互いに自分の考えを表現し、伝え合ったりしているかどうかを評価します。その際、問題解決の結果だけでなく、過程も含めて評価することが特に重要です。児童の発言内容やノート・ワークシートの記述などから、既習事項を活用して考えようとしているか、着想が言葉や式で表されているかなど、結果だけでなく問題解決の過程も大切にしながら評価することを心掛けましょう。
 
「数量や図形についての技能」について
この観点では、これまで「数量や図形についての表現・処理」の観点で評価していた内容について評価していきます。つまり、数や式、グラフなどの数学的な表現を適切に読み取ったり、用いたりする技能が身に付いているかどうかを評価します。単元末のペーパーテスト等だけで評価するのではなく、学習活動における状況の把握が必要です。例えば、ノートやワークシートの記述から式やグラフに正しく表せているかを見取ったり、行動の観察から算数の用具が正しく使えているかを見取ったりします。
 
「数量や図形についての知識・理解」について
この観点では、計算の意味や仕方、図形の定義や性質を理解しているかどうかを評価します。知識については、いつでも活用できるようになっているかを見ることが大切です。そのためには、日々の授業において算数の用語を正しく使わせたり、計算の仕方や意味を説明させたりする指導も大切です。そして、「数量や図形についての技能」の観点と同様に、単元末のペーパーテスト等だけでなく、ノートやワークシートの記述や計算の仕方を説明する場面なども含めて評価していきます。
 

 評価規準の設定の仕方について
 評価規準の設定に当たって、参考資料等を基に、設定例の記述を必要に応じて具体化していくことが大切です。目標を達成した子どもの姿とはどのような状態であるかを具体的に想定しながら評価規準を設定することで、達成状況を適切に見取るとともに、その後の指導に役立てていくことが大切です。
 
@ 単元の目標を設定する。
   学習指導要領に示された教科の目標と内容及び児童の実態等を踏まえ、既習事項との関連
 等、指導内容の系統性に配慮して単元の目標を設定します。 
A 単元の評価規準を設定する。
   単元の目標と参考資料の第2編に示されている各領域の「評価規準に盛り込むべき事項」や
 評価規準の設定例を参考にして、単元の評価規準を設定します。
例)4年生の「B量と測定」面積の学習を例に、評価規準を考えてみます。参考資
  料には、単元の評価規準の設定例が示されています。
〈単元の評価規準の設定例〉   【数学的な考え方】
正方形や長方形の面積の求め方を考えている。
これを基に、1単位時間の授業(面積の求め方を公式化する場面)における評価規
準を設定していきます。

B 学習指導に対応して評価規準を設定する。
   単元の目標と評価規準を基に、各授業時間の指導目標を設定し、それに対応させて評価
  規準を設定します。 
〈評価規準の設定例をより具体化した設定(例)〉   【数学的な考え方】
単位となる正方形の総数(1立方センチメートル)を求めるのに、乗法を使えば便利であるということから、正方形や長方形の面積の公式を考えている。
このように、評価規準を具体的に設定することで、「単位となる正方形の総数を求めよ
うとしているか」「乗法を使って求めようとしているか」という点に注目して、評価を適切
に進めていくことができます。
 
 評価を行うに当たっての留意点
 単元全体を通して、4観点についてバランスよく評価することが大切です。また、評価し記録を取ることが負担とならないように、各時間のねらいにふさわしい1〜2観点に評価項目を精選することが必要です。その際、全員の評価の機会とする観点には「◎」、「努力を要する」状況(C)であると判断した児童や前時に学習状況を十分に判断しきれなかった児童を対象に補完するために行う評価については「○」として、観点別にどのような評価の機会としたのかが分かるようにしておくことが大切です。
 また、平成24年度に工夫改善を行う本時の展開において、「十分満足できる」状況(A)、「おおむね満足できる」状況(B)と判断した児童の具体的な状況の例を示し、「努力を要する」状況(C)と判断した児童に対しては、指導の手立て例を示しています。このように、本時のねらいや児童の実態を基にして具体的な状況を検討しておくことで、達成状況を適切に見取ることができるようにすることが大切です。
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