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社会的な見方や考え方を深める社会科学習に取り組んでみよう!


社会科 実践事例その8  中学校1年生 歴史的分野


 1 単元名 「武士による政治のはじまり
         〜 1221年の承久の乱 あなたならどちらの味方になる?〜」【D:重点型】
 
  
 
 2 教材観
承久の乱は1221年(承久3年)、後鳥羽上皇が鎌倉幕府から政権を奪回しようとして起こした戦いである。
承久の乱の特徴の一つに、朝廷の代表である後鳥羽上皇と幕府の代表である北条政子の主張を比較できる点を挙げることができる。その主張には、2人の人物が目指した社会像・目指した時代像が含まれていると考えられる。
主張が分かれた1つの歴史的事象について、多面的・多角的に考察し、価値判断を行うことは現代を生きる生徒にとって意義あることと思われる。

3 生徒観

社会科の授業への取り組みが大変意欲的である。   
歴史的分野の学習に関しては、1学期に「縄文時代と弥生時代、どちらで暮らしたい?」という学習課題を設定し、1単位時間での討論を経験した。
夏休みの課題として、歴史新聞の作成も行うなど、資料を収集・選択する活動や経験を少しずつ積んできている。
毎週の課題として、新聞記事の切り抜き活動を行っていることもあり、社会的事象に対する関心の高まりが見られるようになり、自分の意見を書くことにも慣れ、思考・判断力も少しずつ向上してきている。しかし、個別の歴史的事象は理解できていても、時代を大観する力や特色を簡潔に表現する力は十分ではない。

4 指導観

まず平安時代及び鎌倉時代の特色をとらえさせる。一斉授業及び夏休みの課題「歴史新聞作り」を通して、事実認識を十分に深めさせる。   

次に、学習課題「1221年の承久の乱、あなたならどちらの味方になる?!」を設定しての討論活動を取り入れ、多面的・多角的に考察させる。その活動を通して、後鳥羽上皇が目指そうとした社会と北条政子が目指した社会をしっかりと考えさせたい。
討論の中で級友の考えに触れさせることにより、自分の考えや価値観をしっかりと吟味させ、よりよい価値判断をさせたいと考える。そして、それらの学習活動を通して、公民的資質の基礎を養い、社会形成力の育成につなげていきたいと考える。

 5 単元の総括目標

     武家政権の成立とその後の政治・社会・文化の動きに対する関心を高め、自ら課題を見出し意欲的に追究できるようにする。その際、様々な資料を収集させ、 適切に選択させるとともに、歴史の流れと時代の特色を多面的・多角的に考察させ、追究し考察した結果を我が国の歴史とかかわる東アジア世界の歴史を背景に理解して説明できるようにする。

 6 単元の評価規準

関心・意欲・態度 思考・判断 技能・表現 知識・理解

武家政権の成立とその後の政治・社会・文化の動きに対する関心をもち、意欲的に追究しようとする。

武家政権の成立とその後の政治・社会・文化の動きから課題を見付け、歴史の流れと時代の特色を多面的・多角的に考察することができる。

   武家政権の成立とその後の政治・社会・文化の動きに関する様々な資料を収集し、適切に選択するとともに、追究し考察した結果をまとめたり説明したりすることができる。    武家政権の成立とその後の政治・社会・文化の動きを、我が国の歴史とかかわる東アジア世界の歴史を背景に理解し、その知識を身に付けることができる。 
 7 単元の指導計画 (全5時間)
主な学習活動 ワークシート・資料
1

戦いの専門家「武士」の登場 >

教科書を中心に、武士(武士団)が登場してきた背景を理解する。

平氏と源氏との対立を理解する。
 
2

武士による政治のはじまり >

教科書を中心に、源氏から北条氏へ政権が移ったことを理解する。 

承久の乱の経緯を理解する。

北条政子、後鳥羽上皇の主張を知る。

次時までの宿題として、ワークシート@に取り組む。

ワークシート@
3

本時「1221年の承久の乱、あなたならどちらの味方になる?!」

討論を行い、お互いの主張を知る。

ペアや、4人グループでの意見交換を行い、最終的な判断を行う。

学習を踏まえ、「これからの社会・時代に望むこと」について書く。

 

ワークシートA
4

海をこえてせめてきた元軍 >

教科書を中心に、元寇の背景・経緯を理解する。

 
5

武士の台頭によって形成される文化 >

 教科書を中心に、武士に受け入れられた新仏教・文化を理解する。
 

8 実践を終えて

  【成果】

単元の最初に学習課題を知らせたことにより、単元のゴールが明確となり、平安時代・鎌倉時代の単元に関して、毎時間の学習に取り組む意欲や集中力の高まりが見られた。

平安時代・鎌倉時代の学習の最後に、「時代のイメージ(思ったこと・感じたこと)」を書かせたことにより、時代を大きくとらえるという意識の芽生えが見られた。

   討論や意見交換を行わせることにより、自分とは違った社会観に触れさせることができた。さらに、自分がよしとする社会観を改めて吟味することにもつながった。
   最後に「これからの社会・時代に望むこと」について記述させたことにより、現代社会につながる歴史的分野の学習になったと思われる。
 歴史的分野の単元の終わりごとに実践したり、歴史的分野のまとめして実践したりすることが可能な教材を開発する契機となった。
   【課題】
 歴史上の人物を通して、時代像(あるいは社会観)を考えさせる方法もあるのではないだろうか。また、生徒が考えやすい手立てを考える必要がある。
  ワークシートAを評価に生かすための、ルーブリック評価などの評価基準を考える必要がある。
 同じ時代を選んだ生徒同士で、ペアや4人グループを作らせて吟味をさせてみると、自信を深め、発表しやすくなると思われる。


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最終更新日: 2010-03-23