○ 学習指導案     小学校第2学年「生活科」


1 単元名 「作って あそんで わっはっは」 (平成21年10月27日実施)
        

授業実践者:豆田 幸彦 

2 単元とその指導について

本単元は、新学習指導要領の内容(6)を扱った学習で、身近な自然を利用したり、身近にある物を使ったりなどして、遊びや遊びに使う物を工夫してつくり、その面白さや自然の不思議さに気付き、みんなで遊びを楽しむことができるようにすることをねらいとしている。具体的には、決まった物を作るのではなく、これまでの経験を生かし、素材を手に取りながらできそうな遊びや遊びに必要な物、遊びにつながる物を作っていく活動と、それらの物を使って友達と遊びを通して交流する活動が中心となる。
 まず、身近にある物の素材を使って楽しむ活動から始める。素材の特性を感じながら、「こんな物が作れそうだ」「こんなことをして遊べそうだ」など、思いを巡らせる時間を十分にとる。素材については、事前に家庭から各自、空き箱やペットボトルなどを持ち寄らせておく。そして、思いを巡らせた物の中から遊びに使う物や作って遊ぶ物の計画を立てさせる。その際、必要な道具等についても考えさせるようにする。これらの活動から、身近な物で遊びや遊ぶ物を考えることができることに気付かせ、自分でやってみようという気持ちをもたせたい。
 次に、実際に作ったり遊んだりする活動を繰り返し、試行錯誤しながら遊びを考えたり遊びに使う物を作る活動を行う。その過程で「あそびまつり」を2回仕組み、友達との交流を図り、交流を通して素材への気付きや、遊びや製作物への気付き、かかわった人や自分への気付きを促し、相互に刺激し合いながら気付きがより高まるようにするとともに、より楽しく遊ぶことができるようにしていきたい。また、自分で考える面白さや友達から教えてもらうよさについても味わわせたい。
 そして、最後に単元の活動を振り返ることを通して、身近な物へのかかわりの楽しさや、友達と楽しく遊べること、友達のよさや自分の成長などへの気付きを実感しながら、次の単元「みんなにこにこ『北っ子フェスタ』」に意欲的に取り組めるようにしていきたい。
 『北っ子フェスタ』…保護者や地域の方を招き、学習発表の場として開かれる学校行事 (お祭り)の名称。

 本学級の児童は、1年生のときに「秋とあそぼう」の単元において、ドングリや落ち葉などを使ってヤジロベエやドングリごまなどの遊ぶ物や、帽子やネックレスなどの飾る物を作った経験がある。また、1学期に図画工作科「水にうかぶものを作ろう」の学習で、身近にあるペットボトルや発泡トレー、プリンカップなどを用いて工作した経験がある。さらに、図画工作科でお互いの作品について鑑賞し合う活動の経験もある。
 そして、9月の国語科単元「おもちゃまつり」では、班で協力しておもちゃを作ったり作り方や遊び方を説明したりする経験をしている。しかし、自分一人で考えて遊ぶ物を作ったり、遊びを考えて友達と遊んだり伝え合ったりした経験は少ない。
 物を作ることや、友達と交流することの意識については、7月に実施したアンケート調査によると「好き」がほとんどで、「まあまあ好き」を合わせると実施した全員(34人)が物作りや友達との関わりを好む傾向がある。また、自分で「何をして遊ぶか」「何を作ろうか」について考えることについて、85%の児童が「好き」または、「まあまあ好き」と答えており、好む傾向にあるといえる。

 

 

 


3 単元の指導目標

身近にある物を使って遊びや遊びに使う物を工夫してつくり、みんなで遊びを楽しむことができる。
 

4 単元の計画 (全10時間)  本時は9/10 

学習内容及び学習活動 時間
教師の指導・支援



素材に触れる。
素材を使って遊びの例示を知る。
自分で考えて遊ぶ。
遊んだ中で楽しめそうなことを記録する。
・特徴的な素材を取り上げ、児童と対話しながら本時のめあてをつかませる。
・遊びの仕方で種類別に言語化し、考えるヒントとする。
・自分が考えた遊びの中からいくつか記録をさせる。(素材の特徴と遊び方)





前時の活動を思い起こし、 再度素材に触れながら、どんな遊びでどんな物を作るか、計画を立てる。
  ・どのような遊びか?
  ・作る物は?
  ・必要な材料は?
  ・必要な道具は?
  ・先生にお願いする物は?
                     など
・前時の記録を使い、遊びと遊ぶための物作りを考えさせる。
・滞っている児童には、素材に触れながら特徴を踏まえて考えさせるようにする。
・どのような遊びをしたいかについて明確にさせておく。 (思いや願い)
・思いや願いを実現させるために必要な物や手順を考えさせ、見通しをもたせる。 見通しがもてない児童には、教師からの問い掛けや対話をすることにより、見通しがもてるよう支援していく。

計画書を見ながら作る。
工夫や修正を加えながら作り進める。
・計画書に従いながらも、修正や変更が可能なことを伝えておき、いろいろと試しながら作っていかせる。
・なぜ、修正や変更をしたのか、対話から考えを引き出し、思いや願いを確認させるようにする。


「あそびまつり」をする。(ペアの班のところで遊ぶ。)
ペアの班の友達のよかったところやアドバイスなどを書き、伝え合う。
・遊び合う場を設け、友達の遊びや遊ぶもののよかったところやアドバイスをカードに書いて渡させる。(伝え合う活動)
・カードの書き方の例を示す。
・受け取ったカードから、次の活動の見通しをもたせるようにする。



友達からのアドバイスや一緒に遊んだ中から気付いたことを基に、遊びをさらに工夫する。
試しながら作り替える。
・受け取ったカードを基にこれからの活動の見通しを確認し、遊ぶ物や遊び方の修正をさせる。
・どのように修正していけばよいか分からず困っている児童には、教師からの問い掛けや対話をしながら修正を進めさせる。


「あそびまつり」をする。(1回目と別のペアの班のところで遊ぶ。)
友達の遊びや遊ぶ物のよかったところをカードに書き、伝え合う。
・遊び合う場を設け、友達の遊びや遊ぶもののよかったところをカードに書いて渡させる。(伝え合う活動)
・受け取ったカードを整理しながら、友達や自分についての気付きを出させるようにする。

単元の活動を振り返り、振り返りカードに記録する。 ・単元全体の学習カード類を基に、本単元の振り返りと今後してみたいことなど、を振り返りカードに記入させる。

6 単元の評価計画(全10時間)

 観点
生活への関心・意欲・態度
活動や体験についての思考・表現
身近な環境や自分についての気付き
評価
規準
身近にあるいろいろな物や遊びに関心をもち、友達と交流しながら楽しく遊ぼうとする。
身近にある物を使って遊ぶ物を工夫して作り、遊び方を考える。 身近にある物を使って遊べることや遊ぶ楽しさ、友達や自分のよさに気付く。
学習活動における具体的な評価【評価基準表】
評価規準
A(十分満足)
B(おおむね満足)
【関心・意欲・態度】 
身近にあるいろいろな物に関心をもち、遊ぼうとしたり遊びに使う物を作ろうとしたりする。
(発言・行動観察・対話)
身近にあるいろいろな物にすすんで触れ、友達を誘うなどして積極的に遊ぼうとしたり、遊びに使う物を作ろうとしたりしている。 身近にあるいろいろな物に触れ、遊ぼうとしたり遊びに使う物を作ろうとしたりしている。
【気付き】 
身近にあるいろいろな物の特徴に気付く。
(発言・ワークシート・対話)
身近にあるいろいろな物の質的特徴をとらえ、具体的な遊びや遊びに使う物を作ることができることに気付いている。 身近にあるいろいろな物の特徴をとらえ、遊びや遊びに使う物を作ることができることに気付いている。
2・3 【思考・表現】 
遊びに使う物を考え、絵や言葉で表す。
(ワークシート・対話)
素材の質的な特徴を生かし、遊びに使う物を絵や言葉で表している。 遊びに使う物を考え、絵や言葉で表している。
4・5 【思考・表現】 
遊びに使う物を自分なりの考えを生かし、作る。
(行動観察・作品・対話)
自分なりの考えを生かし、みんなで楽しく遊ぶことを意識して遊びに使う物を作っている。 自分なりの考えを生かし、遊びに使う物を作っている。
【関心・意欲・態度】
友達と一緒に遊ぼうとし、思ったことを伝えようとする。
(発言・行動観察・対話)
自分の作った物や友達の作った物ですすんで遊ぼうとし、遊びや遊びに使う物についてよいところやアドバイスを伝えようとしている。 自分の作った物や友達の作った物で遊ぼうとし、思ったことを伝えようとしている。
【気付き】
友達の遊びのよさや、自分の遊びのよさなどに気付く。
(カード・ワークシート・対話)
友達の遊びのよさを見つけ、自分の遊びに生かせることや改善点、自分の遊びのよさに気付いている。
友達の考えた遊びのよさや自分の遊びのよさに気付いている。
7・8
【思考・表現】
遊ぶ物や遊び方を工夫する。
(行動観察・作品・ワークシート・対話)
友達と楽しく遊ぶことができるように、友達のアドバイスや遊んだ中で気付いたことを基に遊ぶ物を作り替えたり遊び方を工夫したりしている。 友達のアドバイスや遊んだ中で気付いたことを基に、遊ぶ物を作り替えたり遊び方を工夫したりしている。

〔本時〕
【関心・意欲・態度】 友達と一緒に遊ぼうとし、思ったことを伝えようとする。
(発言・行動観察・対話)
友達の作った物ですすんで遊ぼうとし、友達の遊びや遊びに使う物のよさを伝えようとしている。 自分の作った物や友達の作った物で遊ぼうとし、思ったことを伝えようとしている。
【気付き】
友達の遊びのよさや自分の遊びのよさ、友達と一緒に遊ぶ楽しさに気付く。
(カード・発言・ワークシート・対話)
自分の遊びと比べた友達の遊びのよさや自分の遊びのよさ、友達と一緒に遊んだり伝え合ったりすると楽しいことに気付いている。 友達の遊びのよさや、自分の遊びのよさ、友達と一緒に遊ぶ楽しさに気付いている。
10
【思考・表現】 
作った物を生かして「北っ子フェスタ」でどのようなことをしたいか考え、絵や文で表す。
(振り返りカード・対話)
「北っ子フェスタ」に向けて、本単元で作った物の変更点や工夫や改善点を具体的に絵と文でくわしく表している。 「北っ子フェスタ」に向けて、本単元で作った物を基本に、やってみようと思っていることを絵や文で表している。

 

 

7 本時の学習指導 (9/10)  場所:多目的室 時間:2校時

 (1) 本時の目標

○ 自分が作った遊ぶ物や友達が作った遊ぶ物を使って友達と遊ぶことを通して、自分の遊びのよさや友
    達の遊びのよさに気付き、伝えることができる。

 
  (2) 展 開
児童の学習活動
教師の指導・支援 (□評価規準と方法)
 本時のめあてを知る。 これまでの活動と結びつけながらめあてを引き出すようにする。
 
                   たのしくあそんで、いいところ はっけん!  
 「あそびまつり」の約束を確認する。

 「あそびまつり」の約束と順序
  @遊びの紹介をする。
  A一緒に遊ぶ。
  B友達へのカードを書いて渡す。







「あそびまつり」は、ペアの班でお店になる班とお客さんになる班に分かれ、途中で交代することなどを理解させる。

時間で紹介する側と遊ぶ側を交代させる。

すぐ交代ができるようにお店の場を指定しておく。
「あそびまつり」をする。 お店側の子には,遊び方やどんなところが楽しいか,どんな工夫をしているかなど,おすすめのポイントを紹介させるようにする。
 

お客さん側になる子には,カードの例や友達の遊びや遊ぶ物のよいところを見付ける視点や書き方のヒントを示しておく。

見付ける視点
書き方のヒント
・形や大きさは?
・材料は?
・組み合わせや作り方は?
・遊び方の決まりは?
・楽しい動きは?
・遊んでみての気持ちは?
・説明はよく分かる?
・お店の友達の様子は? など
・○○○みたいだね。
・まねして作ってみたいね。
・○○と□□をよくっつけたね。
・遊び方がおもしろいね。
・○○の動きに似ているね。
・すっきりいい気分になったよ。
・説明が上手でよく分かったよ。
・にこにこで教えてくれたね。 など
 






遊んだらその都度,友達の遊びや遊ぶ物のよいところについてカードに書かせるようにする。

カードを受け取ったら,ワークシートに貼らせるようにする。

書くことが進まない児童には,よいところを見付ける視点や書き方のヒントを示し,対話をしながら気付きを引き出すようにする。

■ 友達と一緒に遊ぼうとし,思ったことを伝えようとする。 
     (カード・発言・行動観察・対話)
   

 

本時の活動を振り返る。

 




受け取ったカードを見ながら振り返り,ワークシー トに気付きを記入させる。

嬉しかったことや気付いたことを紹介させるようにし,友達の遊びや遊ぶ物のよいところを見付けた児童も称賛するようにする。

■ 友達の遊びのよさや自分の遊びのよさ,友達と一 緒に
    遊ぶ楽しさに気付く。
    (カード・発言・ワークシート・対話)

資料等 学習指導案【PDF】 本単元のワークシート集【PDF】  
       

8 児童の様子

 素材の特徴に合わせ、自分なりの思いを巡らせた遊びや遊ぶ物を考えていた。最初のうちはなかなか活動が進まず、どのように作ったらよいか分からない児童もいたが、友達と相談したり、教師からの言葉掛けにより、自分の思いを少しずつ具現化していくことができていた。  

 「あそびまつり」では、限られた時間ではあったが、一緒に遊びを楽しみ、お互いにアドバイスやよいところを書いて伝えることができていた。その中で自分の遊びと比べて改善を図る糸口を見付けたり、友達と伝え会うことのよさを味わったりすることができた。 

 伝え合う活動を通して、自分の頑張りやよさにも気付き、次の単元「みんなにこにこ『北っ子フェスタ』」への思いを膨らませていた。
   

9 授業を終えて (指導者の考察)

 単元の基本的な学習の流れについては、よかったのではないかと思う。児童の実態に合わせながら、単元を通して意欲的に取り組ませることができた。   

 2回の「あそびまつり」を仕組むことで、友達の遊びのよさや自分の遊びの改善点を見付け、友達と交流することの楽しさを味わうことができた。
  交流する中で気付きを書いて渡す活動が、児童にとって心情的にも内容的にも学習への意欲や対象(人・もの・こと)へのかかわり方において効果的な手立てとなった。
 本来なら十分な時間を取るべきであったが、限られた時間内で伝え合う活動をスムーズに行うことができたことは、これまでの良好な学級経営と的確な学習指導によることも理由の一つにある。このことから、生活科に限らず、学習指導や学校生活全般における指導が相互につながり合って児童の成長が成り立っていることを改めて実感できた。
 気付きの質を高めるために、十分な体験活動と、絞った視点を与えることが必要であることが分かった。今回の実践では、一緒に遊ぶ時間や気付きを書いて渡す時間の不足と、カードを書く際の視点の与え方が幅広く項目も多かったため、児童の気付きの質を十分に高めるというところまで達していないと考える。気付きの質を高めるための単元の学習計画のたて方の工夫や教師側の視点の与え方の工夫について、今後も研究を進めていきたい。