中学校第1学年の実践   クイズ作りで言葉のおもしろさを味わわせる 
単元名 筆者の説明の仕方を学ぼう!

本時 学習指導案 ワークシート
@ B C
教材名 ハチドリの不思議
出  典 『新編 新しい国語1』 東京書籍
筆  者 日 敏隆
補助教材 下中 邦彦 編  『大百科事典』
1985年 平凡社

本単元は,「クイズ作り」を通して,言葉や表現にこだわりながら説明的文章を読む力を付けるために設定しました。
クイズを作ることによって,生徒自身が,意欲的に教材文に立ち返り,書かれている内容や表現の巧みさに気付くことをねらいとしています。
 

 単元観
(1)生徒の実態  (2)教材の特性 
「読みとばし」や「読み落とし」が多く,一読しておおまかに内容が理解できると教材の叙述を離れてしまう面がある。
一部に学習意欲をもてない生徒もいる。
事前に,ほかの教材を使ってクイズ作りを経験している。アンケートでは,8割以上の生徒が「おもしろい」「またやってみたい」と答え,クイズ作りに興味を示している。
本教材は,生きていることさえ困難だと考えられるハチドリが生き続けている謎について書かれている。生徒たちにとって未知のことが多く,興味を引く内容である。
ハチドリの生態を経済用語(「経営状態」「収入」「支出」「収支決算」「自転車操業」「倒産」)で説明した筆者独特の表現のおもしろさに魅力がある。
動物と環境との問題を取り上げることで,人間と環境とのかかわりを読者に考えさせようとする筆者の意図が感じられる。
↓
(3) 主な「言語活動」とその指導  
クイズ作り 学習への意欲を喚起しつつ内容理解を促すために,クイズを作ったり答えを考えさせたりする。容易に解けるものから,筆者の意見を推し量って深く考えなければならないものにまでクイズの質を高めることによって,理解を確かなものにさせ,読みを深めさせたい。
クイズを作るためには,同時にそのクイズに対する正解も分かっていなくてはならない。必然的にしっかりと文章に向き合わせることができると考える。
とっておきクイズ  「相手が一言では答えられないクイズ」を考えさせることで,内容と表現の細部に着目させる。
クイズ(表現編) 筆者独特の用語に気付かせるとともに,文章中での語句の意味を理解させ,筆者の表現の工夫を考えさせる。

本教材は,ハチドリについての事実のみを淡々と説明する文章ではない。読者を1つの意見へと導くための,筆者の強い個性を反映させた独特の語句の使い方が大きな魅力となっている。普通なら使われるはずのない,違う領域の用語が,この文章の中ではどのような意味で使われているのか考えさせることによって,内容理解を確かなものにするとともに,意図をもってその語句を用いた筆者の思いに迫らせたい。
  比べ読み ほかの文章と読み比べることによって,筆者の選んだ話題や表現の特徴をとらえさせる。
百科事典と比べ読み 比喩表現や文末表現などの表現に関すること,内容(代謝・生息地・飛行法・捕食法など)に関することに着目させ,筆者の意図に迫らせる。

百科事典にはハチドリ全般にかかわることが淡々と説明されている。それに対して筆者は,ハチドリが精一杯生きている様子や,その命が危ういバランスの上に成り立っていること,環境が変わればそのバランスが一気に崩れ,ハチドリという種は絶滅してしまうことを,独特の筆致と絞り込んだ話題で述べている。筆者がこのように話題を限定し,語句を選んで書いた意図を,百科事典と比べることによって,より鮮明に浮かび上がらせたい。

指導目標
 言葉や表現にこだわりながら文章を読ませるとともに,表現の工夫や筆者の意図をとらえさせる。
評価規準
国語への関心・意欲・態度
説明的文章を読むことに対して意欲をもつとともに,クイズ作りの学習活動に積極的に取り組んでいる。
読む能力
文脈の中における語句の意味を正確にとらえ,語句を選んだ筆者の意図を考えている。
【C 読むこと ア】
問題提起と答えを照応し,文章の構成や展開をつかんでいる。
【C 読むこと ウ】
言語についての知識・理解・技能
筆者独特の語句の用い方に気付き,辞書的な意味との違いについて理解している。
【言語事項(1) イ】

単元計画(全5時間)
主な言語活動 主 な 学 習 活 動 授業風景
板書

題名から内容を予想する。
全文を通読し,初読の感想を発表し合うとともに,【ワークシート@】を使って,内容をおおまかにつかむ。
 
とっておきクイズ
初読の感想を基に,クイズを考える。
ペアでクイズを出し合い,クイズを吟味する。
相手が簡単には答えられないクイズとはどのようなクイズかを考えながら,再度クイズを作る。
【ワークシートA】を使って,班でクイズを出し合い,クイズを吟味する。

ペアでクイズを出し合う
クイズ(表現編)
クイズの質の違いを考え,分類する。
【ワークシートB】を使って,表現に関するクイズを考え,発表しあう。
クイズの答えについて考える。
筆者の用語の特徴をとらえるとともに,筆者の意図を考える。


クイズ表現編を作る
クイズ作り
内容に関するクイズを比較する。
【ワークシートC】を使って,文章の構成をつかむ。
筆者の問題提起に対する答えについて考える。
 
百科事典と読み比べ
【ワークシートD】を使って,百科事典と教材文とを比べ,表現と内容の両面から違いをまとめる。
比較することによってより明らかになった筆者の表現の意図を考える。
学習を振り返る。

百科事典の書き方と比べる

単元周辺の計画
教材の内容に関して
理科的な専門用語の解説
新出漢字や難語句の学習を事前に行う際などに,併せて「恒温動物」「変温動物」など理科的な専門用語の意味を確認させる。
(第2学年になってから理科の授業で詳しい内容を学習することを知らせる。)
読書コーナー 
ハチドリに関する記載がある図鑑・事典・書籍を中心に,読書コーナーを教室や図書館に設置する。
ハチドリ以外にも珍しい動物,絶滅の危機に瀕しているもの,絶滅した動物等についてや,環境問題と生物とのかかわりについて書かれた図書も設置する。

 
単元名
情報を読み取ろう
「脳のはたらきを目で見てみよう」 川島 隆太(東京書籍)

文章の展開に即して内容をとらえ,目的や必要に応じて要約させる。
文章の中心の部分と付加的な部分,事実と意見とを読み分けさせる。
様々な文章から必要な情報を集めるための読み方を身に付けさせる。


言語活動に関して
クイズ作りに挑戦!
伊藤秀三 「ガラパゴスの自然と生物」(光村図書小学校6年教科書・平成12年度版)
言葉や表現の細部にこだわりながら文章を読ませ,クイズを作らせたり,答えを考えさせたりさせる。
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単元名
筆者の説明の仕方を学ぼう
「ハチドリの不思議」 日 敏隆
言葉や表現にこだわりながら文章を読ませるとともに,表現の工夫や筆者の意図を考えさせる。
 

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単元名
 論理の展開をとらえよう
「考えるイルカ」 村山 司
(東京書籍)
文章の展開,構成を確かめながら,筆者の主張を読み取らせる。
筆者の論理の展開を吟味させる。
 
授業を終えて
クイズ作りのゲーム的な性質を利用して,楽しい中にもしっかりと文章を読ませる学習にしたいと考え,授業を組み立てました。
生徒たちは積極的に学習に参加しました。クイズを作ったり,友達のクイズに答えたりするために,何度も文章に立ち返って読む必要性をもたせることができました。友達とのやりとりの中で,普段は「読みとばし」や「読み落とし」が多い子どもたちを,言葉にしっかりと向き合わせることができました。

筆者独特の語句の用い方には,初読の段階から多くの生徒が気付いていました。その独特さゆえに,文章全体を理解しにくい,難しいと感じた生徒も見られました。クイズ作りの過程で語句の説明をさせることにより,どのような意味で使われたのかを正確に理解させることができました。疑問を解決しながら,その面白さに気付き,筆者の意図にまで読む視点を広げさせることができました。

百科事典との比べ読みでは,比べることによってより明らかになってくる文章の特徴から,筆者の思いに迫ることができました。

○生徒の感想より

・クイズ作りは,文をしっかり読まなくてはクイズができないので,その文をすみからすみまで理解することができていいと思う。
・分かりやすい説明,たとえを使った説明など,説明の仕方を学んだ。
・説明文を書くときには,調べたことをまとめるだけでなく,相手のことを考えて書くのが大切だということを感じた。
・国語の授業で本を読んでクイズを作ることは初めてやった。クイズを作るにつれ頭によく入った。
・相手が分からないような問題を作る楽しさ,クイズを解いて正解する楽しさの2つを感じながら,楽しめました。


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