理論編 楽しみながらできる音読の工夫 生徒に基本語彙や構文を定着させるための方法として,授業の中に生徒を飽きさせないバリエーションのある音読活動を取り入れることを考えた。 國弘正雄は「中学・高校の教科書の英文は必須事項が網羅されており,音読において最高の教材である。英文を覚えてしまうくらいまで繰り返し音読すれば高度な技術を展開する土台になる」と述べ,音読を通じて英語のルールを体に覚え込ませ,内在化させることで使える技能に変わることを提唱している。國弘氏の提唱する学習法で英語を習得した方は多いように聞く。 しかし,確かな英語学習の動機をもった人には効果があっても,平均的な高校生に,ただひたすら繰り返し英文を音読して英文を覚えなさいと指示しても,単調な活動の繰り返しに退屈し,効果は上がらないだろう。そこで,次のような生徒が楽しみながら,退屈せずに取り組めるバリエーションのある音読活動について検討した。 様々な音読活動
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Story Reproductionのよさ 音読により取り入れた語彙,文法,構文などの知識は,実際に使用することにより,使える知識としての定着が高まると思われる。また,英文を書く機会が少なすぎるという点を解消するためにも,本研究ではStory Reproductionを取り入れてみた。 Story Reproductionとは,教科書で読んだ英文の概要や要点を教科書やノートを見ないで自分の英語で再生させる活動で,口頭で行う場合と書いて行う場合がある。Story Reproductionは基本事項を定着させるためばかりではなく,書くべき内容を自分の判断で取捨選択し,既習事項等の自分のもつ英語力を総動員して書いていくことになるので,格好のライティングの練習になると考える。国公立大学の2次試験等において,長文を読み英語で要約する問題が出題される場合もあるが,Story Reproductionを普段の授業に取り入れることにより,そのような問題にも十分対応する力を付けることができるであろう。 生徒にStory Reproductionに抵抗なく取り組ませるためには, @十分な本文の内容理解と音読練習を行うこと A的確なヒントを提示すること の2点に留意しなければならない。Aについては,安心して活動に取り組ませるためのヒントの提示方法として,4コマ程度のコマ絵を見せて,それぞれの場面について英語で表現させる方法,キーワードをヒントとして与える方法,英問英答を行い,その答をつなげていく等のやり方が考えられる。今回は,汎用性という点を考え,キーワードを与えてのStory Reproductionに取り組むことにした。キーワードは品詞別に並べることも考えたが,生徒がストーリーの流れを思い出しやすいようにするために,名詞と動詞を中心に本文に出てくる順番に並べた。提示するキーワードの数はそれぞれの学校の生徒の実態に応じて決めることができる。また,生徒に指示する際,ワークシートのキーワードを参考にして,自分が読んだ英文がどんな話だったのか友人に英語で伝えることを想定して書くように指示した。 また,自由英作文を定期的に課す際はトピック選びが大変であるが,Story Reproductionは教科書で読んだ英文の概要や要点を書く活動なので,書くべき事柄が明確であり取り組みやすい。 1つのパートに1.5時間かけることの意義 本研究では,教科書の1パートを終わるために1.5時間をかけた。高校における英語の授業では,“One Part One Hour”という言葉もあるように,1時間の授業で1つのパートを終わるのが平均的なものである。しかし,このスピードで授業を進めるとすれば,文法,構文,内容理解など教師側からの説明が中心となり,生徒側の活動する時間はごく限られたものとなる。その結果,多くの生徒にとっては習得すべき内容が,十分に定着していない段階で,新たな内容が提示され,生徒は消化不良をおこしている場合が多いように感じる。 1つのパートを指導するのに1.5時間費やすことのメリットは,内容理解の後に,読んだり,書いたりするための十分な生徒の活動時間を確保できることである。十分な活動時間を確保することが,学習事項の定着を高め,基礎学力の向上につながると考える。 また,授業中に何度も音読したり,概要を書く活動を行うことにより,更なる内容理解を深めたり,語句や構文等の定着度を高めたりすることができるので,全パート終了後の内容理解や文法事項の復習などにはそれほど時間をかけずにすむと考える。 |
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