小学校第4学年の実践 「ガイド・ブック」を作りながら物語文を読む
単元名  世界に1つだけのガイド・ブックを作ろう!

教材名 世界一美しいぼくの村
出  典 東京書籍4年
作  者 小林  豊

物語の魅力が分かるような「ガイド・ブック」作りをしながら,文章の叙述に即して場面の様子や人物の心情を読み取らせる授業展開を考えました。

本時 学習指導案 ワークシート
 
単元観
(1)児童の実態  (2)教材の特性 
登場人物の心情や人間関係を自分の体験や一般論から推測する児童も多く,教材文に書かれた叙述を基に読み取っていく力が十分でない。
ジャンルに偏りはあるが,本を読むことは大好きである。
心情曲線や手紙の表現活動を体験しており,読み取ったことを書き表していく学習には比較的慣れている。
挙手して発表する児童は少ないが,書く時間を確保すれば,発言できる児童が増えることが期待できる。
戦争にいった兄を思う主人公「ヤモ」の姿が,たくさんの人々との温かい交流のなかで描かれている。
視覚,聴覚,臭覚を使いながら自然の美しさや豊かさ,活気ある町の雰囲気を細やかに描写してある。
直接的な心情表現に加え,「父さんと食べようと思ってとっておいた」「白い子羊にバハール(春)という名前を付け」など心情が推し量れる行動の表現も多く,人物の心情を巧みに描いている。
逆説的な接続による語りや場面の構成等,対比して読ませたい表現も多い。特に衝撃的な最後の一文へとつながる全体の構成や季節の仕掛けが見事である。
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(3) 取り入れる「言語活動」とその指導  
ガイド・ブック
読み手を設定することで,教材を詳細に読むことの意欲と必然性をもたせたい。
 見どころ紹介
自然描写を読み味わわせる。
アフガニスタンとパグマンの村と果物を売りに行った町の位置関係を確認させる。
自然の美しさや豊かさに気付かせるために,修飾語や動詞の使われ方に着目させる。
 人物関係図 登場人物の関係を整理しながら心情を読み深める。
学習内容がとらえやすいように登場する人物や場面を区切りながら学習を進めていく。
直接的に心情を表す表現だけでなく,教材に書かれた行動や会話の言葉に着目させながら,人物と人物のつながりを鮮明にさせていく。
 一文図解 作者の表現の工夫を読みながら主題に迫る。
1つ1つの言葉が表している意味や戦争で破壊されたものは何かを考えさせる。
場面構成など作者の表現の意図について話し合わせる。
自然や人物の心の美しさと戦争を対比させる。
 読書ビンゴ 教科書教材を出発点に読書を広げる。
教室に図書コーナーを設置したり,学習した「読みの視点」から図書を紹介したりしながら,単元の時間外にも関連する図書に触れさせておく。
読んだ本で作った「クイズ」を楽しませながら,読書活動の意欲を高める。
指導目標
登場人物の心情や場面の様子等を叙述を基に読み取ることができるようにする。
物語文を読み広げていくための視点を獲得し,進んで本を読むことができるようにする。

評価規準
国語への関心・意欲・態度
進んでガイド・ブックを作ったり,関連する図書を読んだりしている。
読む能力
登場人物の心情や心のつながり,美しい自然の様子等を読み取っている。
【「C読むこと」A内容(1)ア】
物語を読んで,自分なりの感想や意見をまとめることができている。
【「C読むこと」A内容(1)エ】
言語についての知識・理解・技能
情景を表現している修飾語や接続語等の語句の役割を理解している。
【「言語事項」エ語句に関する事項(ア)】

単元計画(全10時間)
主な言語活動 主 な 学 習 活 動 授業風景
板書 等
  教材の題名から思ったことを想像する。
アフガニスタンの国について教師の話を聞く。
全文を読んだり,ガイドブックを見たりして学習活動を見通す。
単元導入のワーク・シート
見どころ紹介 「手引き@」を基に,アフガニスタンや村の様子を 【見どころ】に書く。
*早く終わった児童は町の見どころを【チャレンジ・シート@】に書く。
  
調べたことを基に話し合う。
学習を振り返り,「見どころ」の中で,特に読む人に伝えたいことを書く。
 
人物関係図 「手引きA」を基に,町で出会った人とヤモ親子の心のつながりについて書く。    
調べたことことを基に話し合う。
学習を振り返り「人物関係図」の中で,特に伝えたいことを書く。
「人物関係図」の板書
家族の心のつながりについて調べて,「人物関係図」を書く。
*早く終わった児童は,ヤモが愛する人物以外のものを 【チャレンジシートA】に書く。
 
調べたことを基に話し合う。
学習を振り返り「人物関係図」の中で,特に伝えたいことを書く。
物語の前半を「プレゼンテーションソフト」によって振り返る。
「人物関係図」の板書
話し合いの様子
一文図解 「手引きB」を基に,一文から思い浮かんだことを【一文図解】に書く。   
「冬」の言葉にかくされた意味について考える。
戦争で破壊されたものについて話し合う。
話し合いで出された友達の考えを参考に書き加える。
作品を読んでの感想を書く。

「一文図解」の板書

10 読書ビンゴ 【読書ビンゴ】を基にこれまで読んだ本の中から紹介したい本をクイズにする。
代表児童のクイズに対する答えを【ワーク・シート】に書き,答え合わせをする。
世界一美しいぼくの村」から広がった読書の視点や読みたい本を紹介しあう。
 
クイズのワーク・シート

単元周辺の計画




教材の内容に関して


教師の話
社会的な背景等を話し,教材の内容に関心をもたせる。

「世界のはたらく子どもたち」
「アフガニスタンってどんな国?」
読み聞かせ
教材と特に関連の深い作品を紹介し,読書活動の意欲化を図る。
「サーカスのライオン(東京書籍)」
「ぼくは弟と歩いた(ポプラ社)」
「ちいちゃんのかげおくり(光村図書)」
読書コーナー
「読書ビンゴ」のワークシートに記した図書などを準備し進んで本を読めるようにする。
@アフガニタンの写真や説明
A関連図書
「ワタネ・マン〜私の国アフガニスタン(偕成堂」
「せかいいちうつくしいぼくの村へかえる(ポプラ社)」
「ぼくの村にサーカスがきた(ポプラ社)」など
 
単元名
「物語のもり上がりを考えながら読もう」

〜教材「夏のわすれもの」〜
単元の目標
登場人物のおじいちゃんへの思いを心情曲線に表し,物語の盛り上がりを読み取ることができるようにする。
 












言語活動に関して
話型の提示
自分の考えを友達と比べながら話したり,教材の表現を基に話したりできるように意識させていく。
短作文・日記
郷土のよさや作品の優れた表現を基に,簡単な紹介するための文章が書けるようにする。
「□□の見どころ紹介」
「私のおすすめの本」
読書クイズ(朝の時間)
「読書クイズ」の問題の作り方に慣れさせる。
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単元名
「世界に1つだけのガイドブックを作ろう」

〜教材「世界一美しいぼくの村」他〜
単元の目標
登場人物の心情や場面の様子等を叙述を基に読み取ることができるようにする。
物語文を読み広げていくための視点を獲得し,進んで本を読むことができるようにする。
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単元名
「お話ビデオをつくろう」
〜「だいじょうぶ だいじょうぶ」他〜

単元の目標
心情や情景を想像しながら朗読の工夫をすることができるようにする。
授業を終えて
 子どもたちは,ガイドブック作りに楽しく取り組み,登場人物の温かい心のつながりや郷土への思いを読み取ることができました。物語文でのだれがだれをどのように思っているかといった心情は,自分の体験や勝手な想像で答えることも多かったように思います。そういった点から,「人物関係図」を書きながら読む学習は,文章表現を基に確かに読んでいく意識付けを図ることに有効だったと思います。「読書ビンゴ」は,子どもたちも気に入り,戦争や家族の愛について描かれたたくさんの図書を読むきっかけとなりました。また,出来上がったガイドブックの最後のページには,家族からの「世界一美しいぼくの村」を語り合った感想も書かれてあり感激しました。
 今後は,「確かな読み」と「豊かな読み」をどのように区別して学習を設定していくか,集団による読み深めの場をどう仕組んでいくかについて,もっと考えていきたいと思っています。

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