見かけが元気そうであっても,次のような様子が見られたときは,教室復帰はまだ時期尚早といえるでしょう。  次のような様子が見られたら,教室復帰へ向けての環境を整え,モチベーションを高める支援を行う時期といえるでしょう。

周囲の人とのかかわり
 対人関係が苦手な不登校の子どもは,安心して話せる大人の支援者と話すときは,話し方が自然で,元気もいいように見えますが,友達の輪の中に入ったときには,緊張して黙り込んでしまうことがよくあります。
 他の子どもとのかかわり方をよく観察することが大切です。
 特定の相手とだけでなく,学校の中の複数の相手とかかわれるということは,緊張感や不安感が和らぎ,意思表示をしたり相手の言葉に耳を傾けたりできているサインと見ることができるでしょう。少しずつかかわる相手を増やすような状況作りに努めましょう。
教室や友達についての話題に対する関心
 本人の友達やクラスでの出来事についてのことを話題にしようとしたとき,十分にエネルギーが貯まっていない子どもはそのような話題を受け入れることを負担に感じて避けたがることが多いようです。このような場合は,無理にそのことについて話しかけるのではなく,本人が話題を自然に受け入れられるようになるまで待つようにしましょう。  子どもが教室復帰を考えるようになると,支援者が友達や教室での出来事について話しかけたときに関心を示すようになってきます。そのような話題で支援者と話ができるようになってくれば,教室での活動に対して意識が高まってきたと見ることができるでしょう。最初は相談室等で友達と会う機会を持ったりして,徐々にそのような場面を増やしていくのがよいでしょう。
一つの活動を継続できる時間
 自分で活動を決めたり,大人が提案した活動に取り組んだりすることができるようになってきても,疲れてしまったり,他の事が気になったりして,結果として長続きしないことはよくあることです。このような時は無理をせず,本人のペースを大事にして,個の活動が少しずつ長く続くようにすることが大事です。本人にとってできるだけ負担が少ない活動を,本人の意思で選ぶようにしましょう。  本人の中のエネルギーが高まってくれば,少しずつ一つのことに長く取り組むことができるようになってきます。信頼できる人となら,活動を共にすることができる時間も延びてくるでしょう。
 本人が,一つの活動を続けることに多くの努力をしなくてもすむということが,教室での活動に向けての基盤となります。子どもの気持ちを確かめながら教室復帰を考えましょう。
続けて登校できる日数
 学校に足が向いたとしても,欠席が多い時期は教室復帰へのエネルギーがまだ貯まっていないと思われます。保健室や相談室での様子が元気そうに見えても,一定期間連続して登校することが難しいようであれば,教室復帰への働きかけは,控えたほうがよいでしょう。  保健室や相談室であれば一定期間続けて登校できる子どもは多いものです。しかし,日数よりも子どもの学校生活の様子を丁寧に観察して,教室復帰のタイミングを見極めることが大切です。
 登校が続くことも重要な要素です。しかし,いろいろな角度から子どもをよく見ることがさらに重要です。

  • 適応指導教室での学校復帰への支援を始めるかどうかの判断の一つとして私服を制服へかえられるかどうかがあります。
 制服は,集団の中の一員であるという証しです。対人関係が苦手な不登校の子どもは制服を着ることに抵抗を示す場合があります。私服を着て通う状態というのは,「私はまだ学校復帰に抵抗が大きいですよ」という子どもからのサインです。