授業の実際とその成果
献立作成の様子 「作成した献立の見直しをしよう」の授業で,どのように献立が変更・工夫されたのかまとめました。
   〜図は各グループの検討前の献立を示しています。変更については,図の下に言葉で記しました。〜
栄養バランスバッチリ弁当
主菜(1群)が多かったので,ベーコンをりんごに変更。2群がなかったので,ご飯にしらすをふりかける。
栄養バランスバッチリ弁当
2群がなかったので,オムレツにチーズを加える。
時間短縮のため,にんじんを細く切る。また,じゃがいも,たまねぎは小さく切ってレンジを利用。
栄養バランスバッチリ弁当
2群が不足したので,棒チーズを加えた。ご飯にうめぼしをのせることにした。 ※修正の必要の少ない献立であった。
野菜たっぷり弁当
いろどりよくするために,なしをりんごに再度変更。2群がなかったため,卵とじにチーズをまぜる。うさぎりんごにする。
野菜たっぷり弁当
2群がなかったため,わかめご飯にする。野菜炒めの横にトマト,しょうが焼きの下にレタスを加える。
野菜たっぷり弁当
時間短縮のために,かぼちゃは小さく切ってレンジで加熱し,チーズをのせてオーブンで焼く。その間に他の調理をする。
カルシウムたっぷり弁当
チーズをりんごと串にさして詰める(工夫)。照り焼きの下にレタスを敷く。 ※修正の必要の少ない献立であった。
カルシウムたっぷり弁当
1群が多かったので,かまぼこをトマトに変更。ご飯にわかめとごまをかける。チーズを卵とじに入れる。
カルシウムたっぷり弁当
いろどりよくするために,なしをりんごに変更。ミニトマトを1つ加える。ご飯の上にのり・ごまをふりかける。
カルシウムたっぷり弁当
カルシウムが不足したので,ごぼうサラダにひじきを加える。「しらすご飯」にごまもふりかける。
カルシウムたっぷり弁当
カルシウムが不足するので,のりとごまを使っておにぎりを作る。(楽しくする工夫) ※修正の必要の少ない献立であった。
カルシウムたっぷり弁当
献立が未完成だった。時間短縮のためかぼちゃの煮物をやめて,チーズとアスパラのベーコン巻きにする。ミニトマトをいろどりよくするために加えた。
 
 献立の問題点とその解決について (授業の様子)
○前時で作成した献立にどのような問題点(改善すべき点)があったか ※グループ数:12グループ
 「栄養のバランス」に関するものとして,不足する食品群がある(8グループ),主菜(1群)の割合が多い(2グループ)などがありました。調理時間がかかりすぎる傾向にある献立(4グループ)やいろどりがやや悪い献立(3グループ)も見られました。また,特に改善すべき問題点はないが,工夫が見られない献立(2グループ)も見られました。

○本時「献立を見直す授業」では,どのように指導したか
 各班の献立(個人の学習シート)について,改善すべき点があれば赤○シール,気になる点があれば黄○シールを貼り,達成できていない条件(例:「時間」など)をシールの横に言葉で示して,生徒に返却しました。そして,生徒にはそれを基に,その根拠となる食品や調理品を探して修正させるようにしました。その後,修正した献立をグループで意見交換させ,さらに見直して「実習できる献立」として決定させていきました。

○生徒は献立をどのように修正・工夫したか
 「栄養バランスの修正が適切にできた班」(食品群を補う,多かった食品群を取り替える):10グループ
 「時間を短縮する方法を考えた班」(調理法の変更,切り方の工夫や段取りの工夫で対応):3グループ
 「いろどりよく」したり,「見た目に楽しく」したりするために食品を交換した班:6グループ という結果でした。全体的に弁当の献立の条件を満たして,自分たちで調理実習できる献立へより近づくことができたようです。

 調理実習で生徒が作った弁当 (一部を紹介しています)  
課題:栄養バランスバッチリ

 ごぼうサラダ,豚しょうが焼き,チーズ入りオムレツ,野菜炒め,かぼちゃうめぼし
課題:栄養バランスバッチリ

サケのムニエル,卵焼き,きんぴらごぼう,アスパラ,トマト,チーズ,ぶどう,のり    
課題:野菜たっぷり

豚しょうが焼き,ごぼうサラダ,ほうれん草の卵とじ,かぼちゃ,オレンジ,りんご   
課題:野菜たっぷり

肉の野菜巻き,野菜グラタン,ごぼうサラダ,青菜の卵とじ,ゆかりご飯,(りんご)  
課題:カルシウムたっぷり

とり照り焼き,きんぴらごぼう,青菜卵とじ,りんごとチーズの串,トマト,じゃこご飯    
課題:カルシウムたっぷり
とり照り焼き,青菜の卵とじ,きんぴらごぼう,トマト,きゅうり,じゃこ・ごまご飯    
課題:カルシウムたっぷり

しょうが焼き,卵焼き,きんぴらごぼう,
りんご,トマト,のり,ごま(ご飯),いりこ
 
課題:カルシウムたっぷり

とり照り焼き,チーズ入り卵焼き,ごぼうサラダ,ほうれん草,トマト,おにぎり      
課題:カルシウムたっぷり

さけムニエル,ベーコン巻き(チーズ・アスパラ),ポテトサラダ,きんぴらごぼう,ごま   
 
 この題材の学習を終えて
〇 この実践校は弁当昼食であり,学習に対する生徒の関心は高いものがありました。しかし,事前調査では,実際に自分で弁当を作ったことがあると回答した生徒が全体の1割程度で,授業での実習経験も少なく,調理の技能も低いという実態でした。作りたいという意欲とそれを調理する技能の差をいかに埋めながら,指導するかがポイントとなりました。

〇 そこで,弁当に入れる調理品をいくつか選択させることで,調理技能に無理なく,調理の基礎を習得させながら,同時に献立作成力も付けていくようにしました。主菜を4つ(とり照り焼き,豚しょうが焼き,肉の野菜巻き,鮭ムニエル)から1つ選択させ,副菜を2つ(きんぴらごぼうかごぼうサラダ)から1つ選択させるという条件を付けましたが,生徒は大変意欲的に各グループごとに工夫した献立ができました。すべてを自由に考えさせる献立より,新たな調理技能を習得させることができ,また,指導の面でも実習班作りや材料準備では効率的に行えました。(調理実習では,主菜や副菜の同じグループを合わせて6人班を作りました。)

〇 また,実際に自分の食事点検から弁当献立の課題を決め,献立を基に作った弁当を昼食で食べて,評価するという活動は,生徒にとって自分の学習成果がとらえやすく,食生活を改善する手立てを学ぶ良い機会とすることができました。食生活に関する学習後のアンケートでは,「弁当作り」が印象に残った生徒も多く,学習後に自分の弁当に関心をもった生徒,自分で弁当を作りたいと言う生徒,実際に,自分で時々作る生徒もいました。

○ この実践での課題としては,献立作成力についての個人の評価をどこで行うかということです。今回は調理することを考えて,小グループによる献立作成,実習,自己評価という過程としました。このため,各自の献立作成力をここで評価することには無理があります。よって,学習後のテストで,条件をつけて弁当の献立作成をするような問題を出題することも一つの方法と考えます。授業では,意欲や調理技能の評価を中心に行うようにしました。

〇 献立学習は各学習事項を総合的に活用していく力が必要であり,食生活の学習でも最も重要であると考えます。献立作成力を高めるためには,献立を机上で考えさせるだけなく,実際材料を準備させて,調理させ評価させることで確かな実践力をつけさせることができると改めて感じました。
  
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