○ 学習指導案    小学校第6学年「英語活動(総合的な学習)」


1  単元名 "What's this?" (平成19年10月実施,28名)
        

授業実践者:JTE 宗 誠     
         ALT Sarah Busche
     
       

2 単元とその指導について

  『小学校英語活動実践の手引』には,小学校における英語活動のねらいについて,「言語習得を主な目的とするのではなく,興味・関心や意欲の育成をねらうことが重要である」と記されている。また,平成18年3月にまとめられた「中教審外国語専門部会における審議の状況」では,小学校段階では「英語のスキルをより重視する考え方」よりも「国際コミュニケーションをより重視する考え方」を基本とすることが適当であるとも述べられている。
  そのような考えにのっとり,本単元では,英語による指示や説明を一生懸命に聞こうとする態度や,異言語の壁を乗り越えて何とかして自分の意思を伝えようとする意欲を育てることを主なねらいとする。具体的には,インフォメーションギャップを利用したクイズや"What's this?"という絵本の読み聞かせと内容に関する質問を通して,尋ねられていることを何となく理解したり,それに対して言葉や動作で反応したりする体験をさせていく。また,「だまし絵」「かくし絵」を利用する中で,多様なものの見方や考え方ができることに気付かせることも,国際理解という視点からのねらいの一つである。

 本校では,昨年度から英語活動がスタートした。今年度は1学期に3時間,2学期に3時間の授業を行い,絵本の読み聞かせを中心とした活動に取り組んだ。授業では「聞く」ということに重点を置き,「英語の指示が分かる」「指示や質問に様々な方法で反応する」という活動を中心に計画してきた。ALTのサラ先生とは,昨年度初めて顔を合わせ,今年度は2回ほど授業に来てもらっている。サラ先生に対する緊張感や抵抗感はあまりないようで,気軽に声を掛ける姿が見られる。多くの児童は,英語活動の経験が少ないため,ALTの英語のみの説明を理解したり,自分の考えを英語で表現したりということはほとんどできない。しかしながら,ALTが発する言語以外のメッセージ(ジェスチャー,絵カードなど)をキャッチし,言っていることを分かろうと努力をする児童は多い。同じように自分の考えも,知っている英単語やジェスチャーなどを駆使して伝えることができる児童が多く,異言語コミュニケーションへの態度は育ちつつあると言える。

  以上のような単元のねらいと児童の実態を踏まえ,次のような手立てを取っていきたい。
第1時は,モザイクや渦巻きなどの加工を施した写真を利用し,"What's this? Can you guess?"と尋ねるクイズを導入とする。一見しただけでは何か分からないというインフォメーションギャップをもたせることで,何であるのかを尋ねる必然性と答えたいという意欲を高めることができると考える。次に,角度や視点を変えることで様々なものに見えるという"What's this?"という絵本や目の錯覚を利用しただまし絵などを使い,高学年の知的好奇心を刺激しながら,答えたいという意欲を喚起する。その中で,"What's this?"だけでなく,"Can you see 〜?","How many 〜do you see?","Which is bigger / longer?"など様々な質問を投げ掛ける。初めて耳にする質問も多いが,教師のジェスチャーなどで質問の内容を分からせるように工夫するとともに,英語できちんと言えなくとも,様々な方法を使って反応してよいことを伝え,コミュニケーションにおける「方略的能力」を育てたい。
第2時は,1時目に作成した変身絵カードを使った4ヒントクイズ作りとクイズ大会を行う。これまでの活動でインプットしてきた"What's this?"という表現を使って,子ども同士へのコミュニケーションへの発展させる。自分でクイズを作るという創作の楽しさやそのクイズを使って友達同士でコミュニケーションを図る楽しさを味わわせたい。
  また,単元全体を通して,1つのものや事象を別の視点から見ることでとらえ方が変わってくることに触れさせていく。このことにより,価値観や文化が違うものに接したときに,ステレオタイプ的なものの見方や考え方をせず,客観的に判断し,自分の中の世界観を広げていくという国際理解の素地を形成できるのではないかと考える。
  いずれの活動においても,賞賛や励ましの言葉掛けを多くし,全員が楽しんで取り組めるように配慮する。

3 単元の目標

 インフォメーションギャップを利用したクイズや錯視を利用しただまし絵,変身絵カードなどを使って英語によるコミュニケーションを楽しませるとともに,ALTやJTEが言ったことを何とかして分かろうとするとする意欲と態度を育てる。また,視点を変えることで別の見方ができることにも気付かせる。

4 単元の計画 (全2時間)

  • 1 これなあに?(本時)・・・・・・・・・1時間
  • 2 クイズ大会をしよう・・・・・1時間

5 本時の学習指導 (1/2) 場所:体育館 時間:2校時

 (1) 目標

  • ア 教師が出題するクイズやに聞き慣れた英語表現などを使って反応することで, 英語によるコミュニケーションの楽しさを味わう。(コミュニケーションへの関心・意欲・態度)
  • イ 教師が出題するクイズに答えたり,英語の指示でカードを作ったりすることができる。 (コミュニケーションの技能・表現)

 (2) 準備

"What's this?"の絵本,クイズの問題を貼り付けたパワーポイントファイル,コンピュータ,プロジェクタ,変身絵カードの材料,はさみ

 (3) 展開

児童の主な活動 指導・支援上の留意点と主な英語表現
JTEの指導・支援 ALTの指導・支援
あいさつをし,簡単な会話を楽しむ。  ALTと明るくあいさつを交わし,授業の楽しい雰囲気づくりができるように心掛ける。
Good morning, Sarah.
Good morning, everyone.
How are you?
 全員にあいさつをしたあと,個別に話し掛ける。
Good morning, So-sensei.
Good morning, everyone.
How are you?
What's this?クイズ@
教師が出題するクイズに答えて楽しむ。
 パソコンを操作し,パワーポイントのスライドショーで問題を提示する。
 スライドに出たものについて,何であるのかを質問したり,ヒントを与えたりする。
 What's this?
 Can you guess?
 Yes, that's right!
 Sorry, it's very close.
 I'll give you some hints.
絵本の読み聞かせを楽しむ。 児童の理解を助けるために,児童の立場に立って,ALTに質問したり,視覚的な情報を与えたりする。
 "What's this?"という絵本を読み聞かせし,絵本の内容に関する質問をする。
◎ 教師の質問に答えようとしているか。(関心・意欲・態度)
What's this?クイズA
だまし絵を楽しみながら英語の質問に答える。



 パソコンを操作し,パワーポイントのスライドショーで問題を提示する。
 だまし絵について説明するとともに,視点を変えると様々な見方ができることに触れる。
 スライドに出たものについて,何であるのかを質問したり,ヒントを与えたりする。
 What's this?
 Can you guess?
 How many 〜s can you see?
 Which is longer, A or B?
 Are they same?
 Yes, that's right!
◎ 様々な質問に答えることができるか。(技能・表現)
変身絵カードを作る。




 ALTが提示するヒントがよく見えるように,パワーポイントで同時に提示する。
 変身絵カード作りへの意欲付けを図り,材料を配る。
 机間指導をし,個別の支援をする中で,英語によるコミュニケーションの楽しさを味わわせる。
 変身絵カードを使って,4ヒントクイズを出題する。ジェスチャーを交えながら,ヒントを言う。
 変身絵カードの作り方を英語で説明する。
 Please fold this paper in half.
 Fold each half back like this.
 Do you have scissors?
 Please make 3 cuts like this.
 Push the paper through the cuts like this.
◎ 教師の指示どおりに作業ができているか。(技能・表現)
終わりのあいさつをする。


 次回は,変身絵カードを使ったクイズ作りをするので,4ヒントクイズを考えておくように指示する。
 この時間の活動の様子をほめ,楽しい雰囲気で終わる。
 Please make 4 hints quiz.
 You all did very good job!
 See you next time!
※ 資料等
スライド資料【PowerPoint】 

6 児童・生徒の反応

  • ○ 写真にモザイク処理を施したものを提示し,「これは何だろう?」という気持ちをかき立てるようにしたので,その場面設定の中で,自然に"What's this?"という質問の意味をつかんでいたようです。
  • ○ 子どもたちはALTの英語を聞いたり,ジェスチャーを見たりすることにより,クイズで使うための「変身絵カード」を作ることができました。

7 授業を終えて

  • ○ "What's this?"という質問を投げかけるためには,見ただけでは何であるのか分からないという"Information Gap"(情報量の差)を作り出すことが重要になってきます。今回は,動物の写真にモザイク処理を施したものを準備し,プレゼンテーションソフトを使って提示していきました。動物の写真だけではなく,野菜,食べ物,文房具など様々な写真を使って,"What's this?"と質問することができますし,同じように,人の写真を使って,"Who's this?"と尋ねることもできるでしょう。人の写真を使う場合は,芸能人やスポーツ選手などの写真を使うことが可能ですが,学校の先生方など児童にとってより身近な人の写真を使う方が興味をもたせることができると思います。その場合,著作権や肖像権には配慮する必要があります。
  • ○ 2つめのクイズでは,だまし絵,かくし絵と呼ばれる錯視を利用した絵や写真を見せて,質問を投げかけました。ジェスチャーを交えて質問することで,"Which is longer / bigger?"など文法的に難しいと思われる質問の意味も理解し,反応することができていました。錯視を利用した写真などは,高学年特有の知的好奇心を刺激したのが,子どもたちは食い入るようにスクリーンを見ていました。
  • ○英語のインプット量が少ない子どもたちなので,英語を話すということよりも聞いて反応できる,指示通りに作業ができるということを考えて,変身絵カード作りを取り入れました。このような活動は,人前で英語を発話することに抵抗を感じ始める高学年の児童にふさわしいと考えます。
  • ○ 立場が変わると同じものを見ていても別のものに見えるというメッセージが込められた"What's this?"という絵本の読み聞かせや錯視図形を取り扱ったあとに,多面的なものの見方や考え方をする必要があることについて話をしました。日本語での話が多くなりましたが,国際理解という視点からは重要なメッセージであり,子どもたちに考えてほしいことだと思います。