つくりだす喜びを味わう児童を育てる図画工作の授業を提案します!!

2 研究の実際                                  

(6) 検証授業の分析  〜 授業後の児童の変容から 〜
    
   
  児童の意識が、この授業実践を通してどのように変化したかについて、「行ってみたいなふしぎな世界・・・ようこそ6の2ワールド」の授業前と授業後のアンケートや活動の様子から検証しました。
@ 共同してつくりだす題材について
    
 
  今回取り組んだ作品共同型の題材「行ってみたいなふしぎな世界・・・ようこそ6の2ワールド」について、児童がどのように感じたかを
アンケートの記述から分析しました。
   
 アンケートで、「『行ってみたいなふしぎな世界・・・ようこそ6の2ワールド』のような図工をどう思いますか。」と尋ねて、記述させた
ところ次のようなことを挙げています。 
☆ みんなで意見を出し合い、最高の「6の2ワールド」がみんなでつくれてよかったです。
☆ 思ってた以上に楽しくて、またしてみたい。
☆ みんなで話し合ってとても明るい作品ができた。
☆ 色の組合せがよかった。
☆ イメージを絵にすることが楽しかった。またやりたい。
☆ 一人一人の思っていることや好きなことが分かってよかったと思う。
☆ とっても楽しい。いろいろな方法があって面白かった。
☆ みんなで楽しく図工ができてよかった。またやってみたい。
☆ 自分が行きたい世界を、自由にいろんな方法でできたので、とても楽しかったです。
☆ みんなで組み合わせる目標があったから、一人一人がんばってつくりだしたと思う。
☆ いろいろな方法でつくっているから、カラフルで面白いと思いました。
☆ いろいろな世界があって、楽しくて面白い感じがする。
  児童は、この題材を楽しかったと感じ、共同での表現に意欲的に取り組むことができたことが分かります。個人で製作して、
最後に全員の作品を組み合わせたことで、友達の意図を感じ取ったり、形の面白さや色の美しさなどに気付いたりすることも
できました。また、最後に個人の作品を組み合わせることを提示したことで、一人一人が責任感をもって製作に励むことに
つながったと考えます。そして、今回の題材は絵画だったので、全員の作品を組み合わせることができ、ダイナミックな「6の2
ワールド」に仕上がりました。そのことで、児童は、より満足感を味わえたと思います。

  写真1  組合せを考える児童


 写真2  途中の組合せ
    写真2と写真3を比べると、絵の配置が変化しています。例えば、赤丸で囲まれた作品は、児童の「宇宙の世界だから、上の方に置いた方がいいよ。」「飛行機や雲、空が描かれていて、上に向かっているみたいだから上の方に置いたらいいと思う。」などの発言で、上に配置しました。また、青丸で囲まれた作品は、児童の「海の世界や釣りの世界は、一番下がいいね。」などの発言で、一番下にまとまって配置しました。児童が、形や色、イメージ、動き、奥行きなどを考えながら、「これでいいね。」と全員が納得して、写真3の「6の2ワールド」が完成しました。



写真3  ゆうあい館に展示した「6の2ワールド」

  完成した作品を地域の公共施設「ゆうあい館」に展示してもらいました。白いボードに飾ってもらったので、とても明るい「6の2ワール
ド」になりました。また、全員の作品を組み合わせたことで、楽しくてダイナミックな作品になりました。地域の方からは次のような感想を
頂きました。
☆ 楽しい世界がいっぱいで、明るくなりますね。
☆ 夢があるふしぎな世界ですね。色もきれいで、楽しい工夫がされてありました。こんな世界が
  あったら行ってみたいです。ありがとうございました。
☆ わくわくしました。みんな素敵ですね。
☆ 一人一人個性的で、見てて幸せな気持ちになりました。
  感想を読むと、「地域の方を喜ばせたい」「地域の方を楽しませたい」という児童の思いが、地域の方に伝わったと感じました。児童
も、ゆうあい館に飾られた「6の2ワールド」を見て、とても喜んでいました。児童も地域の方も喜びを感じた題材だったと考えます。

A 児童がつくりだす喜びを味わうことに関わって
    
 
  図画工作の勉強の楽しさについて、児童の意識がどのように変容したか分析しました。
         グラフ1 図画工作の楽しさ  
   

 

 

 
   授業前は、図画工作の勉強を「どちらかといえばつまらない」「つまらない」と思っていた児童が3名いました。しかし、授業後は、全員が図画工作を「楽しい」「まあまあ楽しい」と答えました。児童は、友達と交流したり様々な方法を試したりしながら、自分のイメージに合った「わたしの世界」をつくることができ、授業を通してつくりだす喜びを味わうことができたためと考えます。
 B 交流活動に関わって
      児童の交流活動への思いがどのように変容したか分析しました。
結果はグラフのとおりです。         
         グラフ2 友達のアドバイス  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   グラフ3 きらりタイム  

   グラフから、児童は、友達のアドバイスを生かして製作に取り組み、その結果うまくできたと思っていることが分かりま
す。そして、友達との交流活動である「きらりタイム」でアドバイスをもらったり、よいところをほめてもらったりする話合い
活動を全員が役立つと感じていることも分かりました。その理由として児童は次のようなことを挙げています。
 
☆ 自分がしていないことを教えてもらうと、次に役立つから。
☆ 友達からもらったアドバイスを使って、自分の世界が上手にできたから。
☆ 次の時に、言われたことを注意しながらできるから。
☆ 自分のしていないところも教えてもらえるから。
☆ 自分が考えていなかったことをアドバイスしてくれたから。
☆ 友達と話し合いながら、いろいろ思い付いたから。
☆ 自分と違う考えを聞けて、それを生かせるから。
☆ 自分とは違う視点からのアドバイスだから。
☆ 友達の意見で、どんな工夫をすればいいか分かったから。
☆ 友達のアドバイスで、自分の足りないところが分かったから。
☆ アイデアが浮かばないとき、友達のアドバイスをもらうと、アイデアが浮かぶように
   なったから。
  
☆ 形や色のことでアドバイスをもらって、工夫できたから。
  児童の記述から、友達のアドバイスをそのまま生かしたり、アドバイスを基に新たなことを思い付いたりして、製作が
うまく進んだことが分かります。また、児童は、自分が思い付かないような、違った視点のアドバイスをもらったと思って
いることも分かりました。形や色、イメージなどを視点とした交流活動は、児童の製作に役立ったと考えられます。


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