「心のエネルギーを貯える活動」適応教室での実践例
 トラストウォーク」(中期におけるA子への支援)
活動名 トラストウォーク
参加者 男子5名  女子3名  指導員4名
ねらい 新しい集団で、やさしさを味わうことで不安を軽減する。また、自分を他者にまかせる行動を通して、安心感や自由感、不安感を体験する。
内容 ・ペアになる。一人が目かくしをし、もう一人が誘導する。2人とも話さず、指定された場所を他のペアとぶつからないように誘導する。リーダーの合図で役割を交代する。
準備物等 ・危険なく散歩ができる場所の確保
・目隠し用の布等

A子の支援方針 適応教室に通う他の生徒との「信頼体験」を経験することを通して、A子の適応教室での緊張感を和らげるとともに、対人関係の範囲を広げる。

 A子の実態と具体的支援内容
実態 具体的支援内容
○友達に対して思いやりがある。

○初めてする活動に対して、不安が大きい。

○自分で行動を決めきれない。自信がない。
○思いやりのある行動をとったときは、すぐに認めほめる。

○新しいことに取り組むときは、事前の説明や練習を行う。

○行動を指示するのではなく、選択肢を提示し、自己決定の機会を与える。

 具体的支援計画
活動前 個別支援シートをもとに、次のような具体的な支援内容を話し合った。
○人と接する場面で緊張が見られるので、エクササイズに入る前に緊張を解くようなゲームを入れる。また、指導員が適宜声をかける。
○友達に対して思いやりのある行動を取ったときは、シェアリングの場面で認める。
○体験活動について、事前(1週間前)に子どもに伝えておき、参加するかどうかを自分で選択できるようにした。
活動当日 ○指導員が一緒に活動し、子どもの様子を観察しながら、個別の支援方針に従って声かけ等の支援を行う。
活動後 ○A子の活動の様子や振り返りシートから、できたことを認め、具体的な事柄をほめる。

子どもの活動 支援者の主なかかわり等
● リーダーの指示  ○ 子どもの反応・行動
留意点
☆ A子に対する配慮
○ウォーミングアップ
   (5分)





○活動の仕方を知る。
   (5分)
















○エクササイズ(注2)をする。
   (15分)

○シェアリング(注3)をする。
   (15分)













○振り返りシートに記入する。
   (5分)
●2人組をつくる。
  ○ペアを組み、座る。





●「トラストウォーク」の「ねらい・仕方・ルール」を説明し、実際にして見せる。
【ねらい】
@自分をまかせる体験であること。
A案内するときに、どのくらいやさしさを出せるかを知ること。

【仕方】
・一人は目を閉じる。
・もう一人は、手を引くなどして指定された場所内を案内する。
・リーダーの合図で、役割を交代する。

【ルール】
・案内する人は、相手が怖がらないように配慮する。
・リーダーの指示に従う。


  ○2人が指定された場所内を歩く。



●ペアで「やさしさをどのように伝えたか」や「案内されているときの気持ち」について話し合うように伝える。
●「どれだけまかせられたか」について話し合うように伝える。
  ○ペアで話し合う。

●ペアの話し合いで出た内容を全体に伝えるように指示する。
  ○ペアの代表が発表する。

●リーダーは、自分をまかせていた生徒ややさしさを出していた生徒を紹介し、感想を述べる。

●子どもたちにゲームに参加してくれたことに対して感謝を述べる。やさしさについて、自分の思いを述べる。

●振り返りシートの記入について説明する。
  ○振り返りシートに記入する。
・緊張感を和らげるために、バースデーライン(注1)でペアをつくらせる。
☆自分の行動に自信が持てず、素早く動けないため、ペアづくりの条件をリーダーが提示する。










☆不安感が強いので、目を閉じられないときは、「できるだけでよい」ことを伝える。








・巡回して危険がないように適宜指示を出す。


☆話し合いの様子を見ながら、助言を行う。















☆書けないときは、どのようなことを書けばいいのかを具体的に助言する。

※注1:誕生日の早い者から順に1列に並ぶゲーム。その際、言葉を使わずにジェスチャーなどで自分の誕生日を伝えたり、相手の誕生日を知ったりする。

※注2:リーダーがねらいを達成させるために、子どもたちに取り組ませる課題(どのような内容のゲームをさせるかなど)

※注3:体験を振り返り、自分の思いを相手に伝えること。

 「陶芸実習」(後期におけるA子への支援)
実習名 陶芸実習(外部から講師を招聘して)
ねらい 焼き物に関する体験を通して、焼き物への興味を喚起し、陶芸に親しむ心を育て、創造の喜びを体験させる。(専門家の指導の下、各種実習活動を行うことで、創造、表現の喜びを味わわせ、自分の思いを素直に表現していこうとする意欲をもたせる。また、人から認めてもらい、作品を作り上げる喜び体験等を通して、自己理解を深め、自己肯定感を高める。)
準備物等

材料:陶土、各種釉薬、絵の具
道具:粘土板、ろくろ、へら、クレイカッター、馬かき、たたき棒、発砲スチロールの箱(削るまでの間の作品保管用)、かぎべら(削る作業に使う)、バケツ(釉薬の種類ごと)、ヒシャク、スポンジ、筆(釉薬かけに使う)


A子の支援方針 ○体験を通して、自分に対する自信を持つことができるようにする。
○自己決定を促す場面をつくる。

 A子の実態と具体的支援内容
実態 具体的支援内容
○初めてする活動に対して、不安が大きい。

○人と接するときの緊張感が高い。

○細かな作業が苦手。



○自分で行動を決めきれない。自信がない。
○実習内容や手順を予め知らせておく。

○講師から声をかけてもらうよう、事前にお願いしておく。

○講師に焼き物の土台は作ってきてもらう(使うかどうかはA子に決めさせる)。また、適宜、声かけ(励まし、具体的な事柄をほめること、アドバイス等)をする。手伝っていいかどうかはA子に決めさせる。

○行動を指示するのではなく、選択肢を提示し、自己決定の機会を与える。

 具体的支援計画
活動前 ○見通しを持ったり、興味・関心を持ったりするために、
 ・プリントで、日時、講師の先生、目的や内容などを入れて知らせる。
 ・昨年度の作品や活動の様子の写真を掲示しておく。

○講師との打ち合わせ
 ・当日の実習の流れや講師の思い等をきき、子どもたちの実態やそれぞれの支援方針を知らせるなかで、講師に協力を求めたいことをお願いする。
活動当日 ○指導員も一緒に実習を行い、個別の支援方針にそって具体的な支援を行う。また、活動の様子を写真に撮り、掲示物や振り返りシートに活用する。

【1日目】
 (1)陶芸の概要についての説明
 (2)粘土を練る、たたく、つまむ方法についての実演と指導
 (3)手びねり、ひもづくりによる成形の練習
 (4)手びねり、ひもづくりによる成形

【2日目】
 (1)1日目に成形した陶器の装飾(削り)について説明
 (2)陶器の装飾(削り)についての実演と指導
 (3)陶器の装飾(削り)作業

活動後 ○振り返りシートで自己評価を行わせる。
○できた作品を鑑賞し、お互いのよさを味わわせる。
○できあがった作品を家族や担任にプレゼントする。

 ※資料「お知らせプリント」(PDFファイル)
 ※資料「振り返りシート(A子)」(PDFファイル)

 竹細工実習」(復帰期におけるA子への支援)

実習名 竹細工実習
ねらい 竹を使った制作体験を通して、自由な表現の喜びを味わわせるとともに 、感情を豊かにし、自立の心を育む。(専門家の指導の下、各種実習活動を行うことで、創造、表現の喜びを味わわせ、自分の思いを素直に表現していこうとする意欲をもたせます。また、人から認めてもらい、作品を作り上げる喜び体験等を通して、自己理解を深め、自己肯定感を高める。)
準備物等

材料:竹
道具:のこぎり、小刀、のみ、きり


A子の支援方針 ○体験を通して、自分に対する自信を持つことができるようにする。
○自己決定を促す場面をつくる。

 A子の実態と具体的支援内容
実態 具体的支援内容
○登校する日が増え、適応教室での活動が減った。

○初めてする活動に対して、不安が大きい。

○人と接するときの緊張感が高い。

○細かな作業が苦手。


○自分で行動を決めきれない。自信がない。
○実習活動のお知らせをする。(するかどうかはA子に決めさせる)


○実習内容や手順を予め知らせておく。

○講師から声をかけてもらうよう、事前にお願いしておく。

○工具の使い方の練習をする。また、適宜、声かけ(励まし、具体的な事柄をほめること、アドバイス等)をする。手伝っていいかどうかはA子に決めさせる。

○行動を指示するのではなく、選択肢を提示し、自己決定の機会を与える。

 具体的支援計画
活動前 ○見通しを持ったり、興味・関心を持ったりするために、
 ・プリントで、日時、講師の先生、目的や内容などを入れて知らせる。
 ・実際の作品を掲示しておく。

○講師との打ち合わせ
 ・当日の実習の流れや講師の思い等をきき、子どもたちの実態やそれぞれの支援方針を知らせるなかで、講師に協力を求めたいことをお願いする。
活動当日 ○指導員も一緒に実習を行い、個別の支援方針にそって具体的な支援を行う。また、活動の様子を写真に撮り、掲示物や振り返りシートに活用する。

【1日目】
 (1)製作物の提示
 (2)のこぎり、なた、小刀など工具の説明と使い方の練習
 (3)トンボとミニ門松の製作

【2日目】
 (1)花器の製作
 (2)竹とんぼなど製作
活動後 ○振り返りシートで自己評価を行わせる。
○できた作品を鑑賞し、お互いのよさを味わわせる。
○できた作品は、家に持ち帰らせる。

 ※資料「お知らせプリント」(PDFファイル)
 ※資料「振り返りシート(A子)」(PDFファイル)