新学習指導要領で求められている中学校英語科学習指導を提案します! |
2 研究の実際 |
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(2) 「書くこと」についての指導法 |
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ア ライティングノートを使った指導 | |||||||||||
中学校英語科における本県生徒の「書くこと」の力には、佐賀県小・中学校学習状況調査から課題があるということが分かっています。4技能を関連付けた言語活動の充実を図るためには、「書くこと」の指導を充実させることが欠かせません。「書くこと」の指導においては、書かせ方を工夫することで、書く力を効果的に育成することと、書く意欲を喚起することが重要です。 伊東(2007)は、書く活動について、「何か活動した後、絶えずライティングを行い、それを日常化しておくことが大切だ」1)と述べています。このように、ライティングの日常化を図ることによって、生徒は書くことにあまり抵抗なく、慣れ親しみ、意欲をもって書く活動に取り組むことができるとも述べています。 本研究では、このことを踏まえ、「書くこと」を日常化するための取り組みとして、ライティングノートの充実を図るための研究を進めてきました。このライティングノートは、現在も佐賀県内の中学校英語科の授業において、「3分間ノート」や「Bノート」などの名称で取り入れられています。しかしながら、その活用が形式化してしまっている現状もあり、このことについて悩みをもっている教師も少なくありません。 |
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(ア) ライティングノートのテーマ | |||||||||||
ライティングノートに取り組むに当たって、最初に考えなくてはいけないことは、テーマです。つまり、「ライティングノートに何を書かせるか」ということです。 ここでは、ライティングノートのテーマについて提案しています。 生徒の発達段階や学習経験によって、ライティングノートのテーマを変えていくことは、書く力を段階的に育成していくためにも、生徒に興味・関心をもたせ、意欲を継続させるためにも大切なことです。 表3にライティングノートのテーマ例をまとめてみました。 @ 「基本的」に位置付けているテーマ 学習した単語や文法を記憶するために繰り返し書くといったようなドリル的なライティングノートの使い方を意図しています。これは、一般的にもよく行われている方法ですが、ややもすると形式的になって効果があがらない場合もあります。 覚えることが目的であれば、ただ「何回書けばよい」ということではありません。導入期においては、「速く書く」「たくさん書く」といったことを目標にして書かせます。しかし、段階的に、生徒自身が、ライティングノートに取り組んでいる途中で、覚えているかどうかを自分で確認し、覚えていないものを更に書くといったように、書くことが目的化することなく、生徒に「書くことによって覚えよう」という意識をもたせることが大切です。 A 「発展的」に位置付けているテーマ 自由英作文への取り組みとなります。生徒は自分自身のことや身の回りのことなどを題材にして、自由に書くことができるため、テーマを工夫することで、意欲を喚起したり、継続させることが容易になります。また、生徒の思考力・判断力・表現力等を育成するにも効果的です。しかしながら、その活動に取り組むためのレディネスが備わっていない生徒にとっては、大きな負担となりますので注意も必要です。 B 「基本的」と「発展的」の間に位置付けているテーマ 前述した二つのテーマの橋渡し的な役割を果たすテーマです。「基本的」に位置付けたようなドリル的な使い方に終始することなく、ここに示したような活動を少しずつ増やしていき、そこで適切に指導をしていくことが、まとまりのある英作文を書かせる上での大切なステップであると考えています。 テーマの3つの区分は学年を表しているわけではありませんので、第1学年の段階でも、生徒の学習内容に応じて、「基礎的」と「発展的」の間に位置付けているテーマも積極的に取り入れ、さらには「発展的」に位置付けているテーマにも取り組ませることができるとよいと思います。 第2学年、第3学年では、語彙や既習の文法事項も増えますので、「発展的」に位置付けているテーマも更に充実させることができます。前学年、または前単元までの学習事項も使わなければいけないようなテーマを意図的に仕組むことによって、既習の学習事項の定着を図ることも可能です。 当然ですが、第2学年、第3学年においても、必要に応じて「基本的」に位置付けたようなテーマに取り組ませることも必要です。さらに、「書かせっ放し」にならないように、書いた内容についての適切な評価をすることはいうまでもありません。 大切なことは、ライティングノートが生徒にとって役に立ち、書くことが楽しみとなるようなノートになることだと思います。そのために、どのようなテーマを設定するとよいかということを教師がしっかりと考える必要があります。 表3中の各項目をクリックすると、実際の活動例を見ることができますので、参考にしてください。 |
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表3 ライティングノートのテーマ例 |
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○ 新出単語を練習しよう ○ 新出文法を練習しよう ○ 聞こえてくる英文を書き取ろう |
○ 前時の基本英文に1文加えよう ○ 以前書いた基本英文に1文加えよう ○ 先生に質問を1つしてみよう ○ 友達に質問を1つしてみよう |
○ 写真を英文で説明しよう ○ 学校行事の感想を書こう ○ 有名人を紹介しよう ○ 町の紹介をしよう |
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(イ) ライティングノート指導のポイント | |||||||||||
@ 指導に当たって ○ ライティングノートはA4サイズのノートを3等分または2等分したぐらいのサイ ズが適当です。 ○ ノートはひもを付けて常に机の横に掛けておくと、保管や取り出しにも便利で す。 ○ できるだけ毎時間集めることが理想的です。 ※ ALTに添削してもらうなど方法もあります。毎時間集めるのが難しい場合で も、定期的に集めて、評価することを心掛けます。 ※ 誤りを修正するだけでなく、ほめことばや励ましのことばを書くようにする と、生徒の書く意欲も高まります。 |
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授業中にライティングノートに 取り組んでいる様子 |
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A ライティングノートを用いる活動の位置付け方 ライティングノートに取り組むことが習慣化されるためには、短い時間でもよいので、毎時間ライティングノートを 用いる活動を位置付けることが大切です。例えば、 ○ 繰り返し活動時間を設定する 生徒が自分のノートを開いて書く準備をするようになるまで続けて行います。 ○ 毎回3分程度を設定する 書く時間はテーマによっても違いますが、生徒が慣れてくると単語の復習などのドリル的なテーマの場合は1分 ほどで実施できるようになります。 ○ 目的に応じて位置付ける場面を工夫する ライティングノートの活動を帯学習とする必要はありません。前時の単語を復習したい場合は、授業の導入 場面に位置付けますが、基本文を学習したときにその定着を図るような場合は、授業の展開場面、もしくはまとめ の場面に位置付けることになります。 B 習得状況に応じたテーマ設定 ○ ねらいを明確にする。 ライティングノートの活動を通してどのようなことをねらっているのかということを考えておくことが必要です。 ○ 活動に偏りがないようにバランスよく設定する。 表3を参考に、生徒の実態に合わせて設定します。 |
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イ 「英作文のコツ」を使った指導 | |||||||||||
教師が英作文に取り組ませるときの指導のポイントとして活用したり、生徒に自己評価させたりする際の視点となるように「英作文のコツ」を作成しました。この「英作文のコツ」を教室に掲示したり、ライティングノートや授業用ノートに貼らせたりするなど、常に目に触れる場所に置いて、その活用を図ることで、英作文の質的向上に役立てることができます。 | |||||||||||
英作文のコツ |
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生徒用英作文のコツ(A4判)はこちら (1年生用 2年生用 3年生用) 生徒用英作文のコツ(ライティングノート貼り付け用)はこちら (1年生用 2年生用 3年生用) |
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A 代名詞をうまく使いましょう 代名詞を多く使っている英文は、とても読みやすく感じられます。それは文と文の結び付きが強くなり、代名詞が示す一つのテーマについて内容が一貫して展開しているからです。一文一文を正しく書くだけでなく、全体として一貫性のある文章を書けるようになるために、代名詞を用いることが求められています。 B 接続詞などを使いましょう 接続詞は、意識して取り組ませたい視点ですが、because、when、if などの接続詞が登場する2年生だけで取り組んでしまいがちです。1年生のころから接続詞を意識させて、まとまりのある英文を読んだり書いたりさせることは大切なことです。例えば「can を使ってできるだけたくさん自分のことを書きましょう。」という英作文を前時の活動で行い、本時の活動では赤字で示しているように接続詞を使って重文を書き加える活動を行うと、生徒の書く意欲は量から質へと変化します。
C 自分の考えや感想を書き加えましょう 自分の考えや感想を書くと、英文の質が向上します。また、単に自分の意見、感想、賛否のみを書くのではなく、理由を併せて書くことが読み手の共感を得たり、説得力を高めたりします。また、その感想や理由に対して相手から新しい感想や意見を引き出すことが期待でき、感想や意見のやりとりに発展させることが容易になります。
D いろいろな動詞を使いましょう(1年) 1年生の期末テストの解答で、このような「友だち紹介」の英作文を見ることがあります。
音楽という話題からピアノを持っていることや家で弾いていることへ話題を広げています。英文の数は前と変わりませんが、接続詞 and や 代名詞 it も加えて分かりやすい文章になっています。
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引用文献 | |||||||||||
1) 伊東 治己編著 『コミュニケーションのための4技能の指導』 2007年 教育出版 p136 |
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最終更新日:2010-03-05 |