まずは、一人一人の教師が、自分の目の前にいる児童生徒の様子を思い浮かべながら、報告書を読んでほしい。「自分の学校の子どもはどうなのか?」とか「自分が指導している子どもたちはちゃんとできているのか?」など思ったことについて、分析ツールを使って調べてみてはどうだろうか。そこで見付かったよさや課題について、報告書の中の提言などをヒントにしながら、よりよい指導方法を自校の学習環境や自分の授業に取り入れることが指導改善の第一歩であろう。
しかしながら、個々の教師の取組だけでは、学校全体としての指導改善には至らないことが多い。一人の教師が6年間(中学校では3年間)を通して指導するということはまれであるし、中規模以上の学校では、学級集団も毎年変わるのが一般的である。系統的、継続的な指導を進めていくためには、どうしても学校としての共通理解・共通実践が必要であろう。また、様々な取組が行われてはいても、取組の教育的な意義や取り組む際の留意点などを指導する側の全ての教師が認識していなければ、数年で形骸化してしまうこともある。
問題を解決するためには、調査の結果や、日々の指導から得た経験知の中から、自校の課題となることを、全ての教師が共通に認識することが第一歩であろう。学校内での校内研修や教科部会等において、分析を行い自校の児童生徒の状況について考えてみることが大切であろう。
よさについては、自校の成果として保護者や地域に対してもアピールすることができるし、更に伸ばすための手立てを考えていけば、ますますよい結果をもたらすであろう。課題については、改善に向けて、何らかの共通実践が必要であろう。どのような実践が望ましいかということについては、報告書の中でも多岐にわたって、提言をしている。これらを参考にしつつ、目の前の児童生徒のことをしっかりとイメージして、必要な実践内容を導き出してほしい。その際、関係する全ての教師が、継続的に共通実践できる内容であることをしっかり確認することが大切であろう。
課題となることは、国語、算数(数学)、理科、社会、英語の教科だけに関わることではない場合もあろう。調査の対象とはなっていない教科においても、授業の進め方や宿題の出し方、学習形態の工夫など共通に取り組むべきことが多くある。関係教科だけの課題とせずに、学校全体として取り組むことが大切であろう。
教科指導における課題だけでなく、学校生活に関わることや家庭生活に関わることについても課題は見付かるであろう。課題の解決に向けては、生徒指導担当や養護教諭などが中心となって、手立てを考えていくことや、保護者会などを通して保護者に協力を求めていくことなども考えられる。分析ツールから出力される資料などが有効に活用できるであろう。
採点・入力と多くの教師の尽力によって実施された学習状況調査だが、得たデータには無限の可能性がある。教師一人一人のアイディアや学校の創意工夫によって、指導改善が実現し、佐賀県の児童生徒によりよい指導がなされることを望みたい。 |