平成25年度佐賀県小・中学校学習状況調査及び全国学力・学習状況調査を活用した調査Web報告書

Web報告書もくじⅣ 教師意識調査結果の分析


  教師意識調査結果の分析
 

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1 教科全般における指導法の工夫

小学校、中学校共に、レポートや作文、発表や話合いなどの言語活動を取り入れる教師の割合が高くなってきている。[図1、図3]
小学校、中学校共に、日常の授業や指導などにおいてPDCAサイクルを意識し、単元における学習目標や評価基準を明確にしたり、目標を達成するために必要な教材や学習活動を指導計画に取り入れたりしている教師の割合が高くなってきている。[図5、図6]
 

ここでは、教科全般における指導法の工夫について、書いて表現する活動を取り入れた授業、考えを交流する活動を取り入れた授業、指導と評価を一体とした授業、PDCAサイクルを踏まえた実践の実施状況について分析する。
なお、学校スコアによるグループ比較においては、小学校、中学校の最高学年である小学6年生と中学3年生の結果を基に比較することとする。

   
「レポートや作文など書いて表現する活動を取り入れた授業を行っていますか」について
 

 

図1 「レポートや作文など書いて表現する活動を取り入れた授業を行っていますか」の回答の割合(経年比較)

 

平成25年度の結果を見ると、「多くの単元で行っている」「半分程度の単元で行っている」と回答をした小学校教師の割合は44.8%であり、同じ回答をした中学校教師の割合は28.6%である。

経年で比較すると、小学校、中学校共に、「多くの単元で行っている」「半分程度の単元で行っている」と回答した教師の割合は増加している。特に、中学校においては「多くの単元で行っている」と回答した教師の割合が、平成23年度から平成25年度にかけて5.1ポイント増加している。[図1]

     

   

 

 

図2-1 書いて表現する活動を取り入れた授業

      度と教科別平均正答率(小学6年生)

 

図2-2 書いて表現する活動を取り入れた授業

      度と教科別平均正答率(中学3年生

 

この設問においてAグループとBグループの教科別平均正答率を比較すると、小学校では、6教科中4教科においてAグループの平均正答率がBグループの平均正答率よりも高くなっている。中学校では、全ての教科においてAグループの平均正答率が高くなっている。特に、中学校では、数学A・数学Bと英語においては、6.0ポイント以上回る結果となった。[図2-1][図2-2]

   
   
「発表や話し合い活動など表現し、考えを広げたり深めたりする活動を取り入れた授業を行っていますか」について
 

 

図3 「発表や話し合い活動など表現し、考えを広げたり深めたりする活動を取り入れた

         授業を行っていますか」の回答の割合(経年比較)

 

平成25年度の結果を見ると、「多くの単元で行っている」「半分程度の単元で行っている」と回答をした小学校教師の割合は76.4%である。これに対し、同じ回答をした中学校教師の割合は42.4%である。

経年で比較すると、小学校、中学校共に、「多くの単元で行っている」「半分程度の単元で行っている」と回答した教師の割合は増加している。特に、中学校においては、「多くの単元で行っている」と回答した教師の割合は、平成23年度から平成25年度にかけて、6.0ポイント増加している。小学校、中学校共に学習活動において、発表や話し合い活動などの言語活動の場を設定する傾向がある。[図3]

     

    

図4-1 考えを交流する活動を取り入れた授業を行

      っている頻度と教科別平均正答率

      (小学6年生)

 

図4-2 考えを交流する活動を取り入れた授業を行

      っている頻度と教科別平均正答率

      (中学3年生)

 

この設問においてAグループとBグループの教科別平均正答率を比較すると、小学校、中学校ともに、全ての教科においてAグループの平均正答率が高くなっている。[図4-1][図4-2]

   
   
「単元における学習目標や評価規準を明確にした上で、その目標を達成するために必要な教材や学習活動を指導計画に取り入れて指導を行っていますか」について
 

 

図5 「単元における学習目標や評価規準を明確にした上で、その目標を達成するため

       に必要な教材や学習活動を指導計画に取り入れて指導を行っていますか」の回答

        の割合(経年比較)

 

平成25年度の結果を見ると、「多くの単元で行っている」「半分程度の単元で行っている」と回答をした小学校教師の割合は96.1%であり、同じ回答をした中学校教師の割合は90.6%である。

経年で比較すると、小学校、中学校共に、「多くの単元で行っている」と回答した教師の割合が増加している。[図5]

   

図6-1 指導と評価を一体とした授業の頻度と教科

      別平均正答率(小学6年生)

 

図6-2 指導と評価を一体とした授業の頻度と教科

      別平均正答率(中学3年生)

 

この設問においてAグループとBグループの教科別平均正答率を比較すると、小学校では、6教科中5教科でAグループの平均正答率が高くなっている。中学校では、全ての教科においてAグループの平均正答率が高くなっている。[図6-1][図6-2]

   
   
「日常の授業や単元等の指導、学校における教育活動において、PDCAサイクル(計画→実施→評価→改善)を踏まえた実践を行っていますか」について
 

 

図7 「日常の授業や単元等の指導、学校における教育活動において、PDCAサイクル

   (計画→実施→評価→改善)を踏まえた実践を行っていますか」の回答の割合

   (経年比較)

 

平成25年度の結果を見ると、「行っている」「どちらかといえば行っている」と回答をした小学校教師の割合は87.0%であり、同じ回答をした中学校教師の割合は75.3%である。

経年で比較すると、小学校、中学校共に、「行っている」「どちらかといえば行っている」と回答した教師の割合が増加する傾向が見られる。[図7]

     

   

図8-1 PDCAサイクルを踏まえた実践をしている頻

      度と教科別平均正答率(小学6年生)

 

図8-2 PDCAサイクルを踏まえた実践をしている頻

      度と教科別平均正答率(中学3年生)

 

この設問においてAグループとBグループの教科別平均正答率を比較すると、小学校では、大きな違いは見られない。中学校では、全ての教科においてAグループの平均正答率が高くなっている。特に、中学校では、数学A・数学Bと英語においては、6.0ポイント以上回る結果となった。[図8-1][図8-2]

   
   
これからの指導に向けて
   
 

PDCAサイクルを踏まえた指導と評価の一体化

今回の調査結果から、各教科の指導に当たって、PDCAサイクルを踏まえた指導と評価の一体化が、学力の定着と向上に効果的であることがうかがえた。指導と評価の一体化によって、学習指導のねらいを明確にし、授業実践、学習評価をすることで、児童生徒一人一人の学習状況を把握でき、その後の指導の工夫、改善や個に応じた指導の充実が図られたからだと考える。

まず、指導計画の作成においては、生徒に身に付けさせたい学習内容から学習目標を設定することが重要である。また、学習目標の設定とともに、学習目標の到達度を評価するための評価規準の設定や評価規準に対応した評価方法・評価基準を準備しておくことで、評価方法の妥当性、信頼性が高まり、授業実践においても指導と評価を着実に実施することができるものと考えられる。

次に、作成した指導計画に基づく授業実践においては、学習目標を達成するために必要な教材を選択したり、学習活動を取り入れたりして授業を展開することが重要である。学習活動については、今回の調査結果から、レポートや作文、発表、話し合いなどの言語活動を充実させることが、効果的であることが読み取れた。言語活動を充実させることで、基礎的・基本的な知識及び技能の定着や思考力・判断力・表現力の育成が図られるからだと考えられる。

そして、学習評価については、児童生徒の学習意欲を喚起する視点から、学習の成果だけでなく学習の過程を一層重視していくことが大切である。児童生徒のよさや進歩の状況などを積極的に評価し、児童生徒がどれだけ成長したかを評価していくことが大切である。また、評価方法については、観察、ノート、ワークシート、作品、ペーパーテストなど様々な方法が考えられるが、評価の観点や評価の場面などにおいて児童生徒の学習状況を的確に評価できる方法を選択していくことが重要である。

最後に、児童生徒の学習評価の結果は、一人一人の学習状況を把握するだけではなく、児童生徒の形成的な評価として、評価後の指導に役立てることが、児童生徒の更なる学力の定着と向上につなげることが重要である。また、指導の改善や工夫に生かし、教師が指導の過程や評価方法を見直すことにより、更に効果的な指導が行えるように、工夫や改善を図らなければならない。



最終更新日:2013-10-21