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社会的な見方や考え方を深める社会科学習に取り組んでみよう!


社会科 実践事例その7 小学校第6学年


 1 単元名  「住みよいくらしと政治の働き」【B:問題発見型】
 
  
 
 2 教材観

少子高齢化社会の進展、地球温暖化、食料自給率の低下など、解決すべき様々な問題が山積する現在の社会では、税収の確保や予算配分を初めとする国や地方公共団体の政治の在り方が注目される。

児童の生活にも深く関係している公共施設の建設や社会の中で議論されている道路建設を取り上げながら、地方公共団体や国の政治の働きについて調べ考え、理解させることを目指す。

3 児童観

大部分の児童が課題解決に粘り強く取り組んでいる。また、考えを積極的に発言できる児童が多い。意見を述べる際に、その根拠を示そうとする意識も高い 。

他者の意見を自己の考えと比較しながら聞き、質問をしたり異なる意見を述べたりしながら発言をつなげていく場面が徐々に増えてきている。

学級全体として社会的事象への関心は高い。そこで、よく利用する公共施設や道路がどのような目的でどのようにしてつくられたのかといった社会の仕組みや、政治の働きにまで目を向けた単元を構成することは、課題解決のために必要な資料を集めたり選択したりして、自己の考え(主張)をつくり上げる態度や能力を更に伸ばすことにつながると考えられる。

4 指導観

資料を読み取り、課題解決のために必要な資料を集めたり選択したりして、自己の考え(主張)をつくり上げる態度や能力を更に伸ばしていきたいと考える。

市の公共施設、選挙の仕組みや国会の働き、内閣や裁判所の働きについて調べ考える活動を通して、国民生活には地方公共団体や国の政治の働きが反映していることを理解させる。

国の予算や道路建設に関する資料を提示する。それらを基に道路建設のメリットやデメリットを考える活動を通して、道路建設についての問題意識をもたせる。

「道路建設のための予算を増やし、もっとたくさんの道路をつくるべきだ」、「道路建設のための予算を減らし、道路をつくることをひかえるべきだ」という二つの立場を設定し、どちらを支持するのかについて価値判断を行わせることで、主体的に考え判断する態度や能力を育成する。

 5 単元の総括目標

    地方公共団体や国の政治の働きについて調べ、考えさせる活動を通して、我が国の政治が国民生活の安定と向上を図るために大切な働きをしていることを理解させる。

 6 単元の評価規準

関心・意欲・態度 思考・判断 技能・表現 知識・理解

国民生活の安定と向上を図る民主政治の働きや仕組み、考え方について興味をもち、意欲的に調べたり考えたりしようとする。

地方公共団体や国の政治の働きについて調べたことを基に、国民生活の安定や向上を図るための政治の在り方について、くらしと結び付けながら具体的に考えることができる。

身近な公共施設や道路の建設を調べることをきっかけに、国や地方公共団体の政治の働きについて資料を活用して調べるとともに、政治の在り方について考え、それらを整理して表現することができる。

議会政治の働きや選挙の意味、政治の働きと税金の使われ方の関係などについて調べ、考えることを通して、国民生活の安定と向上のために国や地方公共団体の政治が大切な働きをしていることを理解することができる。

7 単元の指導計画 (全10時間)

主な学習活動 ワークシート・資料
市の施設は、市民の願いや社会の動き、国の法律などに応じて、市が建設計画案・予算案を作成し、市議会で決定してつくられるのだという一連の流れを理解する。  
選挙の仕組みを調べ、理解する。  

国会の働きを調べ、理解する。  
内閣及び裁判所の働きを調べ、理解する。  


「道路建設のための予算を増やし、もっとたくさんの道路をつくるべきだ」、「道路建設のための予算を減らし、道路をつくることをひかえるべきだ」という二つの立場のどちらを支持するのかについて価値判断Tを行う。 資料
ワークシート@
ワークシートA
価値判断Tの根拠の中にどのような価値が含まれているのかを分析する。分析を基に、価値判断Uを行う。【本時】
      
ワークシートA
10 これまでの学習を振り返り、道路建設についての最終的な自分の考えをまとめる。 ワークシートB

8 実践を終えて

  【成果】

価値判断Tでのそれぞれの主張を紹介しあい、それをワークシートにまとめていくことで、自分とは違った立場の意見を知ることにつながった。価値判断Uでは、それを基に相手の主張を考慮しながら立場を決定することができた。

価値判断Uを行うに際して、立場に関係なく、それぞれの主張をどれくらい支持するかを○の大きさで表現させたことは、自己の立場にとらわれることなく、他者の主張も考慮しながら価値判断することにつながった。

最終的な自分の考えをまとめる活動では、児童は、前時にまとめた「目指す社会」及び「だれにとってのよりよい生活をめざしているのか」ということを考慮しながら意見を述べることができていた。また、前時において意見を出し合う中で「一部の人々のよりよい生活のみを重視してよいのか」という意見を取り上げて考えさせたり、ワークシートのまとめ方を例示したりした。このことは、児童が支持する立場でない主張なども取り入れながら、それぞれの人々の幸福を達成するためにはいかにすべきかということについての考えをもち、まとめることへとつながった。ほぼ全員の児童が前述のようにまとめることができていた。

   【課題】

資料を分析する場面や価値判断Tについて自己の主張を紹介する場面では、ワークシートに記述したことを基に意見を述べることができるため、全員の児童が発表することができた。しかし、価値判断Uの後、相手の立場についての意見や質問、反論を述べる場面では、手を挙げ発言する児童が、全児童の3分の1程度に限られてしまった。近くの者と話し合う時間を設ける、質問や反論をワークシートに記述させるなどの手立てを取れば、より多くの児童が考え、発言できるようになるであろう。

資料を分析する場面では、分かったことをワークシートにまとめていった。時間短縮のために、分析はグラフなどに限定し、文章で表現している資料については、教師側で事前にワークシートに記入していてもよいと感じた。


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最終更新日: 2010-03-23