健康に生きるための食生活の指導の在り方の研究
−課題を見付け解決していこうとするワークシートの活用を通して−

食生活に関する問題点
課題を見付け解決していこうとするワークシート〔生徒の記入例
子どもたちの現状
・ 栄養バランスの偏り
・ 孤食,個食の食事
・ 塩分の多いスナック菓子を好む子どもたち
・ 糖分の多い飲み物を好む子どもたち
社会的な現状
・ 様々な生活習慣病の増加
・ 朝食欠食率の増加
・ 加工食品への過度の依存
・ 過度のダイエット志向


食に関する指導の重要性
健全な食生活は,子ども達が健やかに成長し,生涯にわたり健康で豊かな生活を送るうえでとても重要な営みです。現在,様々な生活習慣病の増加や加工食品への過度の依存,過度のダイエット志向などによる健康への影響が指摘されています。学校においても,健全な食習慣を形成するための食生活に関する教育が,更に重要となってきています。本研究では,ワークシートを活用して一人一人の生徒の食生活の課題について自ら追究していく学習を提案します。
指導のポイント
・ 1枚のワークシートで,食生活の課題発見から食生活改善の方法を探っていくようにします。 (指導計画/3時間)
・ 食生活改善の実践に役立つよう,課題に応じた家庭科通信を提案します。
・ 食に関する情報の発信としての家庭科通信を発行し,家庭にも食生活改善に向けた課題を提案します。
ワークシート開発の工夫
食べた食品を6群に分ける。その際に食品群別に色分けすることによって栄養バランスをつかみやすくする。
1枚(B4)のワークシートで自分の食生活の課題を探ることから課題の追究までを主体的に取り組ませていく。
1日に食べた総食品数を記入する欄を設ける。(1日30品目以上食べると栄養のバランスがとれる)
生活習慣病予防のために,砂糖・塩・油脂の摂り過ぎがないか考えさせる。その際,補助資料を用いて自分の生活を振り返えらせる。                                   
家族と一緒に考える項目を設けて,家庭からの意見を取り入れながら実生活に生かす学習にしていく。
家庭科通信の工夫した観点
生徒の食生活の課題に対応し,食生活改善の手助けになるような通信にする。
朝食の重要性 小魚・海そう不足 野菜不足 糖分の摂りすぎ 塩分の摂りすぎ インスタント食品の多用
食生活についての興味・関心のわく情報を家族で見ることのできる通信として発行する。
食事と行動 食べ合わせ 生活習慣病 日本食を見直そう【納豆】 日本食を見直そう【精進料理】

食生活の課題解決学習においてワークシーを活用した実践
単元名 食生活の課題と応用
内容 A 生活の自立と衣食住 (5) 関連指導項目(1)ア,イ
指導目標 一人一人の食生活の課題を解決していく過程において「目指せ!満点食ワークシート」を活用し,望ましい食生活の在り方について考えさせ,自分にできる方法で食生活の改善に向けて実践させる。
指導計画





段階 学習内容 時間
課題を探る 「自分の食生活を振り返る」
        ワークシートを用いて
1時間
課題をつかむ 「自分の食生活の課題に気付く」
       ワークシートを用いて
1時間
課題を追求する 「自分の食生活の課題の解決方法を考える」
       ワークシートを用いて
1時間
指導の実際

学習活動 教師の支援と指導上の留意点

生徒の考え,思い 具体的な活動
教師の支援 生徒の実際のワークシート
第1次
1 本時のねらいを確認する。
【自分の食生活を振り返ろう】
「自分の食生活はだいじょうぶかな?」
「最近身体がだるいけど,食生活に問題があるんじゃないかな?」
2 ワークシートに自分の食生活の実際を記入する。
1 前日の昼食,間食,夕食,本日の朝食の献立を記入する。
2 食事に含まれる食品を6群に分け決められた色のシールを貼る。そのシールの上にマジックで食品名を記入させる。シールを用いることにより栄養のバランスが一目で分かりやすい。
3 自分の食生活をまとめる。
「同じ色(栄養素)ばかり食べているんだ」
シールの数が朝は少ない。給食は数が多い。
前時に1日分の食事内容を記入することを予告しておく。
 
目指せ!満点食ワークシートを活用する。
   




【ワークシートに貼ったシールの生徒記入例】
       
この作業を各自に取り組ませることにより,日常の食生活の栄養のバランスについて目を向けさせる。
シールの色により栄養素の偏りに気付かせる。
授業後にワークシートを集め一人一人の実態を把握しておく。
第2次
1 本時のねらいを確認する。
【自分の食生活の課題を見付ける】
「自分の食生活のどこが問題なんだろう」
2 自分の食生活の課題を考える。 
ワ|クシ|トを検討する視点 食品群別に貼ったシールのばらつきで栄養バランスを見る。
1日に摂った食品数から栄養バランスを見る。
不足している栄養素,摂りすぎている栄養素を考える。
生活習慣病の要因となる砂糖・塩・油脂をとりすぎていないかを補助資料を参考に考える。
朝食,昼食,間食,夕食のそれぞれの比重を考える。
インスタント食品などが多くなっていないかを考える。
欠食がないかを見る。
適度な運動がなされているか考える。
3 自分の食生活の課題で解決しなければならないことをまとめる。
朝食は品目が少ない。
緑黄色野菜を食べていないんだ。
C群は牛乳や乳製品は食べているけど
   小魚や海そうは食べていない。
間食に塩分を多く摂っている。
お弁当に糖分を多い物ばかり食べている。
その他の野菜や果物を食べていない。
インスタント食品が多いなあ。

第1次で作成したワークシートを用いる。
食品数の記入をさせ理想の1日30品目にどの位近づいているか考えさせる。
補助資料で砂糖・塩・油脂などを摂取しすぎていないかチェックさせ,生活習慣病予防について考えさせる。
適度な運動をしているかチェックさせ,健康に生きるためには食事だけでなく,運動も必要であることに気付かせる。
「6群の栄養バランス」「食品数」「砂糖・塩・油脂の摂取量」「適度な運動」などの観点から自分自身の食生活の課題に気付かせる。









一人一人の食生活の課題が異なる。個別指導を行い,課題を明らかにさせていく。
食生活の課題を探らせる蔡には,必修の内容で学習した栄養のバランスだけではなく,生活習慣病に関するもの,運動などにも目を向けさせる。
たくさん課題がある生徒は解決可能なものから,考えさせる。
1 生徒すべての課題を黒板に書かせる。
2 生徒に課題がいろいろあることに気付かせる。
自分の課題ではないものにも興味関心を示し食の情報を 積極的に受け止めようとする姿勢を身に付けさせる。
4 課題についての情報交換をさせる。プライバシーには配慮する。
  
授業後にワークシートを集め一人一人の実態を把握しておく。
第3次
1 本時のねらいを確認する。
【食生活の課題の解決方法を考える】
「解決して健康な生活を送りたいな」
「どうすればいいんだろう」
「考えたことを,家族にも教えてあげたいな」
2 自分の食生活の課題の解決方法を考える。
《朝食を食べないタイプ》
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《野菜を食べないタイプ》
生徒のワークシートへ
《2群で牛乳や乳製品は食べるが小魚や海そうを食べないタイプ》
生徒のワークシートへ
《間食で塩分・糖分摂りすぎのタイプ》
生徒のワークシートへ
《夕食をインスタント食品ですませるタイプ》
生徒のワークシートへ
3 解決方法の具体的な実践について考える。
解決方法は,個々で異なる。教師の援助を必要とする生徒が多いので,授業前に提示する内容を準備しておく。





《朝食を食べないタイプ》の生徒に利用する資料
《野菜を食べないタイプ》の生徒に利用する資料
《2群で牛乳や乳製品は摂るが小魚や海そうを食べないタイプ》の生徒に利用する資料
《間食で塩分・糖分摂りすぎのタイプ》の生徒に利用する資料  (塩分に関する資料糖分に関する資料
《夕食をインスタント食品ですませるタイプ》の生徒に利用する資料
具体的な実践については,個々に家庭の協力を得ながら自分の生活の中で実践させる。授業後も,望ましい食生活が実践できるよう指導していく。

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