小学校算数科の授業びらきと年間を通した取り組み |
4月から新学期がスタートします。算数の授業をする中で、「児童が主体的に取り組むことができる算数的活動をどう仕組めばよいだろうか?」「児童が説明できるようにするにはどうしたらよいだろう?」など、日々悩まれたり、困ったりしていることがあると思います。そこで、算数の授業を行う上で大切な5つのポイントを示します。このポイントを土台にして1年間取り組まれてはいかがでしょうか。 |
|
@ 学習過程(1時間)の提示
|
|
本研究では、1単位時間の学習過程について、「つかむ」、「見通す」、「自力解決」、「学び合う」、「まとめる」の5段階による過程を提案しています。
この1時間の学習過程をカード等に記して黒板などに分かりやすく提示することは、児童に学習の見通しをもたせるために大切なことです。その上で、「見通す」段階では、どのような学習活動をするのか、「学び合う」段階での大切なことは何かということなどを、授業の中でていねいに説明しましょう。
1時間の授業の流れを理解していることは、児童が目的意識をもって主体的に学習に取り組むことにつながります。
【学習過程を分かりやすく提示した板書の例】

※黒板を見れば1時間の学習過程が分かるように、「問題」「めあて」などを工夫して提示しましょう。
年度初めの授業びらきでは、計算遊びなどのトピック教材(1時間教材)を行いながら、学習の進め方を説明することで、授業の流れや具体的な活動内容について、児童は理解しやすくなります。
|
A ノートやワークシートのかき方指導
|
|
低学年・中学年・高学年の発達の段階に応じて、ノートやワークシートの使い方やかく内容は異なります。そこで、各学年に応じたノートやワークシートの使い方やかき方などを授業を通して説明することが大切です。
|
|
低学年…学習は、具体物を使った操作活動が中心となる。
・学習の過程やまとめを、絵や図を使ってかかせるようにする。
・言葉は短文で かかせるようにする。
中学年…「問題」、「めあて」、「見通し」、「自力解決」、「学び合う」のそれぞれの段階における自分の考えや気付き
と、友達の考え、「学習のまとめ」を分けてかかせるようにする。
高学年…中学年と基本的に変わりませんが、自分の考えをかかせるスペースや時間を多くとったり、友達の考えと
の違いを記録させたりすることができるようにする。
|
B 説明する活動の指導
|
|
算数科では、具体物を使ったり、言葉、数、式、図、表、グラフなどを使って、友達に説明する活動が重視されています。説明する活動を充実させるために、次のような手立てを行ってはどうでしょうか。
○ 低学年・中学年・高学年の発達の段階に応じて、説明するときの主な話型をまとめて教室に掲示する。
(初めのうちは、その都度確認ができるように掲示しておくとよいでしょう。)
○ 他の児童のお手本となるような児童を取り上げてほめる。
(うまく説明することができている児童の説明の仕方のよいところを、具体的に学級全員に伝えることが大切です。)
|
|
授業では、次の@〜Dに示したような説明を身に付けられるように、1単位時間や単元の指導計画を立てます。 |
|
算数科で身に付けさせたい説明 |
@ 操作の過程を説明する。
A 図形の性質を説明する。
B 式の意味を説明する。
C 表やグラフを読み取って説明する。
D 絵、図、表、式などを使って説明する。 |
などです。
※ 説明させるときには「〜ながら説明する」ということを意識させるとよいでしょう。
例えば・・・おはじきを操作しながら説明する
正方形と長方形を比べながら説明する
グラフを示しながら説明する など
|
C 発表を促す指名の工夫 |
|
算数科の授業では、難しい課題に出会った場合などに、限られた児童の発表だけで進んでしまうことがあります。すると、「学び合う」場で多様な考えが出なかったり、考えに広がりや深まりがなかったりしてしまいます。また、たくさんの児童に発表させたいという教師の思いとは別に、学級全体がある特定の児童の考えに流されがちになったり、そのような児童の発表を待つような雰囲気になったりします。
そのようなことにならないためには、ペア学習やグループ学習を行っているときの児童の様子やつぶやきをしっかりと把握して、そのことを踏まえた、意図的・計画的な指名をすることが大切になります。児童の様子やつぶやきを把握するためには、名簿(座席表)を作って、児童が作業や活動を行っている間に簡単なメモを残すという方法が用いられます。その際の留意点として次のことを意識するとよいでしょう。
○ 全員の記録を記入するのではなく、「特によい考えであるもの」「みんなで考えさせたいもの」など教師の視点を
明らかにして記入する。
○ 発表させたい考えをもっている子には、「発表してね」「指名するよ」と前もって伝えておく。
○ 児童が発表しているときに、発表している子ばかりではなく、話を聞いている児童の言動に気を付けておく。
また、指名する際の工夫として次のようなことを授業の中に位置付けておくと、児童の発表の機会が増えます。
|
|
指名の工夫は、 |
@ 友達の考えの続きをリレーのようにつなげて発表させる。
A 学習課題についての疑問や分からないこと発表させる。
B ペア学習、グループ学習のあとに発表させる。 |
などです。
|
D 楽しい算数の授業につながる学級づくり |
|
児童に対して向き合う教師の姿勢も大切です。特に児童から間違った考えや意見が出てきたときに、教師がどのような対応をするかが重要になります。
まずは、その児童がどのように考えたのかをたどる発問をしてクラスの児童に考えさせます。
次に、答えの正誤よりその考えに至った過程が大切であるということを確認します。
最後に、間違った考えや意見を出してくれたおかげで、正しい答えを見付けるための方法がみんなで確認できたことを
喜び、考えを出してくれた子をほめます。
よく教室掲示などにも書かれている「教室は間違えるところだ」という言葉のように、真剣に考えた上での間違いが学級のみんなから認められるような学級づくり、授業づくりを心掛けてほしいと思います。
@〜Dに示したことを意識し、日々、積み重ねていくことから、「楽しい算数の授業」につながっていくと考えます。
|
|
Copyright(C) 2011 SAGA Prefectural Education Center. All Rights Reserved. |
最終更新日:2011-03-30 |
|