○ 学習指導案    高等学校第2学年 「 物理 」


1 単元名 「光の進み方」 (平成20年9月実施,35名)
        〜寒天とLED光源装置を用いた実験・観察〜

授業実践者:丸尾 樹範

2 単元とその指導について

光は生物にとって生きていく上で必要不可欠なものである。また、科学技術の分野でも、特に電気通信関係などで光の性質を活用したものが身近に数多く存在しており、生活をする上で切り離せないものである。そのため、小学校から観察、実験が行われ、また、中学校でも反射・屈折などの定性的な現象について履修をしており、生徒達にとっても馴染みが深い分野であると考えられる。
しかし平成17年度高等学校教育課程実施状況調査教科・科目別分析と改善点(理科・物理T)において、「音と光」での通過率が設定通過率を上回る又は同程度と考えられる問題数は、全体の問題数の半数を占めているが、質問紙調査で7割以上の教師が「生徒は興味を持ちやすい」と考えているに対し、「好きだった」と答えた生徒は3割に満たない状況であるという結果であった。余りにも身近すぎる題材で、その基本的な性質は日常生活の中で習得し、学問として習得する意識が薄いように思われる。
 学習指導要領において物理Tは、『物理的な事物・現象についての観察、実験などを行い、自然に対する関心や探究心を高め、物理学的に探究する能力と態度を育てるとともに基本的な概念や原理・法則を理解させ、科学的な自然観を育成する。』ことを目標としている。本単元は、大項目「波」の中の小項目「音と光」として取り扱っている。大項目のねらいとしては、「地震波、水波、光、音などいろいろな波について共通な性質を観察、実験などを通して探究し、波動現象についての基本的な概念や法則を理解させるとともに、それらと日常生活と関連つけて考察できるようにする。」こと、また、内容の取扱いとしては「光の速さ、反射及び屈折を扱い、レンズの幾何光学的な性質に触れる場合は、初歩的な程度にとどめること。」と示されている。また、その解説では「光の反射と屈折を観察、実験を通してして扱い、それらについて法則性を見出すようにする。」とされている。
 高校の授業でこの分野の観察、実験については、器具の数や安全面から、演示実験に終わりがちであった。そこで安価・安全性の高い器具を用意し、生徒一人一人に現象を感じ取れる観察、実験を行いたいと考える。具体的には、高価なガラス板に対し、食材である「寒天」を使用している。寒天は、通過する光の道筋を見ることができる。また、安価で大量に作ることができ、加工も簡単である。光源についても、性能は優れているが高価で危険性の高いレーザー光源のかわりに、明るさは落ちるが、安全性を考慮し、安価で簡単に製作できる自作LED光源装置を用いている。

対象生徒は、理数科2年4・5組物理選択者で「数理物理」として、1年次から物理を履修している。ほとんどが看護・医療系、生物、農学系へ進学希望で物理の履修は2年次で終わる。しかし、自然現象に対する興味・関心が高く、また、1学期に波の基本法則を学習しているので、知識を十分もった上で観察、実験に取り組めると思われる。

限られた時間のなかで、日常生活の中で見られる光の「直進」「反射」「屈折」という現象を、「寒天」と「LED光源装置」を使った実験によって確認させ、その法則性を理解させる。また、2種類の媒質の屈折率を測定し、媒質によって屈折率が異なり、その値はほぼ決まっていることも理解させたい。さらに「全反射」についても観察、実験を行い、その条件も導き出させたい。日常的な活用方法を考えさせ、物理の原理・法則を利用した科学技術を身近に感じさせ、物理に対する興味・関心を高めていきたい。
 なお1時間目に、光速測定について歴史的な実験例を紹介する。また、光の進み方について既習知識を確認しながら実験を行い、2時間目の屈折率の測定実験へつなげたい。

 単元におけるコンピュータの活用について

・実験の手順の説明、考察、まとめをパワーポイントを用いて行う。


3 単元の目標

・光速測定の歴史的実験例と光の直進性・反射・屈折などの進み方について理解する。
・光の屈折について、観察、実験を行い、その規則性に物理法則を見いだす。
・学習活動を通して、光に対する興味・関心を高める。

4 単元の計画 (全2時間)

  • 1 光の速さと進み方   ・・・・1時間
  • 2 光の屈折と全反射   ・・・・1時間

5 本時の学習指導 (2/2) 場所:物理第1実験室 時間:2校時

 (1) 目標

・光の屈折について、観察、実験を行い、その規則性に物理の原理や法則を見いだす。
・全反射について、観察・実験を行い、その現象について理解し、活用例を確認する。

 (2) 利用環境<本校の環境>

○主なハードウエア

パソコン、液晶プロジェクタ

○主なソフトウエア

マイクロソフトパワーポイント

 (3) 展開

児童・生徒の学習活動
教師の指導・支援(※評価)
本時の学習について確認する。


本時の授業のポイントを伝える
屈折率の測定実験を行う。
・ 空気→寒天での入射角と屈折角について
 
・ 空気→台形ガラスでの入射角と屈折角について





・読みとった角度より屈折率を求める。
・入射角、反射角と屈折率の関係を理解する。

・媒質により、屈折率が異なることを理解し、教科書の表より屈折率が決まっていること確認する。




















実験方法の説明及び実験器具の取り扱い方など説明を十分に行い、理解させる。

既存の知識と比べながら進めさせる。








屈折率の計算には、電卓及び三角関数表を使用させる。教科書の三角関数表の使い方を理解させる。

実験がはやいグループには、指定した入射角以外の角度も観察させる。

寒天と台形ガラスの実験より、媒質によって、屈折率が異なることを感じさせる。


【評価】
 ・熱心に取り組んだか。(関心・意欲・態度)       【生徒観察】
 ・適切な記録をとることができたか。
  (技能・表現)(思考・判断)  【ワークシート】
 ・屈折現象の考え方や媒質による屈折率の違いを を理解できたか。(思考・判断)  【ワークシート】
寒天→空気での光の進み方
・空気→寒天での入射角・屈折角の関係と比べながら、逆行する光の道すじを観察する。


・絶対屈折率と相対屈折率の意味及び関係を理解する。












光が逆行しても、道筋は同じであることを理解させる。









教科書の屈折率の表を用い、2種類の屈折率の意味を理解させる
全反射の観察実験を行う。

・寒天→空気での光の屈折実験において、光が空気中に出ないような入射角を探す。
・全反射において、臨界角と屈折率の関係を理解する。


・寒天を細長く細工し、反射をくり返しながら光が伝っていく様子を観察する。
・全反射の応用例として、光ファイバーの例をみる。







全反射は、屈折率が大→小での屈折で、臨界角を過ぎると起こることを意識させる。





身近な全反射のとして「光ファイバー」を紹介する。

【評価】
・寒天→空気、空気→寒天に進む光の道筋の関係を理解できたか。(思考・判断)  【ワークシート】
・全反射の現象を、屈折率の視点から理解できたか。
(知識・理解)  【ワークシート】
・実生活での物理現象の活用例について気付くことができたか。(思考・判断)  【ワークシート】




本日のまとめ
・本時の学習内容を確認しまとめる。

・後片付け。
本日学習した内容を確認させる。

【評価】
・屈折率と全反射について理解できたか。また、日常生活と結びつけて考えることが出来たか。
(知識・理解)  【ワークシート】
※ 資料等
指導案【PDF】 学習プリント【PDF】
学習資料【パワーポイント】                            

6 児童・生徒の反応

  • ○興味をもって意欲的に実験・観察に取り組む様子が見られた。
  • ○身近な素材(寒天)を使った実験・観察により、中学校で学んだ知識の再確認と屈折率の計算まで、グループで協力して行うことができた。
  • ○寒天を使っての光ファイバーの原理の観察に驚いた様子であった。

7 授業を終えて

  • ○研究授業では、高校生を対象とした授業であるが、中学校でも活用できる内容になるよう設定した。概ね好評で、受講者の学校でも活用したいとの声が多かった。
  • ○教科書での知識を実験によって確認でき、熱心に取り組んでもらった。
  • ○内容が多かったので、時間が不足し、最後のまとめが十分でできなかったが、実験・観察の結果より実験のねらいは、十分に伝わったを思う。