中学校第1学年の実践 クジラ新聞を作り,構成をとらえて要約する
単元名 クジラ新聞を作ろう!


画像提供「財団法人 日本鯨類研究所」
教材名 クジラたちの声
出  典− 『国語 1』 光村図書
筆  者− 中島 将行

本単元は,教材文「クジラたちの声」を一枚の新聞に再構成することにより,説明的文章を目的に応じて的確に読む力を付けるために設定しました。
新聞を作るという目的や,紙面のスペースという条件に応じて教材文を要約させることで,本文に何度も立ち返らせ,理解を確かなものにしていきます。
 
本時 学習指導案 ワークシート
@ A

 単元観
(1)生徒の実態  (2)教材の特性 
授業中,積極的に発言する生徒は多い。しかし,恣意的な発言が多く,本文をじっくり検討することができていない。
調べてまとめる学習の際には,自分の課題にはどの資料のどの部分が必要なのか分からず,教師に頼ったり,資料を丸写しする生徒も多い。
総合の時間や社会の授業などで,生徒たちは新聞を使った学習をたびたび体験している。新聞という形式に親しみがある。
本格的な要約は,ほとんどの生徒にとって初めての学習である。
だれもが知るクジラをテーマにしているが,コミュニケーションの方法という,生徒にとって未知の話題から迫っており,興味深い内容となっている。
問題提起と答えによって成り立つ典型的な説明的文章の展開になっている。
2つの問いがあり,それに対する答えがあとに続くことに気付くと,「導入・本文・まとめ」という文章構成が容易に明らかとなる。
それぞれの形式段落は簡潔で,段落相互の関係もとらえやすい。
文章の展開に即して理解し,要約するのに適した文章だと思われる。
↓
(3) 主な「言語活動」とその指導  
パズル  場面展開や文章構成をつかませるために,文章を印刷したものを幾つかの場面に切って配布し,元の文章はどのようになっていたか考えさせる。
段落パズル  教材文を通読する前に,いくつかの段落に分けて印刷したカードを配り,接続表現や指示語,キーワードに注目させながら並べかえさせる。パズルのように並べ替えることを通して,段落の役割や,段落相互の関係をつかませていきたい。

 段落パズルは,文章を読む学習を終えた後に,構成を確認するために行っても効果がある。今回は,初読前に行い,段落の順番を考えさせることで,接続表現や指示語,キーワードの推移に注目させ,話題の展開を理解させることを目指した。
新聞作り  読んだことを基に新聞にさせることを通して,文章の部分や全体を正確に理解させる。小見出しやリード文等、様々な形でまとめさせ,目的に応じて的確に読むことができるようにさせる。
小見出し  問題提起の段落に着目させ,指示語の指す内容を踏まえて要約させる。
1段落という短い分量を要約させる。問題提起の役割を果たしている1段落の内容をまとめることによって,次の段落以降に続く答えの部分を読む視点をもたせることにもなる。
記事本文  問題提起と対応させながら,答えがどの箇所にあるのかを考えさせるとともに,提起された問題に合うように答えるためにはどのように要約すればいいのかを考えさせる。複数の形式段落を通して読む力を付けさせたい。
リード文 文章全体を短い分量でまとめさせ,リード文を作らせる。

全文要約には種々の方法があるが,今回は,前時までにまとめた大段落ごとの要約に,具体例や根拠を付け加えさせて全文要約とさせる。形式段落から文章全体の構成を確認したあと全文要約という方法はよく使われているが,同じ方法ばかりではなく,様々な要約の方法を体験させたい。
大見出し  全文を貫くキーワードを用いて,読み手を引きつける大見出しを付けさせる。リード文よりも更に短い形で全体の内容をまとめさせることができる。
キャプション  本文中にある2枚の写真について,必要な情報を加えて体言止めで要約させる。キーワードを落とさないようにして作成させたい。
豆知識コーナー  学習の中で沸き上がってくるクジラに対する疑問からそれぞれの課題をもたせる。教師が準備した資料を使い,問いと答えという本単元で学習した構成の形を用いて要約させる。本単元で学習した読み方をほかの資料で応用することで,更なる力の定着を図りたい。
コラム  学習してきた本教材と,各自が調べた事柄とを踏まえて,自分の考えをもたせ,コラムの形で書かせる。
 理解だけで終わらせず,それに対して自分はどう思うかを常に確認させることは,無批判で受容的な読みの姿勢に陥らないために重要なことであると考える。

 指導目標
 文章を読んで,自然について興味をもち,疑問を解決したり,知識を広げようとしたりする態度をもたせる。
 段落の接続関係や,問いと答えを対応させることによって,文章の構成について理解させる。
 目的に応じて要約させることによって,より的確に文章を理解させる。

 評価規準
国語への関心・意欲・態度
 興味や疑問をもちながら文章を読み,自分の考えを確かめながら新聞をつくろうとしている。
読む能力
 問いと答えを対応させて,文章の構成をとらえている。
【C 読むこと ウ】
 目的に応じて要約している。 【C 読むこと イ】
言語についての知識・理解・技能
 接続関係に注目して,段落の役割について理解している。【言語事項(1) エ】

 単元計画(全6時間)
言語活動 主 な 学 習 活 動
段落パズル 
段落パズルをする。
・ 本文を印刷して幾つか段落ごとに切り分けたものを,接続表現やキーワードに着目して並べながら,元の順序を考える。
4つのまとまりに分ける。
感想や疑問点をもつ。
【クジラ新聞ワークシート】を見て学習の見通しをもつ。
小見出し
解説文
本文Tに小見出しを付ける。
キーワードについてまとめる。
小見出し
本文記事
キャプション
本文Uに小見出しを付ける 小見出し・記事作り板書例
本文Uをまとめて記事にする。
写真にキャプションを付ける
リード文
まとめに具体例を付け加えることで,全文を要約する。【リード文用ワークシート】
大見出し
クジラ豆知識
コラム
 文章全体をまとめる大見出しを付ける
 クジラについて調べて記事にする。
 クジラについての自分の考えをコラムに書く。
☆ 【生徒作品・新聞完成例】

単元周辺の計画

 
教材の内容に関連して
教師の話
クジラを含め,生物の不思議に関すること,動物のコミュニケーションに関することを話す。
学級文庫
クジラを含め,生物の不思議に関すること,動物のコミュニケーションに関することについて書かれた図書を設置する。
図書コーナー
図書館司書と連携し,関連図書コーナーを設置する。


単元名 
説明文を書こう
「ちょっと立ち止まって」 桑原 茂夫
筆者のものの見方を理解し,自分のものの見方を広げようとする態度を育てる。
図とその説明部分とを関連付け,文章の構成をとらえさせる。
接続語や文末表現に着目させ,筆者の説明の仕方を学び,自分の表現に役立たせる。




言語活動に関連して
レポート作成
理科の自由研究や,総合的な学習の時間などで,調べたことを基にレポートを作成させる。写真や図などを効果的に使うことを考えさせる。
プレゼンテーション
文化発表会で総合的な学習の成果発表をさせる。その際,キャプションやタイトルについて考えさせる。また,プログラムに掲載する紹介文に発表の概要を簡潔にまとめさせる。
環境問題について調べたことを町の主張大会で発表させる。
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単元名
クジラ新聞を作ろう
「クジラたちの声」 中島 将行

文章を読んで,自然について興味をもち,疑問を解決したり,知識を広げようとする態度をもたせる。
段落の接続関係や,問いと答えを対応させることによって,文章の構成について理解させる。
目的に応じて要約させることによって,より的確に文章を理解させる。


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単元名
環境を考える主張会をひらこう
「未来をひらく微生物」 大島 泰郎

文章を読んで,筆者の環境に関する考え方を理解し,他の環境問題にも目を向けようとする態度をもたせる。
それぞれの段落の役割をつかみ,文章の展開を踏まえて要旨をとらえさせる。
環境問題について,自分の課題を設定し,必要な情報を集めて,事実と意見を区別した主張文を書かせる。
授業を終えて
学習が進むにつれ,新聞という一つの作品が完成していくことを実感することで,生徒たちは意欲をもって学習に取り組むことができました。新聞には,小見出し,記事本文などの様々な要約の形が含まれています。それぞれの要約を書き上げるために,文章のどの部分に注目すればいいのか,どの語句を使えばいいのかなどを考える中で,文章の構成を把握したり,重要語句をとらえたりする力を高めることができました。

普段の授業では,活発な一部の生徒の発言を聞いているだけで,積極的に発言しない生徒がいるのが気になっていました。しかし,今回の学習では,どの生徒も自分だけの作品を完成させるという目標をもって新聞を作成し,「豆知識コーナー」や「コラム」の欄には自分で課題をもって調べたり考えたりしたことを書くことができました。完成した新聞をお互いに読み合い,自分の考えを振り返らせるようにする時間をもっと確保すると,表現力に踏み込んだ学習にもつなげていけるのではないかと思います。

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