平成24年度佐賀県小・中学校学習状況調査及び全国学力・学習状況調査を活用した調査Web報告書

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Ⅱ 調査結果の概要

教科ペーパーテスト及び児童生徒意識調査の概要

教科ペーパーテスト 全体の概要
 

○ 県で設定した「到達基準」に対して「おおむね達成」の基準を上回ったものは、26教科中23教科であり、本県児童生徒の学習内容の習得状況は概ね良好である。(全国調査問題のA、Bについては2教科として数えている。)

○ このうち、「十分達成」の基準と同程度のものは小学6年国語A、基準を上回ったものは、中学2年国語、中学3年国語A、B、中学3年英語であり、これらの教科については、学習内容が十分習得されていた。

○ 小学5年及び中学1年は、「十分達成」の基準を上回った教科はないが、全教科とも「おおむね達成」の基準を上回っている。 中学2年は「十分達成」の基準を上回っている教科がある一方で、数学、社会が「おおむね達成」を下回るなど、教科間のばらつきが大きかった。

○ 平成23年度と比べると、「十分達成」に対する割合が高くなったものは18教科中8教科、逆に、低くなったものは10教科であった。(小学6年国語、算数、中学3年国語、数学についてはA、B問題があり、単純に比較できないので除いている。)

※1 H23年度調査の小6国語・算数、中3国語・数学については過去の全国調査問題を利用しているが、参考のために、県独自に到達基準を設定している。
※2 H24年度調査の小6国語・算数、中3国語・数学については、全国調査問題を利用しているため、A、Bに分けて正答率を出している。
※3 H24年度調査の小6国語・算数・理科、中3国語・数学・理科については、全国調査問題を利用しているが、参考のために、県独自に到達基準を設定している。
※4 網掛けについては「十分達成」に対する割合が1.0を上回っている教科を示している。

※到達基準は、 十分達成/おおむね達成 のラインを示している → 到達基準の設定について

  県の各教科正答率の「十分達成」に対する割合をグラフに表すと次のようになる。「十分達成」を1.00としたときの、各教科正答率の比率を示している。「おおむね達成」の基準は各教科で若干異なる。

■各学年・教科正答率の「十分達成」に対する割合 (十分達成=1.00)
 

   
教科ペーパーテスト 教科ごとの概要
 

① 国語

 

・ 小・中学校ともに、相手の意図をつかみながら聞いたり、話の内容を的確に聞き分けたりするなど、話の内容を聞き取る力は昨年度までに引き続き、概ね良好であった。
・ 言語についての知識・理解・技能の定着も概ね良好であり、特に漢字の読みについての知識は良好であった。
・ 書く能力、読む能力については、学年によって定着にばらつきがあり、特に、相手や目的に応じて分かりやすく書いたり、条件に合わせて書いたりすること、文章の内容を捉えたり、文章の構成や展開、表現の特徴に気を付けながら読んだりすることには課題があった。

  《指導改善のポイント》

○ 読み取った内容を、相手や目的、条件に合わせて書き換えるような指導の工夫 

○ 文章の内容だけではなく、表現の仕方にも注意して読むような指導の工夫

   
  ② 社会
 

・ 小学校においては、5、6年では資料から必要な情報を読み取ったり、それを基に説明したりする力や社会的事象を解釈する力など、全般的に概ね良好であったが、中学1年(小学6年の学習内容)において、課題があった。
・ 内容・領域別に見ると小学5年の「県の様子」、中学1年の「我が国の歴史」「我が国の政治の働き」に課題があった。
・ 中学校においては、2年で教科正答率が「おおむね達成」に到達していない状況にあり、特に2年では、「社会的な思考・判断」「社会事象についての知識・理解」の観点、3年では、「資料活用の技能・表現」の観点が「おおむね達成」に到達していない状況であった。
・ 中学校においては、相対的に地理的分野の内容の理解はできていたが、歴史的分野においては課題があった。

  《指導改善のポイント》
○ 小学校においては、討論活動を行ったり、自分の考えをまとめたりする学習活動を行うなどして、児童の思考力・判断力・表現力を高めていくような指導の工夫
○ 中学校においては、特に歴史分野の学習において、様々な資料を活用し、歴史的事象の意味や意義を理解させた上で、時代の特色を捉えさせるような学習活動の設定

○ 小・中学校ともに、説明したり、論述したりする学習活動の設定とそれらの活動を適切に評価する方法の工夫

   
  ③ 算数・数学
 

・ 計算問題を解く技能や知識を問う問題は概ね良好であった。特に小学校における仮分数を帯分数で表したり、角の大きさを求めたりする技能や、中学校における数や文字を用いた式の計算、図形領域の知識は身に付いていた。
・ 問題の解き方や考え方などを言葉や式を使って説明する問題は正答率が低く、数学的な思考力・表現力については、昨年度に引き続き課題があった。
・ 中学校における、新学習指導要領への移行に伴い新しく追加された学習内容の定着についても昨年度に引き続き課題があった。

 

《指導改善のポイント》
○ 小集団活動などを通して、解決したことを図や式などを使って説明させるとともに、その説明が十分なものであるか、解決の手順としてふさわしいものであるかを検討させるような学習活動の設定

○ 成り立つ理由や問題解決の方法について、自分の考えをまとめたり、互いに分かりやすく伝え合ったりする学習活動を通して、自分の考えを広げたり、深めたりするような指導の工夫

   
  ④ 理科
 

・ 小学校、中学校ともに「科学的な思考力・表現力」は概ね良好であった。特に、中学校では、平成23年度と比べても向上する傾向が見られた。 しかしながら、小学校では、「科学的な思考力・表現力」の中で、学習内容を日常生活にあてはめて考える力を問う問題には課題が見られた。
・ 中学2年の「大地の成り立ちと変化」の学習内容については、前年度と比べて改善が見られた。
・ 小学校・中学校ともに観察・実験の基礎的・基本的な技能の定着が不十分であり、中学校においては、目的に応じて条件を整えながら観察・実験を構想する力の定着に課題があった。

  《指導改善のポイント》

○ 知識・技能の習得させる活動と、それらを活用させる活動のバランスがとれた指導の工夫

○ 問題解決学習(中学校では探究活動)をなお一層充実させていくような指導の工夫

   
  ⑤ 英語
 

・ 英語で話された内容から、時間、場所、用件などの具体的な情報を正確に聞き取る力は良好であった。
・ 中学3年においては、英語でまとまった内容の文章を書くことのできる力が身に付いている生徒が増え,前年度と比べて改善が見られた。
・ 「What」などの疑問詞を含む質問に対して、自分の考えや気持ちを英語で書くことには課題があった。

  《指導改善のポイント》

○ 生徒同士のコミュニケーション活動やスピーチ活動を行うときに、書くことを取り入れた指導の工夫

○ 生徒が英語を聞いたり読んだりするときに、考えたり判断したりする場面をつくる指導の工夫

   
児童生徒意識調査の経年比較及び学年間比較
 

※意識調査は県調査の児童生徒意識調査 小学:46問、中学:49問の回答を分析したもの。

※経年変化を把握するため、一部において全国調査の児童生徒質問紙調査と同一の設問を設定している。

※平均正答率は、全教科の平均正答率を示す。

 


(1) 授業への関心・理解度
学校での学習については、「国語の勉強は好きだ」「算数(数学)の勉強は好きだ」「理科の勉強は好きだ」の質問に対して「当てはまる」と回答している児童生徒の割合は、中学2年国語、中学3年数学以外では全て増加している。「当てはまる」「どちらかといえば当てはまる」を合わせた児童生徒の割合では、中学2年国語、中学1年数学、中学3年数学、中学3年理科以外では全て増加している。

 しかし、「国語の授業の内容はよく分かる」「算数(数学)の授業の内容はよく分かる」「理科の授業の内容はよく分かる」の質問に対して「当てはまる」と回答している児童生徒の割合はいずれの教科においても、小学6年、中学3年で減少しており、中学2年国語でも減少している。

 「普段の授業では、自分の考えを発表する機会があたえられていると思う」の質問については、中学3年以外の全ての学年で、「普段の授業では、生徒の間で話し合う活動をよく行っていると思う」の質問については、小学6年と中学3年以外の全ての学年で、「当てはまる」と回答している児童生徒の割合が増加している。また、「学校の授業などで、自分の考えを他の人に説明したり、文章に書いたりするのは難しい」の質問については、全ての学年で「当てはまる」と回答している児童生徒の割合が減少している。

 


(2) 家庭での学習
 家庭での勉強時間は、月~金曜日については大きな変化は見られないが、1時間以上取り組んでいる児童生徒の割合を見ると、中学2年以外では、わずかに増加している。学校が休みの日の勉強時間についても大きな変化は見られないが、2時間以上取り組んでいる児童生徒の割合を見ると、中学2年以外では、わずかに増加している。
 家庭学習の取組については、「自分で計画を立てて勉強している」「学校の授業の復習をしている」の質問に対して、小学6年、中学3年以外の全ての学年で「している」と回答した児童生徒の割合が増加しており、「学校の宿題をしている」の質問に対しては、中学3年以外の全ての学年で「している」と回答した児童生徒の割合が増加している。「どちらかといえばそうしている」を合わせた児童生徒の割合についても同様の結果である。
 全国調査の質問紙調査には質問がないので、小学6年、中学3年については把握できないが、「苦手な教科の勉強をしている」「テストで間違えた問題について、間違えたところを後で勉強している」の質問についても、小学5年、中学1年、中学2年ではほぼ同様の結果となっている。

 


(3) 学校生活、家庭生活、児童生徒の意識
 学校生活については、「学校での生活は楽しい」の質問に対して、小学5年と中学1年で、「学校では落ち着いて勉強することができている」の質問に対して、小学5年、中学1、2年で「そう思う」と回答した児童生徒の割合が増加している。(県調査のみの質問であるため、小学6年、中学3年の結果はない)

 家庭生活については、1日あたりのテレビやビデオ・DVDを視聴する時間が2時間以上の児童生徒の割合が、小学6年を除くと減少している。また、2時間以上テレビゲームをする児童生徒の割合には大きな変化は見られないが、小学5年で若干増加しており、中学3年では減少している。

 「朝食を毎日食べている」の質問については「している」と回答した児童生徒の割合が中学1年を除く全ての学年で増加している。また、「学校図書館・学校図書室や地域の図書館へ行く頻度」についても、中学3年を除くと、「週に1~3回程度」以上行くと回答した児童生徒の割合が増加している。

 生徒の意識については、「将来の夢や目標をもっている」の質問に「当てはまる」と回答した児童生徒の割合が、中学2年で同数である以外は、全ての学年で増加している。

   

教科ペーパーテストと児童生徒意識調査の関連

 

教科ペーパーテストと児童生徒意識調査の関連分析

(ここでいう平均正答率は、各学年の全教科平均正答率を示す。)


・授業への関心・理解度については、「○○の勉強が好き」「○○の授業の内容はよく分かる」の質問に対して肯定的な回答をした児童生徒ほど平均正答率は高くなっている。また、「普段の授業では、自分の考えを発表する機会があたえられていると思う。」の質問に対して肯定的な回答をした児童生徒ほど平均正答率は高くなっている。
・家庭での学習については、「学校の授業の復習をしている」の質問に対して肯定的な回答をした児童生徒ほど平均正答率は高くなっている。
・ 「学校の宿題をしている」「苦手な教科の勉強をしている」「テストで間違えた問題について、間違えたところを後で勉強している」の質問についても概ね同様の結果が見られた。特に「苦手な教科の勉強をしている」「テストで間違えた問題について、間違えたところを後で勉強している」の質問については、中学校において「している」と回答した生徒と「全くしていない」と回答した生徒の差が大きくなっている。
・ 学校生活、家庭生活、児童生徒の意識については、「学校生活が楽しい」「学校では落ち着いて勉強することができている」の質問に対して、肯定的な回答をした児童生徒ほど平均正答率が高くなっている。また、「1日あたりテレビやビデオ・DVDを視聴する時間」と平均正答率には明確な関連は見られないが、「1日あたりテレビゲームをする時間」と平均正答率との関連では、テレビゲームをする時間が長い児童生徒ほど、平均正答率が低くなっている。
・家庭での学習については、学習時間は若干の増加が見られた。「学校の授業の復習をしている」「学校の宿題をしている」などの回答が全体的に増えるなど、家庭学習への意識や姿勢には改善が見られた。家庭生活については、テレビやビデオ・DVDの視聴時間は全体的に減っている一方で、テレビゲームをする時間は全体的にわずかに増えているなど、改善が図られている点と課題が見られる点があった。

 

   

最終更新日:2012-10-15