知識・技能の習得と数学的な思考力・判断力・表現力の育成を目指します!

1 研究の概要

(1) 研究テーマ

    知識・技能の習得を図り、数学的な思考力・判断力・表現力を育む学習指導の工夫
      −数学的活動の充実を通して−

(2) 研究の趣旨
学習指導要領
から
(平成20年3月)
学習指導要領では、
 ●基礎的・基本的な知識・技能を確実に身に付けること
 ●身に付けた知識・技能を活用して課題を解決する力を育成すること
が重視されています。

特に数学では、数学的な思考力・判断力・表現力を育成するために、
 ●根拠を明らかにして筋道を立てて体系的に考えること
 ●言葉や数、式、図、表、グラフなどの相互の関係を理解し、それらを適切に用いて
   問題を解決すること
 ●自分の考えを分かりやすく説明すること
 ●互いに自分の考えを表現し伝え合ったりすること
などの指導を充実することが述べられています。

数学的活動は、 基礎的・基本的な知識及び技能を確実に身に付けるとともに、数学的に考える力を高めたり、数学を学ぶことの楽しさや意義を実感したりするために、重要な役割を果たすものです。そして、数学的活動の一層の充実を図るために、各学年の全領域を通して位置付けるようになっています。
全国学力・学習状況調査の結果から 平成22年度の本調査における佐賀県採点分析委員会の報告によると、観点別では、B問題の「数学的な見方や考え方」に関する問題においての正答率が41.0%と、他の観点より低い結果となりました(表1)。 また、領域別で見ると、3領域すべてにおいてB問題の正答率が50%を下回る結果でした(表2)。
これらのことから、数学的な思考力・判断力・表現力及び身に付けた知識・技能を活用して課題を解決する力の育成を図っていくことが必要であると考えます。
表1 全国学力・学習状況調査の観点別正答率                  (佐賀県)
観 点
数学A
数学B
数学的な見方や
考え方
41.0
数学的な表現・処理
65.5
73.2
数量、図形などについての知識・理解
61.6
(平成22年4月20日実施)
表2 全国学力・学習状況調査の領域別正答率                  (佐賀県)
領 域
数学A
数学B
数と式
75.3
44.5
図形
61.5
38.5
数量関係
53.3
45.6
(平成22年4月20日実施)

さらに、下記の設問についての正答率と無解答率の結果から、特に、数量関係の領域における知識・技能の定着、数学的な表現を用いて思考の過程や判断の根拠などを数学的に説明する力について、課題が見られました(表3)。
 
表3 全国学力・学習状況調査において課題が見られた設問の正答率と無解答率
  出題の趣旨 観点 領域 正答率 無解答率


・円柱の体積の求め方を理解し、求めることができる
表現・処理 図形 35.4 19.4
・比例のグラフから、x の変域に対する y の変域を求めることができる
表現・処理 数量関係 34.8 20.7
・具体的な事象における一次関数の関係を式で表すことができる 
表現・処理 数量関係 21.7 28.4


B
・筋道立てて考え、事柄が一般的に成り立つ理由を説明することができる 
見方や
考え方
数と式 30.2 27.7
・事象を数学的に解釈し、問題解決の方法を数学的に説明することができる
見方や
考え方
数量関係 27.9 26.5
・事象を数学的に解釈し、成り立つ事項の特徴を数学的な表現を用いて説明することができる
見方や
考え方
図形  9.9 42.9

佐賀県小・中学校学習状況調査の結果から
平成23年度佐賀県小・中学校学習状況調査について、Web報告書から、課題を取り上げてみます。
観点別では、3観点とも正答率が「おおむね達成」の基準を下回りました。「数学的な見方や考え方」においては、「与えられた情報を読み取り、数学的に処理すること」や「問題解決の過程や資料の傾向を説明すること」に課題が見られました。また、「数学的な表現・処理」については、求め方や用語の意味を理解していないなど、知識・技能の定着が十分でないことに要因があると考えられます(図1)。

図1 H23年度 (中学2年生数学) 評価の観点別正答率
領域別では、「数と式」以外の3領域の正答率が「おおむね達成」の基準を下回りました。理由として、「図形」については、移動に関する内容や立体の表面積や体積の求め方に関する内容において課題が見られました。「関数」については、座標に表したり、与えられたグラフを読み取ったりすることに課題が見られました。「資料の活用」については、用語の意味や表し方といった「数量や図形についての知識・理解」の定着が、十分でないことが考えられます(図2)。
図2 H23年度 (中学2年生数学) 内容・領域別正答率
「活用」に関する記述式の問題において、以下の2問については、正答率が「おおむね達成」の基準を下回り、しかも無解答率は30%を越える結果で、「数学的な表現を用いて、思考の過程や判断の根拠などを数学的に説明する力」に課題が見られました(表4)。
表4 H23年度 (中学2年生数学) 記述式の問題の正答率・無解答率
問題
番号
出題のねらい
正答率
無解答率
おおむね
達成
9(2)
事象の変化を読み取り、グラフや式を基に数学的に処理することができる
19.7
39.4
40.0
11(2) ヒストグラムや中央値を用いて資料の傾向を説明することができる  9.7 50.4 35.0
 
研究の方針 このような、全国学力・学習状況調査や佐賀県小・中学校学習状況調査による佐賀県の実態や課題を踏まえながら、研究を進めていくことが大切であると考えます。
そして、知識・技能の習得を図り、数学的な思考力・判断力・表現力を育むためには、以下のような数学的活動を効果的に位置付け、授業の工夫を図る必要があると考えます。
 ●既習の数学を基にして、数や図形の性質を見いだし、発展させる活動
 ●日常生活や社会で数学を利用する活動
 ●数学的な表現を用いて根拠を明らかにし筋道立てて説明し伝え合う活動
   
(3) 平成22・23年度の研究の成果と課題
平成23年度までの研究 平成23年度までの研究では、知識・技能の習得を図り、数学的な思考力・判断力・表現力を育むために、数学的活動の位置付けと指導の工夫について研究を進め、それらを示した授業プラン(授業展開案・詳細授業展開案・ワークシート)の提案を行ってきました。また、知識・技能の習得と数学的な思考力・判断力・表現力の育成を図るための学習プリントの作成も行いました。
(4) 今年度(平成24年度)の研究
 
 今年度は、平成22・23年度の2か年で提案している授業プランを基に、授業実践を行い、数学的活動の位置付けや指導の工夫について研究を深めます。また、平成23年11月に国立教育政策研究所から示された「評価規準の作成、評価方法等の工夫改善のための参考資料」を基に、学習指導要領の趣旨を反映した学習評価を進め、授業プランの見直しを行い、数学的活動の位置付けや手立て等の工夫改善につなげていきます。
 
 具体的には、次の2つの方法と内容を基に研究を進め、これからの数学科学習指導について提案していきます。
   
  研究の方法と内容
 ア 数学的活動を効果的に位置付けた授業プランの見直し
 
 教科書に沿った学習内容で、授業のねらいを達成するために、以下の2点に基づいて授業プランを見直します。
@平成23年11月に国立教育政策研究所から示された「評価規準の作成、評価方法等の工夫改善のための
  参考資料」の考えに基づいて、評価規準や評価方法の見直しを行います。
A電子黒板やプロジェクター等のICT機器の効果的な活用の視点から、指導の過程についての見直しを行い
  ます。
 
 
 イ 授業実践を通した授業プランの工夫改善
 
 授業実践を通して、数学的活動の位置付けや指導の手立てについて検討を行います。また、評価規準や評価方法を具体的に示した詳細授業展開案を提案します。
   

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