学校における組織的な取組の1つであるワークショップを通した取組については、アンケートの結果からは高い有用感が得られていることが分かったが、以下のような回答も得られた。
● ワークショップ型の研修のよさは分かるが、教育課程実施優先のためゆとりがない。実施したときは業務時間を過ぎている。
● ワークショップ型の研修などを取り入れていきたいと思うが、なかなか時間がとれない。
このことは、組織的な取組については、時間の設定が大きな課題であることを示している。
以上のことから考えて、学習評価における組織的・計画的な取組に向けた視点として、以下の3点を挙げたい。
(1) 組織をどのような単位(学校全体・学年・教科等)で組むのか。
組織の単位を小さくすればするほど、動きやすい反面、各組織間の情報共有の時間の確保を設定する必要がある。一方で、単位を大きくすればするほど動きづらくなる。上記の学校支援におけるワークショップを通した取組においては、小学校では学年グループ(低学年・中学年・高学年)、中学校では学年で行うことが多かった。小・中学校で児童生徒に一番身近な組織だからであろう。校種や学校の規模にもよるが、まずは、動きやすいといいう視点で組織の単位を決める必要があると考える。
(2) 組織的な取組を計画的に取り入れる際、スパン(年度・学期・月・週等)をどう設定するのか。
計画的な取組を考えた場合、どのタイミングで行うのかについては、あらかじめ考えておく必要がある。学校ホームページに公開されている学校評価の具体的な取り組みの欄に、学習状況調査の結果分析を行うことを明記している学校がある。「ゆとりがない」「なかなか時間がとれない」といった現実に対応するには、早めに計画を立てて、組織的な取組を行えるような時間を確保する必要があるのは言うまでもない。
(3) 学校独自での取組
現在は、多くの学校に学校支援という形で教育センター等から出向き、学習状況調査の結果分析に関わる研修会を行っている。学校からの依頼内容は主に2つである。
(ア) 分析ツールを使った各学校の学習状況調査実施対象学年の結果分析
(イ) 学習状況調査等から見える学習評価の結果の活用
今後は、これらのことについて学校独自で取り組めるようにする必要がある。
(ア)については、まずは、分析ツールの出力される数値やグラフから児童生徒の状況を読み取る力を教師自身が身に付ける必要がある。また、分析ツールについては、「数値の読み方が分からない」「グラフが見づらい」といった声に応えるために、改良を加え、今まで以上に分かりやすく使いやすくする必要がある。
(イ)については、評価結果について検討を行うこと、改善の方針をとりまとめること、方針に従って実践すること自体がすでに活用と言っても過言ではない。上記のアンケート結果からは、教師同士で共通理解を図ったり協議をしたりすることに高い有用感があることが分かっているので、まずは各学校において、上記(1)(2)を明確にして、組織的に取り組めるような状況を作っておくことが必要である。
教育センターでは、学力向上支援のために「授業に役立つ実践研究」に取り組み、小学校国語科・中学校国語科・小学校算数科・中学校数学科の4つの研究委員会より「すぐに役立つ授業プラン」「学習プリント」を随時発信している。「すぐに役立つ授業プラン」「学習プリント」は、日々の授業や家庭学習、振り返り学習等、用途に応じてダウンロードできるようにしている。学習評価における組織的・計画的な取組において、改善の方針に従って実践する際のヒントや資料として是非活用していただきたい。
《引用文献》
※ 文部科学省 『児童生徒の学習評価の在り方について(報告)』
2010年3月24日
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/004/gaiyou/attach/1292216.htm
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