小学校生活科におけるこれからの「学び」について提案します

 

2 研究の実際

 (2)「表現する活動」と「伝え合う活動」
   本研究では、生活科学習指導において、気付きの自覚化を促し、気付きの質を高めるための手立てとして、単元や1単位時間において、「表現する活動」と「伝え合う活動」を効果的に位置付けることとしました。
 ここでは、「表現する活動」を「絵や言葉を用いてかいたり話したりして表す活動」、「伝え合う活動」を「他者との双方向性のあるコミュニケーション活動」と捉えることとします。
   
  ア 「表現する活動」
   生活科の教科目標には「具体的な活動や体験を通す」ことが示してあります。この生活科における「具体的な活動や体験」には、直接対象に働きかける活動と、表現する活動があります。この表現する活動は、主体的に対象に関わったとき、対象について気付いたことや思考したことなどを話したり文で書いたり、絵や立体物に表したり、劇化したりするなどの様々な形で表す活動です。

 この表現する活動は、自分の思いや願いを明確にすることができ、直接対象に働きかける活動について、気付いたことや思考したことなどを可視化することができるものです。また、表現することに伴って思考を深めることにもつながります。そして、自分の活動について振り返る際に表現することで、自分の成長に気付くことができると活動だと考えます。  

 しかし、平成20年1月の中央教育審議会答申の中で、「表現によって活動や体験を振り返り考えるといった思考と表現の一体化という低学年の特質を生かした指導が行われていない」と述べられていることを踏まえると、表現する活動によって直接対象に働きかける活動を振り返らせる場が必要であると考えます。
   新学習指導要領解説の第5章第4節の1に次のように示されています。
生活科では振り返りの活動として、これまでも言葉などによる表現活動が位置付けられてきた。活動や体験したことを言葉などによって振り返ることで、無自覚だった気付きが自分の中で明確になったり、それぞれの気付きを共有し関連付けたりすることが可能になるからである。

  このようなことから、本研究では、無自覚なものも含めて、気付いたことを可視化し、明確な気付きとして表されやすい絵や言葉を中心とした「表現する活動」を単元に位置付けようと考えました。
 そして、直接対象にかかわる具体的な活動や体験と「表現する活動」を効果的に組み入れながら、単元や1単位時間の学習を構成していくと、気付きの自覚化を促すこととなり、気付きの質が高まると考えます。  
   
  イ 「伝え合う活動」
   伝え合う活動は、多くの単元における学習の場面で、自分が主体的に対象に関わったときの気付いたことや思考したことを、身近な人々と情報や心を発信し、受信する活動であると考えます。また伝え合う活動の具体的なものとして、次のようなことが考えられます。
伝え合う方法 ・表現した物を基に、互いに見せ合う、意見を伝え合う、尋ねたり、質問に答えたりする絵や言葉を中心とした活動。
・身振りや手振りや実際にしてみせるなどの身体表現で伝え合う活動。
さらにこれらを組み合わせて行う活動も考えられる。
場合によっては、発表会やポスターセッション、掲示なども伝え合う活動として考えられる。
伝え合う形態 個人と個人、個人と複数、複数と複数などが考えられる。
学級や学年内の友達同士では、ペアでの伝え合いやグループでの伝え合い、学級や学年全体での伝え合いなどが考えられる。
伝え合う対象 学習で一番身近な学級や学年の友達、学校の上級生や下級生、担任を含めた学校の職員、家族、地域の人々などが考えられる。
 
これらの伝え合う活動は、一方的に伝えるだけではなく、双方向の発信と受信を行います。そして、そのことにより、互いに自分が知らないことを知ることができたり、伝え合った内容がきっかけで活動への意欲を喚起したり、人と交流する楽しさを味わうことができるものです。また、伝え合う活動は、互いのよさを伝えることにより、自分のよさを気付かせてくれるものでもあります。そして、相手意識をもち、伝えたいことをまとめるなどの思考を働かせることでコミュニケーション能力を育むことにもつながります。

  この伝え合う活動について、生活科においては、新学習指導要領に、内容(8)として新に設けられたもので、次のように示されています。
自分たちの生活や地域の出来事を身近な人々と伝え合う活動を行い、身近な人々とかかわることの楽しさが分かり、進んで交流ができるようにする。
  このことは、自分たちの生活や地域の出来事を身近な人々と伝え合うことによって、互いのことを理解し合い、心の交流を行うことです。また、伝え合う楽しさを実感として分かるということです。そして、身の回りの多様な人々と進んで交流できるようにすることを狙ったもので、人との関わりが希薄化している社会的背景を踏まえ位置付けられた内容です。
 また、新学習指導要領解説には、「他のすべての内容との関連を図り、単元を構成していく」ことが述べられています。
 
  このようなことから本研究では、「伝え合う活動」は、「主体的に対象に関わったときに、対象や自分自身について気付いたことや考えたことを、絵や言葉を用いて、互いにかいたものを見せ合ったり、話し合ったりするなどの双方向性のあるコミュニケーション活動」と捉えています。  
 このような伝え合う活動を行う際に気を付けたいことが、発表の仕方や見栄えにこだわるのではなく、伝え合う内容に注目するということです。
 伝えることを意識して表現するときに気付くこともありますが、伝えられることによって、対象について新たに気付いたり、自分との違いや関連することに気付いたり、さらに自分自身のことを気付くことにつながると考えます。そして、これらの「伝え合う活動」を単元や1単位時間に効果的に位置付けることにより、気付きを関連付けたり、新しい気付きを見つけたり、自分自身のことに気付いたりするなどして、気付きの質を高めることができると考えます。

   
 
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最終更新日:2011-03-30