小学校第6学年の実践 「番組」を作りながら説明文を読む
単元名 番組「プロジェクトX603」をつくろう

教材名− 言葉の意味を追って
出  典− 東京書籍6年

「広辞苑」作りに情熱的に取り組んだ親子の姿を紹介するビデオ番組作りをしました。その中で,文章構成や語句の使い方,文末など筆者の表現の工夫について吟味させ,要旨をとらえさせていく授業展開を考えました。

本時 学習指導案 ワークシート

脚本

補助@

補助A
 
単元観 
(1)児童の実態  (2)教材の特性 
文章中の言葉からの抜き出しはできるが,読み取ったことを自分の言葉で表現することが苦手である。

既習単元において「シナリオ作り」を行ったことで,文や言葉の選び方や表現の裏に隠された気持ちの読み取り方をつかんでいる児童が増えている。

年表を作りながら広範囲の教材文から必要な内容を抜き出しまとめる学習の経験がある。

様々な表現活動を経験しており,やり方が分かれば黙々と学習に取り組む児童が多い。

画期的な国語辞典作りに情熱的に取り組んだ親子の姿が描かれている。

「言葉」を対象とした仕事ということから,「言葉」に関する新しい視点を見いだし,その働きや意味を改めて考えていくきっかけにもなる。

課題とそれに対する努力・解決というパターンの繰り返しをとることで,感動をもって読めるような段落構成が展開されている。

「広辞苑」作りの苦労が文末表現や接続詞・数などの表現で巧みに説明されている。

↓
(3) 取り入れる「言語活動」とその指導  
番組作り 読む必然性をもたせるとともに,内容を感動的に伝える筆者の表現の工夫に気付かせるために「プロジェクトX603」という番組作りを設定する。
 クイズ作り 数字の表現効果に着目させながら「広辞苑」作りのすごさを読み取らせる。
「『広辞苑』にはいろんな秘密がありそうだ。」と思えるようなクイズを教材の中の数に着目させて作らせる。
表現する上で数字が効果的に使われていることに気付かせながら内容を正しく読み取らせていく。
 年表作り 教材文のおおまかな内容をつかませる。
「『広辞苑』作りで苦労した出来事」を年表と列記し,課題と解決という繰り返しによる表現の巧みさに気付かせる。
完成した年表をもとに出来事を心情曲線で表し,親子の心情の変化(問題の大きさ)を視覚的にとらえさせる。
 フリップボード作り 筆者の表現の工夫や構成のよさに気付かせる。
文末表現や接続詞・数などを視点にもたせ,辞書作りのうえで問題となった出来事ベスト3について話し合わせる。
 Q&A作り 人物の生き方にふれさせる。
新村さんの人柄が分かる質問を考えることで,新村さんの人柄のよさにふれさせる。
一文作り 番組の印象付ける言葉選びから,要旨をとらえる。
新村親子にとって「広辞苑」作りとは?という問い掛けに,あてはまる一文の言葉を考えることで,要旨をとらえさせる。

指導目標
番組のシナリオやフリップボード作成を通して,文章の構成に注意して読み,書かれている内容を正しく読み取ることができるようにする。
シナリオ作成を通して読み取ったことをもとに話し合い,筆者の意図や表現の工夫を読み取ることができるようにする。

評価規準
国語への関心・意欲・態度
進んでフリップボードの言葉や質問の言葉を考えることで,番組を楽しく作ろうとしている。
読む能力
筆者の意図や表現の工夫に気付き,書かれている内容を正しく読み取っている。
【「C読むこと」A内容(1)イ】
言語についての知識・理解・技能
「広辞苑」作りの大変さを効果的に表している文章構成を理解している。
【「言語事項」(1)オ 文及び文章の構成に関する事項(ア)】

単元計画(全10時間)
言語活動
(脚本のページ)
主 な 学 習 活 動 授業風景
板書
クイズ作り
(1ページ)
教材文を通読し,番組「プロジェクトX603」作りの学習に見通しをもつ。
「広辞苑」の秘密が知りたくなるような数字の吟味をさせ,「広辞苑」に関するクイズを作る。
年表作り
(2ページ)

教材文全体から,年表を作ることで,内容を大まかにつかむ。
「広辞苑」作りで「困った出来事」を年表に並べながら書き出す。
「心情曲線」を使い,文章構成の工夫について考える。

補助資料@
フリップボード作り
3ページ)
見出し語を見直すきっかけとなった出来事を書き出す。
問題点の大きさを比べる視点について考える。
  
辞書作りの問題となる出来事ベストについて意見を出し合う。
フリップボードの言葉を決定する。

補助資料A

授業の様子
Q&A作り
(4ページ)
新村さんの人柄を考える。
新村さんの人柄が分かる質問を考える。
一文作り
(5ページ)
新村さんにとっての「広辞苑」とはについて考える。
番組最後に入れるインパクトのある言葉を考え,「一文作り」を行う。
 
それぞれの場面についてグループで分担し番組のシナリオを完成させる。
 
発表の練習をする。  
10
グループごとに発表しビデオに録画する。
学習の感想を書く。
 
児童製作のビデオ

単元周辺の計画
教材の内容に関して
NHK番組「プロジェクトX」の視聴
ビデオを視聴し,番組作りのイメージをもたせる。
教室環境り
人物の生き方を描いた関連図書のコーナーを設ける。
プロジェクトX〜ジュニア版〜(日本放送協会)

授業で活用した教材文や授業のあしあとを掲示する。
単元名
対談番組「こちら603情報部」を作ろう
〜「イースター島にはなぜ森林がないのか」〜

単元の目標
対談のシナリオ作成を通して,文章の構成や書かれている内容を正しく読み取ることができるようにする。
「イースター島にはなぜ森林がないのか」について読み取ったことをもとに話し合い,筆者の意図や表現の工夫に気付くことができるようにする。
身近な環境問題について書かれた本を進んで読もうとすることができるようにする。
言語活動に関して
1分間スピーチ
「好きな言葉」
「私の好きな偉人」
フリップ・ボードを活用しながら話ができるようにする。
社会科の授業
年表の作り方を理解させる。
国語科の授業
「俳句や詩の好き比べ」
話型を使いながら,文章表現を根拠にあげながら話すことができるようにする。
単元名
番組『プロジェクトX 603』をつくろう
「言葉の意味を追って」〜
 

単元の目標
番組のシナリオやフリップボード作成を通して,文章の構成に注意して読み,書かれている内容を正しく読み取ることができるようにする。
シナリオ作成を通して読み取ったことをもとに話し合い,筆者の意図や表現の工夫に気付くことができるようにする。
授業を終えて

今回の番組作りを通して,楽しみながらも,番組に必要な内容を話し合い,教材文を正しく読み取ることができました。「クイズ作り」では,数に着目させることで,「広辞苑」のすごさや数を有効に使った表現に気付かせるこができました。「年表作り」では,単に表を埋めるのではなく,フリップボードにして番組の会話に利用するということが意欲面を刺激し,子どもたちを生き生きと活動させることにつながったと感じました。「辞書作りの問題となる出来事ベスト3」を選ぶ活動では,もっとも大変となる出来事について筆者の表現や構成にこだわったり,具体的な操作から正しく読み取ったりすることで,自分の考えをはっきりさせることができました。具体的な操作は,番組のシナリオの中にも組み込まれ,より分かりやすく伝える手段として使うことができました。シナリオや番組作りの学習を行っていく際,どの部分に焦点を当てて話し合っていくのかはっきりさせておくことが大事だと感じました。子どもの活動目標と教師の指導目標をしっかり整理することで,言語活動を取り入れた学習が実りあるものになると感じます。


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