研究の成果と課題が日々の実践につながる校内研究の進め方を提案します!
 2 研究の実際
 (3) 校内研究の推進・充実のための方策
  @ 実態調査結果に基づいた方策
 県内の公立小・中学校における、校内研究についての実態調査結果に基づいた推進・充実のための方策を、1年間を見通したPDCAサイクルに沿って整理しました。各段階における方策のポイントを以下のように考え、校内研究についての課題を解決するための工夫や、研究を更に充実させるためのアイデアを提案します。
・ Pにおいては、研究目標や方向性の共通理解を図ること
・ Dにおいては、成果や課題の共有と、実践の継続的な実施をすること
・ Cにおいては、日々の実践において活用されるような研究の評価とまとめをすること
・ Aにおいては、次年度に向け、研究の成果を生かした研究主題の選定をすること
 また、各学校の校内研究の取組における成果や課題の共通理解と日々の教育実践の積み重ねを図るためには、研究会などの協議の場を活性化させることが有効だと考えます。
  A 研究会を活性化させる具体的な手立てについて
 研究会の形態には、「伝達型の研修」、「参加型の研修」、「課題研究型の研修」、「体験型の研修」といった、様々なものがあります(図5)。その中で、研究会の活性化を図るためには、参加型の研修であるワークショップ型の研修(以下「ワークショップ型」という)やポスターセッションを取り入れた研修が有効だと考えられます。

図5 研究会の形態

 特に、ワークショップ型に目を向けると、その意義として国立教育政策研究所総括研究官の千々布は「横浜市教育センター 授業力向上の鍵」の中で、「ワークショップ方式は、授業研究の検討会が活性化していない学校の教員、特に若手の教員において高い満足度を得る傾向がある。多くの検討会が表面的な賛辞の言葉の応酬に終わっている。それが付箋というツールを使うことで、教員の本音の議論が行いやすくなるようなのだ。(中略)ワークショップ方式を使うと、若手教員を含めた教員全員の授業に関する気付きを討論の場に引き出し、それを通じて全体の向上につなげることが容易になる」と述べています。「(1)A校内研究に取り組む意義」の中でも述べたとおり、40〜50代の教師の割合が増加傾向にあり、学校現場において偏った年齢構成となりつつあります。この現状に対応すべく、互いに情報を交流・収集し、さらに、研究会を活性化させるための手立てとして、ワークショップ型は有効であると言えます。

 独立行政法人教員研修センター「教員研修の手引き」には、ワークショップ型の特徴として、次の3つが挙げられています。
 ◯ 参加につい
参加者が主体的に参加し、積極的に関わっていくことが不可欠であることから、参加者の意欲を高めることができます。
 ◯ 活動について
体験、作業、討議等の活動が中心です。それぞれ単独で、あるいは組み合わせて展開することができ、自らが「活動」することによって学びを体得することができます。
 ・ 体験を中心とした活動
実習や演習などの直接体験、ロールプレイなどの疑似体験が含まれます。参加者は、これらの体験を通して学びを深めていきます。体験した後に、振り返りや分かち合いを行う「シェアリング」が重要です。
 ・ 作業を中心とした活動
参加者が模造紙やワークシート等を使いながら、共同で計画を作成したり、問題解決を図ったりすることが考えられます。

例:ウェビング、5W1H など

 ・ 討議を中心とした活動
参加者が自由に思いつきやアイデアを出し合い、新しいアイデアを生み出したり、多くのアイデアから物事を多面的に捉えたりすことができます。そのため、話合いが活発に行われるような手立てを取ることが重要です。

例:ブレインストーミング など

 ◯ グループについて
グループ活動が中心です。参加者の協同作業により、相乗的な成果を創り上げることができます。

 以上のことから、全ての教師が主体的に参加でき、教師同士の対話や協働性を上げることを目的として、ワークショップ型を取り入れた研究会を提案します。これにより、研究会を活性化させることができると考えます。

ワークショップ型を行うに当たっては、
@ ファシリテーターと呼ばれる司会・進行役がいること
A 参加者が自発的に作業や発言を行うことができること
B 参加者のスキルを伸ばすことが目的であること
が大切となります。つまり、ファシリテーター、参加者、作業できる環境の3つが必要と考えられます。さらに、ワークショップ型の種類は多くあり、話合いの目的や内容に応じて使い分けます。
表4はその一例です。

                           【表4 ワークショップ型の種類と特徴】
種 類
特 徴

ブレインストーミング  ・ブレインライティング
  ・マトリックス法

思考を広げアイデアを出しやすくする方法
例:ある課題について多くの意見を求めるとき
 ・ウェビング  ・KJ法  ・マトリックス図 意見の分類や分析を行いやすくする方法
例:出された意見をカテゴリー別にまとめるとき
 ・5W1H   実践に結び付くような手立てを考えやすくする方法
例:実践計画を立てるとき


 ファシリテーターの役割はとても重要です。また、教師全員で共通理解を図りながら日々の教育実践を継続し積み上げていくためのワークショップ型研究会を進め、活性化させるためには、以下のような事前の準備、事後の行動も欠かせません。

(事前の準備)
・ 研究会の目的の確認をする。
・ 研究会の視点の確認をする。                             
・ 研究会の目的に応じたプログラムづくりとワークショップ型の選定を行う。
・ 研究会を行うに当たって必要な用具や資料の準備を行う。
(事後の行動)
・ 研究会後の実践の推進を図り、持続させる。

 参加者はファシリテーターに協力し、全ての教師が協働して研究を深めていくことが大切です。

 

  B 課題解決のためのチェックリスト
 校内研究におけるPDCAサイクルの各段階の取組について、教師一人一人が確認できるようにチェックリストを作成しました。チェック内容を基に自分の取組について確認することができます。また、チェック欄をクリックすると、年間を通した校内研究の進め方や研究の充実を図る工夫について知ることができます。

    
                                   

PDCAの段階

チ ェ ッ ク 内 容

チェック 欄

研究を始めるに当たっては、研究主題や計画の確認をしましょう!





研究の視点や自分の役割を確認しましょう!
@主体的に参加しましょう!
A成果や課題を明確にしましょう!
@どのように生かしていくかを明確にしましょう!
A生かすための工夫をしましょう!
B研究会で出たことを基に、実践を継続しまょう!研究を深めましょう!
次年度に生かせるような1年間の振り返りをしましょう!
次年度にすべきことは何か確認しましょう!

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