実践事例

「すすめ!富士町の名人見つけ隊(第2学年)」
1 単元目標と評価規準の設定の実際 (1) 単元目標と評価規準
(2) 単元指導計画
2 学習の評価の実際 (1) 評価を位置付けた本時の展開
(2) 本時の学習活動における評価と教師のかかわり
(3) 単元を通しての評価と教師のかかわり

1 単元目標と評価規準の実際
(1) 単元目標と評価規準 <内容(3)地域と生活>
ア 生活への関心・意欲・態度 イ 活動や体験についての
思考・表現
ウ 身近な環境や自分について
の気付き
内容のまとまり
ごとの評価規準
(3)
○地域の人々や様々な場所に親しみをもってかかわり,自分の生活を広げようする。
○地域の人々や様々な場所と適切にかかわることや,安全に生活することについて考え,それらを表現することができる。
○自分達の生活は,地域の人々や様々な場所とかかわりをもっていることが分かっている。
単元の評価規準
○地域の人々や様々な場所に親しみをもってかかわり,自分の生活を広げようする。
○地域の人々や様々な場所と工夫してかかわり,発見したことを体験してことを自分なりの方法で表現することができる。
○地域の人々や様々な場所のよさや,地域の人々とかかわって生活すると楽しいことに気付く。
小単元における
具体的な
評価規準
(1)地域の名人に関心をもち,探検しようとしている。
(2)名人技のひみつを見つけようと地域の名人にかかわっている。
(3)地域の人々とのかかわりを広げようとしている。
(1)地域の名人とかかわる方法を考えたり,自分なりの方法で表現したりしている。
(2)友達との交流を生かして,地域の名人とかかわる方法を考えている。
(3)友達に伝えるための発表の工夫をしている。
(1)名人のよさや名人技のよさに気付いている。
(2)名人のよさやかかわることの楽しさに気付いている。
(3)親しくなった人々や様々な場所が増えたことに気付いている。
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(2) 単元指導計画 (全20時間)
学習過程 小単元

 学習活動
 

評価計画

 
 評価を生かした教師のかかわり

◇おおむね達成に向けての支援


大捜索!○○名人はど
こだ
1 自分たちの住む町の名人をさがそう!
(帰りの会・2h)



○関・意・態<ア(1)>
(活動の様子・表情・つぶやき・会話・ワーク@

対話しながら,児童の思いを引き出し,その思いを実現できそうな名人さがしを一緒に行う。












名 人 を さ がしに出かけ よう
2 ○○名人に会いに出かけよう
(5h)
○思・表<イ(1)>
(活動の様子・発言・つぶやき・ワーク@ふりかえりカード@







◇友達との交流を促したり対話をしたりしながら,名人への思いを膨らませる。
◇名人に尋ねたいこと,一緒にしたいことなどを問いかけながら引き出し,友達と話し合わせる。
◇教師も一緒にかかわりながら,児童のたずねたいことなどを引き出していく。
3 探検で見つけた名人について紹介し合おう
(2h)
○気<ウ(1)>
(活動の様子・発言・つぶやき・作品・ワークAふりかえりカードA

◇対話を通して,それぞれの気付きのよさに気付かせていく。
◇異なる気付きをもった児童と交流させながら気付きを広げたり深めたりできるように促し,そのよさを実感させる。
4 名人技のひみつを探りに行こう
(6h)
(1)計画を立てよう
(2)探検に出かけよう
本時



○思・表<イ(2)>
(行動・発言・つぶやき・作品ワークB)
○関・意・態<ア(2)>
(行動・発言・つぶやき・作品・ワークBふりかえりカードB




◇前回も同じ名人とかかわった児童との交流を促し,活動の見通しをもたせる。
◇名人へ連絡をさせたり,前回もその名人と一緒に活動した児童の作品を見せたりすることで,思いを十分に膨らませておく。
◇「とっておきの秘密は?」と問いかけ,かかわり方について,具体的に引き出していく。
5 名人技のひみつを紹介し合おう
(2h)
○思・表<イ(3)>
○気付き<ウ(2)>
(活動の様子・発言・つぶやき・作品ワークCふりかえりカードC
◇地域の名人とのかかわりを振り返る視点として,初めて知ったこと,できるようになったこと,上手になったことなどのフラッシュカードを示し,それらを手掛かりに考えさせる。
◇「ちびっ子名人になって教えよう」と意欲を高める。
◇異なる気付きをもった児童と交流させながら,気付きを広げたり深めたりできるように促し,そのよさを実感させる。


  ら
  く
名人賞を届けよう
6 名人賞を届けよう
(3h)
○気付き<ウ(3)>
○関・意・態<ア(3)>
(活動の様子・発言・つぶやき・作品・ワークDふりかえりカードD

◇思いが高まっている児童の発言を生かしながら,「地域のいろんな人と仲良くなりたい」という思いを膨らませ,その後の生活の様子を見守っていく。
◇初めて知ったこと,できるようになったこと,上手になったことなどを引き出し,これからの地域の人々とのかかわりへとつなげていくようにする。
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2 学習の評価の実際(13・14/19時)
(1) 評価を位置づけた本時の展開案
○目標
地域の名人に進んでかかわり,名人技のひみつを見つけようとする。  (関心・意欲・態度)
○前時までの評価を生かす視点
本時に向けての一人一人の児童の思いや予想される活動,児童へのかかわり方について,名人や引率協力者と共通理解を図る。
抽出児童A児の実態と本時における指導計画

学習活動 教師のかかわりと評価

1 活動のめあてについて話し合う。

○○名人の名人わざのひみつを見つけよう


※めあての共有化

○引率者や地域の名人とは,本時のねらいと目指す具体的な児童の姿<評価の視点(見取りの視点)>ついて,共通理解を図っておく。
○予想される児童の活動や配慮事項について,伝えておく。
○本時の活動のめあてを合い言葉にし,児童一人一人が目指す自分自身の活動の姿をイメージさせる。

2 名人技を見せてもらったり教えてもらったりする。

※具体的な活動の様子と教師のかかわり










<評価規準>
地域の名人に進んでかかわり,名人技のひみつを見つけようとしている。
(関心・意欲・態度)
<評価の視点(見取りの視点)>
@名人の技を身を乗り出して見ている。(活動中の様子)
A「教えて」とやり方を名人にたずねている。(活動中の会話)
B繰り返し挑戦している。(活動中の様子)
C「できたよ」「上手になったよ」と伝えている。
(活動中の様子・会話)
D「またしたい」などの言葉を発したり,カードに書いている。
(グループでの話し合い・カード記入時のつぶやき・会話・教師との対話・全体での発表)
<評価方法>
行動・つぶやき・発言・カード
※地域の名人,引率協力者からの評価情報カード

<不十分な状況と判断される児童へのかかわり>
・思いやたずねたいことなどについて引き出し,やってみようと誘う。
・名前を呼んだり手をとったりしながらかかわってもらえるように,名人にお願いをしておく。
・対話しながら,名人技への気付きやかかわることの楽しさについて引き出し,他の児童と交流させていく。
<十分満足できる状況に向けての児童のかかわり>
・評価の視点(見取りの視点)の姿を具体的に称賛し,価値付ける。
・名人や名人技のひみつについて問いかけ,より意欲的にかかわれるようにする。

3 活動を振り返り,楽しかったこと,気付いたことなどについて話し合う。








※めあての共有化

○自分の活動を振り返り,びっくりしたこと,がんばったことなどをカードに書かせたり,「お話コーナー」で話をさせたりする。
○自己のよさや成長について振り返らせるような言葉かけを行う。


ふりかえりカード
地域の名人からの情報
引率者からの情報
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(2)本時の学習活動における評価と教師のかかわり
抽出児童A児の実態
 
生き物を見つけたり,飼育することに関心がある。1学期の町探検では,進んで探検の場所を決めたり,インタビューしたりする姿勢が見られなかった。交流の場でも,相手が固定している。考えたり工夫したりすることが必要とされる場面では,支援が必要である。※実態調査アンケート

<本時に至るまでの様子>
<前時までの評価を生かす>

<単元に入る前>
・地域の名人への関心が薄い。

<1回目の探険に向けて>
・「針金アート名人ところへ行きたい。」
・「名人さんと一緒に針金で作る」活動に興味。
・探検への意欲も高まってきた。

<1回目の探険では>
・1回目の探検。名人にかかわる。
・一緒に針金で三輪車を作る。
「あー,楽しかった。また行きたいな。」

<2回目の探険に向けて>
・2回目も同じ針金アート名人のところへ。 
・「たくさん作りたい」という思い。
・事前に設計図を描き,材料を用意している。

・1回目の針金アート名人とのかかわりに大満足。

・「もっとたくさん作りたい。」「もっと上手に作りたい。」という言葉,事前に設計図を描いていた様子などから,さらに活動への思いが膨らんでいると感じる。

・本時は,自分の思いの実現に向けて,意欲的に名人とかかわりながら,名人技の秘密を見つけようとするであろう。

・初めて針金アート名人とかかわる児童に教えたり,一緒にかかわったりするなかで,活動を広げたり深めたりさせていく。

計画カード(一部)
 本時の展開案にもどる
<本時の活動の様子>
関心・意欲・態度思考・表現気付き
<その場で生かす>
名人の説明を身を乗り出して聞き,自分から次々と質問する。
(視点@A関心の高まり
名人のアドバイスに自分なりの工夫を加えて活動する。
(視点B関心の高まり
色つき針金でアレンジ。
初めて友達に教える。意欲的にかかわる。
(関心の高まり
名人に教えてもらった針金の使い方や長さについて教えている。
(名人さんとのかかわりを生かす)
・視点@ABの姿を称賛。
→自信を持たせる
→見守る
・友達とかかわりながら活動できたことを称賛。
「ちびっ子名人に近づいてきたね。」
→価値付ける
△活動中断。
名人の新しい作品「ブリキの自転車」に興味。
「前はなかったよ。(1回目の経験との比較)」
  「どうしたらできるのかな。」
「かっこいいな。やっぱり名人さんはすごいな。ブリキだけで本物そっくりの飛行機を作るんだよ。」
(実感を伴った気付き)
・しばらく見守る
「ブリキの自転車」を見ながら対話。
名人技のすばらしさについて気付きを引き出す。
→気付きを引き出す
・活動へ戻る。
赤い針金の巻き方を工夫してオリジナルの椅子作り。
(視点B関心の高まり)(活動の工夫
事前に用意していた設計図を基に,飛行機を作る。
「 どうしたらいいのかな?」自分なりに考えたり名人にかかわったりする。
(視点B関心の高まり
「こうしたらどうかな?」
  「よし!できた。」
活動の工夫
「できた!」うれしそうにイス(作品)を見せて伝える。
(視点C関心の高まり
「やっぱり名人さんはすごいね。」という言葉に「どんなところがすごいと思う?」と問いかける。
→気付きを広げる
・前もって設計図を作ってきたがんばりと自分なりの思いを実現する活動ができたことを称賛。
→自信を持たせる
「いろいろな人と一緒に何かをするって楽しいね。」
→価値付ける
 <ふりかえりカード>
<ふりかえりカードを基にした対話>
「針金のこと,ちょこっと分かったんだね。
よかったね。どんなことが分かったのかな。教えて欲しいな。」
A児:「作り方,針金の長さや本数について教えてもらったよ。こうするると上手に曲げられるんだよ。針金でいろいろな物を作れて,おもしろかったよ。」
→気付きを引き出す
→価値付ける
 <地域の名人からの情報>
一生懸命名人技に挑戦しました。
Aくんは,設計図を準備していて,やる気満々でした。
活動中も,たくさん質問してくれました。
友達にも上手に名人技を教えてくれていました。
<地域の名人,引率協力者からの情報を
基にした対話>
地域の名人,引率協力者の言葉を伝えながら,A児のよさや成長の様子を称賛する。
・意欲的に質問したり,話をしたりするなどの名人とのかかわりの様子
・上手に対応する様子
・1回目で教えてもらったことを生かして活動する様子
・友達に意欲的に教える様子など
→価値付ける
  <引率者からの情報> 
Aくんは,2回目ということもあって,名人さんと上手にお話が出来ていました。
1回目で教えてもらったことも思い出しながら,がんばっていました。
みんなが,Aくんを頼っていて,本当のお弟子さんみたいでした。
 本時の展開案にもどる
<授業後の様子>

<次時に向けて生かす>
○友達へのかかわり
・給食の時間も,お盆の上に置く。
・自慢したい様子。
・「上手でしょ?」
・友達の「上手だね。」の声に満足顔。
・針金で作った飛行機も見せる。
○家族へのかかわり
・家に持ち帰っていいかどうかを,自分からたずねに来る。
・「持って帰っていいかな?やったあ!」
・手のひらに載せて持ち帰る。
・視点CDの姿を称賛。
・名人とかかわりながら,自分なりの活動ができたことを称賛。
→自信をもたせる
・名人とのかかわりの中で思ったこと,気付いたことを全体から引き出す。
→気付きを引き出す
・「やっぱり名人さんはすごい」(B児の言葉)を拾い上げ,「そのひみつをみんなに,知らせたいね」と新たな活動へ誘う。
→新しい活動へと誘う
「ちびっ子名人になってきたね。」「いろいろな人と一緒に何かをするって,楽しいんだね。」
→価値付ける
・「どんなことができそうかな?」
→思いを膨らませておく
<日常化の様子〜家庭で〜> <次時に向けて生かす>
○家族へのかかわり
・B児は名人との活動を詳しく伝えた。
・作品を自慢げに見せた。
・「名人さんって,すごいね」と
○名人へのかかわり
・「また,行ってみようかな」と,繰り返し言う。
・授業後の様子やつぶやき,家庭からの情報から,生活化の様子を見取る。
→全体に広げる
・名人技の楽しさや秘密を「みんなに伝えたい」とい思い,「また行きたい」という思いが膨らんでいる。
→引き出す
<次時以降へ生かす>
○A児への今後の指導に生かす
単元を振り返り,自己の成長を実感できるように支援する。
・地域の名人への関心の高まり
・意欲的にかかわる態度
・友達との交流を通して,友達のよさも認めることができるようになったことなど。
○単元指導計画の修正
児童の思いから,「名人技の楽しさや秘密を紹介しよう」を追加。
○年間指導計画の修正
地域の名人とかかわりながら体験したことを,伝えたり教えたりする場として,次の単元「みんなでつくろう!フェスティバル」へつながりをもたせていく。
児童の活動の姿から見取りの視点を追加・修正
<評価の視点(見取りの視点)> <修正後の評価の視点(見取りの視点)>
@名人の技を身を乗り出して見ている。
(活動への興味:活動中の様子)
A「教えて」とやり方を名人にたずねている。
(名人技への興味:活動中の会話)
B繰り返し挑戦している。
(活動への興味:活動中の様子)
C「できたよ」「上手になったよ」と伝えている。
(活動達成の喜び:活動中の様子・会話)
D「またしたい」などの言葉を発したり,カードに書いている。
(グループでの話し合い・カード記入時のつぶやき・会話・教師との対話・全体での発表)
@名人の技を身を乗り出して見ている。
A「教えて」とやり方を名人にたずねている。
B繰り返し挑戦している。
C「できたよ」「上手になったよ」と伝えている。
D「またしたい」などの言葉を発したり,カードに書いたりしている。
E「楽しいな」「おもしろいね」などの言葉が聞かれる。
(活動への興味:活動中の会話)
F「すごいな」「じょうずだな」などの言葉が聞かれる。
(名人技へすばらしさへの興味:活動中の会話)
G友達に教えるなどしてかかわっている。
(活動への意欲:活動中の様子)
H事前に自分なりに情報を集めたり必要な物を準備したりしている。
(活動への意欲:活動前の様子)
(さらなる活動への意欲:グループでの話し合い・カード記入時のつぶやき・会話・教師との対話・全体での発表)
○ゲストティーチャーについての情報の追加
児童が収集してきた地域の名人についての情報をゲストティチャーバンクに追加する。
以上のことから,本時におけるA児は,評価の視点(見取りの視点)@ABCDを満たしており,「おおむね満足できる状況」にあると判断し,さらに関心を高めようと対話をしながら,かかわってきました。
進んで自分なりに設計図を作り,「もっとたくさん作りたい」「もっと上手に作りたい」という思いをもって,本時の活動に取り組んだA児ですが,それらの思いを実現するために,「意欲的に地域の名人や友達にかかわる」姿が見られました。これらの姿は,「十分満足できる状況」にあるととらえることができます。
引き続き,A児の様子を見守り,さらなる成長に向けて,かかわっていくようにします。
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ウ 単元を通しての評価と教師のかかわり〜「関心・意欲・態度を中心に〜

探険パート1や本単元の「出会う」段階では,探険活動に無関心であったA児が,名人と繰り返しかかわることで,次第に地域のいろいろな場所や人々への関心が高まってきました。「ひらく」段階では,日常的に名人とかかわる姿も見られるようになりました。
このように,評価の視点(見取りの視点)として,関心の高まりを具体的な活動の様子や言葉で表現することで,A児のよさや成長の様子をより明確に見取ることができました。また,見取ったよさや成長を大切にしながら,A児にどのようにかかわっていくのかを考えておくことで,より細やかな指導が行うことができたと考えます。
A児にとって,関心の高まりが活動へのエネルギーとなり,地域や地域の人々へのかかわり,友達へのかかわりの工夫へとつながっていきました。そして,教師や友達,地域の名人から称賛されることで,自分自身のよさや成長に気付き,継続的に,発展的に,地域の人々とかかかわっていきたいという思いが生まれました。
今後,継続的に,日常化の様子を見取りながら,十分満足できる状況であるかどうかを判断していきます。
また,次単元「みんなで作ろう!フェスティバル」においても地域の人や友達とのかかわりの様子については引き続き,見守っていくようにすることにしています。
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