平成23年度佐賀県小・中学校学習状況調査Web報告書

Web報告書もくじⅤ  自校データの分析と活用

 

Ⅴ 自校データの分析と活用

学校における組織的な取組を
 

 

中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会より、平成22年3月24日に公開された「児童生徒の学習評価の在り方について(報告)」には、学習評価に係る学校における組織的な取組について、次のように記されている。



(学校における組織的な取組と教師の役割)
○ 学校や教師は、国や教育委員会等が示す評価の観点とその趣旨、評価規準、具体的な事例等を踏まえつつ、具体的な学習指導の目標や内容、使用する教材に合わせて評価規準等を設定するとともに、児童生徒の学習評価やそれを踏まえた学習指導の改善等を実践する役割を担っている。このため、学校や教師は、評価の実施者として、個々の児童生徒の学習評価に関する妥当性、信頼性等を高め説明責任を果たすとともに、児童生徒や保護者との間で必要な情報の共有を進め、教育の効果の増進を図ることが重要である。

○ 各学校においては、各年度の学校全体の指導目標などを校長が中心となって作成するなど、学習指導における組織的な取組がなされている。学習評価についても同様に、例えば、小学校にあっては各学年において、中学校や高等学校にあっては各教科において、評価規準や評価方法等を明確にすること、評価結果について教師同士で検討すること、実践事例を着実に継承していくこと、授業研究等を通じ教師一人一人の力量の向上を図ること等に、校長のリーダーシップの下で、学校として組織的・計画的に取り組むことが必要である。このような組織的な取組が定着していくことにより、学習評価の妥当性、信頼性等の向上や、教師の負担感の軽減につながるものと考えられる。

○ 今回の学習評価の改善の基本的な方向性の一つは学校や設置者の創意工夫を一層生かしていくことである。そのためにも、学校や設置者は学習評価に係る以上のような取組を進めていくことが求められる。(※)



 

学習評価についても、学習指導と同様に学校として組織的・計画的に取り組むことが必要だということが示されている。


学校支援におけるワークショップを通した取組について
 

 

平成20年度から始まった学校の状況に応じた指導方法の工夫改善へ向けた支援については、のべ200回を超えた。支援の目的は、以下の通りである。

《目的》
① 分析ツールを使った学習状況調査の結果の分析方法についての周知と理解を図る。
② 結果データなど各学校の児童生徒の実態に基づく指導方法の工夫改善の進め方についてワークショップを通して理解を図る。
③ 学習状況調査の結果をはじめとする客観的な数値による評価資料の有用性について教師の認識を高めるとともに、教師のPDCAサイクルへの意識化・具体化を図る。

上記の《目的》に関しては、平成22年度よりアンケートを実施し、各学校の職員の反応を集約するようにしている。以下のグラフは、9月30日現在(平成23年度実施分 小中を合わせた回答数956名)の集計結果である。

学校における組織的な取組に関連のある《目的》②については、質問4「児童生徒のよさや課題について、校内での共通理解を図るための今回のような演習についてどう思いましたか。」、それから、自由記述の欄への記入によって回答を得ている。質問4については、他の質問と比較して肯定的な回答が多いことが分かる。また、自由記述の欄にも以下のような回答が寄せられた。

○ ワークショップ型の研修は校内研でもやっていましたが、改めていい方法なんだということが分かりました。
○ ワークショップ型の研修で話し合うというのはいいなあと思いました。先生方みなさんで検討していって、同じ方向を見るということが大切です。
○ ワークショップ型の研修でみんなの考えを出し、まとめていく方法で共通理解を図り、やる気を共有したいです。
○ 校内研究の中でワークショップ型の研修を取り入れたら全員が参加でき、よいと思った。
○ ワークショップ型の研修は参加者全員の考えが分かり、それをまとめていくことで参加している満足感を得るということが感じられ、今後役に立ちそうです。

以上のような回答状況から考えると、ワークショップにおいて教師同士で共通理解を図ったり協議をしたりすることについては、高い有用感があることが分かる。

 

組織的・計画的な取組に向けて

 

学校における組織的な取組の1つであるワークショップを通した取組については、アンケートの結果からは高い有用感が得られていることが分かったが、以下のような回答も得られた。


● ワークショップ型の研修のよさは分かるが、教育課程実施優先のためゆとりがない。実施したときは業務時間を過ぎている。
● ワークショップ型の研修などを取り入れていきたいと思うが、なかなか時間がとれない。

このことは、組織的な取組については、時間の設定が大きな課題であることを示している。

以上のことから考えて、学習評価における組織的・計画的な取組に向けた視点として、以下の3点を挙げたい。

(1) 組織をどのような単位(学校全体・学年・教科等)で組むのか。
組織の単位を小さくすればするほど、動きやすい反面、各組織間の情報共有の時間の確保を設定する必要がある。一方で、単位を大きくすればするほど動きづらくなる。上記の学校支援におけるワークショップを通した取組においては、小学校では学年グループ(低学年・中学年・高学年)、中学校では学年で行うことが多かった。小・中学校で児童生徒に一番身近な組織だからであろう。校種や学校の規模にもよるが、まずは、動きやすいといいう視点で組織の単位を決める必要があると考える。

(2) 組織的な取組を計画的に取り入れる際、スパン(年度・学期・月・週等)をどう設定するのか。
計画的な取組を考えた場合、どのタイミングで行うのかについては、あらかじめ考えておく必要がある。学校ホームページに公開されている学校評価の具体的な取り組みの欄に、学習状況調査の結果分析を行うことを明記している学校がある。「ゆとりがない」「なかなか時間がとれない」といった現実に対応するには、早めに計画を立てて、組織的な取組を行えるような時間を確保する必要があるのは言うまでもない。

(3) 学校独自での取組
現在は、多くの学校に学校支援という形で教育センター等から出向き、学習状況調査の結果分析に関わる研修会を行っている。学校からの依頼内容は主に2つである。
(ア) 分析ツールを使った各学校の学習状況調査実施対象学年の結果分析
(イ) 学習状況調査等から見える学習評価の結果の活用
今後は、これらのことについて学校独自で取り組めるようにする必要がある。
(ア)については、まずは、分析ツールの出力される数値やグラフから児童生徒の状況を読み取る力を教師自身が身に付ける必要がある。また、分析ツールについては、「数値の読み方が分からない」「グラフが見づらい」といった声に応えるために、改良を加え、今まで以上に分かりやすく使いやすくする必要がある。
(イ)については、評価結果について検討を行うこと、改善の方針をとりまとめること、方針に従って実践すること自体がすでに活用と言っても過言ではない。上記のアンケート結果からは、教師同士で共通理解を図ったり協議をしたりすることに高い有用感があることが分かっているので、まずは各学校において、上記(1)(2)を明確にして、組織的に取り組めるような状況を作っておくことが必要である。

教育センターでは、学力向上支援のために「授業に役立つ実践研究」に取り組み、小学校国語科・中学校国語科・小学校算数科・中学校数学科の4つの研究委員会より「すぐに役立つ授業プラン」「学習プリント」を随時発信している。「すぐに役立つ授業プラン」「学習プリント」は、日々の授業や家庭学習、振り返り学習等、用途に応じてダウンロードできるようにしている。学習評価における組織的・計画的な取組において、改善の方針に従って実践する際のヒントや資料として是非活用していただきたい。

 

《引用文献》
※ 文部科学省  『児童生徒の学習評価の在り方について(報告)』   2010年3月24日 http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/004/gaiyou/attach/1292216.htm

 


最終更新日:2011-10-07