○ 学習指導案    高等学校第1学年 「 家庭基礎 」




1 単元名 「これからの衣生活と環境」 (平成19年10月実施,43名)

授業実践者:谷岡 千恵子


2 単元とその指導について

 衣服は,健康で安全な生活をするためにはなくてはならないものである。生産・流通が発展し,多種多様な繊維製品が豊富に出回り,着ること,装うことは精神的にも満足感を与え,人々の生活を豊かにしている。一方,ごみ処理が環境汚染やコストの面から社会的に問題視されているにもかかわらず,衣料品が大量に廃棄されているという実態に目を向けると,環境を考えた消費行動を見直す必要性がある。さらに,これからの高齢社会や共生社会において,すべての人が健康で安全な衣生活を楽しむためにも,ユニバーサルな視点に立った衣生活が求められている。これからの社会を担う一員として,現在の自分自身の生活のなかで利便性や快適性のみを追求していくのではなく,未来の人たちの生活のためにも,資源を大切にし,ごみを減らすなどの自然や環境と調和した生活を考え,環境への負荷をできるだけ少なくした行動をしてほしいと思う。
 本題材では,これからの衣生活を考え,計画的に課題を解決するような内容になっている。本時では,死蔵衣服の活用法を考えることから,衣服を大切に着用し,不要になったものは再利用や処分の仕方を工夫するなど,自分の衣生活を見直し,環境に配慮した生活を整える姿勢を身に付けさせたい。また,衣服の購入や処理の行動を環境と関連させて考えさせ,それぞれの課題に気付かせたい。
 生徒は,1年生の42名(男子12名、女子30名)である。衣服を着用することには関心があるが,手入れや補修などを家庭で実践した経験は少なく,「衣服の購入」「衣服の手入れ」「衣服の処理」などに関して十分な自覚をもって衣生活を送っているとは言えず,家事を担う家族に委ねているのが現状である。また,自分の行動を社会的な視野に立って考える機会はほとんどなく,被服資源の利用者としての立場で自己の衣生活を考え,環境に配慮して生活を改善することは難しい。
 情報機器を使って資料の提示を行い,昨年度の生徒のホームプロジェクトでの取り組みを紹介する。家庭科の学習から課題を見付けて生活に生かすという実践例を見せることで,生徒の意識を自分自身の生活に向けさせ,家庭科の学習と自分の生活を結び付け実践していこうとする意欲を高めるのに有効な手段と考えた。生徒が主体的に考える時間は十分に取りたいので,短時間で内容を理解してほしいところにはプレゼンテーションソフトを使って,自分の衣生活を見直し,環境に配慮した生活を整える姿勢を身に付けさせたい。
 

3 単元の目標
 
 被服の安全性や衣生活に関係する環境問題の現状を把握し,よりよい生活のために自分ができることを考えて,実行できるようになる。


4 単元の計画 (全4時間)
  1. 環境に配慮した衣生活・・・・・・・・・・2時間
       第1時 洗濯と環境汚染
       第2時 衣服の処理(廃棄とリサイクル)・・・(本時)
  2. 健康で安全な衣生活のために・・・・・1時間
  3. さまざまな人が着るための工夫・・・・・1時間


5 本時の学習指導 (2/4) 場所:被服室 時間:第2校時
 (1) 目標
   ・自分の衣生活を見直し,その中で環境とのかかわりに関心を持つようになる。
   ・資源の有効利用の観点から衣服の購入,活用,再利用,廃棄などを考えることができるよ
   うになる。
   ・自分の衣生活における課題を見付け,その解決を目指し思考を深めることができるように
   なる。
 (2) 利用環境<本校の環境>
  ○主なハードウエア ・パソコン(教師提示用 ※室内網羅できるスピーカー取付)
・プロジェクター(同用 ※黒板に粘着可能なスクリーンを利用)
・実物投影機(生徒作成ワークシートの発表用 ※プロジェクターへ直結)
  ○主なソフトウエア パワーポイント(課題の把握、資料の提示、まとめとして使用)
 (3) 展開
児童・生徒の学習活動 教師の指導・支援(※評価)
本時の学習を確認する
<本時のめあて>
資源を大切にする衣生活の工夫について考えよう。
  • 年間廃棄衣料の量から,現代の衣生活の課題(大量生産・大量消費・大量廃棄と資源の有限性)について関心を持たせる。
  • 将来的なことを考えて,資源を有効に利用することの必要性を示唆する。
  • アンケートの結果から,自分の衣服の処理についても責任を持つように促す。
死蔵衣服について考える。
  • 死蔵衣服の活用法を考えさせることで、自分の衣生活を見直させる。
活用の方法を考える。
  • 資源物としての活用について説明する。
  • Recycleにも負荷はかかっていることや,資源物から廃棄に回されている量が増加していることから,衣服を長く大切に着用することが大切なことを説明する。
家庭での活用について考える。


  • リフォーム例とRemake例を提示し、自分の持ってきた死蔵衣服の活用計画を立てさせる。
  • まずグループで考えさせ、他の人の意見を聞くなかで考えを深めさせる。
  • 昨年度の生徒のホームプロジェクトでの取り組み(Remake)の事例や放置傘のRemake作品を見せることで,再度自分の生活へ目を向けさせる。
  • 自分の活用計画をまとめさせる。
  • モバイルプレゼンターで資料を提示し、発表させる。

    

3R政策について確認する。
  • 衣生活の工夫を3Rにつなげ,自分と家庭と社会のつながりに目を向けさせる。
  • Refuseについても説明する。

   

本時を振り返ってまとめる。
  • ひとりひとりが生活の中で環境に配慮することが大切であることを確認する。
  • 本時の感想と自己評価表を記入させる。
  • 計画を実施するように促す。


※資料等

指導案【Word】 「これからの衣生活と環境」生徒アンケート【Word】 生徒用ワークシート【Word】
6 児童・生徒の反応
・衣料品の廃棄量から衣生活における課題を把握するために、PowerPointを使って産業構造や国際社会とのかかわりなどの資料を提示したので、生徒たちの理解もスムーズであった。
・自分の心がけと少しの配慮で環境保全につながることが理解できたようだ。これを実践に結びつけていくように指導していくことが大切だと思う。
7 授業を終えて
PowerPointを使った授業は教師の一方的な授業になりやすいといわれるので、そうならないように生徒の活動する時間を確保することを心がけた。限られた時間内で、生徒が理解しやすいように資料を提示したり、学習を確認したりできることは、PowerPointの魅力だと思う。そのためには、生徒の視点に立った資料の準備が大切だと思う。

・生徒の発表では、自分の死蔵衣服の活用方法をワークシートに書かせて、それを説明するためにモバイルプレゼンターを使用した。自分の考えたことを分かりやすく伝えるための手段としてモバイルプレゼンターは有効だと思った。今後、ホームプロジェクトなどの発表にも取り入れたいと思った。