技法 説明 留意点
★リソース探し
「リソース」は,「資源」と訳されます。
ここでは,「今,子どもがもっているもの」ととらえます。
子どもにないものを求めるより,今,子どもがもっているもの,子どもにあるものを探し,それらを利用しようというものです。
リソースには,「内的(個人内)リソース」と「外的(外部)リソース」があります。
「内的リソース」は,「性格」「能力」「興味・関心があること」「得意なこと」などです。
 
「外的リソース」は,その人にかかわる人「家族」「友人」や所属しているクラブなどです。
 
★ゴールの設定
めざす目標(ゴール)を設定します。今ではなく,未来に目を向けることで解決のイメージを膨らませていきます。
ゴールがあれば,それに向けてのアクションができます。希望もわいてきます。
具体的なイメージをもつことで,その目標とするゴールに向けての具体策を考えていくことができます。
ここでのゴールは,「元気になる。」「どんなことでもがんばる。」といった,抽象的なものをさすのではありません。
「夜寝る前に,その日一番楽しかったことを,お母さんに話せるようになる。」というように,具体的な行動の形で表現します。
このとき大切なのは,達成可能なゴールを設定することです。「ちょっとがんばればできそうなこと」を子どもと一緒に考えましょう。
★ミラクル
 クエスチョン
文字どおり,奇跡についての質問です。奇跡が起こって,子どもが抱える問題がすべて解決したと仮定して,話を進めます。
将来における「望ましい状況」のイメージを子どもに描いてもらうことで,目標を定めたり,そうなるために必要なことを考えたりできるのです。
問題解決前と後の違いを具体的にすることで,解決可能な目標を設定して取り組むことができます。
  
「ある晩,眠っている間に奇跡が起こり,いろいろな大変なことや,困っていることが解決していたとします。そしたら,その日一日は,どんな一日になると思う?」
「”うまくいっている”ということを,どんなことから気付くと思う?」というように,具体的なイメージを引き出します。
★スケーリング
 クエスチョン
(自分で,最悪の状態を0,解決の状態を10とした)尺度上で,自分の今の状態を表現するように求めるものです。
具体的な数値に表すことで,漠然とした解決の状態を確認することができます。
   1点の違いはどういう違いなのか,具体的な差を見付け,スモールステップでゴールへ近づくことをねらっています。
「一番いいときの状態を10点として,最悪の状態を0点としたときに,今何点ですか?」
(例)「4点ぐらいかなー」
→「4点なんだね。じゃ,5点にするためには,何がどんなふうになったらいいんだろう。」 といったかかわりをします。
★例外探し
問題の例外を尋ねるものです。
問題がなかった時や,問題があっても今よりいい状態だったときの具体的状況を子どもに尋ねます。
そこで見付かった「例外」を,既に起こっている解決の一部と考え,そこから更に,解決を広げていくことを目指します。
「朝,ひとりで起きられたことは一度もなかったの?」「朝,ちゃんと起きられることもあるんだね。その朝は,どんなふうだったの?」「どうしてひとりで起きられたんだろうね。」 といったことを考えてもらうようにかかわります。
いったい何が起こっていたのか?,だれが何をしたのか?,他の日とはどこがどう違っていたのか?などの質問でうまくやれていることに焦点を当てていきます。
★リフレーミング
フレームとは,「枠」のことです。フレームが偏っていたり堅かったりすると,自分や相手の持っているリソースを見付け出すことが難しくなります。
フレームにとらわれないことで,多くの「リソース」を見付け出すことを目指します。
「自分の気持ちを抑えることができないのは,素直なんだね。」「話すのはうまくできないけど,人の話がじっくり聞けるんだね。」と,相手のフレーム「枠」を変えるような言葉かけをします。
今の自分を肯定的に(OKである)に見られるようにリフレーミングを行い,「リソース」を探します。
★コーピング
 クエスチョン
問題を解決しようとしてきたことを受け止め,どのように対処してきたかを尋ねます。
できていることについて,動機付けることができれば,子どもたちの有能感や達成感を育てていくことができます。
「どんなふうにしていたからできるようになったの。」「大変だったね。苦しいのにどのようにしてがんばってきたの。」
よくやっていることに対しての間接的な称賛を含みます。
 
「ほかには?」「そのほかに工夫していることは?」などの質問により,広げていきます。
 
★称賛
ほめること,ねぎらうことです。評価され,賛同を得ることで勇気付けられ,自信回復につながります。
自己評価や能力を高める助けとなるようなすべてのことが対象となります。
称賛によって,他者から肯定される,認められる,勇気付けられることで解決につなげます。
「すごいですね。それはいいですね。」「いろいろ工夫しているね。」
「はあ」「へえー」などの相づちも入れ方によって,その気持ちを伝えることができます。
 
★外在化
問題となっている部分を具体的なものとして表現し,本人から引き離します。
問題であるのは症状であり,子ども自身と症状を切り離してあげることで,安心感を与えることができ,自己肯定感につなげます。
「イタイのイタイのとんでいけ!」
(朝,お腹が痛くなってしまう)
「今,あなたの中に,モヤモヤくんがいるんだね。じゃあ,それを一緒にやっつけていこうか。」といった働きかけで,問題を子どもから切り離します。

《参考文献》

○市川千秋監修/宇田光 櫻井禎子 有門秀記編集 「ブリーフ学校カウンセリング」 2004年 ナカニシヤ出版
○宮田敬一編 「学校におけるブリーフセラピー」 1998年 金剛出版
○ジェラルド・B・スクレア著/市川千秋 宇田光編訳 「ブリーフ学校カウンセリング」 2000年 二瓶社
○栗原慎二「ブリーフセラピーを生かした学校カウンセリングの実際」 2001年 ほんの森出版

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