他者に対する広い心を育てる道徳の時間を提案します。

1 研究の概要
 
(1) 研究テーマ
他者に対する広い心を育てる道徳の時間の研究
−複数時間扱いの学習指導を取り入れた授業実践を通して−
     
(2) 研究テーマ設定の趣旨
 ○ 他者に対する広い心
  中学校学習指導要領解説道徳編の第1章第1節では、「子どもたちに必要とされる豊かな人間性とは、美しいものや自然に感動する心などの柔かな感性、正義感や公正さを重んじる心、生命を大切にし、人権を尊重する心などの基本的倫理観、他人を思いやる心や社会貢献の精神、自立心、自己抑制力、責任感、他者との共生や異なるものへの寛容などの感性及び道徳的価値を大切にする心であるととらえられる」1)と示されており、子どもたちに必要とされる豊かな人間性の1つに、他者との共生や異なるものへの寛容などの感性が挙げられています。さらに、第6章第3節では、「生徒一人一人が、寛容の心をもち互いに認め合い、助け合い、学び合う場と機会を積極的に設ける必要がある」2)と示されており、生徒が、互いのいろいろなものの見方や考え方の違いを認め合うことの必要性が述べられています。
   そこで、「他者に対する広い心」とは、自分の見方や考え方が全てでなく、他者を理解し、いろいろなものの見方や考え方が存在することを受け入れようとすることと考えました。
                                         【引用  1) 中学校学習指導要領解説道徳編 p.3】
                                         【引用 2) 中学校学習指導要領解説道徳編 p.117】
 
 ○ 佐賀県内の小・中学生の実態
  平成24年度に実施された佐賀県小・中学校学習状況調査及び全国学力・学習状況調査を活用した調査の児童生徒意識調査によると、「人の気持ちが分かる人間になりたいと思いますか」の質問に対して、「当てはまる」「どちらかといえば当てはまる」と答えた児童生徒の割合が小学6年生では94.5%、中学3年生では95.3%でした。さらに、平成25年度に実施された同調査によると「一人一人の人間には考えや性格などに違いがあるということを大切にしていますか」の質問に対して、「当てはまる」「どちらかといえば当てはまる」と答えた児童生徒の割合が小学6年生では91.9%、中学3年生では93.6%でした。これらのことから、児童生徒は人と人との関わりの中で、人によっていろいろなものの見方や考え方に違いがあることや、他者の立場になって考えることが大切だと感じていることが推測されます。その一方で、私がこれまで関わった生徒の実態から考えると、友達との関係で悩む生徒が少なくありません。この要因の1つとして、自分の考えに固執してしまい、相手の立場に立った言動ができないことなどがきっかけで生徒間に意見の対立や摩擦が起き、悩みにつながることが考えられます。
 
  ○ 本研究のねらい
  このようなことから、指導に当たっては、他者にいろいろなものの見方や考え方があることに気付かせ、それらの存在を受け入れようとする広い心を育てるための授業を計画的に行うことが必要であると考えました。生徒同士の人間関係に変化が見られるようになる1年生の2学期に、多様な個性を認め、それぞれの差異を尊重する内容項目2−(5)を複数時間扱いの内容項目として位置付けます。そして、他者の考えに触れさせたり、他者の考えや立場から物事を考えさせたりする授業を繰り返して行うことにより、生徒は他者をより深く理解し、いろいろなものの見方や考え方が存在することに思いを巡らすことができるようになると考えます。そのことが、他者に対する広い心を育てていく上で有効であると考えました。
  そこで、本研究では、他者の考えに触れさせたり、他者の考えや立場から物事を考えさせたりする授業を繰り返す複数時間扱いの学習指導を実践することで、他者に対する広い心を育てたいと考え、上記のような研究テーマで研究を進めることとしました。
 
(3) 研究の方法と内容
 ○ 複数時間扱いの学習指導についての理論研究
  文献調査及び先行研究の調査を通して、複数時間扱いの学習指導についての理論研究を行います。
 ○ 他者に対する広い心を育てることを目指した授業の提案
  複数時間扱いの学習指導を計画し、学習指導案の作成及び授業実践を行います。また、他者の考えに触れさせた
  り、他者の考えや立場から物事を考えさせたりする授業展開を提案します。
 
   

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