生活をよりよくしようとする生徒を育てる問題解決的な学習の進め方を提案します!

 
 
 3 研究のまとめ
(1)研究の成果
 ○ 「計画」の段階を重視した家庭科における問題解決的な学習の進め方を示しました。
 
   本研究では、問題解決的な学習の計画、実践、評価、改善の一連の学習過程における「計画」の段階を、課題発見と意思決定の過程として細かいステップを踏むことで、実践に至るまでの過程をより重視した進め方を示しました。さらに、生徒が主体的な問題解決的な学習への取組につなげるため、課題発見の工夫を行いました。これにより、生徒自身が課題に気付き、スムーズな形で家庭での実践につなげることができました。また、その後の「評価・改善」の段階を行うことで、よりよい生活への実践意欲をもたせることができ、学習終了後においても、家庭での実践につながった生徒が多くいました。
 ○ 「解放的な問い」の考え方を生かした発問の工夫を行い、判断の基準を意識させました。
 
 毎時間、判断の基準について意識させる「解放的な問い」を行いました。生徒の多岐にわたる判断の項目を整理させることで、家庭の課題を見付けやすくしたり、課題同士を比較しやすくしたりすることができ、問題解決的な学習をスムーズに進めることができました。また、家庭の課題の改善に向けて、実践する上での緊急度と取り組みやすさを示し、実践する上での判断の基準を考えさせたり、環境保全の視点にも意識をさせたりしました。このような学習の積み重ねを行なうことで、 漠然とイメージしていた判断の基準について考える機会となり、生徒同士の多様な意見に触れることで思考を深めることにつながりました。
 ○ 問題解決的な学習の一連の学習過程に話合い活動を組み入れました。
 
   話合い活動をできるだけ効果的に行うために、グループの大きさや編成方法に配慮しました。また、一斉指導や話合い活動の際の隊形についても工夫を行いました。問題解決的な学習に話合い活動を組み入れたことで、「計画」の段階においては、生徒個人の考えだけでは浮かばなかった内容に気付き、自分の計画を修正したり、実践後の「評価・改善」の段階においては、友達の意見を参考に更によりよいものにしようとしたりする生徒の姿が見られました。
 また、グループを固定化して、話合い活動を毎時間行ったことで、多くのグループで生徒同士の関係がよくなっていきました。生徒が友達から「いいね」と言われたり、自分の考えに付け加えをしてくれたりするような関わりをもてたことで、生徒の自信や受け入れてもらった喜びにつながりました。その結果、自分の考えを伝えることが苦手だった生徒で、グループ内で意見を言えるようになった生徒もいました。
 
  
 以上のことより、問題解決的な学習において、「計画」の段階を重視した進め方や「問い」の工夫を行い、話合い活動を取り入れたことで、生徒なりの判断の基準をもちながら、友達の多様な考えに触れて思考を深めることができたといえます。このような学習プロセスを積んだことで、住生活をよりよくしようとする意欲につながった生徒が多く現れたと考えます。
   
(2)研究の課題
   本研究では、7時間の住生活の学習を問題解決的な学習の一連の学習過程に沿って進めていきました。時間の都合上、実践計画書の作成は家庭での課題としました。担任の先生の協力があり、発表会までに実践計画書は完成していましたが、授業の時間に作成時間が必要であったと感じています。実践計画書の発表会は、生徒の学習に対する意欲付けになりましたが、限られた授業数を考えると、実践計画書の作成の仕方については長期休みを活用するなど検討の余地があると思います。
  また、話合い活動においては、ほとんどのグループでは予定した内容についての話合いができていましたが、中には、会話が少なく、指示された内容が深まらないようなグループがあり、単発的な教師の声掛けや支援ではなかなか改善が見られませんでした。今後は、話合い活動が進まないグループに対する手立てを更に工夫する必要があると考えます。
 
 4 参考文献・参考資料
  @
文部科学省
『中学校学習指導要領解説 技術・家庭編』平成20年9月 教育図書
  A
国立教育政策研究所教育課程研究センター
   
『評価規準の作成、評価方法等の工夫改善のための参考資料【中学校 技術・家庭】』
平成23年11月  教育出版

  B
荒井 紀子・鈴木 真由子・綿引 伴子編著
   
『新しい問題解決学習 Plan Do See から批判的リテラシーの学びへ』平成21年4月
教育図書             
  C
荒井 紀子編著
『パワーアップ!家庭科 学び、つながり、発信する』2012年5月 大修館書店
  D
仲間 美砂子編著
『家庭科への参加型アクション志向学習の導入 22の実践を通して』2006年11月
大修館書店
  E
佐藤 文子編著
『家庭科教育における意思決定能力』2009年2月 家政教育社
  F
ジョンソン,D.W.・ジョンソン,R.T.・ホルベック,E.J.
     
『【改訂版】学習の輪−学び合いの協同教育入門−』2010年11月 二瓶社
  G
杉江 修治
『協同学習入門 基本の理解と51の工夫』2011年10月 ナカニシヤ出版
  H
鈴木 真由子・荒井 紀子・綿引 伴子
     
『家庭科における問題解決的な学習の現状と課題−家庭科教員に対する質問紙調査の
もとに−』2012年2月 大阪教育大学紀要  
 
 
 
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