話合い活動のよさを生かした学級活動内容(2)の授業を提案します。

2 研究の実際

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(5) 授業実践【学級活動内容(2)】

 本研究が提案する授業モデルを基に中学校で行った実践例を示します。
 本実践では、自分や学級の実態について意見を発表することが難しいことが考えられたため、話合う替わりに、事前に生徒が書いた意見をビデオにして視聴し、共有することにしました。
【中学校第1学年】学級活動内容(2)における授業実践…9月題材

題材名

気持ちを言葉で表そう 〜自分にも相手にも気持ちのよい伝え方〜

  オ 望ましい人間関係の確立
 
  指導案
段階
活 動 過 程




○ アンケート調査
1 気持ちのよい伝え方ができているかについて、クラスの実態をアンケート調査する。 

○ 題材決定
1 計画委員会と教師で今回の題材を決定する。

○ 計画委員会(司会団、教師などで編成されるもの)
1 教師と計画委員会で、題材名、話合いのめあてと柱などを考え原案を書く。
題材名を決定し、計画委員会から学級に知らせる。
○ 原案の配布
1 生徒は学級会ノートに自分の考えを前もって書き込んでおく。
教師は、生徒の学級会ノート(自分の意見を記入したもの)を見て、意見の内容を把握する。




題 材
 1−○の全員が、男女仲良く誰とでも、話しやすい、活動しやすい状態にするにはどうすればいいか、みんなで考えよう。
提案理由
 1−○は、1学期よりもグループ活動や係活動など協力してできるようになってきました。
しかし、気の合う友達同士ばかりで分かれて活動することもあります。活動しているときに
心ない言葉を聞くこともあります。これから、だれとでも気軽に話せるようになったり、お互
いの思いをよく伝え合いながら一緒に活動することになったりすれば、さらに明るくきずな
の深い学級になれると思い提案しました。
話合いの
めあて
・友達のよいところを自分の意見に取り入れ、学級のためになる自分のめあてを考える。
・一人一回は発表する。
話合いの流れ
1 はじめの言葉
2 司会グループの紹介
3 題材と提案理由、話合いのめあての確かめ
4 学級の現状の確認
  先生の話
・1学期に比べて係活動などで協力し合う姿が見えるようになってきました。
・言葉遣いなど、心ない言葉のやり取りをしているときもあります。
・1学期の※1アサーショントレーニングで学んだことをまだ行動に出せていないです。一人一人
  がどうしたらよいか考えながら話合ってください。
○ アンケートをまとめた映像を視聴する。
 
  体育大会のクラスの頑張りを背景に、生徒のアンケートの回答を紹介するビデオで振り返る。 ビデオ
【ビデオで振り返る】
5 話合い
柱1 「気持ちよい伝え方をすることはなぜ大切なのでしょう。」
先生の話
・皆さんの意見がたくさん出てきて良かったと思います。
・このクラスはほとんどの人が小学校から一緒に生活しているの
  で、少しぐらいの悪口は許してしまったり
、気付かないで荒い
  口調になってしまったりしているようです。
・もっとみんなのきずなを深めるには、やっぱりそこの部分ばどう
  にかできないかという気がします。
・どうすればもっとそこを改善できるのかということを考えて柱2
  をみんなでまた話合ってください。
柱2 「だれとでも、もっと仲良くなるためにはどうすればよいので    しょう。」
話合い
【ビデオ後の話合いの様子】
 
6 決まったことの確認
7 話合いの気付き・自分のめあて
「気持ちよい伝え方ができるように、自分の具体的なめあてを書きましょう。」
先生の話
・柱2でもたくさん意見を出してくれました。多分これを全部実行できれば、本当に
 もっと仲のよいクラスになるんじゃないかと思います。
・みんなには、自分がクラスのために何ができるのか、自分の目標を立ててもらいます。
 例えば、みんながよく言ってくれた「誰とでも仲良く会話したらいい」とか、『仲良く』
 とはつまりどうすることかな。具体的に考えるとどういうのが仲良くになるのかな。
・具体的に考えて、自分自身ができる目標を立ててもらいたいと思います。

8 グッジョブ賞の発表
   話合い活動の中で、よい意見を言って話合いを盛り上げた生徒を司会団が選び、表彰します。

9 先生の話
  ・みんなの積極的な意見が聞けてとってもうれしかったです。
 自分で決めた目標を今日から実行してみてください。楽しみ
 にしています。
・それから、今日の話合いのめあてだった「一人一回発言する」
 も達成できました。1つ目の「友達のよいところを自分の意見
 に取り入れる」もすごくよくできていたと思います。
・これからの話合いでも実行していきましょう。
10 終わりの言葉
2
【学級会ノートの記入例】
↑詳しくはこちらをクリック





○実践活動
話合いが終わったら、めあてを意識しながら生活する。
○振り返り活動
帰りの会などで、自分の実践を振り返り、評価を記入する。
実践の後の振り返りでは、互いに実践の様子を聞き合うペア活動を行った。
互いの振り返りを共有した後、感想を振り返りカードに記入した。
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【生徒の振り返りカードはこちら】
↑詳しくはこちらをクリック
 生徒は話合い活動を経て自分のめあてを設定し、実践に取り組んだ後、最後に振り返りを行いました。振り返りカードの記録や担任の生活記録等で、次のような生徒の態度や意識の変容が見られました。
  ○生徒の感想から見る意識の変化
  ・ いろいろな友達と話してクラスになじんできたと思う。あとは言葉遣いを気を付ける。
・ めあてについて、自分なりに守れたと思っていたけど、他の人に守れていなかったと言われてびっくりした。
  ○教師の感想から見る、話合い活動を取り入れた指導のよさ
   内容(2)の項目を振り返ってみると、普段は当たり前すぎて話題にしないような内容や難しいので意見が言いにくい内容であるので、それらをあえて話合うことに価値があるように思います。これまで学級はもともとお互いの仲がいま一つなところがあり、それで悩んでいる生徒もいましたが、話合い活動の取り組みをきっかけに学級の雰囲気がよくなったと感じます。
 
※1アサーション・トレーニングとは
 アサーションとは、自分と相手、お互いを大切にしながら、それでも自分の意見、考え、気持ちを率直に、素直に、その場にふさわしく表現することです。
 アサーション・トレーニング (Assertion training) とは、自分・相手の人権を尊重した上で、自分の意見や気持ちをその場に適切な言い方で表現出来るようにするトレーニングです。このトレーニングでは攻撃的な自己主張や不十分な自己主張との違いを明らかにした上で、適切な自己主張 (=アサーション) について体験的に学びます。
  本学級では、1学期に学校カウンセラーをゲストティーチャーに迎えて、アサーション・トレーニングの授業を行いました。しかし、そこで学んだことが日ごろの生活で生かされていない学級の実態を受けて、この授業実践が行われました。


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最終更新日:2011-03-30